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テレンス・マリック
Terrence Malick

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鑑賞本数 4 合計点 15 平均点 3.75
allcinema Walker ぴあ IMDb CinemaScape
wiki キネ旬 eiga.com wiki(E) みんシネ
書籍
2020
2019 名もなき生涯 監督・脚本
2018
2017
2016 ボヤージュ・オブ・タイム 監督・脚本
2015 聖杯たちの騎士 監督・脚本
2014
2013
2012 トゥ・ザ・ワンダー 監督・脚本
2011 ツリー・オブ・ライフ 監督・脚本
2008
2007
2006 アメイジング・グレイス 製作
2005 ニュー・ワールド 監督・脚本
2004 アンダートウ 決死の逃亡 製作
2003
2002 至福のとき 製作総指揮
ベアーズ・キス 脚本
2001
2000
1999
1998 シン・レッド・ライン 監督・脚本
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978 天国の日々 監督・脚本
1973 地獄の逃避行 監督・製作・脚本
1972 ポケットマネー 脚本
1943 11'30 テキサス州ウェーコで誕生

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名もなき生涯
A Hidden Life
<A> <楽>
グラント・ヒル
ダリオ・ベルゲシオ
ジョシュ・ジェッター
エリザベス・ベントリー
マルクス・ロゲス
アダム・モーガン
ビル・ポーラッド
イー・ウェイ
クリストフ・フィッサー
ヘニング・モルフェンター
チャーリー・ウォーケン(製)
テレンス・マリック(脚)
アウグスト・ディール
ヴァレリー・パフナー
ブルーノ・ガンツ
マティアス・スーナールツ
ミカエル・ニクヴィスト
マリア・シモン
★★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 第二次世界大戦下のオーストリアにある小さな村の農夫フランツ・イェーガー・シュテッター(ディール)は妻と三人の娘と共に慎ましく暮らしていたが、戦争の影響は村にもやってきていた。ヒトラーに忠誠を誓うことをあくまで拒否するフランツはついに収監されてしまう。その中でも信念を曲げることなく、家族に励ましの手紙を送り続けるが…

 実在した、第二次世界大戦に自分の信念を曲げることなく亡くなった人物を描く作品。映画では数多くの反戦をテーマにした作品が作られているが、戦争に反対したために殺されてしまったというのは結構多く、ドイツでは『白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々』(2005)とか、日本でも『人間の條件』(1959)なんかも作られており、映画としてはそれなりにメジャーなテーマと言える。同じく2019年に製作された『ジョジョ・ラビット』(2019)もその系列に入るかもしれない。
 本作の主人公フランツは活動家ではない。単に信仰深い田舎の農夫に過ぎない。ただ人よりだいぶ頑固ということと、人を殺す戦争は悪であり、それに加担することは良心が許さないということだけ。
 ほとんどの人は他人を殺したいなどと考えないので、心情的にはフランツの考えは分かる。だが、同時に自分自身と家族を守るためには妥協も必要である事を知っているため、心はどうあれ表面上は戦争に協力する。協力しないと不利益を被るし、周囲の空気を読む感覚も重要だから。信念に殉じることがどれだけ難しいかを知っている。そういう妥協を繰り返すことで大人になっていく。
 もしそれができなかったら?その生き方はとてつもなく苦しいものになる。それが空気を読む能力の低い自分自身の身に迫ってくるから観ていて辛い。更に不器用ながらも自己主張を押し通すフランツの姿は、自分にはなれない理想的なものを感じたりもする。
 全般的にそんなフランツの姿が延々と描かれるため、精神的に来るきついものを延々と見せられ続ける。
 しかし問題として、この画面の美しさはどうだ。画面の一つ一つが絵画のようで、別な意味で目が離せない。
 きつさと美しさの両面攻撃。それを3時間近く。観終わったら精神力がごっそり削げ落ちていた。これがマリックの真骨頂。
製作年 2019
製作会社
ジャンル
売り上げ
原作
歴史地域
関連
allcinema Walker ぴあ IMDb CinemaScape
wiki キネ旬 eiga.com wiki(E) みんシネ
ツリー・オブ・ライフ 2011
2011米アカデミー作品賞、監督賞(マリック)、撮影賞
2011カンヌ国際映画祭パルム・ドール
2011全米批評家協会助演女優賞(チャステイン)、監督賞、撮影賞
2011LA批評家協会助演女優賞(チャステイン)、監督賞、撮影賞
2011NY批評家協会助演女優賞(チャステイン)、撮影賞
2011CHI批評家協会作品賞、監督賞、助演女優賞(チャステイン)、撮影賞
2011放送映画批評家協会撮影賞、
作品賞、美術賞、音響賞
2011AFIトップ10
2011サテライト脚本賞
2011
上半期ベスト映画第4位
2011ジョン・ウォータースベスト第7位
2011タイムベスト第4位
2011ロジャー・エバート第3位

2011予告編ベスト
2011
ナショナル・ボード・オブ・レビュートップ10
2011ピーター・トラヴァース第9位
2011ロジャー・エバート第3位

2011アメリカ撮影監督組合賞
2011タイム男性俳優1位(ピット)
<A> <楽>
テレンス・マリック(脚)
ブラッド・ピット
ショーン・ペン
ジェシカ・チャステイン
フィオナ・ショウ
ハンター・マクラケン
ララミー・エップラー
タイ・シェリダン
アイリーン・ベダード
ウィル・ウォレス
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 社会的にも成功したジャック(ペン)は、未だこども時代のトラウマに悩まされてきた。「成功するためにはなにより力が必要」という信念を持ち、とかく高圧的にこどもたちに接する父(ピット)と、こどもに対し優しくはあるが、やはり父の支配下にある母(チャスティン)。そんな中、ゆがんだ価値観を与えられた兄弟。いまだ父を許せない自分を見つめるジャック…
 監督デビューは早いものの、とにかく寡作として知られるマリック監督の新作。『ニュー・ワールド』から僅か5年程度で作ってしまった。彼にとっては珍しいほどに早い。
 今はネットのお陰で新作映画がでると、すぐに知り合いの映画評が出てくるので、それで新作の評価を知るわけだが、この作品に関してはどの映画評観ても一定しない。何を書いて良いのか分からない。と言った印象を受けたのだが、まさしく私がこの作品を観ようと思えた最大の理由でもあった。そんな訳の分からない作品ならば、どういう印象を受けるだろう?そんな思いがあったから。

 で、一見して、やっぱり私にも何も言い難いとしか…
自分自身の読解力の非力を感じるだけだった。
 強いて言うなら、本作はマリック監督の、タルコフスキーへの挑戦と言う位?
 思春期の親に対する相克は『鏡』(1974)に観られるものだし、現在の自分の立場を過去の人間に対して韜晦してるポーズを取るのは
『ノスタルジア』『サクリファイス』(1986)に見られるものでもある。ついでに言うなら、画面の一つ一つが芸術品のような美しさを持っていながら、極めて退屈であるところもタルコフスキーに見られるものに近い。
 でも、だからこそ言えるのだが、
いくら真似ることができても、タルコフスキーになることは出来ない
 タルコフスキーが今に至るもこれだけ支持されるのは、単に画面が綺麗だからではない。彼ほどの表現力を持つ人が、過去から現代に向かい、どれだけ圧迫されているのかを画面に封じ込めることが出来るからと言える。旧ソ連にあって、時として家族にまで伸びてくる権力に従うしかない自分の生き方、現在もまたその圧力によって自由なものが作れない状況。それらを映像として作り上げられた。そこにこそ彼の非凡さがあったのだ。
 こんな人間に対抗できる人はいないだろう。いたとしても、少なくとも先進国にあって平和を享受している人間には、ここまでのものを作ることは出来ない。
 『鏡』を取ってみても、あれは単に思春期の少年時代を懐かしがっているだけではない。あの当時、家族が権力から受けていた圧迫感が今も継続していることを窺わせられるものだ。
 本作の場合、『鏡』同様思春期に受けていた家族に対する思いが今も継続していることを示しているが、明らかに“その間”が抜けている。既に中年になった主人公はその間に社会的な成功を収めている。思春期に思いを馳せ、それがトラウマになってる割に、それをこれまでどうやって乗り切ってきたのか、あるいは目を向けなかったのか、その辺がすっぱり抜けてしまっている。
 そのため、どうにも主人公に同感ができないままだし、そのトラウマもこちら側に伝わってこない。
 こども時代に主人公が味わったことは、少なくとも家庭円満な家族にはありがちなことであり、それがトラウマとは思えないのが何とも。大概こう言うことはどの家庭でもありがちなことで、それを乗り越えて大人になっていくものだが、本作で描かれるのはその過程でもなければ、受け入れようとしているのでもない。なんかその辺中途半端だし、それを何故今頃になって?とも思う。これを描くのなら、舞台はせいぜい70年代〜80年代だろ?なんで現代にする意味がある?ペンを主役にしてしまったことが問題なんじゃなかろうか?過去編だけで物語はまとまってたよな。

 あるいはこれはマリックにとっての過去の告白だったのか?だとしても
あまりにも普通の人間の過去に過ぎない話じゃないかな。
ニュー・ワールド 2005
2005米アカデミー撮影賞
2005放送映画批評家協会音楽賞、若手女優賞(キルヒャー)

2005ナショナル・ボード・オブ・レビューブレイクスルー演技賞(女優)(キルヒャー)
<A> <楽>
テレンス・マリック(脚)
コリン・ファレル
クオリアンカ・キルヒャー
クリストファー・プラマー
クリスチャン・ベイル
オーガスト・シェレンバーグ
ウェス・ステューディ
デヴィッド・シューリス
ラオール・トゥルヒロ
ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン
ベン・メンデルソーン
ブライアン・F・オバーン
アイリーン・ベダード
ジョン・サヴェージ
ジェイミー・ハリス
マイケル・グレイアイズ
ノア・テイラー
ベン・チャップリン
ジョナサン・プライス
★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 アメリカ大陸発見から数年。スペインに出遅れたイギリスは東海岸の植民を精力だがその第一陣が到着したヴァージニアでは、厳しい環境と、現地の先住民との争いが起こり、思った以上の困難が待ち受けていた。帰国してしまった船長に代わり、入植団の式を任されたジョン・スミス(ファレル)はなんとか先住民との和解の道を探っていたのだが、ついに先住民に捕らえられてしまう。処刑寸前に王の末の娘ポカポンタス(キルヒャー)のおかげで命を救われたスミスは、ポカポンタスと交流を深めていくが…
 寡作ではあるが、作る作品が軒並み高い評価を受けているマリック監督の7年ぶりの新作。
アメリカの建国神話ともなったヴァージニア入植と、初めてイギリスの地を踏んだ先住民ポカホンタスの姿を描く。
 半ば伝説化されているポカホンタスについては先にディズニーアニメ
『ポカホンタス』があるが、子供向け冒険話として仕上げられたアニメ版と比べ、リアリティに徹しているのが本作の特徴と言える。
 とはいえ、さすがというか“らしい”というか、何を作ってもゆる〜い感じで仕上げるマリック監督の特徴は良く現れており、冒頭からラストに至るまで、眠気を誘う演出に彩られ、盛り上がってるのかスルーなのか良く分からない物語展開が最後まで続いてしまう。
前作
『シン・レッド・ライン』で戦争最前線の中で生じる空白期間を見事に仕上げた手法を今回も用い、入植の困難の中、実際はほぼなすがままに任せるしかなかったということを示そうとしたのだろうが、この作品に関してはその演出がやや嫌味っぽく感じてしまう。表題“ニュー・ワールド”たるアメリカよりも後半のイギリスでの出来事の方が盛り上がりを感じさせてしまったのも問題あり。
主人公としてのファレルも薄すぎた感もある。ファレルはハリウッド若手の中では注目株だったんだが、
『アレキサンダー』と言い、本作と言い、“外した大作”に連続して出演してるので、ちょっと評価が下がってしまった。新人のはずのポカホンタス役のキルヒャーに存在感奪われてるし、後半のイギリスでベールが出てしまうと、もはや存在感そのものが見えなくなってしまう。思えば可哀想な役割でもあった…

 たた、やはりこれもマリック作品。どれほどゆっくりした流れの中でも描写はしっかりしていて、とても美しい作品だとは間違いなく言える。これも又フィスクの腕の冴えだ。
 映画(しかも戸外の)の美しさと言うものを突き詰めた作品ではあるので、映画に芸術性を求める人にはかなりお薦めしたいところではある。
シン・レッド・ライン 1998
1998米アカデミー作品賞、監督賞(マリック)、脚色賞、撮影賞、音楽賞、音響賞、編集賞
1998NY批評家協会監督賞(マリック)、撮影賞
1998放送映画批評家協会作品賞
1999ベルリン国際映画祭金熊賞
1999
キネマ旬報外国映画第2位
<A> <楽>
テレンス・マリック(脚)
ショーン・ペン
ジム・カヴィーゼル
エイドリアン・ブロディ
ベン・チャップリン
ジョン・キューザック
イライアス・コティーズ
ニック・ノルティ
ジョン・サヴェージ
ジョン・C・ライリー
ジャレッド・レトー
ウディ・ハレルソン
ジョージ・クルーニー
ダッシュ・ミホク
ティム・ブレイク・ネルソン
ジョン・トラヴォルタ
ミランダ・オットー
ポール・グリーソン
ウィル・ウォレス
ペネロープ・アレン
ニック・スタール
トム・ジェーン
光石研
前原一輝
酒井一圭
ラリー・ロマーノ
サイモン・ビリグ
★★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
シン・レッド・ライン <A> <楽>
ジェームズ・ジョーンズ (検索) <A> <楽>
 アンドリュー・マートンの『大突撃』リメイク。
天国の日々 1978
1978米アカデミー撮影賞、作曲賞、衣装デザイン賞、音響賞
1978
全米批評家協会監督賞、撮影賞
1978NY批評家協会監督賞
1978LA批評家協会撮影賞
1979英アカデミー作曲賞
1979カンヌ国際映画祭監督賞、パルム・ドール
<A> <楽>
リチャード・ギア
ブルック・アダムス
リンダ・マンズ
サム・シェパード
ロバート・ウィルク
スチュアート・マーゴリン
★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 第一次大戦下。ビリー(ギア)と恋人のアビー(アダムス)、そしてビリーの妹リンダ(マンツ)は、季節労働者として中西部を旅していた。その方が通りが良いと言うことで、アビーはビリーの妹と偽って農場で働いていたのだが、その農場主チャック(シェパード)はアビーの美しさに惹かれ、ついには求婚するのだった。たまたまチャックの命が長くないことを聞き込んでいたビリーは一計を案じ、アビーにその申し出を受けるように説得するのだが…
 マリック監督の出世作で、言葉そのものよりも画面で語る。と言う監督の個性が強烈に出ている作品。物語自体は陳腐さを感じるものの、それを超えた
美しさが圧巻。セットではない、本物の自然を切り取ったような演出が冴え渡っている。そこに登場する人間も、自己主張を極力抑えて、大きな自然の中、淡々と演じているのも評価高い。長回しのシーンが多用されるが、それらのシーンが本当に美しく、まさに眼福と言うべきか。美術のジャック・フィスクが存分に腕を振るった結果だ。
 しかしその美しい風景の中で人間の営みとは打算と残酷さで成り立っている。表題の
『Days of Heaven』とは、衣食足りて愛するものと共に生きると言う意味なのだろうけど、その「天国」を手に入れるために、何を犠牲にするのか。そしてその帳尻を合わせるために何をしなければならないのか…生きるとはきれい事じゃないし、プラスアルファを求めるなら打算を是認しなければならない。
 しかし、こういった話というのはちょっと苦手だし、それに今ひとつ風景と物語が噛み合ってもいない気がしてならない。ポランスキー監督の『テス』(1979)にもつながるのだが、主軸となる物語がどうにも好みには合わない。その合わなさが結局最後まで続いてしまった。画面は綺麗なんだけどね。
 カリスマ性の固まりのようなギアが本作に関してはかなり抑え気味な演技を見せていて、こんな役も出来ることが分かったけど、多分相当監督とはやり合ったんだろうな。

 本作の素晴らしい撮影はネストール=アルメンドロスによるもの。この作品を可能な限り自然光で撮ろうと苦心したが、絶対光量の高いハリウッド・システムに慣れている助手達は大反発し、逃げ出したのもいたという。

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