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ライアン・ジョンソン
Rian Johnson

Rian Johnson
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鑑賞本数 合計点 平均点
書籍
2022 ナイブズ・アウト:グラス・オニオン 監督・脚本
2021
2020
2019 ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 監督・製作・脚本
2018
2017 スター・ウォーズ 最後のジェダイ 監督
2016
2015
2014
2013
2012 LOOPER ルーパー 監督・脚本
2011
2010
ブレイキング・バッド(3rd,5th)
<A> <楽> 監督
2009
2008 ブラザーズ・ブルーム 監督・脚本
2007
2006
2005 BRICK ブリック 監督・脚本
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973 12'17 メリーランド州で誕生

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ナイブズ・アウト:グラス・オニオン
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ライアン・ジョンソン(脚)
ダニエル・クレイグ
エドワード・ノートン
ジャネール・モネイ
キャスリン・ハーン
レスリー・オドム・Jr
ジェシカ・ヘンウィック
マデリン・クライン
ケイト・ハドソン
デイヴ・バウティスタ
★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 2020年。世界がパンデミックに襲われロックダウンが相次ぐ中、億万長者のマイルズ・ブロンは、ギリシャにあるプライベート・アイランドに友人たちを招待し、そこで殺人ミステリーゲームを開催する。ところがそこには招待したはずのない名探偵のブノワ・ブラン(クレイグ)も招かれたと言って現れて、ゲームに参加する。旧知の仲のメンバーで和気藹々としたパーティが行われていたが、そこで殺人事件が起こってしまう。

 2019年に劇場公開された『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』はスマッシュヒット作となり、続編が求められていた。結果としてNetflixがその権利を買ったために劇場公開ではなくネット公開になってしまった。次に劇場に掛かったら必ず観に行こうと思ってたため、ちょっと残念ではあったものの、すぐに観られるので、ありがたく観させていただいた。
 前作『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』はいわゆる倒叙ミステリーを逆手に取ったストーリーで楽しませてくれたが、それに対して本作は通常の探偵作品を使って、敢えて定式を崩した形で展開する。やや邪道な形ではあるが、満足いくミステリー作品として仕上げてくれた。
 本作の特徴としては、ミステリーよりも、奇妙な人間関係から、どう殺人に結びつくのかを紐解く方に力が入っていて、探偵であるブノワもその人間関係の中に入り込んでくるため、一見話が複雑になるが、それを割とすっきりと見せていて、すっと頭に入ってくる謎解きが上手い。その分やや単純なところもあるのだが、映像化する場合、この程度のレベルに抑えたのは正解だろう。その分とんでもない描写も結構あったりして視覚で楽しませてくれている。
 何より本作はブノワの造形が良い。前作では狂言回しのような役どころであまり個性を出すことが出来ず、折角のクレイグの使い方が良くなかったと思っていたが、本作ではその魅力が爆発してる。
 ブノワというのは掛け値なしの名探偵で、本人もそれを自覚してる。そもそもブノワは何かの事件を考えてないと自分の存在意義を見いだせないってキャラで、しかもとにかく傍若無人。探偵として頼りにはなるが、友人には絶対なりたくないというタイプ。まさに名探偵と言った風情が強調されていたのが素晴らしい。一気に魅力が増した感がある。だからブノワを見てるだけでも楽しくなった。これだけで充分面白くなった。
 一作目とは違った意味で魅力に溢れた作品だと言って良かろう。
製作年 2022
製作会社
ジャンル
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原作
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キーワード
ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密
Knives Out
2019放送映画批評家協会アンサンブル演技賞
2019放送映画批評家協会脚本賞、コメディ映画賞
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ラム・バーグマン
ライアン・ジョンソン
トム・カーノウスキー(製)
ライアン・ジョンソン(脚)
ダニエル・クレイグ
クリス・エヴァンス
アナ・デ・アルマス
ジェイミー・リー・カーティス
マイケル・シャノン
ドン・ジョンソン
トニ・コレット
レイキース・スタンフィールド
キャサリン・ラングフォード
ジェイデン・マーテル
フランク・オズ
リキ・リンドホーム
エディ・パターソン
K・カラン
ノア・セガン
クリストファー・プラマー
★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 犯罪小説家ハーラン・スロンビー(プラマー)がマサチューセッツ州の邸宅での85歳の誕生パーティーを行い、息子娘の家族を招待した。皆ハーランの遺産を狙う者ばかりで、気まずい一夜が明けると、翌朝、自室でハーランの喉が切られて死んでいるのを発見された。警察はハーランの死因を自殺と認定するが、正体不明の者が私立探偵ブノワ・ブラン(クレイグ)を雇い捜査を依頼する。ブノワは家族それぞれに聞き込みを行ったが、その中でハーランの健康管理を行っている看護師のマルタ・カブレラ(デ・アルマス)の言動に違和感を覚える。

 『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』で監督を務めたジョンソン監督が次に選んだ作品は純粋な推理作品だった。しかも原作なしのオリジナルという近年では珍しい話に仕上げた。
 一時期ミステリー作品が映画界を賑わせた時代はあったが、それは相当下火になってる。日本では定期的にまだ作られているけど、ハリウッドではほとんど近年の作品の記憶がない。近年で観た推理作品だと、『インフェルノ』(2016)とか『蜘蛛の巣を払う女』(2018)くらいだが、これも純粋な推理じゃなくてアクション作品にもなってる。更に原作なしのオリジナル作品はほぼ無くなってる。
 空白期だからこそ本企画が通ったということなんだろう。よくこんなのがこの時代に出来たと思う。しかし、何というか、すごく観ていて心地が良い。
 映画の楽しみ方はたくさんあるけど、意外性を持つ物語を観るのが面白いというのは確かにあって、それを満足させてくれる最大のジャンルはミステリーだろうと思う。
 特にミステリーでも、映画で展開する作品だと、リアルタイムで事件が進行していくのが楽しい。本作の場合も、視聴者に対しては比較的簡単にハーランの死の真相は明かされるが、その後で丁々発止のやりとりと、現在進行形で起こる殺人事件に、推理劇が展開していく。一つの謎の種明かしは最初に提示されるが、以降に起こる殺人事件や放火事件、それにブランを雇った人物は誰なのかとか、その辺が分からないので、緊張感を持ったまま観ることが出来た。
 強いて言うなら、風呂敷のたたみ方が見事すぎて、あまりにコンパクトにまとまってしまったのが難点というか。オチがあっけないので、もう少し引っ張って欲しかったかな?と言うのが正直な感想だな

 ただそれ以上に本作はヴェテラン俳優が多く出演してるために、その姿を見てるだけで楽しいというのがある。映画好きな人だったら観て損な気にはならないはず。実際これだったら劇場で観るべきだったかと思える出来だった。
製作年 2019
製作会社
ジャンル
売り上げ
原作
歴史地域
関連
allcinema Walker ぴあ IMDb CinemaScape
wiki キネ旬 eiga.com wiki(E) みんシネ
スター・ウォーズ 最後のジェダイ 2017
2017米アカデミー作曲賞、視覚効果賞、音響賞
2017英アカデミー音響賞、特殊視覚効果賞
<A> <楽>
キャスリーン・ケネディ
ラム・バーグマン
J・J・エイブラムス
トム・カーノウスキー
ジェイソン・マクガトリン(製)
ライアン・ジョンソン(監)
マーク・ハミル
キャリー・フィッシャー
アダム・ドライヴァー
デイジー・リドリー
ジョン・ボイエガ
オスカー・アイザック
アンディ・サーキス
ルピタ・ニョンゴ
ドーナル・グリーソン
アンソニー・ダニエルズ
グウェンドリン・クリスティー
ケリー・マリー・トラン
ローラ・ダーン
ヨーナス・スオタモ
ジミー・ヴィー
ベニチオ・デル・トロ
ビリー・ロード
ワーウィック・デイヴィス
ハーマイオニー・コーフィールド
ティム・ローズ
ヴェロニカ・ンゴー
ジャスティン・セロー
ゲイリー・バーロウ
トム・ハーディ
フランク・オズ
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
★★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
シリーズ第7作
 ニューオーダーによる危機を一度は退けた共和軍。だが強大な力を持つニューオーダーに対抗するために最後のジェダイの騎士ルーク・スカイウォーカー(ハミル)の助けが必要だと判断した共和軍リーダーのレイア・オーガナ(フィッシャー)は、レイ(リドリー)にルークの創作に向かわせる。一方、ニューオーダーの大攻勢を前に、残った共和軍は全滅の危機を迎える。
 『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015)から僅か一年弱。まさかこんな短いスパンで続編が観られるとは思ってなかった。それにその間に『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)まであり、本当に矢継ぎ早にスター・ウォーズが作られてる。
 これは親会社であるディズニーの意向が入っているのだろう。恐らくはこれまでのスター・ウォーズのブランドを大切にする姿勢から、逆に量産体制に入ることによってその中で切磋琢磨させる方向へと舵を取ったのだろう。
 そしてまさにそれを象徴するかのように、本作はこれまでのスター・ウォーズ・サガからの脱却を図ろうとするような姿勢を取っている。

 スター・ウォーズの頂点と言えるのはオリジナル版の旧三部作だが、これは監督のジョージ・ルーカスの強い意向を受け、ユングの世界観をベースに世界各地にある英雄譚のフォーマットを用いたものとなった。そのため主人公のルーク・スカイウォーカーは最も新しく誕生した神話の主人公となり、スター・ウォーズも映画を超えた普遍的な物語として受け取られるようになっていった。
 映画として空前絶後の成功例となるのがこの三部作になった。

 その後、その三部作を補完する形で新三部作が作られることとなった。物語としては旧三部作ありで、それを補完することと、前史を作ることで物語に隙間を作り、スター・ウォーズのいくつもの物語を提供する役には立った。
 だからこの新三部作はそれなりに意味は持っているのだが、オチが分かってる物語を無理矢理見せられてる気がしたし、それに当然ながら旧三部作を補完する以外の役割があまりなかった。
 その後旧三部作の後を継ぐ物語が作られる噂は結構あったものの、『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』(2005)から実に10年も経ってようやく『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015)が作られ、最新三部作の幕開けとなった。

 『フォースの覚醒』の評価はレビューを見てもらえれば良いが、演出はとても良いものの、正直
「なんで焼き直す?」というのが疑問点だった。これではキャラを変えただけのリブートに過ぎず、『スター・ウォーズ』(1977)そのもののストーリーをトレースしてどうするんだ?そんな疑問ばかり残る作品だった。

 だが、そこら辺は飲み込むべき所だろうと思ってたし、そもそも前作監督のJJの実力はこんなものだ
(誤解を招く表現だが、JJは最高レベルのトレッキーのため、スター・ウォーズに関しては思い入れがないのが最初から分かってた)
 だから続編である本作こそが本当の意味で新シリーズの幕開けであろうと思ってた。

 さて、それで本作だが、確かにこれは新しい幕開けにふさわしいものと言える。
 本作の新しさとは、
旧シリーズの全否定であること。その一点に尽きる。

 旧三部作の大きな特徴は、前述したとおり、世界各地に残る英雄譚から様々な要素を抜き出して作られていることだった。主人公であるルーク・スカイウォーカーは神に次ぐ英雄として存分にその力を振るい、神話の時代を彩っていった。
 神々の時代は終わり、英雄の時代へ。それが旧三部作の立ち位置となる
(実はこの論理から言うならば、新三部作は「神の時代」を描いていないとおかしいのだが、見事にそれに失敗してる)
 そしてその英雄を描ききった後の話はどうなるのか。

 それは
人の時代へと移ることになる。
 かつて世界に干渉していた神は見えなくなり、やがて英雄もその任務を終えて退場する。そして残されるのは神話の記憶を引き継ぐ人間となる。

 まさにそれを行ったのが本作の特徴だった。
 前作最後にルーク・スカイウォーカーさえいれば今の世界を変えられると言い、レイはルークを迎えに行った。
 だが実際に世界を変えたのは誰だったか?
 それはジェダイでもシスの暗黒卿でもない。カイロ・レンという新しい人間だった。彼は元々はダース・ベイダーの孫として自らも暗黒卿となろうとする野望を持っていたはずなのだが、ダース・ベイダーのリスペクトである仮面を早々に破壊し、新しくカイロ・レンという個人でこの世界に立ち向かおうとする。
 そして彼が選択したのは暗黒支配による統一ではなかった。
 彼が作り出そうとしたものは、神による、あるいは英雄による統一ではない。その時代は終わった。残されたのはより人間的な混乱。カオスの世界だった。その試練として強大な力を持つニューオーダーの指導者スノークを倒し、更に旧世代の異物として最後のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーを殺そうとする。彼が作ろうとしたのは、人
の時代であり、カオスだったのだから
 それを象徴するかのように、本作では英雄は登場しない。英雄に近いとされた二人のうちカイロ・レンは自らが英雄となる道を閉じ、世界を混乱に叩き込む。そしてもう一人のレイは、自分を英雄としてではなく、他の多くの人々と共に戦う一兵士として自らを定めた。
 その結果、より多くの人々が人間としてこの世界に関わるようになっていった。それは前作にも登場したフィンであったり、ポーであったり、そして今回から登場するペイジであったり…英雄とは人間の中から意思あるものがなるものであり、それは誰にでもなり得るものとなっていったのだ。
 既にこの時点でフォースは不必要。正確に言うなら、「フォース」という概念さえ生きていれば良くなった。
 カイロ・レンによってもたらされた混乱。だが人の心にフォースがあるなら平和を作り出していく事が出来る。

 これまでのテーマは悪からの自由という分かりやすいものだった。それに対し、これからは自由という名の混乱状態と、平和的秩序の対立へと移行していくことになる。

 これはスター・ウォーズ・サーガの転換点であると共に、多くの可能性をばらまくことになる。
 これによって、スター・ウォーズの世界は「こうでなければならない」ものから、どんなストーリーも受け入れられるものになったのだ。
 それはより単純なスペースオペラに堕したという一面と、より大きな可能性を秘めた物語になったということになる。

 本作の評価が真っ二つに分かれたのはまさにここにある。
 
旧来からのスター・ウォーズファンにとってみれば、スター・ウォーズ・サーガとはある種固定化された様式美の世界観であり、その枠内で物語は展開して欲しいという願いがある。そう言う人には本作は受け入れられない。神話的意味合いを失ったスター・ウォーズは魂を失ったと思われてしまう。
 しかし一方、スター・ウォーズ世界の広がりを考えるならば、自由物語を作れるようになったと言う事なのであり、当然これは歓迎すべき事なので、諸手を挙げて歓迎する人もいる。
 そんな意味で本作は旧来のファンに対する試金石のような役割を果たしている。
 一応次の作品で一つの幕は下りるだろうが、ストーリー的にはどんどん新しいものが作れるようになったことから、キャラを変え星を変え、いくらでも作れるようになっていく。

 ちなみに私はどうかというと、どっちかというと
わたし自身トレッキーの方であり、スター・ウォーズのファンダメンタリストではないため、この変化は大歓迎である。
 スター・トレックはなんどもストーリーや設定が破壊された上で今も作り続けられているのだ。スター・ウォーズにそれができないわけは無かろう。
タイトル
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LOOPER ルーパー
2012放送映画批評家協会SF/ホラー映画賞、オリジナル脚本賞、アクション映画賞、アクション映画男優賞(ゴードン=レヴィット)、アクション映画女優賞(ブラント)
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ラム・バーグマン
ジェームズ・D・スターン
ダグラス・E・ハンセン
ジュリー・ゴールドスタイン
ピーター・シュレッセル
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
ダン・ミンツ(製)
ライアン・ジョンソン(脚)
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
ブルース・ウィリス
エミリー・ブラント
ポール・ダノ
ノア・セガン
パイパー・ペラーボ
ジェフ・ダニエルズ
ピアース・ガニォン
シュイ・チン
ギャレット・ディラハント
ニック・ゴメス
トレイシー・トムズ
フランク・ブレナン
★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 2044年。この世界では2074年からタイムマシンで送られてくる犯罪者を殺すルーパーと呼ばれる処刑人が存在していた。この時代の犯罪シンジケートのルーパーとして犯罪人を殺しているジョー(ゴードン=レヴィット)は、ある時30年後の自分自身(ウィリス)が送られてきたのを目撃する。本来自分の殺す標的なのだが、30年後のジョーは逆にジョーを傷付けて逃走してしまう。このままではシンジケートでの立場が無くなってしまうため、処刑を完遂すべく、未来の自分の追跡を開始する…
 ここ近年、CGの発達によって大規模なSF作品が台頭してきた。ものすごい予算を使った見所満載の作品は、これはこれで面白いのだが、ぴりっとした良質な低予算SFも結構増えてきていて、特にこういった作品が好きな私としてはこれも嬉しい。
 低予算SFの良いところは、様々なしがらみがないために、物語に社会風刺を入れることが出来たり、アイディア勝負でどんでん返しを効果的に入れることが出来たり、キャラを際だたせる事が出来るなど、利点も多い。見た目がショボくても、映画の質としては大予算作品よりも確実に上をいってると思わせてくれる作品も多い。
 そんな風潮だから、この作品にはかなり期待をしていた。タイムパラドックスを扱ったものは特にどんでん返しを入れやすいし、どんな驚きを見せてくれるだろう?と、かなり楽しみに劇場へ。

 設定面で本作の面白いところは、扱っているのが近未来で、一種のディストピアを描いているのだが、更にその30年先の、更に暗くなっていく未来を描いているというところだろう。このまま世界が続けば、実際こんな世界になってしまうかも知れないって部分も、風刺としては機能してるだろう。最早アメリカ社会は未来に希望がないって部分はかなり気に入った部分。
 科学が進めばみんなが幸せになると言った幻想は既にオイルショックの時点で振り捨てられている。科学が進む事は、本来は平等な社会を作るはずなのだが、逆に貧富の差は広がっていく事が描かれる作品が多い。本作でも、タイムマシンが開発されたとしても、やっぱり人々は不幸になってしまう。まずはその事を丁寧に描いているのが好感。そして色々不幸なことが起こるとしても、それを見ないように生きている主人公たちのやるせない心情もちゃんと出てきている。

 この辺はとても面白いが、そこで色々設定上の問題が出てくる。
 LOOPERは30年後の自分自身を殺す(ループを閉じる)ことによって、LOOPERとしての任務を完了する。とても皮肉で面白いが、それって効率的には悪い方法なのでは?実際今殺そうとしているのが自分自身であることを伝達できる方法はあるし、それで逃がしてしまうことも確率的にはそう低くはない。タイムパラドックスについてあれだけ慎重にと言っている割にはいい加減なシステムだ。
 それにそのタイムパラドックスについてもかなりいい加減な設定になってるような?例えば最後に主人公が自殺したら、未来の自分も消えてしまう訳だが、そもそも現在の自分と未来の自分は別人格になるため(時の流れが違うから)、主人公が自殺しても未来の自分は残るのでは?という気もするし、もしリンクしてるとしても、最後に自殺がわかっていたら、未来の自分は存在し得ない…書いていて自分でも分からなくなってきたが、これが“パラドックス”と言われる所以なんだけど。

 それで物語なのだが、これもなんか微妙な感じでもある。なんというか、元々が未来の自分が現れ、それを殺し損ねたので、それをどうするか?と言うのが物語の骨子だったと思うのだが、いつの間にかそれが超能力を持つこども、シドを守る話になってる。これはこれで立派な物語なのかもしれないけど、大きな風呂敷をハンカチ以下に畳み込んでしまったような、そんな感じがしてならない。後半の設定はヴァン・ダムの『ボディ・ターゲット』かと思った(更に言えば『シェーン』(1953)かも?)
 未来の強力な超能力者の芽を封じるってのも、実際に未来が変わったかどうかも分かってないし。そもそもその未来の超能力者が“悪”と断定していること自体もおかしい。確かに未来のジョーがこの時代に送られてきた場合は、シドは悪魔になるけど、そうではない本来の未来では、犯罪組織を統合してループを閉じる正しい行いをしている人物という可能性もある。そもそも今、あのガキを放っておいた場合、やっぱり悪人になってしまうという、その可能性のことは放って置かれてしまったのでは?
 その辺、どうにも釈然としない部分あり。

 昔のSF映画と較べると格段に出来は良くなってる。ただもやもや感は最後まで残った。
製作年 2012
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