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シドニー・ルメット▲
Sidney Lumet

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鑑賞本数 12 合計点 45 平均点 3.75
 娘に脚本家のジェニー・ルメット。
allcinema Walker ぴあ IMDb CinemaScape
wiki キネ旬 eiga.com wiki(E) みんシネ
書籍
著作
メイキング・ムービー(書籍)
2011 4'9 死去
2008
2007 その土曜日、7時58分 監督▲
2006
2005
2004 強制尋問 監督
2003 アメリカン・ニューシネマ 反逆と再生のハリウッド史 出演
2002
2001
2000
1999 グロリア 監督
1998
1997 NY検事局 監督
1996
1995
1994
1993
1992 Q&A 監督・脚本
刑事エデン/追跡者 監督
ギルティ 罪深き罪 監督
1991
1990
1989 ファミリービジネス 監督
1988 旅立ちの時 監督▲
1987
1986 モーニングアフター 監督
キングの報酬 監督
1985
1984 ガルボトーク/夢のつづきは夢… 監督
1983
1982 評決 監督
デストラップ・死の罠 監督
1981 プリンス・オブ・シティ 監督・脚本
1980
1979
1978 ウィズ 監督
1977 エクウス 監督
1976 ネットワーク 監督
1975 狼たちの午後 監督
1974 オリエント急行殺人事件 監督
1973 セルピコ 監督
1972 怒りの刑事 監督
1971 盗聴作戦 監督
1970 はるかなる南部 監督
1969 約束 監督
1968 グッバイ・ヒーロー 監督・製作
1967 恐怖との遭遇 監督・製作
1966 グループ 監督・製作
1965 丘 監督
1964 未知への飛行 監督
質屋 監督
1963
1962 夜への長い旅路 監督
1961 橋からの眺め 監督
1960 蛇皮の服を着た男 監督
1959 私はそんな女 監督
1958 女優志願 監督
1957 十二人の怒れる男 監督
1956
1955
1954
1953
1952
1951
1950
1949
1948
1947
1946
1945
1944
1943
1942
1941
1940
1939
1938
1937
1936
1935
1934
1933
1932
1931
1930
1929
1928
1927
1926
1925
1924 6'25 ペンシルヴェニア州フィラデルフィアで誕生

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その土曜日、7時58分
2007インディペンデント・スピリット助演女優賞(トメイ)、新人脚本賞
2007放送映画批評家協会アンサンブル演技賞、監督賞
2007AFIベスト
2007ゴッサムアンサンブル・キャスト賞
2007
ピーター・トラヴァースベスト第8位
2007
ロジャー・エバート3位
2007ゴールデン・トマト・アウォーズスリラー第5位
2007オーウェン・グレイバーマンベスト第2位
2008キネマ旬報外国映画第7位

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ケリー・マスターソン(脚)
フィリップ・シーモア・ホフマン
イーサン・ホーク
マリサ・トメイ
アルバート・フィニー
ブライアン・F・オバーン
ローズマリー・ハリス
マイケル・シャノン
エイミー・ライアン
サラ・リヴィングストン
アレクサ・パラディノ
ブレイン・ホートン
アリヤ・バレイキス
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
グロリア 1999
1999ゴールデン・ラズベリー最低主演女優賞(ストーン)

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スティーヴ・アンティン(脚)
シャロン・ストーン
ジェレミー・ノーサム
ジーン・ルーク・フィゲロア
キャシー・モリアーティ
マイク・スター
ジョージ・C・スコット ルビー
ボニー・ベデリア ブレンダ
ボビー・カナヴェイル
★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 恋人であり、NYマフィアのボスであるケヴィン(ノーサム)の罪をかぶってフロリダに収監されていたグロリア(ストーン)がNYに戻ってきた。だが彼女を迎えたのは組織の冷酷な裏切りだった。グロリアは居合わせた少年ニッキー(フィゲロア)を人質に脱出するのだった。実はニッキーの父親はマフィアの会計士で、組織の秘密を握るフロッピーを持っていた…
 本人はそう言われることを嫌うだろうが、ジョン=カサヴェテス監督の代表作『グロリア』(1980)の同名リメイク。アクション作には定評のあるルメットが監督しており、アクション作としてはそこそこなのだが、主役をシャロン・ストーンにしてしまったのが大間違い。偉ぶってる癖に妙に女性であることを強調するストーンは、見事なほどにグロリア役に合ってない。
 旧作ではローランズ演じるグロリアと少年フィルとの関係はとても微妙なものだった。グロリアはフィルにとって、運命共同体の同志であり、恋人であり、母だった。そこが売りだったのに、ストーンが演じるグロリアは、あくまで少年に対し、女であろうとする。
この関係がとにかく気持ち悪いオリジナルに対する侮辱としか見えない
 このお陰でどうにもはまりきれず、気持ち悪さばかりが強調されてしまった。せめてオリジナルを観てないのだったら、まだ多少は評価出来るのだが…まあ、
私はストーンが大嫌いだから、点数は低いままだろうけど
 しかしあのルメットがこんなのを作るようになったと思うと悲しくなってくるな。
ギルティ 罪深き罪 1992

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ラリー・コーエン(脚)
レベッカ・デモーネイ
ドン・ジョンソン
スティーヴン・ラング
ジャック・ウォーデン
ダナ・アイヴィ
ロン・ホワイト
ショーン・マッキャン
ルイス・ガスマン
バーバラ・イヴ・ハリス
★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
ファミリービジネス 1989

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ヴィンセント・パトリック(脚)
ショーン・コネリー
ダスティン・ホフマン
マシュー・ブロデリック
ロザンナ・デ・ソート
レックス・エヴァーハート
B・D・ウォン
★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
原作:ヴィンセント・パトリック
 国際結婚を繰り返した結果、祖父ジェシー(コネリー)はスコットランド系、息子のヴィトー(ホフマン)はイタリア系、孫のアダム(ブロデリック)はユダヤ系と、複雑な家系になってしまった一家。しかし実はこの一家は祖父から代々の泥棒の家系だったのだ。ジェシーを尊敬するアダムは刑務所を出たばかりのジェシーに研究開発中の酵素細胞と、そのデータ・ブックを盗み出す泥棒計画を打ち明ける。すっかり乗り気のジェシーと、泥棒からは足を洗って欲しいと願うヴィトーと一悶着あった後、最後の仕事だとヴィトーを説きつけ、親子三代による大規模な泥棒計画が始まる…
 移民によって作られたアメリカだから出来る作品というのがある。本作なんかはその最も端的な作品と言えるのではないだろうか?なんせスコットランド人、イタリア人、ユダヤ人の三人が事もあろうに親子だと言って成立してしまう物語。こんなの他の国では作れないだろうし、それ以前によくこんな設定考えたもんだ。本作の場合はまずはその設定の勝利とは言えるし、親子三代にわたって名優を配して(ブロデリックも子役としては既に有名だったし)豪華な布陣も見所。
 これを可能としたのがルメット監督のネームバリューだったのだろう。一方
これだけの豪華な布陣で結構退屈な作品を作り上げるのも、やっぱりルメットらしさか?アクションに行きそうで行かず、緊張感があるやないやらと言った感じ。これもルメットの得意演出だが、本作の場合はなんかキャラクタ任せのゆったりした作品に思えてしまう。
 尤も本作の狙いは泥棒の話ではなく、家族愛にあるからそういう描写でも良いんだろうね。
 ところで本作の場合、家族愛という目から見ると結構興味深い。三者三様のキャラクタが個性的で誰が主人公と言っても良いのだが、一番重要な役割を果たしているのはホフマンだろう。こどもは父親を通り越して祖父を尊敬する事がよくあるものだが(私自身そうだったし)、その祖父が泥棒とあっては、父としては立つ瀬がない。何とか自分の父と自分の息子に悪い事は止めてもらいたいのに、二人とも全然聞いてくれない。という、あたかも中間管理職の悲哀のような存在として描かれていて、妙なペーソスを感じられる。
『普通の人々』(1980)におけるサザーランドみたいな存在だが、ホフマンもこういうのが演じられる年齢になった事を知らされた感じである。
 この親子は仲が良いのに、結局話は「家族を作る」話になっていて、こういうのに弱い私はつい高得点を上げたくなってしまう。
旅立ちの時 1988
1988米アカデミー助演男優賞(フェニックス)、脚本賞
1988
LA批評家協会女優賞(ラーチ)
1988ゴールデン・グローブ脚本賞、作品賞、女優賞(ラーチ)、助演男優賞(フェニックス)、監督賞(ルメット)

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エイミー・ロビンソン
グリフィン・ダン(製)
ナオミ・フォナー(脚)
リヴァー・フェニックス
クリスティーン・ラーチ
マーサ・プリンプトン
ジャド・ハーシュ
アリス・ドラモンド
★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
評決 1982
1982米アカデミー作品賞、主演男優賞(ニューマン)、助演男優賞(メイソン)、監督賞(ルメット)、脚色賞
1983キネマ旬報外国映画第7位

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デヴィッド・マメット(脚)
ポール・ニューマン
シャーロット・ランプリング
ジェームズ・メイソン
ジャック・ウォーデン
ミロ・オーシャ
エド・ビンズ
リンゼイ・クローズ
ロクサーヌ・ハート
ジュリー・ボヴァッソ
ジェームズ・ハンディ
ウェズリー・アディ
ジョー・セネカ
ルイス・J・スタッドレン
ケント・ブロードハースト
コリン・スティントン
ブルース・ウィリス
★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
原作:バリー・リード
 かつて一流大学の法科を主席で卒業し、弁護士として颯爽とエリートコースを歩んでいたフランク・ギャルヴィン(ニューマン)。だが今やすっかり落ちぶれ、昼間から酒を飲み、場末で何とか弁護士の仕事をもらっている状態だった。そんな彼を見かねて、老弁護士ミッキー(ウォーデン)が一つの事件をもってきた。それは出産で入院した女性が、麻酔処置のミスで植物人間になってしまった医療ミス事件だった。最初の内、完全にやる気を失っていたギャルビンだったが、麻酔医帥のグルーバーの態度や、被害者やその家族の悲惨さを目の当りにし、これまでにない怒りを感じるのだった。病院からの示談も拒否したギャルヴィンは裁判で戦うことを決意する。だがそれは思いもかけない困難を背負うことでもあった…
 二ューマンを主演に迎えたハリウッドの特意とする法廷ものの作品。重い内容を主人公の成長と絡めてオーソドックスにまとめている。
 本作のフランクの役どころは古くはボギーが特意とした役柄ではあるが、これを
“永遠の不良青年”ニューマンが素で演じている感じ。この時代でこの役が出来る第一人者だし、他のキャラとの絡みも含め、キャラに関しては文句なし。メイソンの役も良し(出演したメイソンは「今まで100本以上の映画に出演してきたが、心底からうまくいったのはこの作品が初めてだ」とルメット監督を褒めちぎっている。)。
 手堅くまとめられた物語も良質で、観応えも充分だが、あまりにも手堅くまとめられすぎているため、個性が今一つ感じられないのが問題でもあり。1950年代にこれが作られていたら、間違いなく良作と言われるだけの物語だったが、80年代には少々物足りない作品だったかも?もうちょっと捻るかキャラ以外に売りが欲しかったところ。
 決して悪い作品じゃないんだけど。 
ウィズ 1978
1978米アカデミー撮影賞、音楽賞、美術監督・装置賞、衣装デザイン賞
<A> <楽>
ジョエル・シューマカー(脚)
ダイアナ・ロス
マイケル・ジャクソン
ニプシー・ラッセル
テッド・ロス
リチャード・プライアー
レナ・ホーン
テレサ・メリット
メイベル・キング
セルマ・カーペンター
スタンリー・グリーン
★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 製作にロブ・コーエン
ネットワーク 1976
1976アカデミー主演男優賞(フィンチ、ホールデン)、主演女優賞(ダナウェイ)、助演女優賞(ストレイト)、作品賞、助演男優賞(ビーティ)、監督賞、撮影賞、編集賞
1976NY批評家協会脚本賞
1976LA批評家協会作品賞、監督賞(ルメット)、脚本賞
1976ゴールデン・グローブ男優賞(フィンチ)、女優賞(ダナウェイ)、監督賞(ルメット)、脚本賞
<A> <楽>
パディ・チャイエフスキー(脚)
ウィリアム・ホールデン
フェイ・ダナウェイ
ピーター・フィンチ
ロバート・デュヴァル
ネッド・ビーティ
ウェズリー・アディ
ビル・バロウズ
ビアトリス・ストレイト
コンチャータ・フェレル
ウィリアム・プリンス
ジョーダン・チャーニイ
ダリル・ヒックマン
ロイ・プール
マイケル・ロンバード
レイン・スミス
★★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
「私は怒っている。もう我慢しない」
 かつて人気ニュースキャスターだったビール(フィンチ)は、今や落ち目で視聴率も低迷中。身受りの決まったTV局の報道部長マックス(ホールデン)は解任を通告する。理不尽な通告に怒ったビールは翌日のイブ二ング二ュースで、何と自分の下当解雇のことを喋り、自殺までほのめかしてしまった。TV局は大慌てだったが、この日の視率は記録的なものとなった。そこに目を付けたのは新しく重投となった野心家のダイアナ(ダナウェイ)で、彼女はビールを現代の偽善と戦う予言者として「ビール・ショー」という番組を放映したところ、これが大ヒット。社会に対する不満を叫ぶビールは時の人となり、視聴率もウナギ上りとなった。だが、過激さを増していくビールの言動は、思わぬ所に影響を与えていく…
 本作はSFとも社会批判とも言える作品で、視聴率獲得のためにしのぎを削っている当時のTV界を皮肉って製作されたものだろうが、ここに現れる狂気は特筆すべきレベル
(尚、本作の脚本は元テレビドラマの脚本をしていたパディ=チャイエフスキー。TV界の内幕がよく分かってる訳だ)。どこかキャプラ監督の『群衆』に通じるものがあるが、こちらの方がテレビという時代性がある分生々しい描き方がされている。
 もちろんここで本当に狂気に陥っているのはフィンチ演じるビールに他ならないが、そんな存在さえも視聴率アップのためには喜んで使っていくというTV局の狂気。そしてそれに感化される無言の大衆(無言じゃないけど)の方向付けられた狂気。
全てが狂ってる
 そしてその狂いっぷりがこの作品の肝であり、
それを笑う私自身もなんか後ろめたい気持ちにさせるという、ブラックジョークとなっている。
 テレビは洗脳装置と言われることがある。これを身に置き換えてみよう。しばらくバラエティ番組を観ていない状態で、久々にそう言うのを観るとよく分かる。
笑いのツボが全然分からないのだ。テレビから伝わる笑い声に全然ついて行けない。これはおそらくテレビを観ている人間は、そこで「お約束」というものを知っていくことになり、その約束に従った笑いを提供されると、自然と笑えるようになる。というところから来ているのではないか?などと考えたりする(単に私が笑いを理解できないだけという可能性も高い。未だにドリフのコントが一番笑えるし)
 そう言う意味でテレビは一方的に
「お約束」を視聴者に強要する。仮にその「お約束」が狂気であったらどうか?そして製作者側がそれが狂気と分かっていても、視聴率のために敢えてそれを流すならば…これこそブラック・ジョークだよ。
 今やネット時代に入り、多くの情報が瞬時に手に入る時代になったが、この危険性は今も有効…と言うか、現代こそ実は最も危険な時代なのかも知れない。情報というのは常に人間を変えていくものだから。
特にニュースサイトも並行してやってる自分自身が一番情報に振り回されてる人間だったりするしね
 何よりこれを一種のブラックジョークとしたことが本作の最大の功労点かも知れない。全てを戯画的に捉えることによって、物語を後ろめたい笑いへと持っていくのは、かつてのドイツの表現主義にも通じる。
 特に狂気の演技が映えるフィンチが素晴らしいが、気の強い役で特に映えるダナウェイが、まるで自虐のようにエキセントリックな役を好演(最後の最後まで一切反省しないんだもんな)。ついでに言えば、唯一まともな見識を持ちつつ、やっぱり状況に流されていくホールデンも良し(手の早さも(笑))。
 このキャラクタ性が功を奏し、ダナウェイ、ストレイト(なんと登場回数はたった2回しかない)およびフィンチがオスカーを得ているが、フィンチは授賞式の時は既に故人で、授賞式には未亡人のエレナがオスカー像を受け取った(フィンチは、オスカーの意欲満々で、数々のインタビューに出演。だが無理がたたった。ホールデンは「フィンチが死ななきゃ二つ目のオスカーだった」と述懐)。現時点では唯一の例である。
 この年
『ロッキー』が無ければ確実に本作がオスカーを得ていたとも言われるが、素直なアメリカン・ドリームを高々と歌い上げた『ロッキー』と、アメリカの暗黒面を徹底的に描いた本作が並んでいたというのはなかなか面白い事実でもある。
狼たちの午後 1975
1975米アカデミー脚本賞、作品賞、主演男優賞(パチーノ)、助演男優賞(サランドン)、監督賞(ルメット)、編集賞
1975英アカデミー主演男優賞(パチーノ)、編集賞、監督賞(ルメット)、脚本賞
1975LA批評家協会作品賞、男優賞(パチーノ)、監督賞(ルメット)
<A> <楽>
フランク・ピアソン(脚)
アル・パチーノ
ジョン・カザール
チャールズ・ダーニング
ジェームズ・ブロデリック
クリス・サランドン
ペニー・アレン
キャロル・ケイン
サリー・ボイヤー
ランス・ヘンリクセン
★★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
P・F・クルージ (検索) <A> <楽>
トマス・ムーア (検索) <A> <楽>
 1972年8月のニューヨークブルックリン。この日マンハッタンの銀行に3人の強盗が押し入った。すぐさま現金強奪を行って逃げるはずだったが、仲間の一人ロビーがおじけづいてしまって襲撃中に逃走。しかも銀行の収入金は既に本社に送られた後だった。残されたのは僅か1100ドル。更に早期の通報によって銀行は警官隊に囲まれてしまった。出るに出られなくなったソニー(パチーノ)とサル(カザール)は銀行員を人質に籠城を始めるのだった…
 
1972年にブルックリンで実際に起こった事件を元にP・F・クルージ、トマス・ムーアが書いた小説を映画化。1976年全米興行成績8位
 原作は未読ながら、本作が原作に忠実な作品ではないと言う事ははっきり分かる。脚本通りにやってこの臨場感はおそらく出せないし、編集でごまかしようのない
演出上のアラも多い。実際にこの作品は決してスマートな作品じゃない。主人公達も強盗にしては間が抜けているし、それを無責任に賞賛する民衆のパワーも、自分たちが安全な場所で、まるでショーを観るような気分で無責任に応援しているだけ。
 しかし、
それらの欠点こそが本作に大きな説得力と、臨場感を与えているのは確か。これはパチーノに対するルメット監督の信頼感がなせる業なのでは無かろうか。その信頼感が不思議な説得力を持った傑作を生み出すこととなった。

 勿論娯楽作として観ても充分すぎるくらいに素晴らしい作品なのだが、本作の場合は社会的な面から観ても面白い。
 先ず実際の強盗を起こすような人間は、映画に出ているような綿密な計画を立てるわけではなく、むしろ貧乏から脱出する方法として、良いところだけしか見ずに、行き当たりばったりにすることが多いという単純な事実。貧乏さが人から余裕を奪ってしまったとき、後に残されるのは刹那的な喜びでしかない。やってしまってどんなに悔やんだとしても、計画にあるのは良い面ばかりしかないのだから。
 それで実際計画を実行に移すと、前もって調べてないために色々とトラブルが起こってしまう。それでそのトラブルに対処する方法もあらかじめ決めていないので、おたおたしているうちにどうしようもなくなってしまうと言う(なんせ銀行員の口から「早く逃げれば良かったのに」とまで言われてしまうくらいだから)…このような無計画なことをやってしまう人が出てしまうのが今の時代。
 そしてなによりも、そんな彼らを英雄視してしまう民衆がいるという事実。丁度ヒッピー時代の真っ盛りと言うこともあり、当時は反体制という事はそれだけで一つのステータスを得られていた時代。ソニーもサルも全くそんなことには関わっておらず、単に間抜けな泥棒に過ぎないのだが、それを勝手に脚色して反体制の旗手に仕立て上げるのが民衆の力だった。ルメット監督は次回作の『ネットワーク』でこのことを更に強調して描いていたが、ここでの撮影経験が上手く活かされていたのだろう。
 結果として二人の強盗は、褒められれば褒められるほど、逆にどんどん惨めな存在に貶められる。しかも自分たちがあたかも英雄であるように錯覚していくことになって、余計惨めになっていく。
社会風刺をたっぷり込めたブラックユーモアとして考えても、本作の意味合いは充分に成り立つ
 この辺までも克明に描いてくれたのが本作。こんなのをまとめたルメットの実力も凄いけど、何より、色々な要因が重なり、監督自身が思っていた以上のものが作られてしまったのではないかと思う。

 それにしても本作でのパチーノの格好良さよ。決してスマートじゃない。むしろ行き当たりばったりの行動しかしてないのだが、何にやるにせよ余裕が無く、ぴんっと張り詰めた糸のようなもので、彼の行動を追うだけでも緊張感が途切れない。パチーノは貫禄のある人物を演じても上手いが、本作と『スカーフェイス』(1983)は別な意味でパチーノの演技を限界まで引き出した作品と言えるだろう(パチーノはこれで4年連続のオスカーノミネート)。

 今の時代でこれを観ると、合う人と合わない人が極端に分かれそうだが、出来るだけ多くの人に観て欲しい傑作の一本。
オリエント急行殺人事件 1974
1974米アカデミー助演女優賞(バーグマン)、主演男優賞(フィニー)、脚色賞、撮影賞、作曲賞、衣装デザイン賞
1974英アカデミー助演男優賞(ギールグッド)、助演女優賞(バーグマン)、作曲賞、作品賞、主演男優賞(フィニー)、監督賞(ルメット)、撮影賞
<A> <楽>
ポール・デーン(脚)
アルバート・フィニー
ジャクリーン・ビセット
アンソニー・パーキンス
マイケル・ヨーク
ローレン・バコール
イングリッド・バーグマン
ショーン・コネリー
リチャード・ウィドマーク
ヴァネッサ・レッドグレーヴ
ウェンディ・ヒラー
ジョン・ギールグッド
ジャン=ピエール・カッセル
レイチェル・ロバーツ
コリン・ブレイクリー
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
オリエント急行の殺人 <A> <楽>
アガサ・クリスティ (検索) <A> <楽>
 オールスターキャストは好評で、バーグマンは本作で3度目のオスカー獲得となる。
 本作の映画化はクリスティ自身が長く拒否してきたというが、出来を観て納得。ただ「ポワロの髭がちょっと短い」と不満を漏らす。
 1975年全米興行成績9位
 バーグマンはアカデミー助演女優賞を受賞するが、これは功労賞的な意味合いを持ち、バーグマン自身も満足していなかった。
セルピコ 1973
1973米アカデミー主演男優賞(パチーノ)、脚色賞
1973ゴールデン・グローブ男優賞(パチーノ)
1974英アカデミー主演男優賞(パチーノ)、監督賞(ルメット)、作曲賞
<A> <楽>
ウォルド・ソルト
ノーマン・ウェクスラー(脚)
アル・パチーノ
ジョン・ランドルフ
ジャック・キーホー
ビフ・マクガイア
トニー・ロバーツ
コーネリア・シャープ
F・マーレイ・エイブラハム
アラン・リッチ
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
セルピコ <A> <楽>
ピーター・マーズ (検索) <A> <楽>
 NY市警の刑事フランク・セルピコ(パチーノ)は絶対に賄賂を受け取ろうとはせず、自分の実力だけでこれまでの勤務をこなしてきた。だが収賄が当たり前の市警では彼は浮いた存在で、様々な分署をたらい回しされ続けていた。警察の理想を強く意識したセルピコは同僚のブレア(ロバーツ)と語らい、ついに汚職の実態をニューヨーク・タイムスにぶちまけるのだった…
 NY市警にあってたった一人で汚職に立ち向かったという実在の刑事セルピコを描いたピーター・マースのノンフィクション作をアル・パチーノ主演で映画化。
1974年全米興行成績9位。この年、パチーノは20歳で服役していたと言う事実を明らかにされ、それが非難の元ともなっている。
 良い作品とは思うのだ。だが、なんか普通に本作を楽しめないのも確か。特に今になってみると、本当に楽しむ事は難しくなってる自分がいる。
 ハリウッドは何かと刑事物の映画が好きのようで、毎年定期的に出されるようだが、その始まりとなったのは1970年代になってから。1971年には傑作『ダーティハリー』(1971)『フレンチ・コネクション』(1971)が世に出ているが、そこでの刑事の描かれ方は従来のものとは随分違ったものだった。この二作の主人公は決して潔癖な完全な存在ではないし、他の人間からも嫌われがちな存在だった。一方、彼らを嫌う側もやっぱり心に一物持っている存在が多かった。その中で彼らなりの正義感を貫く。と言うのが物語の骨子となっていた。
 本作はそれを受けてか、更に深く、実際の警察組織に切り込んでいるのが特徴で、アクション性を極力抑えて一人の真面目な刑事の、組織の中での戦いを主軸に持って行っている。
 主人公のセルピコは、流石に映画では格好良く撮られている。彼は本当に警官が好きだったのだろう。最初に子供の頃に見たというお巡りさんの姿があり、それを目指して警察官になったのに、警察の実情は腐敗だらけ。その中で自分なりの正義を貫こうとすれば、周りから嫌われてしまう。悪循環に陥り、どんどん立場を悪くしていく。
 こう言う時に社会人の取る態度は概ね順応か、完全否定に走る事が多い。つまり、他の人と同じように賄賂を受け取る側に立つか、それとも辞表叩きつけて出て行くか。しかし彼はそれをやろうとはしなかった。それはこの作品では“警察を愛しているから”という説明になってしまうのだが、“精神的にタフな人間”とは言えるだろう。ただ、そのタフさというのは、多分に“鈍感さ”というものが無ければならない。パチーノ演じるセルピコは切れ者に見えてるけど、実際にこういう人間は、
単にTPOをわきまえない人間としか見なされないものだ。
 人を管理する立場になると、そう言う人間はとにかく腹が立ち、出来れば
「出て行け」と言いたくなることもしばしばなのだが、実際の話、歴史を変えるような人物はこういう人達だったんだろう。
 はっきり言ってしまうと、本作はその点では拒絶感を受ける作品である。だけど、それが本作のリアルさになっているのも確かな話。どれだけ同僚から嫌われ、空気の読めない奴と蔑まれても、自分のなすべき事を行う。これはこれで実に格好良い姿じゃないか。パチーノはこの役をほんと見事に演じていた。
 それに本作の場合、製作された年代も顧慮に入れなければならない。ヒッピー文化とは、結局そう言う大人の流れに真っ向から対立するのが文化だったのだから。

 それでちょっと調べてみたが、セルピコの実像は、ここまで格好良いものでは無かったようだ。彼がしたことは、あくまで
賄賂を受け取らなかったため部署をたらい回しにされ、勤務中に何者から狙撃を受けたため、公聴会で証言人となったとのこと。順番がちょっと違ってるようだ。それで本作を撮影するに当たり、パチーノはセルピコ本人と数週間を過ごし、下調べ充分の状態で撮影に挑んだとのこと。
盗聴作戦 1971
<A> <楽>
フランク・ピアソン(脚)
ショーン・コネリー
ダイアン・キャノン
ラルフ・ミーカー
アラン・キング
マーティン・バルサム
クリストファー・ウォーケン
ヴァル・アヴェリー
ディック・ウィリアムズ
ギャレット・モリス
スタン・ゴットリーブ
★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
ローレンス・サンダース (検索) <A> <楽>
 金庫破りの罪で10年の刑期を終え出所したジョン=アンダーソン“デューク”(コネリー)はさっそく次の獲物を物色。狙いをニューヨークの超高級マンションに定める。かつての仲間達に新人の“ザ・キッド”(ウォーケン)を召集し、徹底的にマンションの事を調べるように命じる。住人の名前、部屋の見取り図、金庫の位置などが調べ上げられ、いよいよ強奪決行の日をむかえる。死傷者を出さず、金品のみを強奪するスマートな作戦は上手くいっているかに見えたが…
 ルメット監督による怪盗ものを扱った作品。盗みの方法やひょんな事から瓦解していく作戦など、物語性は高いのだが、
どこかとぼけた演出が味のルメットが監督することで、一風変わった、妙にスタイリッシュなところと泥臭いところが混在したような作品に仕上がっている。それがルメットの味なのだが、今回に関しては、その演出は多少裏目に出たかな?泥棒というか、強盗のシーンは妙に緊張感が無く、逆に間延びしてしまった感じ。むしろ前半の計画を練っていたあたりの演出の方が上手く仕上げられてた感じ。物語は面白いのだから、もうちょっとスピード感が欲しかったな。最後も結構あっけなかったし。アニメの「ルパン三世」に雰囲気は比較的近いかもしれない。
 本作では脱ボンドで新しい役を模索していたコネリーの挑戦作でもあったが、実年齢に近くして年齢を上げた設定にしたのも、キレを足りなくした理由かも。実際本作観るときは、コネリーのアクションを期待したのだが、実際にはアクションらしきアクションが無いので、かなり肩すかしを食った気分にさせられてしまう。
 しかし、そのコネリーを差し置いてもの凄い存在感を見せているのがウォーケンだろう。役柄としてはまだまだ若く、見習いと言った設定なのだが、彼の存在感は見事に際だっており、この人が出てくるだけで画面に締まりが出てくるよう。
これが本格デビューだそうだが、なるほど後の活躍がよく分かる存在感だ。
 ところで本作は原題
『THE ANDERSON TAPES』『盗聴作戦』に変えたわけだが、実際に盗聴されるのは主人公達の方だし、盗聴はほんの一部。むしろ包囲戦の方が主眼なんだから、あんまり内容に即した邦題じゃないな。
未知への飛行
Fail Safe
<A> <楽>
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マックス・E・ヤングスタイン(製)
ウォルター・バーンスタイン(脚)
ヘンリー・フォンダ
ダン・オハーリヒー
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エド・ビンズ
フリッツ・ウィーヴァー
ウィリアム・ハンセン
ラッセル・ハーディ
ラッセル・コリンズ
★★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 政治的なミスをどう責任を取るか、苦渋の選択が描かれる。『博士の異常な愛情』と内容が似通っていたため、キューブリックは訴訟を考えたという。
製作年 1964
製作会社 コロンビア・ピクチャーズ
ジャンル 戦争(SF)
売り上げ
原作
フェイル・セイフ <A> <楽>
ユージン・バーディック (検索) <A> <楽>
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関連
キーワード
十二人の怒れる男
12 Angry Men
1957米アカデミー作品賞、監督賞(ルメット)、脚色賞(レジナルド=ローズ)
1957ベルリン国際映画祭金熊賞(ルメット)、国際カトリック映画事務局賞
1959ブルーリボン外国作品賞
1959キネマ旬報外国映画第1位
<A> <楽>
レジナルド・ローズ
ヘンリー・フォンダ(製)
レジナルド・ローズ(脚)
ヘンリー・フォンダ
リー・J・コッブ
エド・ベグリー
マーティン・バルサム
E・G・マーシャル
ジャック・クラグマン
ジョン・フィードラー
ジョージ・ヴォスコヴェック
ロバート・ウェッバー
エドワード・ビンズ
ジョセフ・スィーニー
ジャック・ウォーデン
★★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 暑い夏の日。18歳の少年が起こした殺人事件に関する陪審員の討論が始まった。誰が見ても有罪と思えたその状況下で、裁判もそのように進められていた。だが12人の陪審員の内ひとりの陪審員(フォンダ)が無罪を主張した事から裁判は意外な展開を見せていく。
 ヘンリー・フォンダ唯一のプロデュース作。
撮影にわずか3週間、費用は30万ドル、しかも彼が監督に選んだのは本作が映画初挑戦となるルメット。ここまで野心的な映画だった訳だが、見事な傑作法廷劇に仕上がっている。民主主義の教科書としても使えるほど。
 名作と呼ばれるだけあって本作は様々な新しい要素に溢れている。一つには陪審員室という密室を用いていることだが、この狭い空間で時間の流れとストーリーを一致させているのが面白い。これはかつてヒッチコックの『ロープ』(1948)やジンネマンの『真昼の決闘』(1952)などでも用いられた手法だが、それらは結構広い距離をカメラが動き回るのに対し、本作は限定空間のみを撮っている。これを飽きさせない工夫として、カメラ・アングルを徹底的に凝って作られている。映画でここまで徹底して限定空間を撮ったのは作品は本作が最初だろう。
本作には全部で397のカットがあるが、その一つとして同じアングルを用いていない。カメラを担当したボリス・カウフマンの見事さを賞賛すべきだろう。
 キャラクターに関してはモロにフォンダの一人舞台ってな感じだが、彼のイメージにはピッタリだし、緊迫感も演出できていた。
 普通、映画で好まれる法廷劇だと被告に焦点が当てられ、その事件の発端から終局までが描かれることが多いのだが、これは陪審員が主人公。陪審員は公正な判断を下さねばならないため、被告や原告と面識を持った者ではなく、そう言う意味では感情移入がしにくい。それを敢えて使い、これだけ緊迫した映画に仕上げたルメット監督の力量はたいしたものだ。多分こんなもの、他には無かろう。そう言う意味では発想の勝利。限定された空間だからこそ、カメラ・ワークは冴えていて、長回し描写も見事だった。何より冷静に状況を把握し、たった一人で11人と対立しつつも理詰めで無罪に持っていくフォンダは無性に格好良いぞ。
 裁判で陪審員制度を取ってるアメリカならではの映画だが、よく他の映画などで、
「陪審員退席」と言うシーン、その舞台裏がよく分かる。陪審員も人間だから、偏見もあるだろうし、弁護士の言葉で動かされることもある。自分で冷静だと思っていても、こういう風にして自信が揺らぐこともあるだろうな。滅多に見られないものを見せてもらって得した感じ。それでもし、陪審員に頭の切れる奴が一人いたら、こういう風にもなるのかもしれない。
 でももし少年が本当に父親を殺していたら、どうするんだろう?
そう考えると、陪審員制度って、妙に怖い所もあるな。
 ところで、私にとってはとても残念な話が一つ。この映画、観るのが遅すぎた。実は結構前のことになるが、筒井康隆脚本による
「12人の浮かれる男」と言う舞台を観てしまっていた…この舞台、題を見てお分かりの通り、ほぼ明確なパクリで(映画では「有罪→無罪」だが、ここではほぼ完全な無罪を「面白いから」と言うだけの理由で強引に有罪に持っていく話で、徹底的にこの映画をパロッている)、お陰でこの緊迫した映画の場面場面で舞台のことを思い出してしまい、苦笑混じりにしか観ていられなかったこと。
 これだけ質が高い映画なのに…とても残念だった。おのれ筒井康隆めえ(逆に言えば、それだけ舞台劇が上手くできていたからこそ、そう思える訳なんだが…)
製作年 1957
製作会社 オリオン・ノヴァ
ジャンル 裁判
売り上げ $350,000
原作
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