14'05'09 |
アンダー・ザ・ドーム 上
メイン州のキャッスルロックにつながる片田舎にある町チェスターミルズは、ある日突然透明の障壁によって外界から閉ざされてしまった。その覆いから全く行き来が出来ないのみならず、空気すらほとんど通過しなかった。だがそんな町の実力者ビッグ・ジムはこの混乱に乗じ町を完全に掌握しようとしていた。たまたまこの町から出ようとしていた流れ者のデイル・バーバラは否応なく町に残ることとなってしまうのだが…
かなり長い事積ん読になっていた作品だったが、やっと手を付けることが出来た。小松左京の「首都消失」をアメリカの小さな町に置き換えたような設定だが、ドームの中が話の中心になっているのが違いか。出来は文句なしに面白い。著者が「アクセル踏みっぱなし」と言っているのがよく分かる。久々に素直な気持ちで楽しめる著者作品に出会えた感じがする。 |
|
|
|
14'06'22 |
アンダー・ザ・ドーム 下
“ドーム”に覆われたチェスターミルズでは、ビッグ・レニーが独裁者として君臨していた。そのための目障りな存在とされたデイル・バーバラは無実の罪を着せられ、刑務所に入れられてしまう。そのデイルに依頼されたラスティは“ドーム”の中心に向かうが…
実に読み応えのある作品で、特に後半部分はほとんど一気読み。ここまで集中して読んだのは久しぶり。これまでの著者の作品の多くは明確な主人公がいたが、この作品は群像劇となっていて、それでもきちんと作品が構成されているのが凄い。 |
|
|
|
09'02'20 |
回想のビュイック8 上
ペンシルヴェニアの田舎町にある警察署の倉庫には長年ビュイック8が置かれていた。20年以上もの間、全く誰も乗ることがないのに新品同様のこれが何故こんな所に置いてあるのか。事故死した署員の息子ネッドに署長のサンディが語る、ネッドの父カートとこのビュイック8との関わりとは。
どこか「クリスティーン」の設定を流用したようなところもある作品だが、語り口のなめらかさは明らかにこちらの方が上。特に前編である本作はホラー性とか全くないのに、内容も読み込ませてくれてる。 |
|
|
|
09'04'10 |
回想のビュイック8 下
警察署に置かれている謎の物体ビュイック8。語り始めたサンディは止めることが出来ずにネッドに全てを話してしまうのだが、それはネッドにとっては、父親の仇を知らされるようなもので、どんどん心を蝕んでいく。
過去と現在を行き来する「グリーンマイル」っぽい話だが、色々な意味で謎が一切解けないまま終わってしまうと言う、妙な話になってしまった。これはこれで面白いのだけどね。
ちなみにこの作品は、著者が自動車事故で生死の境を彷徨った後の復帰作になるのだそうだが、それで車を題材にするってのは興味深い。 |
|
|
|
20'10'03 |
クラウチ・エンドの怪
ロンドンの外れにあるクラウチ・エンドの交番に配置されたばかりのファーナムは、アメリカ人旅行者から、通りの向こう側で夫が消えたという話を延々と聞かされうんざりしていた。先輩の巡査によると、この通りでは時折このようなことが起こるという。それを一笑に付すファーナムだが…
著者が挑んだ神話大系作品。いつものモダンホラーの作風を捨ててゴシックホラーにこだわって描いたが、当然質は高い。もうちょっと長ければ良かった。 |
|
|
|
09'04'24 |
幸運の25セント硬貨
著者による最新短編集。「なにもかもが究極的」「L・Tのペットに関する御高説」「道路ウィルスは北にむかう」「ゴーサム・カフェで昼食を」「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」「一四〇八号室」「幸運の25セント硬貨」の7編を収録する。
最近の著者の作品はホラーから離れたものが多いが、短編となると、まだまだ純粋なホラーも描いているようで、この作品の半分ほどは完全なるホラー作品となっている。やっぱり著者の作品で一番面白いのはホラーにこそあるな。このうちいくつかはテレビドラマで観たけど、そう言えば「一四〇八号室」は映画になっていたはず。今度レンタルしてみることにしよう。 |
|
|
|
04'01'23 |
サン・ドッグ Four Past Midnight4
15歳の誕生日にケヴィンは念願のポラロイドカメラをプレゼントとしてもらった。喜んだケヴィンは早速撮影してみるが、現像されて出てきた写真には、どれも彼の全く知らない犬ばかりが映っていた。しかも写真を撮るごとにその犬は近づいてくる…
Four Past Midnightの最終話。これは純然たるホラー小説としてしあがったなかなかの力作。「ニードフル・シングス」で崩壊するキャッスルロックが舞台(ここは「スタンド・バイ・ミー」や「ダーク・ハーフ」の舞台でもある…アメリカの映画スタジオでキャッスルロックというのはこれが元)。それを知って読むとなかなか楽しいものがある。
ただ、恐怖と共に犬が近づいてくると言うのは確かラヴクラフトの作品(「妖犬」だったか?。後のクトゥルー神話においては“ティンダロスの猟犬”とされている)であったが、なんか構造的にはよく似ている。著者はラヴクラフトの大ファンのはずだから、元ネタは知っていたはずだし…パクりと言っちゃいけないだろうけど、確信犯だろう(笑) |
|
|
|
02'10'25 |
ジェラルドのゲーム
湖水の別荘へ週末バカンスを楽しみに来たジェラルドとジェシーの夫婦。ジェラルドはジェシーを手錠でベッドに括り付けたのだが、その直後心臓発作で死んでしまう。手錠を付けられたまま残されたジェシーの恐怖の時間を克明に描く。
凄い作品だった。同じような話は著者の「ミザリー」でもあったが、ある意味それより凄い。なにせベッドからたった一人、全く動くことが出来ない人物の話で長編一本描ききってしまうのだから。著者の力量にはほとほと感服する。
ネタバレになるので、具体的には言えないが、後半のあるシーンは凄まじいほどの“痛み”を感じることが出来た。特に没入していた私はとても一気に読むことが出来ず、ちょっと読んでは本を置き、深呼吸をしてから又読み返す。と言う作業を繰り返した。本当に凄い作家だ。 |
|
|
|
19'09'03 |
素晴らしき結婚生活
結婚26年を迎えるボブとダーシーの夫婦。結婚生活の中でいくつかの危機はあったものの、概ね夫婦仲は良好で、二人の子どもも独立し、老後の話題が出るようにもなっていた。そんなある日、ダーシーは夫のボブの秘密を知ってしまう。
中編集“Full, Dark, No, Star.”からの一本。これも超常現象は一切起こらないが、夫が殺人鬼であることが分かってしまった妻の苦悩と、そんな夫とどう接していくかを緊張感溢れる描写で描く。これもひょっとして映画になってるか?と思ったら、やっぱりなってた。 |
|
|
|
09'05'06 |
セル 上
ある日の昼下がりのボストン。その時携帯電話を使っていた全ての人々が突如理性をかなぐり捨てて周囲の人間を襲いだした。目前で展開する凄惨な光景に、仕事で来ていたグラフィックアーティストのクレイは呆然するばかりだった。しかし、危害が自分に及ぶに至り、生き残るための戦いが開始される。
冒頭部分からの展開はかなり「ザ・スタンド」によく似ていて、実際パターンもかなり同じ。さて、ここから本作独自の個性を出すことが出来るやら。後半に期待しよう。 |
|
|
|
09'05'16 |
セル 下
携帯によって変えられてしまった人間達から逃れ、生き延びるためにクレイはトムとアリスという二人の仲間と行動を共にすることになる。彼らの観ている前で少しずつ変化していく携帯人たち。彼らの行動は統一されていき、更にテレパシーまで使えるようになっていった。それに気づいたクレイは、世界を守るためにも行動を起こさねばならないを知る…
同系統だと思われた「ザ・スタンド」とは話の展開はやや異なったものとなり、質的にも違いがあるものの、これはこれでアクション主体で読み込ませてくれる。映画化されやすい素材だけど。 |
|
|
|
10'08'04 |
第四解剖室
著者による短編集。「第四解剖室」「黒いスーツの男」「愛するものはぜんぶさらいとられる」「ジャック・ハミルトンの死」「死の部屋にて」「エルーリアの修道女」の6篇を収録する。
「幸運の25セント硬貨」と対になる著者の短編集。著者の短編は読み応えがあるしストーリープロットもしっかりしているので面白い作品に仕上がってる。著者は長編作家と見られてるけど、短編の名手でもある。 |
|
|
|
10'04'13 |
タリスマン 上
“B級映画の女王”を母に持つ12歳の少年ジャック・ソーヤーは、癌に冒されている母と共に東海岸の保養地にいた。そんなある日、ソーヤーはスピーディというアフリカ系アメリカ人と出会い、その時に一つの使命を与えられる。実はこの世界に並行する“テリトリー”と呼ばれる地があり、そこでソーヤーの母に対応する女王が死にかかっているというのだ。女王と母を同時に救うためにはこの世界の西海岸にあるという“タリスマン”が必要だというのだ。テリトリーと現実世界にまたがってのソーヤーの旅が始まった。
お互いリスペクトしあいながら全く文体が異なるという二人の作家による合作ファンタジー。ただ、これは全く甘くない。本当に死人も出るし、少年の責任というのも真っ正面から描いているのが凄い所。
これも又、随分前に買った作品なのだが、ようやく積ん読から救出することが出来たよ。 |
|
|
|
10'04'17 |
タリスマン 下
女王を亡き者にし、テリトリーとこの世界を手中に入れようとしているスロート=ブローンの追及をかわしつつ、ジャックの“タリスマン”探求の旅は続く。闇の力は幾度となくジャックに追いつきつつあり、折角出来た友達も失いつつボロボロになりながらも続くジャックの旅を描く。
甘くないファンタジーの続編。タリスマンを得ることが一応の目的ではあるのだが、それで物語が終わる訳ではない。その辺の丁寧さがなかなか良い感じ。どっちかというと後年のキング作品に近い作りではあるな。 |
|
|
|
03'05'15 |
デッド・ゾーン
優秀な高校教師ジョンは恋人のセーラとある夜町のカーニバルに出掛け、そこで<運命の車>というルーレットに挑戦し、500ドルを超える儲けを得た。だが、その夜ジョンは交通事故に遭ってしまい、4年半も意識不明の重体となる。誰もが諦めていた彼は、しかし再び起きあがった。ただし、事故後の彼は今までとは少し違っていた…
先日著者の最新作「ドリーム・キャッチャー」を読んで、それでちょっと不完全燃焼を感じてしまったので、昔に読んだ本作を引っ張り出してみた。
やっぱ良いわ。この時代のキング作品は行間から“きらめき”が見えてくるような気がする。
ホラーの帝王と呼ばれるキングだが、結構色々な範囲で作品を描いている。その中でも特に超能力者の悲劇についてはかなりの数の作品があるが(デビュー作の「キャリー」もそうだし、「シャイニング」も「ファイア・スターター」もそうだ)ただ、何故かこれらも“ホラー”に括られてしまっている。多分本作も広義においては“ホラー”なんだろう。
でもこれはホラーと言うよりは、あまりに悲しい話だ。
全てに捨てられ、その悲しみの中でも、最大限世界を救う努力をする男。泣けるよこれは。 |
|
|
|
18'03'23 |
ドクター・スリープ 上
オーバールック・ホテルの惨劇から生還したウィンディ・トランスとダンの母子。それから10数年後、ダンはPTSDから逃れるために酒浸りの生活を送り、アメリカ中を彷徨っていた。そんなダンがたまたまバスを降りたニューハンプシャー州の小さな町フレイジャー。そこでダンほどではないが、“かがやき”を持つ年配者と知り合いとなり、そこから新しい人間関係を構築していくことになった。そして実はこの町には、最強の“かがやき”を持つ女の子、アブラが生まれていた…
「シャイニング」の出来事から30年後を描く話。あんな純粋なダニーがここまで落ちぶれたかと驚きの冒頭から、最低からの出発と天職にありついていく。ある種のビルドゥングスロマンなんだが、それだけでは終わらない。やはり“Shinig”が関わってくるホラーっぽい話になってきた。 |
|
|
|
18'03'26 |
ドクター・スリープ 下
AA(Alcoholics Anonymous)に通い、ホスピス病棟の看護師としての職を得たダンは無事アルコールを遠ざけつつ日々充実した日々を送っていた。だが同じ町に強い“かがやき”を持つ少女アブラがいることには気づいており、そしてその強大な力は“かがやき”を栄養源とする吸血鬼の一族“真結族”に狙われることとなる。アブラを守るため、真結族と戦う事を決意するダンだが…
“Shining”を持つもの同士、年齢を超えたバディものの作品と言った風情。物語単体としても充分に面白く、「シャイニング」続編としても納得のいく出来。これも映画化するらしいけど。 |
|
|
|
04'01'20 |
図書館警察 Four Past Midnight3
ジャンクションシティの不動産バイヤー、サムは友人から突然ロータリー・クラブの講演をたのまれてしまった。断り切れずにそれを引き受けたサムは、久しく行ってなかった図書館に足を踏み入れた。図書館司書のアーデリアという女性から推薦を受けた本を借り、それを用いて講演は大成功を治めたのだが、借りた本を紛失してしまう。そしてその夜、彼の前に現れたのは、図書館警察。それは彼の子供の頃の恐怖そのものの形を取って現れた…
本作Four Past Midnightは中編集で、4作の中編を収録するが、これが一番面白かった…と言うより、怖かった。
私の故郷の田舎には図書館というのは無かったのだが、公民館に図書室というのがあった。公民館だけに、殆どそこには職員などおらず、好き放題に本を借りたもので、ジュブナイルや探偵小説、冒険小説など、子供が読める本はことごとく借りたものだ(私がホラー小説が好きになったのは、ここで江戸川乱歩や横溝正史に出会ったから…しかし、小学生で読む内容じゃなかったよな)。
しかし、職員がいないと言うことは、黙って借りたとしても、誰もとがめる人がいないってことでもある…私の実家には、借りっぱなしになってる本が10冊ほど…(笑)
本作は主人公サムの子供の頃のトラウマについて述べられているが、その意味では、これは私自身のトラウマでもあった。ホラー小説の場合、主人公と自己同化出来た時が本当に怖さを感じる訳で、マジで怖い思いをした。
…念のため、私は未だ図書館警察とは出会ってません(書いておかないと、いらん誤解を受ける可能性があるから(笑))。 |
|
|
|
10'11'21 |
トム・ゴードンに恋した少女
メイン州の外れにあるアパラチア自然遊歩道にピクニックへと連れてこられた9歳の少女トリシア。離婚したばかりの母と兄の口論にうんざりして、二人に黙って少し遠くへ用を足しに行ったところ、帰り道が分からなくなってしまった。やがて完全に遭難してしまったトリシアにとって、唯一の救いはボストン・レッドソックスのトム・ゴードンの空想だけだった。
少女版「ジェラルドのゲーム」と言った風情で、この二冊には色々と共通項が見受けられる。著者自身にとって、誰もいないところに放り出されるというのが、そのままホラー的な描写になってるのかも知れない。 |
|
|
|
07'06'28 |
ドランのキャデラック
著者による3冊目の短編集「Nightmares&Dreamscapes」の四分冊の一巻。「ドランのキャデラック」「争いが終わるとき」「幼子よ、われに来たれ」「ナイトフライヤー」「ポプシー」「丘の上の屋敷」「チャタリー・ティース」の7編を収録する。
著者の長編は確かに面白いのだが、短編は短編で味わいがあるものが多い。特に著者の実力だと別段ホラーに頼る必要は無いし、良作も多い。本作の場合はややホラー寄りの作品が多かったけど、一番面白かったのは表題作の「ドランのキャデラック」だった。 |
|
|
|
03'04'21 |
ドリーム・キャッチャー
デリーで少年時代を過ごした仲良し4人組。ヘンリー、ジョーンジー、ビーヴァー、ピート。彼等は少年時代、ダディッツという少年と知り合うことにより、他の人にはない能力を持つようになっていた。大人になった彼等はそれぞれの生活に悩みを持ちつつも、毎年冬に狩りのため集まっていたのだが、その年、彼等が狩りの中で遭遇したものは…
映画公開が近いというので大急ぎで読み切った作品なのだが、出来としては今ひとつと言ったところか。著者らしい描写もあるんだけど、切り口がどうも通俗極まりなく、ストーリーもなんか著者っぽくないというか、あまりおもしろみが感じられない(バックマン名義での最新作「レギュレイターズ」のストーリーにもどことなく似ているので、そこもちょっと評価を低くしたくなる点。
視覚的には映えるところが多いので、映画向きかな?映画を楽しみにしよう(とか言って、もう公開されてるんだけど) |
|
|
07'01'25 |
ドロレス・クレイボーン
大金持ちの寡婦ヴェラ・ドノヴァンの殺人容疑で事情聴取を受ける家政婦ドロレス。彼女は事件に先立つ、自らの半生を語り出した。苦しい結婚生活からどのようにして抜け出したのか、そしてヴェラに対し、彼女がやった真実とは…
「ジェラルドのゲーム」の姉妹編にあたる作品で、基本的には物語には関わりがないけど、同じ日に、同じ島で日蝕を見たというジェシーもほんのちょっとだけ出てくる。考えてみると、近親相姦をテーマにして、設定にも共通が見られるな。ホラーとは違うけど、どっしりとした読み応えのある作品。 |
|
|
04'04'04 |
呪われた町
メイン州にある田舎町のセイラムズ・ロット。この地に建つマースティン館はかつて殺人鬼が住んでいたという曰くがあった。マースティン死して後、呪いがかかっていると噂されるその館に新しい住人がやってきた。それと丁度同じ時期に駆け出しの小説家で、かつてこの街に住んでいたベンが小説の題材を求めてやってきていた。そこでベンが見たもの、そして否応なく彼が戦わねばならなくなったものとは…
著者のデビュー2作目の作品。著者のファンを自称する私なのに、何とこの時まで全くの手つかず。自分でも意外だった(買ったのは大分早くのはずなんだが、持ってることで満足してた)。
意外なのは、著者がこんなに正統的なホラー作品を描いてたという事。勿論著者はホラー作家として有名だから、ホラー作品も多いけど、独特のタッチというものがある。デビュー作の「キャリー」でも、その独自性がビンビンに伝わったものだが、本作はオーソドックスすぎて、かえって拍子抜けしてしまった感じ。
どうしても読んでいて思ったのは、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)だったりするが、それも無理ないか。
悪いとは言わないんだけど、オリジナリティがここまで無いと、ちょっと厳しいか。 |
|
|
19'08'28 |
ビッグ・ドライバー
探偵小説家としてそこそこ名の売れているテスは隣の州の図書館からの依頼で講演を行った。その帰り道で事故に遭い、それを待ち構えていた大男にレイプされてしまう。命の危機から生還したテスはショックでしばし何もできないままだったが…
中編集“Full, Dark, No, Star.”からの一本。スーパーナチュラルが一切ないが、ものすごい迫力の作品で、読んでるだけで痛い。更に言えば暗い快感を同時に与えてくれる。かなり面白い。 |
|
|
|
04'01'15 |
秘密の窓、秘密の庭 Four Past Midnight2
妻と離別し、一人別荘に閉じこもった作家モートの所に一人の男が訪ねてきた。ジョン=シューターと名乗るその男はモートに自作の原稿を突きつけ、かつてモートの描いた作品が自分の盗作であると決めつける。その嘘を暴くべく、活動を始めるモートだが…
前作「ランゴリアーズ」が自身の中編「霧」によく似た作品だったのに対し、本作はアナザー・「○ー○・○ー○」と言える作品(オチをばらしてしまうので、敢えて伏せ字で)。完成度で言えばやっぱりオリジナルの方が良かったけど、こっちはよりソリッドにテーマが絞り込まれているので、これはこれで楽しめたな。ただ、途中でオチ部分が分かってしまう描写はいかがなものか…
うう、書きたいことはあるんだけど、何か書くとオチが分かってしまうから書けない…(笑) |
|
|
|
12'04'21 |
不眠症 上
メイン州デリーに住む老人ラルフは妻キャロラインの死を看取った後、不眠症に悩まされ始めた。折しもデリーは女性の中絶を認めるかどうかで大揺れで、ひょんなことからラルフは中絶反対論者のエド・ディープノーから目を付けられてしまった。どんどん不眠症が悪化するラルフは、ある時から人間を取り巻く不思議な光を見るようになるのだが…
著者在住のメイン州を舞台にした話。内容がとにかく詰まっている感じで、読むのに非常に労力がかかってしまった。
そう言えば本作の舞台はメイン州ではあるがキング得意のキャッスル・ロックではなく「IT」の舞台となるデリー。これが書かれていたのは、確かキングが事故に遭った頃。「暗黒の塔」と並行して書かれているんだよな。 |
|
|
|
12'04'23 |
不眠症 下
不眠症が進み、人のオーラが見えるようになったラルフ。しかし同じ症状を持っているのは彼だけではなかった。近くに住む老女ルイスも又同じ悩みを抱えていたのだ。そんな二人が出会った医者の姿をした超自然の存在は、二人に氏名があることを告げる。これからデリーで起ころうとしている大量殺人を防ぐため。とりわけその中に含まれる“運命の子”を救うため…
結果として言えば、老人版「デッドゾーン」のような話になっていた。後半の疾走感は流石に著者と言った感じ。この作品の時点ではやはり「暗黒の塔」の影響は強いらしく、「暗黒の塔」ラスト近くと重なっている部分もあり。 |
|
|
|
03'12'17 |
骨の袋
人気小説家のヌーナンは妻のジョアンナの事故死と共に、深刻なライターズ・ブロックとなってしまう。妻の死を悼みながら四年をほぼ無為に過ごした彼はある時から夢で不思議な光景を見るようになった。かつてジョーと共に購入した別荘“セーラ・ラフス”。そこにまつわる恐ろしい夢を…そして引き寄せられるように別荘に向かったヌーナンはそこでマッティとカイラという母娘と出会う。義父のデヴォアとカイラの親権を争っているマッティの後援を自ら買って出たヌーナンだったが、このことは彼の血にまつわる、恐ろしく忌まわしい過去を暴き出すことに…
ここのところ著者の作品はどうも好みから外れたものばかりだったが(途中で「デッドゾーン」を読み返して、改めて初期の作品は素晴らしいとも思いつつ)、これは久々のスマッシュヒット。初期のキングらしさ(私の好みと言うべきか?)がうまいところ出ていて、読むのを止めることが出来なかった。ほんとに久々のホラーって感じで充分堪能。「ダークハーフ」の時もだったが、作家を主人公にすると、切実度が見えたりもして、そう言う意味でも楽しめた。 |
|
|
|
17'01'12 |
ミスター・メルセデス 上
刑事として長年街を守り続け、無事退職を迎えたビル・ホッジス。することが無くなってしまい、生きる気力も徐々に失われてしまう日々の中、彼の家に一通の手紙が投函された。それはホッジスが現役時代に起こった、8人の人間が同時に轢き殺した事件の犯人によるものだった。迷宮入りとなったこの事件を独自に捜査することを決めたホッジス。一方その犯人ブレイディ・ハーツフィールドは、ホッジスを打ちのめして自殺を促そうとしたのが当てが外れてしまう。そこで本当にホッジスを殺す計画を立て始めていた。
著者の初となる本格推理小説。正直なことを言わせてもらうと、著者のファンタジックな作品はもうあんまり読む気がしなくなってた所だが、これは本当に面白かった。まだまだこんな引き出しがあったことに驚かされる一方、これまで書かれてきた作品にも、確かにこう言った推理に関わる物語も多かったから、慣れってのもあったんだろうな。 |
|
|
|
17'01'18 |
ミスター・メルセデス 下
ミスター・メルセデスと呼ばれた大量殺人犯ブレイディ・ハーツフィールドはビル・ホッジスを自殺に追い込む為様々な罠を仕掛けるのだが、ことごとくもくろみは外れ、最後に誤って自分の母親まで殺してしまう羽目に陥る。自分を含めて全てを終わらせるため、街で行われるコンサート会場で自爆テロを敢行しようとするブレイディ。一方、独自にミスター・メルセデスを追うホッジスは、友人たちの力を借り、その目的を追跡する。
完結編となる後編だが、読みやすい上に展開が見事で、ほぼ一気読みで読み切ってしまった。これが初めての推理小説とは思えないほどの完成度だ。 |
|
|
|
04'01'11 |
ランゴリアーズ Four Past Midnight1
旅客用ジェット機のパイロット、ブライアンは別れた妻の急死の報を受け取り、フライト先のロサンジェルスから急遽、乗客としてボストンに向かうことになった。フライト中疲れのために熟睡した彼が目覚めた時、異変を知ることになる。乗客の大部分とパイロットが機内から忽然と姿を消していたのだ。彼らは一体どこに行けば良いのか…
長い間積ん読になっていた作品だが、偶然発掘して読んでみた。有名な「Different Season」(「スタンド・バイ・ミー」、「塀の中のリタ・ヘイワース」と、映画化された名作)と同じく、4編の中編からなる作品だが、「中編」と言っても、そのボリュームは日本における長編小説を凌ぐページ数を持つ。それでどうせだから一本ずつ書いていくことにする。
緒で著者自身が書いていたけど、雰囲気は初期中編の「霧」によく似た内容の作品。あの作品はとても好きなんだけど、本作をあれと較べてしまうと、ちょっと肩すかしにあった気分。「霧」は最後の最後まで理由も解決が無く、非常に虚しい終わり方をしているのが好きだったのだが、本作は乱暴ながらちゃんと理由が付けられてるし、ラストもすっきりしすぎて。
前半は無茶苦茶楽しかった分、ちょっと私の中では不完全燃焼っぽい。
どうでも良いことかも知れないけど、これって『ウルトラQ』の「206便消滅す」に物語が酷似してるような… |
|
|
|
11'12'21 |
リーシーの物語 上
著名な作家の夫スコットを亡くし、2年が経ってもまだその傷が癒えない妻のリーシー。そんな彼女の元にはスコットの原稿を管理させてくれと言う連絡がいくつも入っていたのだが、その中には脅迫じみたものが入っていた。そんな時、リーシーは姉アマンダが書いていたメモの中にスコットの筆跡が混じっていることに気づく…
まるで著者自身を思わせる夫が亡くなった時、どうなるのかということをややホラー調に描いた女性の物語。一度大怪我をした著者だからこそ描けた作品なのかも知れない。
そう言えばこの作品の舞台となっているのはやっぱりキャッスル・ロックだった。「ニードフル・シングス」で破壊されたはずだが、いつの間に又復活したんだろう? |
|
|
|
11'12'23 |
リーシーの物語 下
暴力的なストーカーによって傷つけられ、亡き夫スコットの原稿を差し出すように脅迫を受けたリーシー。絶望的な状況の中、リーシーはかつてスコットが連れて行ってくれたこの世ならぬ清浄な土地“ブーヤ・ムーン”の事を思い出した。スコットの力を借りずにそこにたどり着けるかと挑戦するリーシーだったが…
これまで著者が描いてきた「ドロレス・クレイボーン」や「ローズ・マダー」に近い、女性を主人公とした物語。様々な足跡を再びひとまとめにしたような作品でもあり。
やや普通の物語っぽかった上巻と較べ、後半になってやはり話はファンタジックなものへと変貌した。ある意味小説家の創作の原点と言うものについて突き詰めて考えた物語とも言えるだろう。実際ブーヤ・ムーンというのは誰にでも行ける場所なのだ。ただ作家はそれを開く方法を知っているだけで。 |
|
|
|
|
|
|
|