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新房昭之

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鑑賞本数 合計点 平均点
allcinema Walker ぴあ IMDb CinemaScape
wiki キネ旬 eiga.com wiki(E) みんシネ
書籍
著作
新房語(書籍)
2018 続・終物語 監督
2017 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 総監督
2016
傷物語〈III 冷血篇〉 総監督
傷物語〈II 熱血篇〉 総監督
傷物語〈I 鉄血篇〉 総監督
クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い
<A> <楽> 総監督
3月のライオン(1st)
<A> <楽> 監督
シリーズ構成
2015 「魔法少女まどか☆マギカ」コンセプトムービー 総監督
終物語
<A> <楽> 総監督・構成
wiki
暦物語
<A> <楽> 総監督・シリーズ構成
2014 幸腹グラフィティ<TV> 総監督
憑物語<TV> 総監督・構成
〈物語〉シリーズ セカンドシーズン 花物語 するがデビル<TV> 総監督
メカクシティアクターズ<TV> 総監督
ニセコイ(1st,2nd)
<A> <楽> 総監督・シリーズ構成
2013 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語 総監督
ひだまりスケッチ 沙英・ヒロ 卒業編 監督
〈物語〉シリーズ セカンドシーズン<TV> 総監督・シリーズ構成
ささみさん@がんばらない<TV> 監督
2012 魔法少女まどか☆マギカ [後編] 永遠の物語 総監督
魔法少女まどか☆マギカ [前編] 始まりの物語 総監督
猫物語(黒)<TV> 総監督
ひだまりスケッチ×ハニカム<TV> 監督
偽物語<TV> 監督・シリーズ構成
2011 かってに改蔵 総監督
ひだまりスケッチ×SP 監督
アスタロッテのおもちゃ! EX 構成協力
電波女と青春男<TV> 総監督
まりあ†ほりっく あらいぶ<TV> 監督
魔法少女まどか☆マギカ<TV> 監督
アスタロッテのおもちゃ!<TV> 構成協力
2010 懺・さよなら絶望先生 番外地<TV> 監督
ひだまりスケッチ×☆☆☆ 特別編<TV> 監督
それでも町は廻っている
<A> <楽> 監督
荒川アンダー ザ ブリッジ×ブリッジ<TV> 監督
荒川アンダー ザ ブリッジ<TV> 監督
ひだまりスケッチ×☆☆☆<TV> 監督
ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド<TV> 監督
2009 魔法先生ネギま! ~もうひとつの世界~<OVA> 総監督
ひだまりスケッチ×365 特別編<TV> 監督
夏のあらし!~春夏冬中~<TV> 監督
化物語<TV> 監督・シリーズ構成
懺・さよなら絶望先生<TV> 監督
夏のあらし!<TV> 監督
まりあ†ほりっく<TV> 監督
2008 獄・さよなら絶望先生<OVA> 監督
魔法先生ネギま! ~白き翼 ALA ALBA~<OVA> 総監督
ef - a tale of melodies.(2nd)<TV> 監督
ひだまりスケッチ×365<TV> 監督
2007 ひだまりスケッチ 特別編<TV> 総監督
俗・さよなら絶望先生<TV> 監督
ef - a tale of memories.(1st)<TV> 監修
さよなら絶望先生
<A> <楽> 監督
2006 ネギま!? 夏 総監督
ネギま!? 春 総監督
ネギま!?<TV> 監督
ひだまりスケッチ<TV> 総監督
2005 ぱにぽにだっしゅ!<TV> 監督
2004 コゼットの肖像 監督
月詠-MOON PHASE-<TV> 総監督
魔法少女リリカルなのは<TV> 監督
2003 とらいあんぐるハート ~ Sweet Songs Forever ~<OVA> 監督
2002
2001
The Soul Taker ~魂狩~
<A> <楽> 監督
2000
1999 てなもんやボイジャーズ 監督・演出・絵コンテ
それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ
<A> <楽> 監督・絵コンテ
1998 支配者の黄昏 TWILIGHT OF THE DARK MASTER 監督
セイバーマリオネット J to X<TV> 絵コンテ
1997 でたとこプリンセス<OVA> 監督
それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ II<OVA> 監督
1996 お嬢様捜査網 監督
MVP E.M.Uミュージックビデオ 監督
銀河お嬢様伝説ユナ 深闇のフェアリィ 監督
新 破裏拳ポリマー<OVA> 監督
それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ<OVA> 監督
セイバーマリオネットJ<TV> 監修
1995 魔物ハンター妖子2 監督・絵コンテ
銀河お嬢様伝説ユナ 哀しみのセイレーン 絵コンテ
NINKU-忍空-<TV> 演出
1994
モンタナ・ジョーンズ
<A> <楽> 演出
メタルファイター・MIKU
<A> <楽> 監督・演出・絵コンテ
1993
1992
幽★遊★白書(1~4Y)
<A> <楽> 演出・絵コンテ
1991 うる星やつら 乙女ばしかの恐怖 原画
丸出だめ夫
<A> <楽> 演出
wiki
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
1969
1968
1967
1966
1965
1964
1963
1962
1961
1960
1959
1958
1957
1956
1955
1954
1953
1952
1951
1950
1949
1948
1947
1946
1945
1944
1943
1942
1941
1940
1939
1938
1937
1936
1935
1934
1933
1932
1931
1930
1929
1928
1927
1926
1925
1924
1923
1922
1921
1920
1919
1918
1917
1916
1915
1914
1913
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1911
1910
1909
1908
1907
1906
1905
1904
1903
1902
1901

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タイトル
<A> <楽>
  
物語 人物 演出 設定 思い入れ

 

続・終物語 2018
<A> <楽>
神谷浩史
斎藤千和
加藤英美里
沢城みゆき
花澤香菜
堀江由衣
喜多村英梨
井口裕香
早見沙織
井上麻里奈
水橋かおり
根谷美智子
★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
続・終物語(書籍)西尾維新
 化物たちに囲まれ、激動の一年を過ごした阿良々木暦(神谷浩史)は無事卒業式を迎える事が出来た。そして翌日。春休みを迎え中途半端な気持ちのまま洗面台の鏡を見た瞬間、鏡の裏側に引きずり込まれてしまった。そこでの暦に親しい人々はみんなどこか普通と違っていた。
 一部を除いて基本的に丸々一年に渡った主人公阿良々木暦にまつわる物語が展開し、テレビ番組
「終物語」で一応の完結を見せた「物語」シリーズ。
 一応阿良々木暦に起こったことを振り返ってみよう。
 春休みに吸血鬼と出会って自分も吸血鬼になってしまう。その後、化物に取り憑かれた何人もの女の子を救うが、その過程で吸血鬼化が進み、自分自身がどんどん化物化していく。
 更に化物化したせいで、精神のバランスを崩しかけ、自分を罰するために忍野扇という化物を作り出してしまい、扇によって何度も命の危機を迎えることになった。
 そしてその連鎖を断ち切るために一度本当に殺されることによって化物部分を地獄に置き、人間として復活。
 卒業式当日に自分をここまで追い詰めた忍野扇も全く新しい人間として生まれさせた。
 これによって出てきたキャラクターは基本的に全員生き残り、無事大団円を迎えた。
 …というところで終わったのだが、そこからちょっとだけ話が続く。
 その「ちょっとだけ」を映画にした訳だが…

 ほんとに
「ちょっとだけ」の話なんだよ。話としては大して盛り上がりもしないし、大きな物語にもならない。軽い後日譚以外の感想が出てこない。
 むしろこれまでのシリーズの作品の方が遙かに盛り上がってたくらいなので、劇場化された本作がテレビアニメの方に完全に負けてるんだよな。これだったらミニシリーズ化させてテレビ放映するくらいにした方が良いくらい。
 はっきり言えば、金を取れるレベルの話ではない。これを劇場にかけるくらいなら、これまでの物語を再編集してダイジェスト版にした方がまだ完成度が高い。
 テレビよりも程度の低いものを劇場で観させられたというのがとてもストレスだ。
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 2017
2017日本アカデミーアニメーション作品賞
<A> <楽>
武内宣之(監)
市川南
大田圭二
岩上敦宏
久保田光俊(製)
大根仁(脚)
広瀬すず
菅田将暉
宮野真守
浅沼晋太郎
豊永利行
梶裕貴
三木眞一郎
花澤香菜
櫻井孝宏
根谷美智子
飛田展男
宮本充
立木文彦
松たか子
★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 中学校夏休みの登校日。島田典道(菅田将暉)は登校中に同級生の及川なずな(広瀬すず)を見かける。その寂しげな様子が印象に残った典道だが、その後プール掃除中になずなの前で同級生の安曇祐介と競泳対決をすることに。競争に勝った祐介がなずなに花火大会に誘われた事を告げられた典道は複雑な思いを抱く。しかもなずなが母の再婚に伴い転校する事を知ってしまう。
 岩井俊二監督による『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993)のアニメーションリメイク作品。
 オリジナルである岩井俊二監督版は、たまたまテレビ録画した奴で観ていたのだが、流して眺めていたら、途中で面白さに気づいて最初から観直したくらいの作品で、非常に面白いもの作る監督だと感心させられたものだ。
 その面白さの最大の理由は途中で突然話がループするという意外性であり、だからこそ前知識なしのフラットな状態で観てこそ面白い作品でもあった。
 対してそのリメイクと言う事は、オリジナルで物語は分かってるため、大半の視聴者はループになる事が前提となる。これは最大の売りを封印してのことであり、新鮮さがないという逆境で作られた。
 その逆境を逆手に取る事が出来れば本作の意味はあった。だけど残念ながらそれも叶わず終わってしまった感じだろうか?
 オリジナル版ではやり直しは一回きりで、理由もよく分からない。だからこそ間違ってはいけないという緊張感があったのに、間違ったなら何度でもリセットしてやり直せば良いという安直なループものにしか見えなくなった、緊張感の欠片もない。
 これってオリジナルが好きな人にとっては、馬鹿にされた気分にさせられるだろう。

 それならそれで初見の人に優しければ良かったのだが、その配慮にも欠ける。
 勝手な推測だが、本作が劇場化されたのは昨年の『君の名は。』(2016)の大ヒットに負うものだろう。年若い男女の淡い恋愛体験にSF風味を加える事でぴりっとした作品になるだろうという予測がそこにはあり、そのためにありものの素材として選ばれたのが本作のループ作品。傑作としては押井守の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)や細田守監督の『時をかける少女』(2006)、本作の総監督である新房監督の『魔法少女まどか☆マギカ』が挙げられる。それなりに傑作は多いが、全部かなり繊細なつくり方をしている上に、
傑作の後発だけに、大ざっぱな作りだと失敗する。そしてその辺の配慮は全くされていない。さすがに脚本大根仁では荷が勝ちすぎか?
 出来としては『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)のパクリ以外の何物でも無い。主人公がループするのは本当に失敗を修正するためになんども同じ一日をやり直してみただけ。しかも固定化された時間軸上を進むため、やり直す度に着実に良い結果に近づいていく。いつかそのうち「理想的な未来」にたどり着く事が分かっているため、全く意外性がない。
 ループというのが最大のひねりだが、既に手垢が付いた設定だけに、ここからもう一歩踏み出して新しい物語を見せて欲しかったのだが、期待外れ。

 演出においては、いかにもシャフトっぽい演出が多数あり、安定して観られるのだが、逆に言えば、これも新味が無く、いつものシャフト作品、引いて言えば新房作品を観てるだけというレベル。

 決して悪い作品とは言いたくないのだが、いかんせん物語は単純で、設定が悪く、演出も普通。劇場用アニメとして作るにしてはちょっとお粗末。金を出させるにはそれなりの売りが必要だよなあ。これだったら先日テレビスペシャルでやった「終物語」を劇場再編成してやった方が面白かったんじゃないか?
傷物語〈I 鉄血篇〉
<A> <楽>
神谷浩史
坂本真綾
堀江由衣
櫻井孝宏
★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語
2013日本アカデミーアニメーション作品賞

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虚淵玄(脚)
悠木碧
斎藤千和
水橋かおり
喜多村英梨
野中藍
加藤英美里
阿澄佳奈
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 見滝原中学校に通う4人の女子中学生女子。鹿目まどか、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子は見滝原町に夜な夜な現れるナイトメアという超自然的存在と戦う魔法少女として活動していた。そんな見滝原中学に暁美ほむらという少女が転校してくる。同じ魔法少女であることが分かった5人は、それから一緒にナイトメア退治を続けていくのだが、その活動に違和感を覚えるほむらは、この町にある謎を暴こうと調査を開始する…
 日本のアニメーションには伝統的に「魔法少女」というジャンルが存在する。これはおそらく多数を占める男の子向けアニメに対して女の子向けのアニメがあっても良いじゃないか。という立場から作られたもので、アニメーションが男の子のためにだけ作られている訳ではないという、ある種カウンターとして作られたのではないかと思っている。
 ただ、発端はそうだったとしても、一定数の視聴者を得る事が出来たし、変身アイテムが商業的に成立するようになり、玩具の売上のためにも作られていき、更にその後いわゆる萌えの概念と共に、小さなお友達のみならず大きなお友達のことも視野に入れて作られるようになってきたのが現代。
 時代時代において、エポックメイキングな番組が作られることで様々に形を変えてアニメは作られ続けている、息の長いジャンルである。

 そんなエポックメイキングな作品の一つとして2010年に一本のアニメが発表された。
「魔法少女まどか☆マギカ」という題が付いたその作品。それまでシュールな世界を作ることで定評のある新房昭之監督と、精神的にきついが面白い物語を書く脚本家虚淵玄がタッグを組んだ作品で、放映前から一筋縄ではなかろうという先行評判もあった。だがもはや飽和状態と思われた魔法少女ものだけに、単なる萌えアニメになるだろうという意見が大多数。私自身は全く注目すらしてなかったし、実際観てもいなかった。
 ところが、これは
とんでもない作品だった。1話2話の放映時なんの話題にもなってなかったのだが、3話放映から大きな転換点を迎えた。放映翌日のネットはまさにお祭り状態で、たまたま覗いたサイトの多くで「まどか」の名前が踊っていた。
 それで急に興味を覚えて1話と2話を大急ぎで観て、問題の3話…
「ああ、なるほどこういうことか」と納得。やはりこのコンビ、一筋縄にはいかん。「魔法少女」と言う華やかなタイトルに対するアンチテーゼをここに出そうとしていたのか!
 と言うことで、以降はきちんと観ることにしたが、話はますます暗く、まさに虚淵脚本の真骨頂へと移行していく。しかしその話のどれもがおもしろい。凄いバランスを取って一本一本が作られていたことがわかったし、物語最後のオチは、それまでの積み重ねあって納得。おかげさまで非常に感心した作品となった。

 …というのがテレビ版の簡単な感想だが、とても興味深い作品だった。だからこそその続編となる本作はとても楽しみにしてた。
 できるだけ情報は遮断していたが、漏れ聞くところでは、テレビを超えるとんでもない物語だとのこと。曲がりなりにもあれだけきっちり終わった物語をどう続編につなげるのか。しかも「とんでもない」って、どんな意味だか。
 そして無事観に行った訳だが…

 はっきり言えば、「とんでもない」で済むような話じゃなかった。なんというか、テレビ版の余韻を全て破壊し、暗鬱たる気分にさせられる。あれだけきっちりと終わったテレビ版を一種の冒涜を持って上書きするような作品に仕上がっている。まさに
『叛逆の物語』の題はぴったりで、『上書きの物語』と称しても良いような作品になってる。

 以降は完全にネタ晴れ全開にさせていただく。

 まず、きっちり終わっていたテレビ版だが、釈然としなかった部分が存在した。それはラストシーン。最後に戦いに赴くほむらの背中から禍々しい黒い羽根が生えていたことだった。あれは何を意味しているのか、ネットでも色々意見は出ていたようだが、多分あれは意味はなく、含みを持たせた終わり方をさせたかっただけだろうと言うのが大方の意見だった。
 そしてこの部分、ひょっとしてそれが劇場版で明らかになるのではないか。とも言われていたし、私自身も、本作の一番の注目部分はここだろうと思っていた。
 そして、確かにその謎は解明された。
思いもしなかった形で

 物語開始後の前半戦部分も結構意外だった。テレビ版で死んだはずのキャラ、消えてしまったキャラも登場してるし、戦う相手ももテレビ版で出てきた魔女や魔人ではなく、ナイトメアという別の存在。更に言えばテレビ版の魔女までが味方となって登場してるし、テレビ版でそのメフィストフェレスぶりを遺憾なく発揮したキュウべえが単なるマスコットになってる。
 話の中心となるのがまどかではなくほむらの方に移ってるのは多少違和感あり。テレビ版では謎めいた存在であったほむらが、ここでは単なる気の弱い妹のような存在として描かれており、その正体を知ってる身としては、その描写にちょっと首を傾げてしまう。
 ただ、最初は戸惑うものの、ひょっとしてこれはパラレルワールドで、全く新しい物語として作ったのか?違和感はあるが、それならそれで受け入れられる。原色たっぷりの不条理描写も劇場の画面の大きさだととても映える。ドラッグ系作品と考えれば、それはそれでありか。

 これが変化するのが中盤に入ってから。ここは一つの町しかない世界で、この世界に閉じこめられていること、ほむらだけはこの世界のおかしさに気がついていることが分かってくる。そこで謎を探る内にこの世界がどれだけ出鱈目に出来ているのか、そしてやはり本来はテレビ版の世界こそが本当の世界であることが分かってくる。この辺になってくると、単に気の弱いキャラと見えたほむらが、今度はテレビ版さながらの積極的な存在として登場してくる。そして彼女の積極的行動によってこの世界の謎が解明されることとなる。
 ではこの世界が何であるのかと言うと、これは魔女化一歩手前で精神凍結されたほむら自身の中の世界だった。テレビ版最終話で女神化したまどかが望んだのは魔女のいない世界。だがそれは魔法少女を作り、それが魔女化する際のエネルギーを利用していたインキュベイターの目論見とは真っ向対立する。そこでまどかの存在を知ったインキュベイターは、その存在を捕らえる事で自分たちでそれをコントロールしようと考え、ほむらを囮にする。魔女にすることは出来ないため、魔女になる一歩手前で精神凍結して、魔法少女が魔女化する時に現れる“まどか”と呼ばれる存在を捉えようとしたのだ。

 そして確かにテレビ版で、ほむらはキュウべえにまどかの存在の事を話してもいる。その失言をインキュベイターに利用されたことになる。
 テレビ版の最後の謎だったほむらの真っ黒な翼は、まさしく劇場版の直前、今まさに魔女になろうとしていたほむらの姿だったことなのだろう。このあたりバタバタっと謎解きがされていくのは心地良い。違和感が次々と解消され、物語が腑に落ちたものとなっていく。胸の内のもやもやがストンストンとあるべき場所に収まっていくので、一種のカタルシスまで覚えるものだ。

 そしてその事に気づいたほむらは、インキュベイターの桎梏から逃れてまどかを降臨させ、浄化されることになる。

 …で、終わっていれば物語はすっきりと終われる
はずだった。そして、恐らくはこれこそが視聴者の大多数が望んでいたラストでもある。

 だが、これで終わらせないのが新房虚淵コンビの恐ろしさ。と、言うか、実はここまでが話の序章に過ぎず、ここからがこの物語の本題へと移っていくのである。

 ここで明らかになるのは、この状況、実は
ほむら自身が望んでいたものだと言うこと。
 実はほむらの望みはインキュベイターのものと同じ。女神化して認識されなくなったまどかを地上に引きずり落とす事だった。
 彼女にとってはまどかは特別な存在だった。テレビ版でほむらが何度も時を越えてまどかを魔法少女にさせないよう努力したのは、まどかに人並みの幸せを与えるためで、彼女の幸せのためなら自分自身を含めてどんなものも犠牲にする事を厭わなかった。
 では一見ハッピーエンドに見えたあのテレビ版の終わり方は、ほむらにとってはどうだっただろう?まどかに与えたかった平穏な日々を与えることはできず、更に永遠に魔女化しようとしてる魔法少女を浄化し続けねばならない重荷を負わせてしまうことになる。しかも認知外の存在となったまどかを過去に戻って救うことはもう出来ない。つまり、ほむらにとって、実は
あの終わり方は完璧なる敗北だったことになる。
 それをリベンジするにはどうするか?ほむらはインキュベイターを利用することを思いついた。キュウべえにわざわざまどかのことを話したのは、決して失言なんかではない。ああ語ることによって、まどかを捕らえる手助けをさせるためだったのだ。
 そのために自分自身が魔女になろうと、はたまた悪魔になろうとも厭わず、まどかに人間としての人生を与えようとしていたのだ。結局ほむらだけは全くぶれることなくまどかのことだけを思っていたと言うことになる。
 一方、まどかが女神となったのは、そんな精神的な牢獄からほむらを救うためだったはずだった。その重すぎる愛から解放して、ほむらにも普通な幸せを送って欲しいと願って、彼女のことを思って女神となる決意をした。ほむらの命が終わるときには必ず迎えにくることを約束して。見事に二人とも自分を犠牲にしても相手のことを一番に考えていたが、その結果は全く異なることになったわけだ。そしてテレビ版ではまどかの愛が勝利を収めた。ところがこの劇場版において、ほむらの執念はそれをも覆して見せた。それがこの作品の意味だ。
 まどかにとっての正しい行動は、ほむらにとっては敗北。だが延長戦となった本作で、一気に逆転させて見せた。あれほどすっきり終わったハッピーエンドが実は本当の意味ではハッピーではなかったというオチとなった訳だ。

 だからこそ、本作はテレビ版を完全に上書きする話であり、あの余韻を全てぶちこわすためにこそ作られた物語と言って良い。なんとも凄まじい脚本である。たとえそれが
誰も望んじゃいないレベルではあったとしても。

 ただ、劇場版のラストを観てみれば、これは決してもう一つのハッピーエンドになってる訳ではないことは分かるだろう。エネルギーの塊を無理やり人型に押し込めてしまったことで、世界に歪みを生じさせてしまった。このまままどかを普通の人間としてこの世につなぎ止めておけるのか?まどかの一生をほむらは面倒看続けることが出来るのか?どうやらそれは難しそうだ。

 いずれにせよ、この映画の本当の意味合いは、一見、「そう言う見方しか出来ない」ものを、全く逆転させることが出来るということを示したものと考えても良い。そう。かつて富野悠由季が
「Zガンダム」を作ることで「ガンダム」世界を破壊しようとしたように。それ以上に徹底して物語を逆転させて見せた、その力業に拍手を送ろう。

 

魔法少女まどか☆マギカ [後編] 永遠の物語
<A> <楽>
虚淵玄(脚)
悠木碧
斎藤千和
水橋かおり
喜多村英梨
野中藍
加藤英美里
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
魔法少女まどか☆マギカ [前編] 始まりの物語 2012
<A> <楽>
虚淵玄(脚)
悠木碧
斎藤千和
水橋かおり
喜多村英梨
野中藍
加藤英美里
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 監督宮本幸裕

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