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スティーヴン・キング

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1974年に長編『キャリー』でデビュー。

ジャンルはホラーであるにもかかわらず、舞台は主にアメリカのごく平凡な町で、具体的な固有名詞をはじめとした詳細な日常描写を執拗に行うのが特徴(その作風から、従来の「非現実的な世界を舞台とした、怪奇小説」とは異なるモダン・ホラーの開拓者にして第一人者とされる)。

ホラーばかりではなく、『ショーシャンクの空に(原作:『刑務所のリタ・ヘイワース』)』や『グリーンマイル』など、映画化された話題作でも有名である。

日常の中に潜む「ちょっとした不思議」を題材にした作品も目立つ。

著作の多くが映画化またはTVドラマ化されている。世界幻想文学大賞(1982年、1995年、2004年)、ヒューゴー賞(1982年)、オー・ヘンリー賞(1996年)、ブラム・ストーカー賞(1988年、1996年、1997年、1999年、2007年、2009年)など、数々の文学賞を受賞している。 Wikipediaより
 著者の作品を初めて読んだのが「キャリー」。こんなに面白いホラー小説を読んだのは初めてだと思い、以降読み続けることになった。シリーズや長編も良いが、短編が好き。
 「キャリー」「シャイニング」「グリーンマイル」などはほぼ一気読みで読み切ってたが、中でも一番好きなのは「IT」で、私のベスト・オブ・ベストの一冊。
ソフト関係 映画・OVA
キャリー(1976) 原作
死霊伝説(1979) 原作
シャイニング(1980) 原作
ナイトライダーズ(1981) 出演
クリープショー(1982) 脚本・出演
スティーブン・キングの ナイトシフト・コレクション(1983) 原作
クジョー(1983) 原作
クリスティーン(1983) 原作
デッドゾーン(1983) 原作
チルドレン・オブ・ザ・コーン(1984) 原作
炎の少女チャーリー(1984) 原作
死霊の牙(1985) 原作・脚本
キャッツ・アイ(1985) 脚本
スタンド・バイ・ミー(1986) 原作
地獄のデビル・トラック(1986) 監督・原作・
脚本・出演
新・死霊伝説(1987) 原案
バトルランナー(1987) 原作
クリープショー2/怨霊(1987) 原案・出演
スティーブン・キング/ホラーの館(1989) 出演
ペット・セメタリー(1989) 原作・脚本・
出演
IT イット(1990) 原作
フロム・ザ・ダークサイド/3つの闇の物語(1990) 原作
ミザリー(1990) 原作
スティーヴン・キング/地下室の悪夢(1990) 原作
スティーブン・キングの ゴールデン・イヤーズ(1991) 製作総指揮・
原作・脚本・
出演
ザ・ムービング・フィンガー(1991) 原案
ブロス/やつらはときどき帰ってくる(1991) 原作
スティーブン・キング/死の収穫(1992) 原作
バーチャル・ウォーズ(1992) 原作
スリープウォーカーズ(1992) 原作・脚本
ダーク・ハーフ(1993) 原作
スティーブン・キング/トミーノッカーズ(1993) 原作
ニードフル・シングス(1993) 原作
ザ・スタンド(1994) 製作総指揮
原作・脚本・
出演
ショーシャンクの空に(1994) 原作
スティーブン・キング/アーバン・ハーベスト(1994) 原作
スティーブン・キング/ランゴリアーズ(1995) 原作
マングラー(1995) 原作
黙秘(1995) 原作
ブロス リターンズ/やつらはふたたび帰ってくる(1996) 原作
スティーブン・キング/アーバン・ハーベスト2(1996) 原作
痩せゆく男(1996) 原作・出演
トラックス(1997) 原作
クイックシルバー(1997) 原作
ゴースト(1997) 原案
シャイニング(1997) 製作総指揮・
原作・脚本・
出演
スティーヴン・キング/ナイトフライヤー(1997) 原作
チルドレン・オブ・ザ・コーン5:恐怖の畑(1998) 原作
アイス・ステーション(1998) 原案
ゴールデンボーイ(1998) 原作
ザ・チャイルド(1999) 原作
スティーブン・キングの 悪魔の嵐(1999) 製作総指揮・
脚本
グリーンマイル(1999) 原作
スティーブン・キングのパラノイア(2000) 脚本
マングラー2(2001) 原作
アトランティスのこころ(2001) 原作
キャリー(2002) 原作
炎の少女チャーリー REBORN(2002) 原作
ローズ・レッド(2002) 原作
ローズ・レッド:ザ・ビギニング(2003) 原作
ドリームキャッチャー(2003) 原作
死霊伝説 セーラムズ・ロット(2004) 原作
シークレット・ウィンドウ(2004) 原作
ライディング・ザ・ブレット 製作総指揮・
原作
2番目のキス(2005) 出演
スティーヴン・キング 8つの悪夢(ナイトメアズ)(2006) 原作
スティーヴン・キングのデスペレーション(2006) 原作
ミスト(2007) 原作
ダイアリー・オブ・ザ・デッド(2007) 出演
1408号室(2007) 原作
スティーヴン・キング トウモロコシ畑の子供たち(2009) 原作・脚本
スティーブン・キング ドランのキャデラック(2009) 原作
ザ・チャイルド:悪魔の起源(2010) 原作
スティーヴン・キング 骨の袋(2011) 原作
ハッピーエンドが書けるまで(2012) 出演
キャリー(2013) 原作
スティーヴン・キング ビッグ・ドライバー(2014) 原作
スティーヴン・キング ファミリー・シークレット(2014) 原作・脚本
スティーブン・キング 血の儀式(2014) 原作
セル(2016) 原作・脚本
1922(2017) 原作
ジェラルドのゲーム(2017) 原作
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(2017) 原作
ダークタワー(2017) 原作
イン・ザ・トール・グラス −狂気の迷路−(2019) 原作
IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(2019) 原作
ドクター・スリープ(2019) 原作
ペット・セメタリー(2019) 原作
CREEPSHOW/クリープショー
 特別編 アニメスペシャル(2020)
原作
ハリガン氏の電話(2022) 原作
炎の少女チャーリー(2022) 原作
ブギーマン(2023) 原作
TV
フロム・ザ・ダークサイド
<A> <楽> 1984原作
デッド・ゾーン
<A> <楽> 2002原作
スティーヴン・キングのキングダム・ホスピタル
<A> <楽> 2004製作・脚本
ヘイヴン -謎の潜む町-
<A> <楽> 2010原作
サンズ・オブ・アナーキー(3rd)
<A> <楽> 2010出演
アンダー・ザ・ドーム
<A> <楽> 2013原作
11.22.63
<A> <楽> 2016原作
ミスター・メルセデス
<A> <楽> 2017原作
ザ・ミスト
<A> <楽> 2017原作
キャッスルロック
<A> <楽> 2018原作
CREEPSHOW/クリープショー
<A> <楽> 2019原作
ザ・スタンド
<A> <楽> 2020原作
アウトサイダー
<A> <楽> 2020原作
リーシーの物語
<A> <楽> 2021原作
チャペルウェイト 呪われた系譜
<A> <楽> 2021原作
シリーズ
ダーク・タワー
ザ・スタンド
エッセイ
その他
 

 

ダーク・タワー

07'08'17 ガンスリンガー ダーク・タワー1
 カウボーイハットに二丁拳銃“ガンスリンガー”と呼ばれる男ローランドが荒野を旅していた。故郷の国を滅ぼした黒衣の男の足跡を辿り、ローランドは一路南へと歩き続ける…壮大なダーク・タワーの物語の始まり。

 約30年にわたって商売ものから引いて書き上げた著者の「ライフ・ワーク」。著者の物語は全てこの設定から引っ張ってきていると言われるが、なるほど著者の得意とする異世界からの侵略ってのは、全てこの世界から来ているものか。
 この作品は発行が1970年という事で、その時代性を感じさせる作品に仕上げられているのも特徴か。ガンスリンガーの姿はどことなく続・夕陽のガンマン 地獄の決斗(1966)のイーストウッドを彷彿させる。
<A> <楽>
07'10'08 運命の三人 上 ダーク・タワー2
 黒衣の男から“タワー”へ行ける存在である事を告げられたローランド。だが、その直後事故に遭い、右手指2本を失う大怪我を負ってしまう。瀕死の重傷を負い死にかけたローランドが見つけたもの、それは“扉”だった。その扉はアメリカに住む麻薬中毒者エディに繋がっていた…

 一応今回も主役はローランドだが、部隊はいきなり70年代あたりのアメリカに変わっている。異世界からの侵入というのが著者の特徴だとするなら、これは侵入する側の方から描いてみた作品であると言えるか。大変興味深い。
<A> <楽>
07'12'26 運命の三人 下 ダーク・タワー2
 エディという仲間を加えて二人となった“塔”を目指すローランドの旅は続く。そして二人の前に現れたもう一つの“門”それはエディの時と同様、ただし20年ほど過去のニューヨークへと続く回廊だった。そこでローランドはオデッタという女性を見出す。だがデッタという下品極まりない二重人格を持ち、車椅子を必要とするオデッタを加えた事で旅はますます困難度を増していく。

 ダーク・タワー第2巻の完結編。まだまだ“塔”までの道のりは遠いが、一人旅を続けてきたローランドに仲間が出来たのが大きな特徴だろう。仲間と言っても個性的な奴らばかりで、しかも三人目はローランドが殺してしまう訳だが…あれれ?
<A> <楽>
08'01'20 荒地 上 ダーク・タワー3
 回復したローランドとエディに新生したスザンナを加えた三人は塔に向けての探索を再開する。だがローランドが先に扉の向こうのモートを殺したことで、かつてローランドが見殺しにしてしまった少年ジェイクの命を救うこととなってしまった。ジェイクが死んだ記憶と生きている新しい記憶とが混在してしまい、二重の記憶に苦しめられる。そして同時にアメリカではその本来死んでいるはずのジェイクがローランド同様二重の記憶に苦しめられていた…

 前巻のモートの死が意外なところに繋がってきた。なるほどモートがオデッタのみならず、後のジェイクを殺した存在であるなら、ジェイクは生き残ってしまうのだな。物語は結構複雑化しているが、あるべき所に収まりつつある感じ。三人の仲間がこれからどのように変化していくやら。
<A> <楽>
08'02'17 荒地 下 ダーク・タワーIII
 ジェイクと小動物のオイが仲間に加わったガンスリンガー一行は“タワー”に続いているというビームに沿って旅を続けていた。彼らが最初にたどり着いたのは文明が崩壊した土地と、そこに住む純朴な人々。そしてそのその先には地下都市と野蛮な人々が巣くっていた。地下都市の住民によってさらわれてしまったジェイクを助け出すため、そして旅を続けるために年にある列車を動かすために一行は冒険に飛び込んでいく。

 カテットと呼ばれる運命共同体が全員揃い、そこから話が始まっていく。様々に張られた伏線がしっかりとつながっていく辺りはなかなかの快感。それにしてもこの中途半端な終わり方はあんまりといえばあんまりな話だが。
<A> <楽>
08'03'15 魔道師と水晶球 上 ダーク・タワーIV
 謎々好きな超特急列車“ブレイン”の手から辛くも逃れ、新しい地へとたどり着いたガンスリンガー一行。ターンパイクと呼ばれるその地は70年代のアメリカそっくりな世界だったが、特殊な流感によって人間は死に絶えていた。そしてその光景を見たローランドは再び変調を来してしまう。苦しみの中、他のメンバーに語ったローランドの過去とは…

 他の著者の世界とザッピングするのが本作の特徴だが、ここでの舞台は「ザ・スタンド」で荒廃した世界らしい。この話ではローランドの過去についてだけで、「ザ・スタンド」に出てきた登場人物は出てこないが、せっかくの舞台だから、出してくれるんじゃないかな?
<A> <楽>
08'05'02 魔道師と水晶球 中 ダークタワーIV
 ガンスリンガーの仲間に語られるローランドの過去。14歳でガンスリンガーとなったローランドは二人の友人と共に辺境に行かせられる。そこでローランドが出会った運命の娘スーザンとの結びつき。そして彼らを付け狙うハイエナのようなガンスリンガー崩れ達。彼らとの出会いが語られる。

 ローランドの過去は第1巻でちょっとだけ語られたが、本作はその後ローランドの最初の任務が展開していく。ここに登場するキーアイテムは表題ともなっている水晶球だが、これもどうやら以降の物語に関わってきそうな感じ。あと、著者は恋愛ものが描けないと言われていたが、しっかり描いてるじゃないの。
<A> <楽>
08'05'06 魔道師と水晶球 下 ダークタワーIV
 地主に嫁入りする前のスーザンとローランドはお互いに愛し合い、ついに肌を重ねる。慎重に誰にも知られぬよう逢い引きが重ねられたが、ローランドの二人の友は、リーダーとしてのローランドの能力に疑問を持つようになる。そんな中、着々と陰謀は進行中…

 ローランドの哀しい過去の話は終わりを告げ、この地でのガンスリンガーの冒険が始まる…と思ったら、あっけなく終わってしまった。終わり方がモロ「オズの魔法使」ってのがなかなか洒落てるけど、ここでの話はここで終わりらしい。もったい付けて出てきたキャラもあっという間に消え、本当にこれはローランドの昔の恋物語だけで終わってしまった感じ。
<A> <楽>
08'06'29 カーラの狼上 ダーク・タワーV
 変転する世界の中でガンスリンガー一行がたどり着いたのは辺境の地カーラだった。そこは双子が多く生まれる土地で、ここは一世代に一度の割で“狼”と呼ばれる謎の集団がやってきて、双子のこどもの一方をさらっていく。その“狼”の襲来が近づいた時、現れたガンスリンガーに町の人々は助けを求めることとなる。一方、ガンスリンガーの一人スザンナは体調の変化に気づいていた…

 前の巻の舞台が「ザ・スタンド」だったが、今回は「呪われた街」の登場人物であるキャラハン神父が登場。色々な作品をザッピングして作られているのがよく分かる。ここでは新しい場所で言葉遊びが多いので、結構読みにくい話でもあり。
<A> <楽>
08'07'09 カーラの狼(中) ダーク・タワーV
 辺境の地カーラにやって来るという狼のことを聞き及び、これが“カ”であることを知ったローランドはガンスリンガーの面々と共に戦うことを決意する。そんな彼の前に現れたのは、キャラハンという老人だった。彼は1980年代のジェルサレムズ・ロットというアメリカの町からやってきたのだという。そして彼が語る不思議な話とは…

 かつて「呪われた街」に登場したキャラハン神父が登場。あの話の後、街から逃げたキャラハンがどのように生活し、どのようにこの街にやってきたのかが語られていく。クロスオーバー作品の真骨頂と言ったところだろうか?
<A> <楽>
08'08'14 カーラの狼(下) ダーク・タワーV
 カーラの村を“狼”が襲うまであと僅か。だがガンスリンガー達に立ちふさがる問題は山積するばかり。カーラの教会に収められている“13番目の黒球”の始末。ニューヨークにある薔薇を守らねばならないこと。スザンナの中にいるマイアをどう扱うのか…更にジェイクはカーラの中に“狼”と通じた裏切り者がいるという事実にまで気づくことに…

 第5シリーズの完了となったが、結果として物語として終わったのはカーラを襲う狼を撃退したという事だけで、他の問題は全て棚上げ状態。話が広がるだけ広がっているのだが、はてさてこれをきちんと畳むことが出来るのやら。いずれにせよこれだけあからさまな「続き」であれば、早い内に読まねばなるまい。
 ところで“狼”が使っている武器がスニッチというのだが、やっぱりこれは「ハリー・ポッター」からだった。
<A> <楽>
08'08'20 スザンナの歌(上) ダークタワーVI
 スザンナの内に生まれた新しい人格マイアは子供を産むため、ガンスリンガーから離れ、扉を抜けて1999年のアメリカへと向かった。彼女の行方を捜し、引き戻すためにローランドとエディ、そしてジェイクとキャラハンは別々の時間軸に彼女を捜しに向かう…

 前巻「カーラの狼」の直後から話は始まり、話は全て二つの時代のアメリカで展開。1980年代に行ったローランドとエディはニューヨークの薔薇を守るため、1999年に向かったジェイクとキャラハンはスザンナを守るため。都合三つに分かれて話は展開するのだが、意気の高さはともかく、まとまって見えないのがちょっと難点。
<A> <楽>
08'09'16 スザンナの歌(下) ダーク・タワーVI
 十三番目の黒球の力で離ればなれの時代のアメリカに飛ばされたガンスリンガー達。スザンナ=マイアは子供を産むため、ジェイクとキャラハンは彼女を追い、そしてローランドとエディは1970年代のメイン州へ。そこで二人が出会った男の名前は、スティーヴン=キングと言った。

 著者が自作の小説に登場。これは結構昔から使われているテクニックで、小説のキャラクタに出会ったことが小説を書くきっかけになってるという、割とありがちなパターン。だけど、ここで面白いのは、キングがこの作品を書いていなければ、死んでしまっていただろう。と自分で書いているところだろうか。文末にこのシリーズと自分自身との関わり合いが書いてあるのだが、1部と2部でえらく間が空いているのは、実はアル中になっていたとのこと。色々苦労があったんだね。
 物語のラストはやっぱりいかにも「続く」だが、ちょっとやり過ぎかな?
<A> <楽>
08'11'05 暗黒の塔 上 ダークタワーVII 
 マイアは妖魔によって身籠もらせられたローランドとの子モルドレッドを産み落とした。マイアと体を共有しているスザンナの安否を気遣い急行するジェイクとキャラハン。決死の思いの突入は果たして報われるのか。そしてニューヨークの薔薇を守りつつジェイクらと合流しようとしているローランドとエディの行動は?

 これが最終話の始まりとなる。今のところ、オリジナルメンバーで死んだ人間はいないが、逆にそれに驚いた。今巻でローランドの宿敵ウォルターが実は小物であったという事実と、あまりにあっけなく殺されてしまったのは意外すぎ。
 この話で「アトランティスのこころ」に登場したブローティガンが登場。あの話でも強制的に異世界に連れて行かれたが、それがここだと言うことか。
<A> <楽>
08'11'26 暗黒の塔 中 ダークタワーVII
 ビームを建て直し塔を解放する。ビームの破壊者の中で仲間を見つけなんとかビームの破壊を止めることが出来たガンスリンガー。それを確認したローランドは、今度は事故で死のうとしているキングの命を救うために1999年のメイン州へと向かった。だが、その過程で仲間が一人ずつ減っていく…

 絶望的な状況から始まったこの物語もいくつかの幸運を得て少しずつ事態は好転していく。だが犠牲も大きく、この巻ではエディとジェイクという二人の仲間が死んでしまうことになった。いよいよここから最終巻へと物語は進んでいくことになる。
<A> <楽>
08'12'20 暗黒の塔 下 ダークタワーVII
 エディとジェイクを失ったローランドとスザンナは、ただひたすら暗黒の塔へと向かう。暗黒の塔で待つクリムゾンキングとローランドの宿命の対決の行方は?そして塔の中には一体何が待っているのか…

 約30年に及ぶ著者のライフワークもこれにて完結。しかし、このオチはあまりにも強烈すぎた。延々と続いてきて、オチはこれかよ!意外と言うよりも呆れてしまったけど、逆にこれで今までの物語の幸運続きの理由も明らかになった訳だな。ここまでのパワーでよくぞ書き上げてくれたものだ。少なくともたった一つ、その天に関してだけは確かに凄い。
<A> <楽>

 

ザ・スタンド

04'09'04 ザ・スタンドI
 政府の防疫施設から一人の男が逃亡した。それが世界を覆う悲劇の始まり。たった一人の人間がまき散らした殺人ウィルスがあっという間に全米を覆い尽くす。その悲劇の中、ほんの僅かな人間だけが生き残っていく。その悲劇を描く。

 これが発表されたのは1990年。著者が最も脂の乗った時期であり、実際これが多分最後の“らしい”作品となったんじゃないだろうか?
 世界の終わりの話で、小松左京の「復活の日」を思わせる内容っぽいが、こちらは流石にキング。モロにホラー仕立てで、全く違った切り口で、読み応えもあり、とても楽しめる。本巻はあくまで終末の前の話だが、ここに登場する人物達が一体どのように絡んでいくのか、とてもたのしみである。
<A> <楽>
04'09'16 ザ・スタンドII
 猛威を振るったスーパー・フルーによって99%以上の人間が死に絶えた荒廃した世界。残された者達はやがて小さなグループにまとまっていくが、彼らは一様に二種類の夢を見るようになっていった。その片方の夢の中心となっているのはネブラスカ州に住む老女マザー・アバガイル。彼女のいる地を目指して進む人の群れ。一方、ラスヴェガスでは“闇の男”フラッグを中心とした町が出来つつあった。

 一巻目で病気と闘う人々の姿を描き、二巻で一転。その後の話に持ってきている。著者らしいケレン味に満ちたサバイバル紀行。廃虚の中で生き残りを賭けた人間の努力が描かれるが、この描写が大変おもしろい。イメージが膨らむよ。
<A> <楽>
04'09'23 ザ・スタンドIII
 アメリカ国内で生き残ったもの達は、やがて二つの町へと集結していく。一方はマザー・アバガイルを中心とした平和な町コロラド州ボールダーに、そしてもう一方は闇の男フラッグを頂点とする暴力の町ラスヴェガスへ。なんとかボールダーに秩序を与えようとするアバガイルのこども達の姿を描く。

 荒廃後の地上に再び秩序をもたらそうとする努力。こう言うのが私は大好き。政治組織とか、細かい生活がどうなってるのか、そんなことを自分でもよく考えるから。特に著者の場合、そう言う能力に長けているので、読んでいて実に楽しい。
<A> <楽>
04'10'27 ザ・スタンドIV
 フリーゾーンの精神的柱であるマザー・アバガイルの突然の失踪。そして委員会の設置により街の機能を取り戻し始めていた。だが、その委員会に対し暗い情熱を抱くハロルドとナディーンの二人が結託した。“闇の男”フラッグの波動を受けた二人が行ったこととは?そして徐々に明らかになっていく闇の軍勢とは…

 街作りが行われるのと同時にやってくる戦いの予兆。これはなかなかじっくりと読ませる話となった。上昇志向と、これからの戦いとの兼ね合いのバランスが巧い。
 ただ、キング自身の最近の作品に現れる善悪二元論の萌芽がここにも見られる。確かにこれがバランスを取っていた最後の作品だったのかも知れない。
<A> <楽>
04'12'03 ザ・スタンドV
 ゾーンからラスヴェガスに送り込んだスパイは次々と見破られ、粛正されていった。その中、スチュー、ラリー、ラルフ、グレンの4人と犬のコジャックはマザー・アバガイルの遺言に従い、徒歩でラスヴェガスへと向かう。一体何が待つのか分からぬまま、歩みを止めない彼らだったが、同時期ラスヴェガスの主フラッグも又、自らの不調に気づかされていた…

 長かった本作もこれで完結。著者の作品では何作か「これが代表作」と言える作品があるが、本作もその中に違いない。この時が一番バランスが取れていた時期だったんじゃないだろうか?以降の作品はヴェテラン作家として地位あるものかきしてるもんな。本作が多分著者にとって最後のガチンコの作品だったんだろう。
<A> <楽>

  

エッセイ

10'07'13 死の舞踏
 世界的にホラー界のトップの地位に君臨し続ける、文字通りの“キング”である著者が、ホラー作品について、本当の恐怖とは何かを考察する講演を再構築したエッセイ集。

 著者のエッセイとは大体は小説の巻末に長々と書いているものばかり読んでいたが、実際これだけの長さで、しかも様々なメディアのホラー作品を引用して書いてくれると読みでがあってとても楽しい作品だった。結構ホラー作品も観てるつもりでいたけど、まだまだ多くの良作ホラーが世の中にはあることを再認識させてくれた。ホラー映画を語るには、読んでおいた方が良い作品の一本だろう。
 そう言えばここで著者がコミカルホラーの題材として語っていた内容はクリープショー(1982)でそのまんま映画になってるのが結構笑える。
<A> <楽>

 

その他

14'05'09 アンダー・ザ・ドーム 上
 メイン州のキャッスルロックにつながる片田舎にある町チェスターミルズは、ある日突然透明の障壁によって外界から閉ざされてしまった。その覆いから全く行き来が出来ないのみならず、空気すらほとんど通過しなかった。だがそんな町の実力者ビッグ・ジムはこの混乱に乗じ町を完全に掌握しようとしていた。たまたまこの町から出ようとしていた流れ者のデイル・バーバラは否応なく町に残ることとなってしまうのだが…

 かなり長い事積ん読になっていた作品だったが、やっと手を付けることが出来た。小松左京の「首都消失」をアメリカの小さな町に置き換えたような設定だが、ドームの中が話の中心になっているのが違いか。出来は文句なしに面白い。著者が「アクセル踏みっぱなし」と言っているのがよく分かる。久々に素直な気持ちで楽しめる著者作品に出会えた感じがする。
<A> <楽>
14'06'22 アンダー・ザ・ドーム 下
 “ドーム”に覆われたチェスターミルズでは、ビッグ・レニーが独裁者として君臨していた。そのための目障りな存在とされたデイル・バーバラは無実の罪を着せられ、刑務所に入れられてしまう。そのデイルに依頼されたラスティは“ドーム”の中心に向かうが…

 実に読み応えのある作品で、特に後半部分はほとんど一気読み。ここまで集中して読んだのは久しぶり。これまでの著者の作品の多くは明確な主人公がいたが、この作品は群像劇となっていて、それでもきちんと作品が構成されているのが凄い。
<A> <楽>
09'02'20 回想のビュイック8 上
 ペンシルヴェニアの田舎町にある警察署の倉庫には長年ビュイック8が置かれていた。20年以上もの間、全く誰も乗ることがないのに新品同様のこれが何故こんな所に置いてあるのか。事故死した署員の息子ネッドに署長のサンディが語る、ネッドの父カートとこのビュイック8との関わりとは。

 どこか「クリスティーン」の設定を流用したようなところもある作品だが、語り口のなめらかさは明らかにこちらの方が上。特に前編である本作はホラー性とか全くないのに、内容も読み込ませてくれてる。
<A> <楽>
09'04'10 回想のビュイック8 下
 警察署に置かれている謎の物体ビュイック8。語り始めたサンディは止めることが出来ずにネッドに全てを話してしまうのだが、それはネッドにとっては、父親の仇を知らされるようなもので、どんどん心を蝕んでいく。

 過去と現在を行き来する「グリーンマイル」っぽい話だが、色々な意味で謎が一切解けないまま終わってしまうと言う、妙な話になってしまった。これはこれで面白いのだけどね。
 ちなみにこの作品は、著者が自動車事故で生死の境を彷徨った後の復帰作になるのだそうだが、それで車を題材にするってのは興味深い。
<A> <楽>
20'10'03 クラウチ・エンドの怪
 ロンドンの外れにあるクラウチ・エンドの交番に配置されたばかりのファーナムは、アメリカ人旅行者から、通りの向こう側で夫が消えたという話を延々と聞かされうんざりしていた。先輩の巡査によると、この通りでは時折このようなことが起こるという。それを一笑に付すファーナムだが…

 著者が挑んだ神話大系作品。いつものモダンホラーの作風を捨ててゴシックホラーにこだわって描いたが、当然質は高い。もうちょっと長ければ良かった。
<A> <楽>
09'04'24 幸運の25セント硬貨
 著者による最新短編集。「なにもかもが究極的」「L・Tのペットに関する御高説」「道路ウィルスは北にむかう」「ゴーサム・カフェで昼食を」「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」「一四〇八号室」「幸運の25セント硬貨」の7編を収録する。

 最近の著者の作品はホラーから離れたものが多いが、短編となると、まだまだ純粋なホラーも描いているようで、この作品の半分ほどは完全なるホラー作品となっている。やっぱり著者の作品で一番面白いのはホラーにこそあるな。このうちいくつかはテレビドラマで観たけど、そう言えば「一四〇八号室」は映画になっていたはず。今度レンタルしてみることにしよう。
<A> <楽>
04'01'23 サン・ドッグ Four Past Midnight4
 15歳の誕生日にケヴィンは念願のポラロイドカメラをプレゼントとしてもらった。喜んだケヴィンは早速撮影してみるが、現像されて出てきた写真には、どれも彼の全く知らない犬ばかりが映っていた。しかも写真を撮るごとにその犬は近づいてくる…

 Four Past Midnightの最終話。これは純然たるホラー小説としてしあがったなかなかの力作。「ニードフル・シングス」で崩壊するキャッスルロックが舞台(ここは「スタンド・バイ・ミー」「ダーク・ハーフ」の舞台でもある…アメリカの映画スタジオでキャッスルロックというのはこれが元)。それを知って読むとなかなか楽しいものがある。
 ただ、恐怖と共に犬が近づいてくると言うのは確かラヴクラフトの作品(「妖犬」だったか?。後のクトゥルー神話においては“ティンダロスの猟犬”とされている)であったが、なんか構造的にはよく似ている。著者はラヴクラフトの大ファンのはずだから、元ネタは知っていたはずだし…パクりと言っちゃいけないだろうけど、確信犯だろう(笑)
<A> <楽>
02'10'25 ジェラルドのゲーム
 湖水の別荘へ週末バカンスを楽しみに来たジェラルドとジェシーの夫婦。ジェラルドはジェシーを手錠でベッドに括り付けたのだが、その直後心臓発作で死んでしまう。手錠を付けられたまま残されたジェシーの恐怖の時間を克明に描く。

 凄い作品だった。同じような話は著者の「ミザリー」でもあったが、ある意味それより凄い。なにせベッドからたった一人、全く動くことが出来ない人物の話で長編一本描ききってしまうのだから。著者の力量にはほとほと感服する。
 ネタバレになるので、具体的には言えないが、後半のあるシーンは凄まじいほどの“痛み”を感じることが出来た。特に没入していた私はとても一気に読むことが出来ず、ちょっと読んでは本を置き、深呼吸をしてから又読み返す。と言う作業を繰り返した。本当に凄い作家だ。
<A> <楽>
19'09'03 素晴らしき結婚生活
 結婚26年を迎えるボブとダーシーの夫婦。結婚生活の中でいくつかの危機はあったものの、概ね夫婦仲は良好で、二人の子どもも独立し、老後の話題が出るようにもなっていた。そんなある日、ダーシーは夫のボブの秘密を知ってしまう。

 中編集“Full, Dark, No, Star.”からの一本。これも超常現象は一切起こらないが、夫が殺人鬼であることが分かってしまった妻の苦悩と、そんな夫とどう接していくかを緊張感溢れる描写で描く。これもひょっとして映画になってるか?と思ったら、やっぱりなってた。
<A> <楽>
09'05'06 セル 上
 ある日の昼下がりのボストン。その時携帯電話を使っていた全ての人々が突如理性をかなぐり捨てて周囲の人間を襲いだした。目前で展開する凄惨な光景に、仕事で来ていたグラフィックアーティストのクレイは呆然するばかりだった。しかし、危害が自分に及ぶに至り、生き残るための戦いが開始される。

 冒頭部分からの展開はかなり「ザ・スタンド」によく似ていて、実際パターンもかなり同じ。さて、ここから本作独自の個性を出すことが出来るやら。後半に期待しよう。
<A> <楽>
09'05'16 セル 下
 携帯によって変えられてしまった人間達から逃れ、生き延びるためにクレイはトムとアリスという二人の仲間と行動を共にすることになる。彼らの観ている前で少しずつ変化していく携帯人たち。彼らの行動は統一されていき、更にテレパシーまで使えるようになっていった。それに気づいたクレイは、世界を守るためにも行動を起こさねばならないを知る…

 同系統だと思われた「ザ・スタンド」とは話の展開はやや異なったものとなり、質的にも違いがあるものの、これはこれでアクション主体で読み込ませてくれる。映画化されやすい素材だけど。
<A> <楽>
10'08'04 第四解剖室
 著者による短編集。「第四解剖室」「黒いスーツの男」「愛するものはぜんぶさらいとられる」「ジャック・ハミルトンの死」「死の部屋にて」「エルーリアの修道女」の6篇を収録する。

 「幸運の25セント硬貨」と対になる著者の短編集。著者の短編は読み応えがあるしストーリープロットもしっかりしているので面白い作品に仕上がってる。著者は長編作家と見られてるけど、短編の名手でもある。
<A> <楽>
10'04'13 タリスマン 上
 “B級映画の女王”を母に持つ12歳の少年ジャック・ソーヤーは、癌に冒されている母と共に東海岸の保養地にいた。そんなある日、ソーヤーはスピーディというアフリカ系アメリカ人と出会い、その時に一つの使命を与えられる。実はこの世界に並行する“テリトリー”と呼ばれる地があり、そこでソーヤーの母に対応する女王が死にかかっているというのだ。女王と母を同時に救うためにはこの世界の西海岸にあるという“タリスマン”が必要だというのだ。テリトリーと現実世界にまたがってのソーヤーの旅が始まった。

 お互いリスペクトしあいながら全く文体が異なるという二人の作家による合作ファンタジー。ただ、これは全く甘くない。本当に死人も出るし、少年の責任というのも真っ正面から描いているのが凄い所。
 これも又、随分前に買った作品なのだが、ようやく積ん読から救出することが出来たよ。
<A> <楽>
10'04'17 タリスマン 下
 女王を亡き者にし、テリトリーとこの世界を手中に入れようとしているスロート=ブローンの追及をかわしつつ、ジャックの“タリスマン”探求の旅は続く。闇の力は幾度となくジャックに追いつきつつあり、折角出来た友達も失いつつボロボロになりながらも続くジャックの旅を描く。

 甘くないファンタジーの続編。タリスマンを得ることが一応の目的ではあるのだが、それで物語が終わる訳ではない。その辺の丁寧さがなかなか良い感じ。どっちかというと後年のキング作品に近い作りではあるな。
<A> <楽>
03'05'15 デッド・ゾーン
 優秀な高校教師ジョンは恋人のセーラとある夜町のカーニバルに出掛け、そこで<運命の車>というルーレットに挑戦し、500ドルを超える儲けを得た。だが、その夜ジョンは交通事故に遭ってしまい、4年半も意識不明の重体となる。誰もが諦めていた彼は、しかし再び起きあがった。ただし、事故後の彼は今までとは少し違っていた…

 先日著者の最新作「ドリーム・キャッチャー」を読んで、それでちょっと不完全燃焼を感じてしまったので、昔に読んだ本作を引っ張り出してみた。
 やっぱ良いわ。この時代のキング作品は行間から“きらめき”が見えてくるような気がする。
 ホラーの帝王と呼ばれるキングだが、結構色々な範囲で作品を描いている。その中でも特に超能力者の悲劇についてはかなりの数の作品があるが(デビュー作の「キャリー」もそうだし、「シャイニング」「ファイア・スターター」もそうだ)ただ、何故かこれらも“ホラー”に括られてしまっている。多分本作も広義においては“ホラー”なんだろう。
 でもこれはホラーと言うよりは、あまりに悲しい話だ。
 全てに捨てられ、その悲しみの中でも、最大限世界を救う努力をする男。泣けるよこれは。

<A>
<A>
<楽>
18'03'23 ドクター・スリープ 上
 オーバールック・ホテルの惨劇から生還したウィンディ・トランスとダンの母子。それから10数年後、ダンはPTSDから逃れるために酒浸りの生活を送り、アメリカ中を彷徨っていた。そんなダンがたまたまバスを降りたニューハンプシャー州の小さな町フレイジャー。そこでダンほどではないが、“かがやき”を持つ年配者と知り合いとなり、そこから新しい人間関係を構築していくことになった。そして実はこの町には、最強の“かがやき”を持つ女の子、アブラが生まれていた…

 「シャイニング」の出来事から30年後を描く話。あんな純粋なダニーがここまで落ちぶれたかと驚きの冒頭から、最低からの出発と天職にありついていく。ある種のビルドゥングスロマンなんだが、それだけでは終わらない。やはり“Shinig”が関わってくるホラーっぽい話になってきた。
<A> <楽>
18'03'26 ドクター・スリープ 下
 AA(Alcoholics Anonymous)に通い、ホスピス病棟の看護師としての職を得たダンは無事アルコールを遠ざけつつ日々充実した日々を送っていた。だが同じ町に強い“かがやき”を持つ少女アブラがいることには気づいており、そしてその強大な力は“かがやき”を栄養源とする吸血鬼の一族“真結族”に狙われることとなる。アブラを守るため、真結族と戦う事を決意するダンだが…

 “Shining”を持つもの同士、年齢を超えたバディものの作品と言った風情。物語単体としても充分に面白く、「シャイニング」続編としても納得のいく出来。これも映画化するらしいけど。
<A> <楽>
04'01'20 図書館警察 Four Past Midnight3
 ジャンクションシティの不動産バイヤー、サムは友人から突然ロータリー・クラブの講演をたのまれてしまった。断り切れずにそれを引き受けたサムは、久しく行ってなかった図書館に足を踏み入れた。図書館司書のアーデリアという女性から推薦を受けた本を借り、それを用いて講演は大成功を治めたのだが、借りた本を紛失してしまう。そしてその夜、彼の前に現れたのは、図書館警察。それは彼の子供の頃の恐怖そのものの形を取って現れた…

 本作Four Past Midnightは中編集で、4作の中編を収録するが、これが一番面白かった…と言うより、怖かった。
 私の故郷の田舎には図書館というのは無かったのだが、公民館に図書室というのがあった。公民館だけに、殆どそこには職員などおらず、好き放題に本を借りたもので、ジュブナイルや探偵小説、冒険小説など、子供が読める本はことごとく借りたものだ(私がホラー小説が好きになったのは、ここで江戸川乱歩や横溝正史に出会ったから…しかし、小学生で読む内容じゃなかったよな)。
 しかし、職員がいないと言うことは、黙って借りたとしても、誰もとがめる人がいないってことでもある…私の実家には、借りっぱなしになってる本が10冊ほど…(笑)
 本作は主人公サムの子供の頃のトラウマについて述べられているが、その意味では、これは私自身のトラウマでもあった。ホラー小説の場合、主人公と自己同化出来た時が本当に怖さを感じる訳で、マジで怖い思いをした。
 …念のため、私は未だ図書館警察とは出会ってません(書いておかないと、いらん誤解を受ける可能性があるから(笑))
<A> <楽>
10'11'21 トム・ゴードンに恋した少女
 メイン州の外れにあるアパラチア自然遊歩道にピクニックへと連れてこられた9歳の少女トリシア。離婚したばかりの母と兄の口論にうんざりして、二人に黙って少し遠くへ用を足しに行ったところ、帰り道が分からなくなってしまった。やがて完全に遭難してしまったトリシアにとって、唯一の救いはボストン・レッドソックスのトム・ゴードンの空想だけだった。

 少女版「ジェラルドのゲーム」と言った風情で、この二冊には色々と共通項が見受けられる。著者自身にとって、誰もいないところに放り出されるというのが、そのままホラー的な描写になってるのかも知れない。
<A> <楽>
07'06'28 ドランのキャデラック
 著者による3冊目の短編集「Nightmares&Dreamscapes」の四分冊の一巻。「ドランのキャデラック」「争いが終わるとき」「幼子よ、われに来たれ」「ナイトフライヤー」「ポプシー」「丘の上の屋敷」「チャタリー・ティース」の7編を収録する。

 著者の長編は確かに面白いのだが、短編は短編で味わいがあるものが多い。特に著者の実力だと別段ホラーに頼る必要は無いし、良作も多い。本作の場合はややホラー寄りの作品が多かったけど、一番面白かったのは表題作の「ドランのキャデラック」だった。
<A> <楽>
03'04'21 ドリーム・キャッチャー
 デリーで少年時代を過ごした仲良し4人組。ヘンリー、ジョーンジー、ビーヴァー、ピート。彼等は少年時代、ダディッツという少年と知り合うことにより、他の人にはない能力を持つようになっていた。大人になった彼等はそれぞれの生活に悩みを持ちつつも、毎年冬に狩りのため集まっていたのだが、その年、彼等が狩りの中で遭遇したものは…

 映画公開が近いというので大急ぎで読み切った作品なのだが、出来としては今ひとつと言ったところか。著者らしい描写もあるんだけど、切り口がどうも通俗極まりなく、ストーリーもなんか著者っぽくないというか、あまりおもしろみが感じられない(バックマン名義での最新作「レギュレイターズ」のストーリーにもどことなく似ているので、そこもちょっと評価を低くしたくなる点。
 視覚的には映えるところが多いので、映画向きかな?映画を楽しみにしよう(とか言って、もう公開されてるんだけど)
<A> <楽>
07'01'25 ドロレス・クレイボーン
 大金持ちの寡婦ヴェラ・ドノヴァンの殺人容疑で事情聴取を受ける家政婦ドロレス。彼女は事件に先立つ、自らの半生を語り出した。苦しい結婚生活からどのようにして抜け出したのか、そしてヴェラに対し、彼女がやった真実とは…

 「ジェラルドのゲーム」の姉妹編にあたる作品で、基本的には物語には関わりがないけど、同じ日に、同じ島で日蝕を見たというジェシーもほんのちょっとだけ出てくる。考えてみると、近親相姦をテーマにして、設定にも共通が見られるな。ホラーとは違うけど、どっしりとした読み応えのある作品。
<A> <楽>
04'04'04 呪われた町
 メイン州にある田舎町のセイラムズ・ロット。この地に建つマースティン館はかつて殺人鬼が住んでいたという曰くがあった。マースティン死して後、呪いがかかっていると噂されるその館に新しい住人がやってきた。それと丁度同じ時期に駆け出しの小説家で、かつてこの街に住んでいたベンが小説の題材を求めてやってきていた。そこでベンが見たもの、そして否応なく彼が戦わねばならなくなったものとは…

 著者のデビュー2作目の作品。著者のファンを自称する私なのに、何とこの時まで全くの手つかず。自分でも意外だった(買ったのは大分早くのはずなんだが、持ってることで満足してた)。
 意外なのは、著者がこんなに正統的なホラー作品を描いてたという事。勿論著者はホラー作家として有名だから、ホラー作品も多いけど、独特のタッチというものがある。デビュー作の「キャリー」でも、その独自性がビンビンに伝わったものだが、本作はオーソドックスすぎて、かえって拍子抜けしてしまった感じ。
 どうしても読んでいて思ったのは、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)だったりするが、それも無理ないか。
 悪いとは言わないんだけど、オリジナリティがここまで無いと、ちょっと厳しいか。
<A>
<A>
<楽>
19'08'28 ビッグ・ドライバー
 探偵小説家としてそこそこ名の売れているテスは隣の州の図書館からの依頼で講演を行った。その帰り道で事故に遭い、それを待ち構えていた大男にレイプされてしまう。命の危機から生還したテスはショックでしばし何もできないままだったが…

 中編集“Full, Dark, No, Star.”からの一本。スーパーナチュラルが一切ないが、ものすごい迫力の作品で、読んでるだけで痛い。更に言えば暗い快感を同時に与えてくれる。かなり面白い。
<A> <楽>
04'01'15 秘密の窓、秘密の庭 Four Past Midnight2
 妻と離別し、一人別荘に閉じこもった作家モートの所に一人の男が訪ねてきた。ジョン=シューターと名乗るその男はモートに自作の原稿を突きつけ、かつてモートの描いた作品が自分の盗作であると決めつける。その嘘を暴くべく、活動を始めるモートだが…

 前作「ランゴリアーズ」が自身の中編「霧」によく似た作品だったのに対し、本作はアナザー・「○ー○・○ー○」と言える作品(オチをばらしてしまうので、敢えて伏せ字で)。完成度で言えばやっぱりオリジナルの方が良かったけど、こっちはよりソリッドにテーマが絞り込まれているので、これはこれで楽しめたな。ただ、途中でオチ部分が分かってしまう描写はいかがなものか…
 うう、書きたいことはあるんだけど、何か書くとオチが分かってしまうから書けない…(笑)
<A> <楽>
12'04'21 不眠症 上
 メイン州デリーに住む老人ラルフは妻キャロラインの死を看取った後、不眠症に悩まされ始めた。折しもデリーは女性の中絶を認めるかどうかで大揺れで、ひょんなことからラルフは中絶反対論者のエド・ディープノーから目を付けられてしまった。どんどん不眠症が悪化するラルフは、ある時から人間を取り巻く不思議な光を見るようになるのだが…

 著者在住のメイン州を舞台にした話。内容がとにかく詰まっている感じで、読むのに非常に労力がかかってしまった。
 そう言えば本作の舞台はメイン州ではあるがキング得意のキャッスル・ロックではなく「IT」の舞台となるデリー。これが書かれていたのは、確かキングが事故に遭った頃。「暗黒の塔」と並行して書かれているんだよな。
<A> <楽>
12'04'23 不眠症 下
 不眠症が進み、人のオーラが見えるようになったラルフ。しかし同じ症状を持っているのは彼だけではなかった。近くに住む老女ルイスも又同じ悩みを抱えていたのだ。そんな二人が出会った医者の姿をした超自然の存在は、二人に氏名があることを告げる。これからデリーで起ころうとしている大量殺人を防ぐため。とりわけその中に含まれる“運命の子”を救うため…

 結果として言えば、老人版「デッドゾーン」のような話になっていた。後半の疾走感は流石に著者と言った感じ。この作品の時点ではやはり「暗黒の塔」の影響は強いらしく、「暗黒の塔」ラスト近くと重なっている部分もあり。
<A> <楽>
03'12'17 骨の袋
 人気小説家のヌーナンは妻のジョアンナの事故死と共に、深刻なライターズ・ブロックとなってしまう。妻の死を悼みながら四年をほぼ無為に過ごした彼はある時から夢で不思議な光景を見るようになった。かつてジョーと共に購入した別荘“セーラ・ラフス”。そこにまつわる恐ろしい夢を…そして引き寄せられるように別荘に向かったヌーナンはそこでマッティとカイラという母娘と出会う。義父のデヴォアとカイラの親権を争っているマッティの後援を自ら買って出たヌーナンだったが、このことは彼の血にまつわる、恐ろしく忌まわしい過去を暴き出すことに…

 ここのところ著者の作品はどうも好みから外れたものばかりだったが(途中で「デッドゾーン」を読み返して、改めて初期の作品は素晴らしいとも思いつつ)、これは久々のスマッシュヒット。初期のキングらしさ(私の好みと言うべきか?)がうまいところ出ていて、読むのを止めることが出来なかった。ほんとに久々のホラーって感じで充分堪能。「ダークハーフ」の時もだったが、作家を主人公にすると、切実度が見えたりもして、そう言う意味でも楽しめた。
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17'01'12 ミスター・メルセデス 上
 刑事として長年街を守り続け、無事退職を迎えたビル・ホッジス。することが無くなってしまい、生きる気力も徐々に失われてしまう日々の中、彼の家に一通の手紙が投函された。それはホッジスが現役時代に起こった、8人の人間が同時に轢き殺した事件の犯人によるものだった。迷宮入りとなったこの事件を独自に捜査することを決めたホッジス。一方その犯人ブレイディ・ハーツフィールドは、ホッジスを打ちのめして自殺を促そうとしたのが当てが外れてしまう。そこで本当にホッジスを殺す計画を立て始めていた。

 著者の初となる本格推理小説。正直なことを言わせてもらうと、著者のファンタジックな作品はもうあんまり読む気がしなくなってた所だが、これは本当に面白かった。まだまだこんな引き出しがあったことに驚かされる一方、これまで書かれてきた作品にも、確かにこう言った推理に関わる物語も多かったから、慣れってのもあったんだろうな。
<A> <楽>
17'01'18 ミスター・メルセデス 下
 ミスター・メルセデスと呼ばれた大量殺人犯ブレイディ・ハーツフィールドはビル・ホッジスを自殺に追い込む為様々な罠を仕掛けるのだが、ことごとくもくろみは外れ、最後に誤って自分の母親まで殺してしまう羽目に陥る。自分を含めて全てを終わらせるため、街で行われるコンサート会場で自爆テロを敢行しようとするブレイディ。一方、独自にミスター・メルセデスを追うホッジスは、友人たちの力を借り、その目的を追跡する。

 完結編となる後編だが、読みやすい上に展開が見事で、ほぼ一気読みで読み切ってしまった。これが初めての推理小説とは思えないほどの完成度だ。
<A> <楽>
04'01'11 ランゴリアーズ Four Past Midnight1
 旅客用ジェット機のパイロット、ブライアンは別れた妻の急死の報を受け取り、フライト先のロサンジェルスから急遽、乗客としてボストンに向かうことになった。フライト中疲れのために熟睡した彼が目覚めた時、異変を知ることになる。乗客の大部分とパイロットが機内から忽然と姿を消していたのだ。彼らは一体どこに行けば良いのか…

 長い間積ん読になっていた作品だが、偶然発掘して読んでみた。有名な「Different Season」(「スタンド・バイ・ミー」「塀の中のリタ・ヘイワース」と、映画化された名作)と同じく、4編の中編からなる作品だが、「中編」と言っても、そのボリュームは日本における長編小説を凌ぐページ数を持つ。それでどうせだから一本ずつ書いていくことにする。
 緒で著者自身が書いていたけど、雰囲気は初期中編の「霧」によく似た内容の作品。あの作品はとても好きなんだけど、本作をあれと較べてしまうと、ちょっと肩すかしにあった気分。「霧」は最後の最後まで理由も解決が無く、非常に虚しい終わり方をしているのが好きだったのだが、本作は乱暴ながらちゃんと理由が付けられてるし、ラストもすっきりしすぎて。
 前半は無茶苦茶楽しかった分、ちょっと私の中では不完全燃焼っぽい。
 どうでも良いことかも知れないけど、これって『ウルトラQ』「206便消滅す」に物語が酷似してるような…
<A> <楽>
11'12'21 リーシーの物語 上
 著名な作家の夫スコットを亡くし、2年が経ってもまだその傷が癒えない妻のリーシー。そんな彼女の元にはスコットの原稿を管理させてくれと言う連絡がいくつも入っていたのだが、その中には脅迫じみたものが入っていた。そんな時、リーシーは姉アマンダが書いていたメモの中にスコットの筆跡が混じっていることに気づく…

 まるで著者自身を思わせる夫が亡くなった時、どうなるのかということをややホラー調に描いた女性の物語。一度大怪我をした著者だからこそ描けた作品なのかも知れない。
 そう言えばこの作品の舞台となっているのはやっぱりキャッスル・ロックだった。「ニードフル・シングス」で破壊されたはずだが、いつの間に又復活したんだろう?
<A> <楽>
11'12'23 リーシーの物語 下
 暴力的なストーカーによって傷つけられ、亡き夫スコットの原稿を差し出すように脅迫を受けたリーシー。絶望的な状況の中、リーシーはかつてスコットが連れて行ってくれたこの世ならぬ清浄な土地“ブーヤ・ムーン”の事を思い出した。スコットの力を借りずにそこにたどり着けるかと挑戦するリーシーだったが…

 これまで著者が描いてきた「ドロレス・クレイボーン」や「ローズ・マダー」に近い、女性を主人公とした物語。様々な足跡を再びひとまとめにしたような作品でもあり。
 やや普通の物語っぽかった上巻と較べ、後半になってやはり話はファンタジックなものへと変貌した。ある意味小説家の創作の原点と言うものについて突き詰めて考えた物語とも言えるだろう。実際ブーヤ・ムーンというのは誰にでも行ける場所なのだ。ただ作家はそれを開く方法を知っているだけで。
<A> <楽>