読書日誌
2009’7〜9月

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09'09'29 竜の探索 パーンの竜騎士2 (著)アン・マキャフリー <amazon>
アン・マキャフリー (検索) <amazon> <楽天>
 惑星パーン最大の危機に過去から助けに来てくれた竜騎士達。しかし赤ノ星からの胞子襲来は定期的に続いており、全ての竜の洞の竜騎士達は戦い続けていた。だがそれから七巡が巡る内、現代の竜騎士と過去の竜騎士達の間に軋轢が生まれつつあった。その中で民と竜騎士の間に立って苦悩するフ−ラール。そんな時、フ−ラールの弟フ−ノールが他の洞窟の竜騎士に斬りつけられる事件が起こってしまった…
 1巻を読んだのが20年ほど前。2巻は1巻読んだ直後に買って、以来ずっと私の未読本棚の中に。その間7回もの引っ越しを行い、その度移動し続けていた。たまたま今回の引っ越しで出てきたので読んでみたが、成る程あれから読むの躊躇するわけだ。非常に読みにくい。物語そのものは面白いのだが、人間関係がドロドロしすぎていて読んでいてキツイ。
09'09'24 ジパング39
かわぐちかいじ (検索) <amazon> <楽天>
 大和に乗り込み、原爆解体を急ぐ角松ら“みらい”クルー。原爆格納庫までたどり着くことには成功したものの、その解体には時間がかかりすぎた。その間、静観していた米軍が大和に向けて進行を開始していた。あくまで静かに角松を見守る草加だが…
 結構な巻数を使い、ようやく原爆の格納庫まで来たが、それで解体する術を持たないという問題が。これって設定上結構まずい部分ではなかろうか?話は進んでいるようでやっぱり膠着状態に陥っている感じだし、果たしてこれでまだ引っ張るのかどうか。
<A> <楽>
09'09'23 宮本武蔵 八
吉川英治 (検索) <amazon> <楽天>
 一旦は完全に道を変えた武蔵と小次郎。だが、運命は決闘という形で二人を再び結びつけることとなる。それぞれに背負うものを持ちながら、剣を交えずにはいられない、二人の運命は…
 最終巻。これまで武蔵が残してきた様々な出来事がきちんと収斂していき、更に小次郎も新しい道を見つけて落ち着いたところで最後の巌流島の戦いとなる。著者の精神の変化なのか、1巻と8巻では随分文体が変わっているような気がするのだが、こういう終わり方をするとは思えなかった。
 そうそう。物語の最後でこれがあったね。「波にまかせて泳ぎ上手に雑魚は歌い雑魚は踊る。けれど、誰が知ろう百尺下の水の心を水の深さを」…押井好きだったら分かる台詞だけどね。
宮本武蔵〈8〉
09'09'22 PLUTO プルートウ4 (著)浦沢直樹 <amazon>
浦沢直樹 (検索) <amazon> <楽天>
 日本に現れた巨大竜巻の中に入り込んだアトムが活動を停止した。騒然とする社会。しかし、ロボットに関係する人物の殺害はなおも続いていた。ゲジヒトはその中で有力な手がかりとして旧ペルシア王国の最高指導者ダリウス14世という名前を見つけ出す。
  アトムの死。という衝撃的なオープニングから始まるが、アトム自身は完全に姿を保っており、単純に動かなくなったというのが正しい。そしていよいよ天馬博 士の登場となる。まだここでは顔を見せただけ。という感じだが、アトムのことを「失敗作」と言いのける天馬は、これからのキー・ポイントとなっていきそうだ。
PLUTO 4
09'09'20 宮本武蔵 七
吉川英治 (検索) <amazon> <楽天>
 健の道を究めることを求め、士官を考えずに半ば引退の身の上の武蔵と、念願叶い、高禄で細川家に召し抱えられる小次郎。二人の運命は一旦は離れたかのように見えたのだが…
 最終巻前になり、話は既に武蔵と小次郎自身の話と言うより、それぞれが進むべき道へと話が移っている。これまで単に小生意気な青年だった小次郎は、その腕に見合った場所に召し抱えられることで、落ち着きを増し、一方の武蔵は迷いつつも剣が純化していく。対照的な二人の描き方に映っていった感じ。
宮本武蔵〈7〉
09'09'19 野蛮の園3 (著)西川魯介 <amazon>
西川魯介 (検索) <amazon> <楽天>
 野良山高専金属科での狂騒的な日々の中、それでも時は経過していった。先輩達の卒業、そして自身の卒業を経て、彼らが得たものとは…
 これで最終巻となるが、話としては最も完成度が高くはある。ただ一方、1巻の頃に散見できたページ毎のネタ振りが減ってしまい、そっちを読むのが楽しかった分、やや寂しい感じがあり。少なくとも終わり方に関してはすっきりしていたので、それはそれで良いか。
野蛮の園 3
09'09'17 ワングの逆襲 宇宙一の無責任男3
吉岡平 (検索) <amazon> <楽天>
 深刻化するラアルゴン軍との戦いに、地球連邦は唯一の連戦連勝男タイラーを中将に昇格。更に超弩級戦艦“信濃”の建造を開始した。だが完全コンピュータ制御の信濃は模擬戦中、なんと自我を持ってしまう。一方、ラアルゴンの反逆者ワングは暴走した信濃を手なずけることに成功する。タイラーに恨みを持つワングと信濃は…

 前作が外伝っぽい話だったが、今巻は通常の話に戻る。何とこれまでトントン拍子に上り詰めたタイラーが二等兵に降格という話で、タイラー絶体絶命の危機が描かれていく…のだが、肝心の主人公がいつもの通りなのだが。
<A> <楽>
09'09'15 宮本武蔵 六
吉川英治 (検索) <amazon> <楽天>
 江戸に一旦着いたものの、考え直した武蔵はそのまま旅を続け、ある平原に庵を結ぶ。そんな時に出会った一人の少年伊織を弟子にし、そこでの農村暮らしを続ける事となる。一方、江戸では武蔵の顔なじみ達が集結し始めていた…
 いくつもの人間模様が江戸を舞台に描かれていく。そんな中で武蔵は直接の弟子となる伊織と出会い、そこで剣から離れた修行に入っていくことになる。
 ところで私のHNの庵だが、実は元々“伊織”とする予定で、それはこの伊織が元ネタだったのだが、これだと女性と間違えられる可能性あったので、“庵”とした経緯がある。古い想い出だ。
宮本武蔵〈6〉
09'09'14 PLUTO プルートウ3 (著)浦沢直樹 <amazon>
浦沢直樹 (検索) <amazon> <楽天>
 ロボットと共存している社会。しかしその背後では強烈なロボット排斥運動もまた起こっていた。3年前にゲジヒトに兄を殺されたと思い込むアドルフは、ロボット排斥運動KRに属し、ゲジヒトを抹殺する機会をうかがっていた。
  現在まで破壊されたロボットは3体。そして残った4体の内、最後の一体が登場。エプシロンというそのロボットは強力な破壊力を持ちながら、平和主義を貫い ている。そんなロボットの登場と、徐々に明らかになっていくプルートウの真実。登場人物が一人一人ピースとして埋まりつつある感じ。
PLUTO (3)
09'09'12 宮本武蔵 五
吉川英治 (検索) <amazon> <楽天>
 一乗寺下り松の決闘に勝利した武蔵。だが戦う事の虚しさを覚え、お通と城太カを連れて今度は江戸へと向かうことにする。だが運命のいたずらで再びはぐれてしまう三人。三人は再び逢うこともあろうと、それぞれ江戸へと向かうこととなるが…
 出会い、別れ登場人物が増えていく中、様々な絡み合いを見せていく人間模様。一乗寺下り松の決闘と、お通と結ばれることがなかったことを経て、武蔵も成長していく。今巻はその過程と言ったところだろうか?
宮本武蔵〈5〉
09'09'11 三惑星連合軍 (著)E・E・スミス <amazon>
 二つの銀河の衝突により、それぞれの銀河を代表する二つの文明が接触した。双方精神生命体で、片や自分たちを最強とし、それを脅かすものはことごとく排除。更に混乱の種を撒くエッドール。片や宇宙生命体の進歩のために働き続けるアリシア。二つの文明は自分たちの願いを叶えるために人類の進歩を促していった。エッドールは自らの手足として宇宙を混乱に導く道具として、アリシアはレンズマンと呼ばれる進化体を作り出すために。
 本作が著者によるレンズマンシリーズの最終巻となる(他の作家達により、シリーズは今も続いているらしいが)。前巻でエッドールを滅ぼして決着は付いているので、今巻はその前史が描かれる。アトランティス、ローマ、アメリカ、そして三惑星連合…いくつもの時代を貫いての代理戦争が描かれる。ただ全般的に設定の関連が薄いのが残念。ところで考えてみたら、前巻読んでからもう15年以上経過してるんだな。記憶も結構欠落してた。
09'09'10 遠いうねり グインサーガ127
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 首尾良くミロクの聖地ヤガに入ることが出来たスカールとヨナ。しかしそこはヨナが考えていた聖地とは趣が大きく異なっていた。その違和感の出所がなんであるのか探りを入れる二人。一方、息子イシュティがヤガにいると睨んだイシュトヴァーンも又、軍勢を引き連れヤガへと向かおうとしていた…

 著者急逝の前に書かれた話。思ったよりも春香にヤガの話が長引いている。しかし、この巻で重要なのは、噂でケイロニアの上空に巨大な顔が出た。という描写だろう。これは外伝の1巻に出てきた事なので、ようやくここまで来て話が追いついたと言う事になる。しかし何というタイミングで死んでしまった事か。
<A> <楽>
09'09'07 PLUTO プルートウ2 (著)浦沢直樹 <amazon>
浦沢直樹 (検索) <amazon> <楽天>
 日本で国際ロボット法の発案者が殺された。犯人の手がかりが見つからないことから、これもロボットの仕業かと思われた。捜査に携わるゲジヒトはそのデータをアトムという少年方のロボットへと渡し、アトムは捜査を引き継ぐことになった…
  ロボットおよび人間の破壊者の正体は未だわかっていない。ただ、アトムもゲジヒトもその破壊リストに載っているということ、そしてゲジヒトは自分でも知ら ない何らかの記憶が眠っているということがわかってきたところ。表題のとおりプルートウが鍵を握っているのは確かだが。
PLUTO (2)
09'09'06 ペイチェック (著)フィリップ・K・ディック
フィリップ・K・ディック (検索) <amazon> <楽天>
 著者による短編を再編成した短編集。「ペイチェック」「ナニー」「ジョンの世界」「たそがれの朝食」「小さな町」「父さんもどき」「傍観者」「自動工場」「パーキー・パットの日々」「待機員」「時間飛行士へのささやかな贈物」「まだ人間じゃない」を収録する。

 時間順に約20年の時間を通して書かれたものを収録している。時間軸に従うと、徐々に著者の作風が壊れていくのが分かってくる。特に前半はSFマインドに溢れた設定重視に、中期はディストピア風、そして後期は時間と空間をねじ曲げて、なんか訳の分からないものに。ただ、どの時間軸においても、映画になりやすいものばかり。なるほどディック原作の映画が多いのは頷ける。
ペイチェック
09'09'05 かえらざるとき A君(17)の戦争2
豪屋大介 (検索) <amazon> <楽天>
 訳の分からぬまま魔王軍総帥にされてしまった小野寺剛士は、それでもなんとか緒戦を引き分けることが出来た。だが魔王軍ランバルド軍双方とも国力疲弊状態でなし崩し的に休戦となった。そのお陰で今度は国力再建の激務を与えられてしまう剛士。そんな中、ランバルドの放つ遊撃隊が魔王領を混乱させていく…
 あっけなく休戦状態となり、派手さは全くなくなってしまったのだが、その分国のあり方のリアルさは増している。実際1巻よりもこちらの方が面白い。休戦状態って、実は私のツボだったりするけど。
新装版A君(17)の戦争2
09'09'04 PLUTO プルートウ1 (著)浦沢直樹 <amazon>
浦沢直樹 (検索) <amazon> <楽天>
 ロボットと人間が共存する社会。三原則を守るロボットは人間を傷つけることができないはずが、一人のロボット法擁護団体員の死にかかわった形跡があった。優秀なロボット刑事であるゲジヒトがそのなぞの究明に当たるが…
  手塚治虫の遺志を継ぎ、それぞれの出版社が手塚作品のリメイクを、各々漫画家に任せて描かせた企画の一本で、小学館は著者による「鉄腕アトム」のリメイク となった。その数あるエピソードのうち、「地上最大のロボット」をモティーフに独自に描き上げた作品の第一巻。ここではアトムは一瞬だけ登場するだけで、 基本はゲジヒトというロボット刑事が主役として、それ以外にロボットにまつわる叙情的なエピソードと、その死を描いている。しかし、よくこんなアイディア があったもんだ。かなり感心できる。
PLUTO (1)
09'09'03 宮本武蔵 四
吉川英治 (検索) <amazon> <楽天>
 兄の吉岡清十郎に続き弟の伝七郎までも果たし合いで斬り殺し、武蔵は吉岡一門から恨みを買ってしまう。武蔵に対し吉岡一門が指定したのは一乗寺だった。そこに罠が張られていることを知りつつ、一人決闘乗へと向かう武蔵店
 いよいよここでかの有名な一乗寺下り松での戦いが描かれていく。ただ、作品としては決闘そのものよりもそこに向かう武蔵の心中であったり、そんな武蔵を追う城太カとお通、そして何かと突っかかっていく佐々木小次郎との会話が中心になっている感じ。武蔵のみならず、小次郎も又、運命の糸車に操られて登場している。
<A> <楽>
09'09'02 宮本武蔵 三
吉川英治 (検索) <amazon> <楽天>
 宝蔵院から生還した武蔵は、かねてからの約定通り吉岡一門との立ち会いに臨む。兄の吉岡清十郎を破った武蔵ではあるが、その心は晴れなかった。剣の道とは一体どこにあるのか。武蔵の旅は続く。同時に武蔵を慕うお通と城太カ。そしてそんな武蔵を冷ややかに見つめる目もあった。
 武蔵の修行の本格的な始まりと、最初の強敵とも言える吉岡一門との戦いの開始となった。同時に武蔵にとって終生の好敵手となる佐々木小次郎が本式に登場。ここに描かれる小次郎は本当に単純な子供のようなもので、これまで私が読んだり観たものとは随分異なってる。これがオリジナルのはずだから、むしろこれを色々変えているんだろうな。
<A> <楽>
09'08'29 異人たちとの夏
山田太一 (検索) <amazon> <楽天>
 妻と離婚したばかりのヴェテランシナリオライター原田は、ある日生まれ故郷の浅草で死別した両親そっくりの夫婦と出会う。気さくな二人に誘われるまま、ついつい通ってしまうようになった原田。そんな時、同じマンションの住民で、原田の恋人となったケイは、二人と会わないように。と懇願する…
 既に映画の方は観ているが、少しだけ現実から離れた、ちょっと不思議な物語。ホラーのようなファンタジックな作品。改めてこの作品だからああいった映画になるわけだな。妙に納得。
<A> <楽>
09'08'27 天食
泉昌之 (検索) <amazon> <楽天>
 食を求め、孤高の荒野を彷徨う様々な主人公達を描いた短編集。デビュー作「夜行」の実質的な続編「天食」と、現代に生きる野武士「食い改め候」、「逆流」、「ブギ・ウギ・オヤジ」、「ブレーマン・ザ・自由業」、「便急便」、「スキヤキ食いてぇ〜」を収録する。
 原作の久住昌之の方は「孤高のグルメ」などで最近又脚光を浴び始めているが、二人が揃って「泉昌之」の名前で新刊が出るのは実に13年ぶりだとか。そう言えば「ダンドリくん」で終わってたのかと思ってたのだが、しっかり復活していた。作品は全く変わってないところが妙に安心。やっぱり好きだわ。この作品。
<A> <楽>
09'08'24 女が映画を作るとき
浜野佐知 (検索) <amazon> <楽天>
 いわゆるピンク映画業界に籍を置き、300本を超える成人映画を監督してきた著者が、自主製作で作り上げた二本の映画『尾崎翠を探して 第七官界彷徨』と『百合祭』の制作の苦労と、この映画によって得たものについて綴ったエッセイ風作品。
 今や女性の監督は珍しくなくなってきたとは言え、ほぼ間違いなく日本で最も多くの映画を監督した(しかし表に出せるものはほとんど無い)女性監督である著者が語る、日本映画界の変遷。これまでがいかに女性監督に門戸を閉ざしてきたのか、その中で苦労し続けてきた監督の姿がここにはあった。
 後、80年代に世界中で作られてきたゲイ&レズビアン映画祭が今、どのようになってきているのかが分かったのも良い。時代は色々な意味で移っていくものだな。
<A> <楽>
09'08'23 モンゴル紀行 街道をゆく5
司馬遼太郎 (検索) <amazon> <楽天>
 著者による紀行文の第5巻で、今回は日本からシベリアを通り、モンゴルへと向かう、その間に出会った物事を通し、この国と日本の関わりと、自分の思いを語る。
 著者はかつて陸軍だったとのことで、対ソ戦線にはかなりの思いを抱いている。そんな事もあって叙情性たっぷりに書かれているが、その合間合間に鋭い考察が入るのがやっぱり著者らしいところ。モンゴロイドである日本人のルーツはモンゴルにあるという話もあるが、これを読んでみる限り、体質以外ではかなり違いが多いようにも見受けられる。
<A> <楽>
09'08'21 まもるべきもの A君(17)の戦争1
豪屋大介 (検索) <amazon> <楽天>
 天坂市にある高校に通う小野寺豪士は、見かけはぱっとしない存在だったが、ただ一つ自分が生き延びるためにはどんな卑怯な手もためらいなく使える特殊な能力“怨念増殖回路”を持っていた。そして自分を苛めているグループを密告や法的手段を利用して完全に壊滅させたその日、何者から呼ばれる声を聞く。そして次の瞬間、見知らぬ土地へと飛ばされていた。そこで豪士はなんと“魔王”と呼ばれる存在となっていた…
 よくある異世界トリップの話なのだが、意外にも読み進める内にどんどん面白くなってくる。ラノベはとっかかりの痛々しさで読みにくいのだが、これはその点を上手くクリアしているようだ。かなり好みの作品。
<A> <楽>
09'08'19 ディープグリーン2
佐々木淳子 (検索) <amazon> <楽天>
 舞の夢に突然現れた少年リュオン。しかし彼の登場によって舞の周辺の人々も、舞と同じ夢を見るようになっていった。命の危険さえ伴うその悪夢は何故舞にやってくるのか。そして記憶を失ったリュオンの真実とは…
 ダークグリーン続編の第2巻。1巻の方はそれでもかなりノスタルジーで読めたのだが、2巻になると、流石に全然変わってない著者の絵のタッチに、少々当てられるし、進んでいるのかいないのか分からない物語展開がきつい。いや、元々そう言う物語だったと言われればその通りではあるんだけどさ。
<A> <楽>
09'08'18 とり・みきの大雑貨事典
とり・みき (検索) <amazon> <楽天>
 漫画家の著者が日常触れていて、どこか違和感のあるアイテムを一つ一つ取り上げ、その考察を五十音順に綴ったエッセイ集。
 本作の刊行は1992年だそうで、その時点での時事ネタを含んだエッセイになるが、やっぱり著者の視点は面白い。普通に生活していたら、そのまま通り過ぎてしまうような事から謎を紡ぎ出し、変化球で考察してる。しかし、ここで何度も言及されているSF作家とは当然火浦功の事で、この頃は少なくとも定期的に本を書いていたんだな。なんか一番時代を感じたのはこの事だったか。
<A> <楽>
09'08'17 エデンの炎 下
ダン・シモンズ (検索) <amazon> <楽天>
 マウナロア火山が火を噴き、ハワイには次々と怪異が起こり続けていた。そしてその出来事はエレノアの大伯母の手記と全く同じで、実はハワイの神々同士の戦いに、人間が必要とされていたのだ。エレノア、エレノアと友となった女傑のコーディ、ホテル王のトランボが課せられた運命とは…

 ホラーと思ったら、伝奇性の高いストレートな冒険もので、読みやすい一方、ストレート過ぎて読み応えはなし。もう少しひねったものを期待していたのだが…
<A> <楽>
09'08'11 宮本武蔵 二
吉川英治 (検索) <amazon> <楽天>
 逐電した平八の事を伝えるため、故郷宮本村へと戻った武蔵。しかし、平八の母お杉の裏切りに遭い、とうとう捕らえられてしまう。武蔵のことをよく知る沢庵と、平八の許嫁お通は、そんな武蔵を助けようとするが…
 「たけぞう」が「むさし」となる過程を描いた話で、野生児が剣豪となるためには3年間の読書三昧が必要だったという事が描かれていく。1巻時点の武蔵では話がつながらないため、急激な成長をさせる必要があったのだろう。なるほど著者が武蔵という存在を通して若者を描く。と言っていたのはここにあったのか。あと、ここでお通と武蔵の間の関係が固定化され、武蔵の弟子城太郎の登場もあり。
<A> <楽>
09'08'07 月光条例5
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 月光条例の執行者月光とハチカヅキ。だがそんな二人の前にもう一組の月光条例執行者が現れた。“長靴をはいた猫”のイデヤ・ペローと、そのパートナーである“トショイイン”こと工藤。ハチカヅキを「違法執行者」と断定するイデヤに動揺するハチカヅキ…
 今回は前巻に続き「うりこひめとあまのじゃく」「ブレーメンの音楽隊」「おむすびころりん」が展開。ライバルキャラの登場となるが、ちょっと唐突な登場って感じ。テコ入れだろうか?話自体は相変わらず熱く、見応えがあるのでそれで良いんだけど。
 ところで、新登場のトショイインは明らかに著者とは違うタッチで描かれることがあるけど、それだけ個性のあるアシスタントが入ったのかな?
<A> <楽>
09'08'06 宮本武蔵 一
吉川英治 (検索) <amazon> <楽天>
 関ヶ原決戦に同郷宮本村の平八と共に豊臣方について一旗揚げようとでかけた武蔵(たけぞう)。その時、圧倒的な合戦の力に圧倒された武蔵。一夜の宿に頼った家の母親お甲に誘惑された平八を残し、一人宮本村へと帰ってくる武蔵だが…
 著者による前書きで「あまりに誤られていた武蔵像を是正する」と書いてはあるのだが、出来たものは何のことはない完全な剣豪小説で、それ以上でもそれ以下でもない。しかし、読み物としては確かに最高に面白い作品であることは間違いない。一旦読み始めると、止まらない。
<A> <楽>
09'08'04 エデンの炎 上
ダン・シモンズ (検索) <amazon> <楽天>
 大富豪のパイロン・トランボがハワイに持つ巨大ホテルマウナペレ・リゾート。トランボはこれを日本人に高値で売りつけようとしていたが、半年前からここでは行方不明者が続発していた。丁度そんな時、ホバーリン大学教授のエレノア・ベリーは、活性化している火山を見るためハワイへとやってきた。だが、彼女の到着と時と同じくして更なる異変が…

 著者による超常的な冒険小説ということになるが、どっちかというとホラー性が高い作品。上巻の本巻は今のところ種まきと言ったところ。
<A> <楽>
09'08'01 時空道中膝栗毛
小松左京 (検索) <amazon> <楽天>
 江戸の長屋に住む与太八の部屋の床下にぽっかり開いた穴。与太八と兄貴分の牙次郎は、この穴に何があるかと入ってみたところ、何とこれは次元に開いたタイムトンネルだった。1970年代の日本を皮切りに、次々と違う時代、違う場所に飛ばされることとなる二人だが…

 江戸時代の人物が時空を旅する。と言う不思議な設定の作品で、卑弥呼の時代、三国志の時代、西遊記の時代、千一夜物語の時代と、話があちこちに飛びながらの珍道中。設定そのもので言えば「果てしなき流れの果てに」のギャグ編っぽくもあるか。しかし何より著者の知識量は半端じゃないので、その蘊蓄話がとても面白い。いまから40年も前に書かれたというのに、全然古く思えないところがすごい。
<A> <楽>
09'07'29 からん2
木村紺 (検索) <amazon> <楽天>
 望月女学院での柔道部生活が始まった。だが才能のある雅や、負けず嫌いの京を疎ましく思う先輩連中との確執。更に裏の生活を持つらしい京の私生活の謎など、前途は多難。そんな中、日曜日に町に出た聖と雅は、舞妓姿の京と偶然出くわす…

 柔道部の物語なのだが、むしろ京都という町の裏部分を描いた作品っぽい。柔道部の方も割と手を抜いてないので、かなり風呂敷は広がっている。果たしてこれ、きちんとまとまるんだろうか?まあそのまま読み続けることにはなるだろうけどね。
<A> <楽>
09'07'26 恐怖の映画術 ホラーはこうして創られる
鷲巣義明 (検索) <amazon> <楽天>
 いわゆるJホラーのブームは終わったが、この時代に腕を振るった監督達は今も次々と新しい恐怖を求め、映画を作り続けている。そんな監督達に対して著者が行ったインタビューとJホラーの歴史的系統を考察する作品。
 前半部分のインタビュー記事ははっきり言ってしまうと面白くもなんともなし。著者の方が答えを用意し、監督を誘導しているので何を言わせようとしているのか明確すぎ。後半のデータベース的なホラーの流れの方が面白い。著者のレビュー記事は、褒めることしかしてないので、まあまあと言ったところか?
<A> <楽>
09'07'23 地球帝国
アーサー・C・クラーク (検索) <amazon> <楽天>
 タイタンが水素補給地として開発され、約80年が経過した。その経営者であり実質的なタイタンの支配者であるマルカム家は代々クローン人間による同一人物が務めていた。その3代目ダンカンは地球に行く事となった。友好使節として、そして4代目のクローンを作るのが目的だが、実はダンカンは、昔タイタンに来た女性キャリンディと出逢うことこそが本当の目的だった…
 外から観たら地球はどうなるのか。という観点で描かれた作品で、なかなか新鮮な思いで読むことが出来た。一方物語はとてもあっさりしているため、やや消化不良の感あり。でもやっぱりクラークは良いなあ。
<A> <楽>
09'07'22 喰いしん坊24
土山しげる (検索) <amazon> <楽天>
 喰輪杯決勝の最後まで残ったのは満太郎と美麗の二人。10キロの食材を喰いきり、更に5キロもの中華料理を前に、二人の戦いが開始される。その苦しさの中、満太郎は客席にハンター錠二の姿を見る。
 最終巻となった本巻は、喰輪杯の決着と、最後のハンター錠二と満太郎との対決が描かれる。お互いの大食い界での生き残りを賭けた対決は、決着が描かれないままだが、ラストシーンでどちらが勝ったかが分かる小憎らしい作りになっている。なんだかんだ言って全巻楽しいまま終わってくれた。
<A> <楽>
09'07'20 度胸
ディック・フランシス (検索) <amazon> <楽天>
 音楽家一族に生まれながら障害物競馬の騎手となったロバート・フィン。彼の眼前で同じ騎手のアートが拳銃自殺した。その事件を皮切りに、同僚達が次々に不幸な目に遭っていった。順調にキャリアを伸ばしていたロバート自身も、ある時を境に何故か乗る馬全てが不調となり、一切レースに勝てなくなってしまう。イギリスの競馬界を舞台にスキャンダルと権力の暗躍を描いた作品。
 競馬を元にしたミステリーと言った風情の作品。物語そのものよりも設定の面白さで読ませてくれる。もう大分前になるのだろうが、イギリスの競馬界の模様が分かったりしてなかなか興味深い。
<A> <楽>
09'07'18 映画の中で出逢う「駅」
臼井幸彦 (検索) <amazon> <楽天>
 映画の中には数々の駅が登場する。時にそれは駅が舞台になることもあり、時にはほんの僅かの描写の時もある。映画でそれら駅がどのように使われてきたか、駅の構造や歴史的な意味合いが映画の中にどのように活かされてきたのか、元鉄道員の著者が解説する。
 流石元ぽっぽや(本人談)と言うだけあって、著者の駅に対する考察は深く、特に構造的なものに関してはプロから観た映画と言った風情があり、含蓄の深い作品だった。異種業者だからこそ分かる映画というのもあるんだな。
 基本的に映画の駅というのは、旅立ちを意味するため、ほとんどは出発シーンがラストシーンに用いられているというのは、成る程と感心。
<A> <楽>
09'07'16 カウント・ゼロ
ウィリアム・ギブスン (検索) <amazon> <楽天>
 サイバースペースの拡大が続いている未来世界。傭兵のターナー、小悪党のアランとつきあっていたマルリイ、サイバースペースにダイブする“カウボーイ”のボビイの3人は、世界の各地で同じ何者からの干渉を受ける。それぞれが“箱”と呼ばれるものに遭遇し、命の危機に見舞われることになる。
 「ニューロマンサー」と同じ世界観で展開する続編と言える話。ただ、「ニューロマンサー」と較べても更に分かりづらく、3つの話の関連や、物語自体が把握しにくいのが難点。結局ラストシーンで前の物語を再構築しないと全体像が分からない。さすがギブスンだよ。
<A> <楽>
09'07'11 はじめの一歩88
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 満身創痍になりながらカウンターにこだわり続ける宮田と、その武器を一つ一つ奪い取っていくランディ。ついに宮田はフットワークも、右ストレートも封じられ、何も手が出せないまま、ラウンドが進んでいった。それに対し、なんの策も取っていなかった宮田の父だが…

 ランディと宮田。どっちが勝っても物語展開には無理がなかったが、結果として宮田の勝利に終わったようだ。さて、こうなると話はどう持っていく事になるのやら。とりあえず世界で宮田と間柴の再戦は確実と思われるけど、一歩の方はどうなるのやら。
<A> <楽>
09'07'08 黒衣の女王 グインサーガ126
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 突如パロに進軍してきたイシュトヴァーンは、突如リンダに求婚してくる。まともにゴーラを相手に出来ぬほど国力が衰えているパロは、とりあえずイシュトヴァーンの入国を受け入れるしかなかった。当のリンダは昔の想い出に流されぬよう必死に自らを縛めるが…

 本当にどうでも良いような話に丸々一巻使ってしまった感じだが、それでもやっぱり読めてしまうのは文章が慣れてしまっているんだろうな。しかし、このつきあいもそろそろ終わりになるか。寂しいものだ。
<A> <楽>
09'07'07 消えた女 彫師伊之介捕物覚え
藤沢周平 (検索) <amazon> <楽天>
 元十手持ちで今は版木彫り職人の伊之助の元にかつての親分弥八がやってきて、娘のおようが失踪したと告げる。弥八の頼みを聞いて独自におよう探しを始める伊之助だったが、その途上で行き着いたのは、思いもかけなかった大事件だった…

 人情時代劇作家と言える著者が、得意の江戸時代を舞台とした一種の探偵もの。この人こういうのも書くのか?と思ってたら、これがシリーズだったと分かる。性的な部分を極力排除しているため、テレビドラマ向きの作品だな。
<A> <楽>
09'07'02 アオイホノオ2
島本和彦 (検索) <amazon> <楽天>
 自分に何が出来るのか悩み続ける焔。なんとか一歩を踏み出そうと、空手を始めたり、同人アニメを手伝ったりするが、何をやってもやはり一歩を踏み出せないまま。その間に恋の悩みも抱え込み、悶々とする焔は、ついにマンガの持ち込みを決意する。

 1作目ほどの痛々しさはないが、少なくとも、何かになろうとあがき続け、それでどんなことでも始めようとするその心意気は良し。と言うか、自分自身を省み、色々考えて何も出来なかった大学時代が凄く恨めしい気にさせられる。
 それにしても、ちょっと羨ましい気がするなあ。
<A> <楽>
09'07'01 オタクバカ一代
村濱章司 (検索) <amazon> <楽天>
 80年代のオタク世界を渡り歩き、GAINAX総務を経てGONZO(現GDH)の立ち上げ。そしてハイクォリティのアニメ作品を企画し続けている著者が、これまで歩いてきた軌跡を、自分なりに持つ映像理論と共に語るエッセイ集。
 数少ないアニメ会社の上場を僅か数年でやり遂げた著者の自伝となっているが、書かれていることは、何のことはないベンチャー事業のたまたま当たった企画を得々と述べているに過ぎず。特に目先に負われる理論だけで自慢話を延々と続けてるだけと言うものか。エッセイとはそんなものと言われればそれまでの話だが。
 本当にたまたま図書館で見かけたので借りて読んでみたのだが、タイミングが良いのか悪いのか、まさにGONZOが上場廃止になったその日に読了。
<A> <楽>