マイ・フェア・レディ
My Fair Lady |
1964米アカデミー作品賞、主演男優賞(ハリソン)、監督賞(キューカー)、撮影賞、音楽賞、美術監督賞、美術装置賞、衣装デザイン賞、録音賞、助演男優賞(ハロウェイ)、助演女優賞(クーパー)、脚色賞、編集賞
1964NY批評家協会作品賞、男優賞(ハリソン)
1964ゴールデン・グローブ作品賞、男優賞(ハリソン)、監督賞(キューカー) |
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アラン・ジェイ・ラーナー(脚)
オードリー・ヘプバーン
レックス・ハリソン
スタンリー・ホロウェイ
ウィルフリッド・ハイド=ホワイト
グラディス・クーパー
ジェレミー・ブレット
セオドア・バイケル
モナ・ウォッシュボーン
イソベル・エルソム |
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人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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言語学者のヒギンズ教授(ハリソン)は下町の花売り娘のイライザ(ヘップバーン)のあまりにも下品な訛り・言葉使いに興味を持ち、友人のピカリング大佐に、自分が教育すれば半年で舞踏会に出られるぐらいの貴婦人に仕立て上げられると豪語し、賭けを始めた。厳しい教授のレッスンに堪えたイライザは見違えるような麗しき貴婦人へ変貌を遂げ、社交界へデビューするが…
1938年に製作された『ピグマリオン』のリメイク作で、元は舞台劇でジュリー=アンドリュースが主役だった(実は本作もそのままアンドリュースに演らせる予定だったのを製作者の意向によって知名度の高いヘップバーンにしたそうだが、皮肉なことにこの年のオスカー女優となったのはアンドリュースだった)。オードリー=ヘップバーン主演の傑作の一つ。彼女の喋り方、物腰、歌などまさしく見事な作品。彼女が演技派女優であることを世に示した。又製作費は1500万ドルと、当時の破格の金額が遣われたが、大ヒットによって軽くペイできたとか(1964年から65年にかけ、『メリー・ポピンズ』(1964)、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)、および本作と、超ロングラン作品が三作も出てしまった)。日本では294日のロング・ランを記録したことでも有名。
ヘップバーンはこんな難しい役を良くこなしたものだと素直に感心できる。イザベラという訛りの強い、気の強い下町娘から後半の貴婦人然とした物腰への変化とギャップは見事なものだし、ミュージカルシーンでの彼女は輝いて見える(歌は吹き替えで、『王様と私』(1956)でデボラ=カーの吹き替えをしたマーニ=ニクソンが歌ってるんだが)…尤も私としては舞台でイライザ役を演じたというジュリー=アンドリュースにも魅力は感じるが…
だけど、なんと言ってもこの作品ではヒギンズ教授役のハリソンが良い(ハドソンは舞台からの続投)。
膨大な知識が頭には詰まっていて、金も地位も問題なし。しかも誰に対しても態度を変えることが無く、傍若無人な態度を崩そうともしない。こんな生き方、格好良すぎる。特に10数年前の私だったら、まさにこれこそ理想的な生き方だった。誰に煩わされることもなく、自分のやりたい研究に没頭し、優雅に生きたいように生きる。素晴らしい(ちょっとマザコン気味なのだけはいただけないけど)。
しかし、ヒギンズ教授がイザベラを拾った事によって彼の人生も転機を迎え、教育することによってイザベラだけでなく、彼も又、変えられていく。実際自分の理論を証明するための実験体としてしか見ていなかったイザベラ。彼にとって一つの作品に過ぎなかった彼女がいなくなった時、本当の自分の気持ちに気付く。いや、正確に言えば、既に気付いていたのに、今までの自分の信念が崩れるのを恐れ、得意の理論を用いて自分を騙そうとし、母の家で再会したイザベラに対し、強がりを言うしかできなかった。
それで我の強い二人は意地の張り合いとなって決裂するのだが、それで家に帰る時の彼の自分に言い聞かせるような強がりの台詞。家に帰ってから、寂しさのあまり彼女の声を吹き込んだ録音機を書ける時の寂しそうな仕草。
最後に彼女が帰ってきた時、帽子を目深にかぶり直して「スリッパを取ってくれ」と言うのだが、この気持ち、良く分かるな。あの帽子の中での表情は安堵感と威厳を崩さそうとしないように必死に押し留める事で、グチャグチャになっていたことだろう。男はそんな顔を見せるべきではない。そんな意思を充分に感じることが出来た。無茶好みだわ。
これがホント、もし10何年か前にこの作品と出会っていたら、多分確実にマイ・ベスト筆頭作品になってたはず。大分年を食ってから、つい最近になって観たわけだが、今観ることが出来たお陰で随分と冷静に、この作品の巧さ、自分の感情をある程度コントロールして観ることが出来たのは良かったよ。
勿論ヘップバーンとハリソンだけではなく、ハロウェイやクーパーと言った脇を固めるキャスト陣も上手く、特にミュージカル・パートでの本当に楽しそうな歌と踊りは絶品。しかし、面白いことに、ヘップバーンは最初のキャスティングではなかったそうだ(事実ここでの彼女の歌声は吹き替え)。元々舞台で演じたジュリー・アンドリュースにオファーが行ったそうなのだが、プロデューサーの意向により、アンドリュースが外されたとか(尚、この年のアカデミー主演女優でオスカーを得たのが『メリー・ポピンズ』のアンドリュースだったというのが皮肉というか…)。主演男優賞を受賞したハリソンはヘップバーンからオスカー像を渡され、彼女と客席にいるアンドリュースの二人に対し、「私の二人のフェア・レディスに心から感謝します」と語る。これは逸話揃いのアカデミー授賞式の名コメントの一つ。
大ヒット間違い無しのこの作品を作ったワーナー・ブラザーズは何と500万ドルと言う破格値で映画化権を獲得した。他の映画会社なら兎も角、ワーナーらしく、エンターテイメント性が強く出ているのが特徴で、大変楽しい作品に仕上がっており、大成功となった。のみならず、映画業界において格下と見られていたワーナーの3本目のアカデミー作品賞受賞作となり、ジャック・ワーナー(4男)はプロデューサーとしてオスカーを手にする。ワーナーにとっても重要な作品となった。
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「スペインの雨は主に平地に降る」
“The rain in Spain stays mainly in the plain.”
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