読書日誌
2010’7〜9月

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10'09'30 四畳半神話大系
森見登美彦 (検索) <amazon> <楽天>
 “私”は京都在住の大学3会生。希望を持って入った大学だったにも関わらず、過去2年間を無駄に過ごしてしまったと考える“私”は、悪友の小津を恨むばかり。そんな“私”に転機は訪れるのか…
 並行世界を描く不思議な青春物語。アニメの方を観た後で原作を読んでみたが、こちらの方が物語は少なく4つのみ。しかも全部オチは同じで、そこに至る過程だけが違うと言う物語だった。後出しジャンケンのような気はするが、アニメの方が物語は練れてた感じ。こっちも読み物としては充分面白かったけどね。
10'09'29
のだめカンタービレ2 (著)二ノ宮知子 <amazon>
 自分よりも格下だと思っている人間たちがどんどん海外に出て成功するニュースを見ては落ち込む千 秋。一方千秋にまとわりつくのだめに強烈な恋のライバルが登場。ヴァイオリニストの峰を交えてなんだかんだで一緒にアンサンブルをやることになってしまっ た四人。さらにそこに輪をかけた変人、ドイツからやってきた名指揮者シュトレーゼマンが加わり、千秋の生活は音楽漬けではあっても、混迷の度合いを深めて いく…
 千秋自身の思いはともかく、周囲には電波系の人間がまとわりつくようになり、どんどん混迷を深めていく千秋の日常と、類ま れなる才能を持ちながら、ぜんぜん活かすことができないのだめを初めとする音楽科の人間たち。彼らの行き先はいったいどこにあるのか?今巻で登場したシュ トレーゼマンはドラマでは竹中直人がやってたんだよな…そのイメージが強烈過ぎた感じがある。しかし、これって意外に内容詰まってるよな。
10'09'28 スティング (著)ロバート・ウィーバーカー <amazon>
 ケチな詐欺師のフッカーは、偶然ニューヨークマフィアであるロリマーの上納金を奪ってしまった。そのため相棒であり詐欺の師匠であったルーサーは殺され、マフィアと警察の双方から追われる身となってしまう。死の直前のルーサーから教えられた天才詐欺師ゴンドーフの元に身を寄せたフッカーはロリマーへの復讐をゴンドーフに申し出るが…
 言うまでもない名作映画の原作。随分後になってしまったが、ようやく原作を読むことが出来た。小説の出来としては、確かに上手く作られてるのだが、これを奇跡のような物語に仕上げてくれたロイ・ヒル監督の手腕が本当に見事。改めて映画の凄さを思い知った次第。
10'09'23 ローマで語る
塩野七生 (検索) <amazon> <楽天>
アントニオ・シモーネ (検索) <amazon> <楽天>
 ローマ在住でひたすらローマについて作品を描き続けてきた著者が、映画業界に身を置く息子と共に映画について語り合ったエッセイ集。

 映画論として鋭いところがあるかどうかはともかくとして、エッセイとしてはなかなか面白いし、イタリア、ひいてはヨーロッパの映画製作とハリウッドのビッグ・バジェット作品との作り手側の意識の違いなど興味深いところは多い。著者の作品を読み始めてからは長いが、時折登場していた“息子”がこんなになってたんだな。
<A> <楽>
10'09'22 激マン!1 (著)永井豪 <amazon>
 次々と傑作ギャグマンガを作り出し、大人気となった漫画家ながい激。だが彼が今度挑戦しようとしているものはストーリーマンガ、しかも悪魔を題材にしたものだった。先行して始まったテレビアニメ「デビルマン」を追いかけるように連載を開始するが…
 私にとってトラウママンガを一つ挙げよ。と言われたら、間違いなく原作版の「デビルマン」と言う。軽い気持ちで読み始めたのは良いが、あっという間に止まらなくなって、その晩は悪夢を見た位にインパクトを残してくれた。
 そんな「デビルマン」の制作秘話を、著者当人が描く。これで面白くないはずがないし、実際描き直されたデビルマンのコマも良い出来。それにしても70年代って漫画家も凄かったんだな。週刊マンガを5本並行って、現代だと到底考えられない。
10'09'21 クビシメロマンチスト 人間失格零崎人識 戯言遣い2
西尾維新(検索) <amazon> <楽天>
 濡れ羽島の事件から一月。“ぼく”は京都に戻り、ずっと行っていなかった大学へと通い始めた。そんな“ぼく”に声をかけてくれたクラスメイト蒼井巫女子に誘われ、巫女子の友達江本智恵の誕生日に出かけたのだが、まさにその晩、智恵が殺されてしまった。“ぼく”を含め出席者全員にアリバイがある中、“ぼく”は勝手に事件を追う。そんな“ぼく”の前に現れたのは、“殺人鬼”零崎人識だった…
 一応この作品も推理小説の体を取っているものの、もはやそう言う物語ではなくなりつつある。これまで散々自分の事を“欠陥人間”やら“人間失格”やら言ってきた主人公が、本当に人でなしだったという酷いオチで、唖然とさせられる。でも面白かったけど。
10'09'19 ヴンダーカンマー2 (著)西川魯介 <amazon>
西川魯介 (検索) <amazon> <楽天>
 ガッセの発作はますます酷くなり、特定のものや人を見かけるだけで、自分の意志とは全く関係なく怪力を発して暴れ回るようになっていった。だがガッセの変調には関わりなく、兵器局非常識器材関連開発室には次々と任務が与えられ、様々な怪異に遭遇していた。
 兵器マニアとオカルトマニアが融合したような作品で、それはそれで面白いのだが、1巻と較べ、コミカルさが抜けてる分、単純なオカルト作品に近くなってしまった。著者の真髄はアブナ過ぎるギャグにあると思ってるので、このパワーダウンは少々悲しい。終わり方もこれと言って余韻なかったし。初期の頃のパワーを持続できていればなあ。
10'09'18 ずっと、スタンド・バイ・ミー(上) フルメタル・パニック!21
賀東招二 (検索) <amazon> <楽天>
 レナードとかなめがやろうとしていることは、ウィスパードの存在によってねじ曲げられてしまった歴史の修正であった。今の歴史をリセットし、過去に戻って本来の歴史を取り戻そうという、その荒唐無稽な作戦に、これが本当に悪いことなのか確信を持たぬままその阻止へと向かったトゥアハー・デ・ダナン。自分の出来る事をするだけと心を決める宗介だったが…

 いよいよ最終章の開始。とりあえずこの話はタメの話で、かつての古巣、現在アマルガムの本拠地となっているメリダ島への特攻をかけるところまで。少々意外というか、悪い方向にいってるのは、かなめの変節が自分の意志ではなかったらしいということか?
<A> <楽>
10'09'14
のだめカンタービレ1 (著)二ノ宮知子 <amazon>
 天才的な音楽の才能がありながら、飛行機恐怖症で海外に行くことができず、日本でくすぶっている エリート音大生の千秋真一。そんな彼の前に突然現れた不思議な少女野田恵、通称“のだめ”。ゴミ溜めのような部屋に住む彼女は千秋も驚くほどとんでもない 音楽の才能を秘めながら、同時にとんでもない変人だった…
 アニメやドラマを先行して観ていて、前々から読みたいと思っていたが、 何故か機会がなく(というか、少女漫画だからという単純な理由だが)、ようやく今になって読み始めた本作。もちろん先行していたものがあって、ストーリー は頭に入っているのだが、マンガはマンガでやっぱり面白い。現在のところほぼ狂言回し的な位置づけにある主人公の千秋のネガティブさが逆に本作を引き立て ていることがなんとなく理解できた。
10'09'10 クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い 戯言シリーズ1
西尾維新(検索) <amazon> <楽天>
 天才を集めるのが趣味というお嬢様赤神イリアに招かれ鴉の濡れ羽島という孤島に集められた各分野の天才達。その中で玖渚友というコンピュータ技術の天才のつきそいでやってきた“ぼく”。しかしこの絶海の孤島で連続首切り事件が発生。どこか頭のネジがぶっ飛んでいて、何も反応しようとしない天才達に代わり、事件解決に乗り出す羽目に陥った“ぼく”だが…
 著者のメフィスト賞受賞作にして「戯言遣い」シリーズ第一作となる作品。ものとしては密室殺人もので、ありがちなものだったのだが、主人公が推理を積み重ね、ようやくたどり着いた事件解決が最後の一章で丸ごと覆されてしまった。なるほどここは確かに見事な出来と言わざるを得ない。
10'09'09 うしなうべきすべて A君(17)の戦争8
豪屋大介 (検索) <amazon> <楽天>
 ランバルド軍によるワルキュラ侵攻作戦は何ら大きな妨害もなく進んでいったが、そのワルキュラで魔王軍の激しい抵抗に遭う。剛士の誕生によって画期的な進歩を遂げた魔王軍と、シレイラによる改革によりますますその強さを高めているランバルド軍。双方の力のぶつかり合いの結果は?
 読み応えはとにかくたくさんあり、燃える話に仕上がっている。ただし、攻城戦になった途端物語は停滞してしまい、話そのものはまるで動いていないという状態。ドラマ性を高めるとストーリーが停滞するいい例。
10'09'08 月光条例10
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 月打された桃太郎の攻撃を生身に受けながら、全くの無傷だった月光。なによりその事実にショックを受けたのは月光自身だった。自分は人間ではないのか?と悩む月光の元に、新たな事件が起こる…
 前巻で月光の出生に関するかなり重い設定が入ってきて、それで話が展開しているのだが、それで実際の物語は仲間内全員で海に行ってはしゃいでいるだけ。と言う、面白い構造を取っている。コメディ要員がどんどん増えていき、ついには正気に戻った桃太郎まで完全なギャグキャラとして再登場してる。お陰で結構楽しい作品に仕上がってた。
 多分次巻以降のハードさの箸休みなんだろうけどね。
<A> <楽>
10'09'05 マンガの国ニッポン (著)ジャクリーヌ・ベルント <amazon>
 日本は一種の固有文化としてマンガがとても盛んな国。これは世界的に見ても大変ユニークであると共に、日本という国を知る上で重要な要素も含んでいると見た著者が、記号的文化を背景に持つ日本文化を考察する作品。
 着眼点はたいへん面白いし、東ドイツ出身の著者というのも興味深いところ。ただ元の原稿が書かれたのが1990年と言うだけあって、出てくるマンガがみんな古く、その分古臭さを感じてしまう作品でもある。
10'09'04
姜尚中 (検索) <amazon> <楽天>
 在日韓国人である著者が、自分を育ててくれた母がいかにして朝鮮から日本に来て、そこで味わった苦労を経たのか、在日朝鮮人の悲劇と、その逞しさを合わせて描ききった自伝的小説。

  知り合いに勧められて読んでみたが、自伝と言うよりは、一人の女性の生涯をベースにした小説と言った感じの作品だった。これはこれで充分おもしろい作品で はあるが、何せ著者のメインの作品である国際政治の著作を一作も読んでないこともあって、今ひとつ感情移入はできなかった。一度著者の作品を一冊くらい しっかり読んでみることにするか。
10'08'31 21世紀少年 下 (著)浦沢直樹 <amazon>
浦沢直樹 (検索) <amazon> <楽天>
 “ともだち”が最後に残した反陽子爆弾の在り処を探りにバーチャルルームで時を過ごすケンヂ。一方現実世界でもカンナが必死にその在り処を探っていた。そんな時、起動を停止していたはずのあのロボットが再び動き出す…
  いよいよこれが本当の最終巻。最後に“ともだち”がカツマタと呼ばれる少年であったことが分かったが、誰だっけそれ?それはそうと、子供のころにほんの出 来心でやってしまったことが世界の危機を招くというオチは唖然と言うか、どれだけこの地球って狭いんだよ。って感じ。
 ある意味漫画なんて妄想の産物なんだから、終わりもまた妄想で良いのかもしれない。いろいろ落としたものも多いかもしれないけど、読み応えはあった。
10'08'28 ハリー・ポッターと死の秘宝 上 ハリー・ポッター7
J.K.ローリング (検索) <amazon> <楽天>
 死ぬ間際のダンブルドアからヴォルデモートの残された分霊箱を破壊するように命じられたハリー・ポッター。だがそれが一体どんなものでどこにあるのか。更にその破壊方法さえも伝えられなかったハリーは、学校に戻ることなくロン、ハーマイオニーと共に分霊箱を探し始める。だがその頃ヴォルデモートは魔法省全てを手中にし、逆らうもの全てを捕らえにかかっていた。

 最終巻の上巻に当たる作品で、ここではただひたすら分霊箱の手がかりを探して放浪する三人の描写だけで終わってしまった。このタメが下巻の盛り上がりのために大切だと分かってるけど、やっぱりストレス溜まる。
<A> <楽>
10'08'27 21世紀少年 上 (著)浦沢直樹 <amazon>
浦沢直樹 (検索) <amazon> <楽天>
 “ともだち”が死に、ようやく平和が訪れた。だが、“しんよげんのしょ”の最後のページに書かれた“反陽子爆弾”とは何であるのかが分からず、ケンヂはバーチャルルームへと入る。そこでケンヂが出会った人、見たものとは…
 話はまだ終わってなかった。最後に“ともだち”が残した悪意をめぐり、本物の最後の戦いが始まることになる。しかし話はやっぱり迷走してるような?
10'08'22 秘密屋文庫 知ってる怪 (著)清涼院流水 <amazon>
 流Pというあだ名を持つ“ぼく”は先輩の木村彰一と共に都市伝説に興味を持って調べ始めた。そのうち「秘密屋」という謎のキーワードを耳にするようになった“ぼく”らは真剣にこの秘密屋について調べることにした。それが本物の“秘密屋”との出会い、そして命の危機につながることも知らずに…
 ゼロ年代を代表する作家の一人と言われている著者の作品は、実は本巻が初めて読む。確かにこれは新感覚というのは分かる。ありきたりな物語には違いないのだが、いつの間にか話が肥大化し、最後にメタ化する過程を楽しませてもらった。割と新しい作品はメタ的な要素を当たり前のように使ってるんだな。やっぱり私は古い世代に入るのだろうか?
10'08'21 20世紀少年22 (著)浦沢直樹 <amazon>
浦沢直樹 (検索) <amazon> <楽天>
 ついにすべてを明かした“ともだち”。全人類を巻き込む恐るべきウィルスを前に、カンナたちは、唯一の安全地帯万博会場に都民のすべてを集めようとする。一方、ケンヂは「決着をつける」と言い残し、万博会場に作られたかつての自分たちの町へ向かう。
 一応これが最終巻なのだが、全然すっきりした終わり方ではない。謎はかなりの数残ってるし、オチの付け方も中途半端…と思ったら、まだ続巻があったとは!こうなったら最後まで付き合おう。
 結局、ケンヂの小学生の仲間達で死んだ人間は本当に少ない。先に死んだとばかり思っていたサダキヨまでもが生き残っていたのは意外といえば意外。
10'08'18 スカイ・イクリプス (著)森博嗣 <amazon>
森博嗣 (検索) <amazon> <楽天>
 「スカイ・クロラ」の世界観の中で展開する様々な人間模様を描く短編集。「ジャイロスコープ」「ナイン・ライブス」「ワニング・ムーン」「スピッツ・ファイア」「ハード・ドレイン」「アース・ボーン」「ドール・グローリー」「スカイ・アッシュ」の8編を収録する。
 一旦完結した物語なので、どんな続編かと思ったら、短編集だった。この中で一応物語の後日譚となっているのは「ドール・グローリー」となる。相変わらず空気感のみで展開する話になってる。
10'08'17 ウルトラマンになった男 (著)古谷敏 <amazon>
 日本の少年達の心をがっちり掴み、今なお魅了してならないヒーロー“ウルトラマン”。その最初のウルトラマンの着ぐるみに入り、全話に渡って演じ続けた男である著者が、この時代になって明かす、スーツアクターから見たウルトラマンの舞台裏。
 言うまでもないが、特撮ファンとしては本作は外せない作品の一本だろう。スーツアクターのつぶやきなんてものはそうそうは読めるものではないし、実際撮影がどれほど大変なものだったかしみじみと分かる作品になっている。やや美化されてるところはあるんだろうけど、良い作品だった。
10'08'13 バクマン。9 (原作)大場つぐみ (画)小畑健 <amazon>
大場つぐみ (検索) <amazon> <楽天>
小畑健 (検索) <amazon> <楽天>
 「TRAP」終了後、一年も経たずに新しい連載「タント」を始めることになった亜城木夢叶。だが初めてのコメディ作品は、シュージンの精神を確実に削り、サイコーの方も、これではジャンプの看板にはなれないことを自覚していた。悩みつつマンガ制作を続けていく二人だが、同じジャンプで二人の同級生だった岩瀬が原作でビューし、更に大ヒットを飛ばしていた…
 今回は亜城木夢叶の新しい連載の開始、シュージンの結婚、そして新妻エイジのジャンプ同時連載と、見所がたっぷり用意された話になってる。人間関係は着実に良い方向に進んでいるのだが、肝心なマンガでは悩み続けている。この辺の匙加減が絶妙。単なる一直線のサクセスストーリーではなく、悩みながら、間違った道を踏み出してもそれを修正していくと言うのは、逆に最近では珍しい物語で、好感度がますます上がってきた。
10'08'12 かめくん
北野勇作 (検索) <amazon> <楽天>
 下町の古びたアパートに住む“かめくん”。巨大な亀の姿をした自分自身を、これと言ったコンプレックスを持つことなく、日常を過ごしていた。そして彼を取り巻くちょっとだけ変わった下町の住民や勤務先の職員達と過ごすまったりと過ごす“かめくん”だが…
 不思議な雰囲気を持つ作品で、“セカイ系”の作品と言えなくもないが、むしろセカイ系に対するカウンターとして作られたような雰囲気も持つ。こういう雰囲気は結構好きだけどね。
 たとえて言うのは難しいが、敢えて“甲羅”というアイテムを配することによって物理的なセカイを作り出し、それを嫌味っぽく使っていると解釈できないこともない。
10'08'11 日本人が知らない日本語 (著)蛇蔵海野凪子 <amazon>
 日本語学校の講師をしている著者が、これまでの外国人相手に教えている日本語から得た知識を元に、おもしろおかしく日本語について描いたマンガ。
 最近流行ってるから。と言うことでちょっと興味を持って読んでみたが、思った以上に楽しい作品だった。特に助詞に関しては日本人よりも外国人の方が知識としてよく分かっているらしく、読んでるこっちが色々勉強になった。なるほどベストセラーになるのも頷ける作品だ。
 日本語を外国に紹介するには映画が最も効果的ではあるが、逆にそれは大きな誤解を与えることにもなりかねない。
10'08'07 マンガ・特撮ヒーローの倫理学
諌山陽太郎 (検索) <amazon> <楽天>
 日本のテレビドラマの特徴として、一定数のヒーロー番組が作られ続けている。その中で彼らが演じるヒーローとしての特性とは?そして日本に特異な部分とは?著者なりの解釈を加え、特撮・アニメのヒーロー像を再検討する作品。
 ヒーローを語るために、これも読んでみよう?と思って読んでみたが、正直な話、この中で参考に出来たのは極めて少なかった。後ははっきり言って丸ごとくだらない話。特に後半は著者が“いかに自分は変わった子供だったか”と言うことだけしか書かれておらず、そんなものを読みたいとまるで思えないところが問題。着眼点が良かったので、もうちょっと唸らせて欲しかった。
10'08'05 アオイホノオ4
島本和彦 (検索) <amazon> <楽天>
 渾身のマンガの持ち込みで手応えのあまりの無さに絶望を覚えるホノオは、自分の進むべきはアニメにある!と息巻く。だが、その前に本物の才能をひっさげて現れた庵野秀明…立て続けに絶望を味あわされたホノオの行く末は…

 相変わらず自意識高すぎる痛々しい青春賛歌が続いている。はっきり言って新刊が出る度に体中が痛くなるような思いで読ませてもらっている訳だが、この巻は初めてその自意識が打ち砕かれる所まで描いているのでなんかほっとした所もあり。相変わらず業界を敵に回しつつよくここまで描けるもんだとは感心してる。
 ところで、ホノオが落選した時のサンデーは実は私も読んでいた。たまたま従兄が私の実家に置きっぱなしにしてたもので、その時「こうやって漫画家ってデビューしてるんだな」と思っていたもんだ。実際に私がサンデー買い始めるまでにあと数年。その時には「炎の転校生」が始まったばかりだったので、完全リアルタイムで脳内で進行中。
10'08'04 第四解剖室
スティーヴン・キング (検索) <amazon> <楽天>
 著者による短編集。「第四解剖室」「黒いスーツの男」「愛するものはぜんぶさらいとられる」「ジャック・ハミルトンの死」「死の部屋にて」「エルーリアの修道女」の6篇を収録する。

 「幸運の25セント硬貨」と対になる著者の短編集。著者の短編は読み応えがあるしストーリープロットもしっかりしているので面白い作品に仕上がってる。著者は長編作家と見られてるけど、短編の名手でもある。
<A> <楽>
10'08'03 日本沈没 第二部
小松左京 (検索) <amazon> <楽天>
谷甲州 (検索) <amazon> <楽天>
 日本が沈没してから25年が経過した。海外に移住した日本人はそれぞれの土地で、ある者は難民化して、ある者は政治の中枢に食い込み、そして大多数は植民地建設にいそしんでいた。そんな世界中の日本人を助けるべく、土地を持たない日本政府は日本という国のアイデンティティを残そうと躍起になっていた。そんな政府で秘書官として働く渡玲子、パプアニューギニアの植民者篠原、フリージャーナリストの山崎、そして首相の中田など、世界各地の日本人の目を通し、国無き民の行く末を描く。

 何故か既に第三部は存在する「日本沈没」のミッシングリンクとなっていた第二部。第一部から実に30年の時を経て、著者自身のライフワークとして、協力者と共に描き上げた大作。SFというよりは日本という国がない状態での今の世界(ネットは貧弱だけど)というものをシミュレートした作品と考えることが出来るだろう。こういう設定って本当にぞくぞくするほど楽しい。内容も骨太で読み応えもあり。あの「日本沈没」の続編として見事な出来と言って良い。
 惜しむらくは、オチの部分をもうちょっと拡大すれば、あと一冊分くらいの本が出来るのに、それをしなかったのはもったいない話だ。
<A> <楽>
10'07'30 青空にとおく酒浸り3
安永航一郎 (検索) <amazon> <楽天>
 MMはそもそも軍用の研究から生まれたものだった。旧型とは言え、そんなものを身体に組み込まれてしまった事を改めて知らされ、小朝と篠に衝撃が走る…それはそれとして、いつものような日常を普通に生活してる二人と、それを取り巻く人々を描く。
 とりあえず軍用というのは最初から分かっていたことだけど、それに対する反応が薄すぎた。この巻はほぼ全編ノーパナイザー絡みの話なのだが、むしろ面白いのが「ありそうでなさそうな怪談話」と火星人刑事陸號の登場だったような?
 火星人については後書きで書かれているが、「いろいろ説明するとだいたいコミック2冊分ぐらいの長い話」になるのだとか。で、その2巻分はいつ出るんだろうか?
10'07'28 デスノート ロサンゼルスBB殺人事件
西尾維新(検索) <amazon> <楽天>
 キラとの壮絶な知恵比べの末に死んだL。そのLがかつて組んでアメリカでの事件解決を行ったという、やはりキラによって殺されたFBI捜査官南空ナオミ。過去にこの二人がどのように接触し、そしてどのような事件を解決したのか。ロサンゼルスBB殺人事件なる事件の真相を描いた小説版「デスノート」
 著者がノベライズした作品だって事で、おそらくは相当にひねってるんだろうと思ったが、想像通り一筋縄にはいかない作品に仕上がってた。
 この作品を読むには、まず前提条件としてマンガ版をちゃんと読んでいて、Lの姿をきちんと思い浮かべられる人でなければならない。まさしくそう言う人間を騙すためにこそ本作は描かれたのだから。
 事実私自身すっかり騙されてしまったが、マンガと小説というプラットフォームの違いを上手く使った作品とは言えるだろう。
10'07'27 灰とダイヤモンド 下
イエジ・アンジェイェフスキ (検索) <A> <楽>
 党の大物シチューカを暗殺するためワルシャワに来たマーチェク。だがその前に酒場の女クリスティーナと出会ったことで急速に製への渇望が生まれていった。そんな中、家にこもりっぱなしだったコセーツキィが突然外へと出かけていく。
 ドイツ敗戦のその時に起こった悲しい事件。虚しい出来事だが、これこそが敗戦というものの側面。命があまりに軽い時代の物語と言えよう。この辺映画と同じなのだが、このシーンに関しては明らかに映画の方が上だな。小説の方は出来るだけ感情を押し殺して書いているため、むしろビジュアル的な感じ。改めて映画の良さを考える。
10'07'22 バクマン。8 (原作)大場つぐみ (画)小畑健 <amazon>
大場つぐみ (検索) <amazon> <楽天>
小畑健 (検索) <amazon> <楽天>
 新連載を控え、ネームのためシュージンが蒼樹と打ち合わせしており、しかもかつての同級生岩瀬と会っていたことがシュージンの彼女見吉にばれてしまった。更に見吉を通し亜豆にまで隠し事をしていることが知られてしまう。責任を感じるシュージンが取った行動とは…
 のっけからいきなり修羅場の連発…かと思ったら、するすると物事がいい具合に進展していく。ギリギリのところで回避させる辺りは少年マンガの王道とも言えるが、実際ドロドロした展開にしてしまうと、一体誰が楽しむのか?と考えてしまうと、やっぱりこれが正しい方法なんだろうな。勿論同時に新連載に向けての活動も活発化しているし、これ又面白い話になってるのは確か。話と全く関係ないところで相変わらずの平丸がますます面白くなってるし。色々な意味で巧く作ってるな。
10'07'18 灰とダイヤモンド 上
イエジ・アンジェイェフスキ (検索) <A> <楽>
 1944年。解放されたポーランドでは共産党による急速な復興が進んでいたが、ドイツによる占領と、新たなソ連による占領政策に住民は戸惑いを隠せないままでいた。そんな時、ワルシャワを訪れた青年マーチェク、ドイツの収容所から戻ってきた裁判官のコゼーツキィ、新たなテロを画策する青年グループを束ねるイェージィら。彼らはそれぞれが内なる闇と対峙しつつ、これからのポーランドの行く末を案じていた…
 私の大好きな映画の原作。映画では尺の都合もあってほぼマーチェクだけが話の中心になっているが、原作では3人の人物が中心となって話が展開している。そのせいかやや話にまとまりがないような印象がある。でも、それは戦後ポーランドを多角的に観ようとしているからかも?
10'07'17 新仮面ライダーspirits2
村枝賢一 (検索) <amazon> <楽天>
 仮面ライダー2号編:たった一人でショッカーと戦い続けてきた男本郷猛。そんな彼の前に現れたのは、自分と同じ姿をした改造人間。その男一文字隼人は、自らの姿に嫌悪しながらもショッカーと戦う事を選択する。
 仮面ライダーアマゾン編:ニードルの針に操られたモグラ獣人はアマゾンの右腕を切断。右腕ごとギギの腕輪をゼロ大帝へと手渡す。アマゾンの復活を信じる村雨はゼロ大帝に攻撃を繰り返すが…

 インターミッションである仮面ライダー2号編が完結。原作では2号は偽ライダーの一体。一方TV版では1号が改造していることになっているが、本作は原作にオマージュを献げつつTV版としてきっちり仕上げてる。呆れるほど細かい描写に笑ってしまうほど。著者ってどんだけマニアなんだよ。そしてアマゾン編だが、肝心のアマゾンが現在仮死状態。それに合わせて懐かしいキャラ達が大挙して押し寄せてくるので、本作のファンにせよTV版のファンにせよ、見所は多い。
 巻末でいつも通りの対談記事が載っていたが、あの当時の子供って仮面ライダー派とウルトラマン派に見事に分かれていたものだ。それで回りには仮面ライダー派が多かった事もあってか、私はウルトラマンに傾倒していたっけ。なんか妙に自分自身のことを思い出す。
<A> <楽>
10'07'16 星を喰った男 (著)潮健児 <amazon>
 ときめく銀幕スター、映画では間違いなくスターの存在こそが最大の見所だが、時として脇役がスターを喰ってしまう瞬間がある。東映の名物役者でひたすら脇役ばかりの役者生活を送ってきた著者なればこそ味わうことが出来る至福の瞬間。まさしく“星を喰った男”の生き様を語った唯一の自伝。
 潮健児という名前を聞けば、どうしても仮面ライダーの地獄大使というイメージがあるが、古き良き時代の東映作品には度々脇役として登場しており、まさしく名脇役と呼べる存在。東映一本で来たとは言え、その中で培われた人間関係から、知られぬスターの裏話まで、実に様々な切り口で語られる内幕ものの作品として、実に面白い作品だった。特に著者が師匠と崇める若山富三郎や、一本の映画でいきなり大スターになっていった高倉健などの裏話は読んでるだけで意外でとても楽しい。
 ところで、テープ起こしをして、編集もしたのは分かるんだけど、なんで著者の名前に唐沢俊一の名前が出るんだろう?
10'07'15 マンガで分かる心療内科 (著)ゆうきゆうソウ <amazon>
ゆうきゆう (検索) <amazon> <楽天>
 心理士の医師療とナースのあすなの二人が登場するマンガで学べる精神疾患と、その対処法を描いた作品。
 本物の心理士が立ち上げた人気サイトのwebマンガを書籍化した作品。多くはサイトの方を見れば分かるのだが、紙媒体になったらなったでやっぱり楽しい。
 でも考えてみると、著者のメルマガとか10年くらい前から読んでたんだけど、実際に本として買うのは初めてだったりして。
10'07'13 死の舞踏
スティーヴン・キング (検索) <amazon> <楽天>
 世界的にホラー界のトップの地位に君臨し続ける、文字通りの“キング”である著者が、ホラー作品について、本当の恐怖とは何かを考察する講演を再構築したエッセイ集。

 著者のエッセイとは大体は小説の巻末に長々と書いているものばかり読んでいたが、実際これだけの長さで、しかも様々なメディアのホラー作品を引用して書いてくれると読みでがあってとても楽しい作品だった。結構ホラー作品も観てるつもりでいたけど、まだまだ多くの良作ホラーが世の中にはあることを再認識させてくれた。ホラー映画を語るには、読んでおいた方が良い作品の一本だろう。
 そう言えばここで著者がコミカルホラーの題材として語っていた内容はクリープショー(1982)でそのまんま映画になってるのが結構笑える。
<A> <楽>
10'07'11 はたすべきちかい A君(17)の戦争7
豪屋大介 (検索) <amazon> <楽天>
 ついにランバルドによる魔王領侵攻作戦が開始された。優に5倍はあろうかという圧倒的物量を誇るランバルドに対し、何の抵抗もなく次々に村を明け渡す魔王領住民達。一体剛士の思惑とは。そしていずれ来たる全面決戦を前に、ランバルドのシレイラは何思う…
 いよいよ話も佳境。しかし、前巻までの激しい動きはここにはなく、逆に戦争の開始が動きの少ない描写になると言う不思議な物語になってしまった。しかしそれだけにこの静けさが不気味で、これからどうなっていくのかが楽しみな話ではある。このパターンからすれば戦争はかなり長引きそうな感じがある。
10'07'09 20世紀少年21 (著)浦沢直樹 <amazon>
浦沢直樹 (検索) <amazon> <楽天>
 新しい“ともだち”の暴走は続いていた。ついに完成した円盤を用いての、大規模ウィルス散布の準備は着々と整い、それに対し、一人でも多くの人を救おうと活動中のカンナ。そんな中、ひょっこりと東京へと現れたケンヂ…
 状況そのものがなんだかよく分からなくなりつつあるが、話はいよいよクライマックスへ。最後に“ともだち”はこれまでのことがすべて自作自演であることを明かし、最後のウィルス散布へと手をかけている。そこだけ分かれば後は良いか。
10'07'07 ダブルブリッドII (著)中村恵里加 <amazon>
 高橋高児をめぐる事件から2週間が経過。片倉優樹と山崎太一朗の二人からなる警視庁第六課はいつもの静寂を取り戻していた。そんなある夜、初めて二人が飲みに行った日、優樹は貧血で倒れている女性を見かける。そしてその直後現れる不思議な影…オーストリアからやって来たという吸血鬼フレデリックとの長い追いかけっこが始まる。
 シリーズ物になると、箸休めという物が必要になるが、2作目にしてもう箸休め的な話になってしまった。まあ、軽く読む分には丁度良い作品ではあるのだが、ラノベってこの程度で良いものなのかな?
10'07'04 はじめの一歩92
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 “天才児”ウォーリーのトリッキーな動きの前に全くパンチが当たらない一歩。そんな一歩に会長が示した命令は「触ること」だった。打たれ続け、ぼろぼろになりながら、それでも会長を信じウォーリーの腹に触り続ける一歩だが…

 完全なパターンに陥った話で、ボロボロになって絶体絶命の危機に陥りながら出来る事をこつこつとやってる内に…というやつ。実際一歩の試合は全部このパターンばかりなのだが、それでもやっぱり燃えるのは燃える。著者はそれで確信的にやってるな。
<A> <楽>
10'07'03 あるいは脳の内に棲む僕の彼女 (著)松本晶 <amazon>
松本晶 (検索) <amazon> <楽天>
 突発的に意識を失うという難病のため、一般的な生活を送ることが出来ない小西志信は、ある時難病仲間でネットで通信をしていた片桐から一体のロボットを贈られる。人間のような感情表現が出来る第四世代AI。少女型をしたそのロボットを小西はゼルと名付けた。そんな時、巷では猟奇的な連続殺人事件が起こっていた。人間業とは思えぬその手口はロボットのものと思われ、その捜査を進める刑事来栖川だが…
 知り合いが2年前に書いて小松左京賞の最終選考にまで残ったと言うので、早速買ってみた。
 内容は、人間と共棲する進化したロボットを扱った話で、アシモフ型SFの進化形と言った感じ。表紙とか出てくるオタ的ガジェットとかはライトノベルっぽいが、内容はかなりハード。
 ちなみに著者の本業は医者で、某有名作家とは同窓の関係だとか。小説家が二人も出るってのは凄いけど、こういう風に固まる事って結構あるもんだよね。そう言えば中に共通の知り合いとおぼしき名前がいくつかあったりする。