読書日誌
2003'4〜7月

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03'06'27 レベル7
宮部みゆき (検索) <amazon> <楽天>
 ある朝目覚めると、自分たちが一体何者で、どこにいるのかを全く忘れてしまった男女。彼らは自分たちの真実を求めるが……一方、民間カウンセラーの真行寺悦子は突如疾走してしまったクライアントの高校生貝原みさおの身を案じる……全く関わりを持たないようなこの二つの事件に共通しているのは「レベル7」と言う言葉だった。そして真実を探る彼らは…

 前々から知っていた作家ではあったが(超が付く有名人だし)、読むのは大分遅くなってしまった。それで最初に選んだのがこんな長編だった。
 出来と言えば見事。に尽きる。かなり楽しめた。二つの長編小説を交互に読んでる気分にさせてくれるのも嬉しいし、あっと思わせる演出もふんだんに用意されているので大変楽しめた。難を言えば、大風呂敷を広げた割にラストはちょっと出来すぎって事かな。緻密な謎解きだったけど、謎に遊びがないので、リアリティが失せた感じ。作品そのものには満足したけど。
<A> <楽>
03'06'24 からくりサーカス28
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 ついに姿を現した貞義=フェイスレスの率いるしろがねO部隊により蹂躙される黒賀の人形の郷、そして身動きの出来ない??。貞義から逃げろと言われた勝だったが、踏みとどまり、その小さな手で戦うことを選択する。並み居るしろがねOとフェイスレスに対し、勝が取った方法とは…
 あらら?こういう展開なの?予想が外れてしまったよ。お陰でこの物語はまだ長続きすることになった。設定のあらかたが明かされ、後はからくり編とサーカス編が結びつくだけだと思ったのだが、これからも楽しませてもらえそうだ。その前に著者の才能が枯渇しないことを願おう(続いてしまったから駄目になった漫画家ってかなり多いしね)
<A> <楽>
03'06'20 はじめの一歩65
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 東日本新人王決定戦。一歩の後輩板垣はかつて高校時代3戦3敗してる宿敵今井との決戦に挑む。天才的な板垣だが、これまで愚直なまでにまっすぐな今井にことごとく負けていた。そして今回板垣の選択した作戦は…

 もう56巻か。少年漫画ではかなりの長寿作品になるのだが、それでも興奮させてくれるのが凄い。特に主人公の一歩以外のキャラだと、勝つのか負けるのか、それも分からないので別な意味で気分的に盛り上がる。週間ペースだと中途半端に盛り上がってしまうのでコミックを待って一気に読むのだが、それでも戦いの途中で切られると欲求不満が溜まる。
<A> <楽>
03'06'18 遠い声
瀬戸内晴美 (検索) <amazon> <楽天>
 幸徳秋水の妻で、大逆事件で処刑された日本初の女性アナーキストと言われる菅野須賀子。彼女が処刑されるその当日、彼女が思い起こす幼少からの自分の思いを中心として描かれる作品。

 歴史が好きな割に忘れっぽい私だが、幸い大逆事件のことはある程度知っている。1908(明治41年)の赤旗事件に端を発し、その後爆弾製造の現行犯で逮捕されて処罰させられた事件のはずだったが、私の無知でそこに女性がいたと言うことは知らなかった。日本の事件なのに不勉強が過ぎるな
 これはその事件を克明にその当の女性菅野須賀子の目から捉えた作品で、正直最初は軽い読み物のつもりで手に取ったら、思い切り重かった。まだ寂聴になってない頃の著者の作品は結構男と女のどろどろした部分を扱った小説が多く(単にそれに留まらず、非常に知識に溢れているのが気に入っているのだが)、これもその系列だと思ってたのだが…
 読み切るにはやや時間がかかったけど、色々楽しめた作品だった。
<A> <楽>
03'06'16 THE 大市民2
柳沢きみお (検索) <amazon> <楽天>
 ビールをこよなく愛し、こだわりを持って生きることを信条とする男。山形鐘一郎。男としての生き方を語る、彼の日常を描く。

 全巻に引き続きだが、やっぱり読んで楽しい。特に簡単料理が読んでいて大変おいしそうに思えるところが漫画の良いところだな。
 まあ、今巻はちょっと身につまされるところもあったりしたが…
<A> <楽>
03'06'13 美味礼賛
ブリア=サヴァラン (検索) <amazon> <楽天>
 「食」というものを突き詰め、食をフランスにおける一大哲学にまで高めた著者の代表作。

 最近腹の出っ張りが気になるお年頃になり、自分の食生活を改善し始めた私だが、そんな中で何を思ったか、こんなものを読み返してしまった。
 最初に読んだのは多少昔のことだが、やっぱり今になって読み返してみるとなかなか味わいを感じる。食べるという行為そのものを思想にまで高めた著者の意識はかなり凄い。日本でも開高健がそれに近いような気もするけど…
<A> <楽>
03'06'11 日本沈没
小松左京 (検索) <amazon> <楽天>
 日本各地で土地のずれが顕著になってきた。更に頻発する小地震。その調査を独自に行っていた在野の科学者田所は、日本の地盤の変化を総合的に分析した結果、恐るべき結論に達する。日本は沈没すると…破滅の日を前に奮闘する人間達を描く群像劇。

 これぞSF。日本にもこれだけ良質の作品はあった事を誇るべき。
 これも読み返し作品。高校の時は何度も何度も読み返して、小説家になることを夢見ていた時代があったことを思い返す。それで20年近くを経た今、もう一度読み返してみると、今度は別な意味で楽しめた。当時は設定とか緻密な説明に惹かれていたが、今はむしろ人間の側から描いた心理劇がとても面白く感じる。そして今にして思うと、やっぱりとても敵うような人じゃないんだな。としみじみ。いつまで経っても古くならない小説としていつまでも残しておきたい作品だ。劇場版も良い出来。

<A>
<A>
<楽>
03'06'09 るくるく2
あさりよしとお (検索) <amazon> <楽天>
 悪魔と同居することになってしまった六文と、彼の家にやってきたるくとの交流を中心に描かれる非現実的な日常生活を描く。
 相変わらずこの著者は私と非常に相性が良い。この作品の持つ微妙な間が丁度私の好みと合致するようだ。一応ギャグマンガなのだが、非常に重い内容の作品もあったりして。それも又良しか。
<A> <楽>
03'06'07 鉄腕バーディ1
ゆうきまさみ (検索) <amazon> <楽天>
 廃墟めぐりが趣味の千川つとむは友人と共にあるホテルの探索に出かけたが、そこで奇妙な男たちを目にする。更にその男たちの前に立ちふさがる一人の少女。男の盾にされたつとむは少女、バーディの放った一撃で絶命する…何と助けようとしたバーディの身体を借りることによって生き残ることが出来たつとむだったが…

 懐かしい。昔某月刊誌で連載されていたのは毎号読んでいたし、漫画も持っていたのだが(あれ?コミックじゃなくて雑誌形式で出たのかな?)、それが20年ぶりくらいに復活した。新規書き直しで随分現代風になっているけど、あの当時から較べると、なんかそつなさ過ぎて、妙にパワーが感じられなくなってしまった。絵は随分こなれてるんだけど、展開も遅いし、主人公のつとむがなんかエヴァの主人公っぽくなった気も…
 まあ、その内展開も早まるだろうし、ゆっくり楽しんでいけばいいか。
<A> <楽>
03'06'02 ヒッコリー・ロードの殺人
アガサ・クリスティ (検索) <amazon> <楽天>
 ロンドンのヒッコリー・ロードにある学生寮で盗難事件が頻発した。それらは全て他愛のないものだったが、ちょうどその寮監をしていたのが秘書のミス・レモンの姉だったこともあり、ポアロが興味を持って寮に顔を出した。そこで何か大きな事件がこの背後に潜んでいることを直感するポアロだったが、実際に彼が帰った後に寮で殺人事件が起きてしまう…

 原題は「Hickory Dickory Dock」。この題はマザー・グースの歌の一編で、作品内でポアロが口ずさんでいるが、一応それと関連した殺人事件。著者はこういったお遊びが好きなようで(他にも「そして誰もいなくなった」もマザー・グースの歌)、著者の遊び心が見て取れる。尤も、それだけで犯人を推測するまでは出来ないけど。この作品だとちょっと伏線が弱かったし、終わり近くになって話が大きくなり過ぎ。犯人も終わり近くでは大体目星がついて、そのまま決定…推理ものとしては中程度かな?ドラマとしては面白かったけどね。
<A> <楽>
03'05'31 さいはての島へ ゲド戦記3
アーシュラ・K・ル=グウィン (検索) <amazon> <楽天>
 魔法によって均衡が維持される世界アースシー。だが、各国でその魔法の言葉が使えなくなってきた。モレド家の嫡男アレンは父王からその理由を大賢人にうかがうよう、使命を帯びて魔法の島ロークへとやって来たのだが、大賢人ハイタカはその言葉を重く受け止め、アレンを連れて探索の旅に出ることにする。

 ゆっくり読み込んでいるゲド戦記だが、この巻もとても良い。秩序を維持するのが魔法であり、魔法が消えていくというのは、世界の秩序そのものが消えていくと言うことか…いや、随分参考になったよ。仕事上でもね。
<A> <楽>
03'05'23 官僚たちの夏
城山三郎 (検索) <amazon> <楽天>
 人を見ることにかけて抜きんでた素質を持ち、通算行政を着実に押し進める風越信吾。ひたすら国家の機能を正常に、そして効率よく進めようとする彼の力強さはいつしか“ミスター・通産省”と呼ばれるに至った。内外の政治情勢と様々な問題をはらんだ人間関係を主軸に、高度成長時代の官僚たちの活躍を描く。

 昔結構よく読んだ著者の作品なのだが、最近はすっかり離れていた。そんなもので時には良いか。と思って読み始めたが、これが又なかなか面白い。著者は泥臭い人間関係を描くのにかけては上手い。時にこういうリアルな作品も読んでいると楽しいものだ。
<A> <楽>
03'05'19 決闘裁判
山内進 (検索) <amazon> <楽天>
 中世ヨーロッパにあったいわゆる神判裁判の一つ。決闘裁判。ワーグナーの「ローエングリン」を題材に、決闘裁判を産み出した中世の精神と、その歴史とを紐解く作品。

 暗黒の中世とも言われるヨーロッパ中世は私にとってはとても憧れがある。まるでヨーロッパ全体が鎖国状態にあったようなその時代。ゲルマンの神々とキリスト教とがぶつかり合ってやがて一つとなっていくその過程。混乱の坩堝にあったその時の風俗について調べるのは、ある種の感動をさえ覚えてしまう。ただ今までに結構な数の文献を読んでいたつもりだったけど、まだまだ甘い。こんな決闘裁判なんてものについて真面目に研究してる人もいるんだし、それを読むのはとても楽しかった。これからも歴史とはゆっくりとつきあっていこうな。
<A> <楽>
03'05'15 デッド・ゾーン
スティーヴン・キング (検索) <amazon> <楽天>
 優秀な高校教師ジョンは恋人のセーラとある夜町のカーニバルに出掛け、そこで<運命の車>というルーレットに挑戦し、500ドルを超える儲けを得た。だが、その夜ジョンは交通事故に遭ってしまい、4年半も意識不明の重体となる。誰もが諦めていた彼は、しかし再び起きあがった。ただし、事故後の彼は今までとは少し違っていた…

 先日著者の最新作「ドリーム・キャッチャー」を読んで、それでちょっと不完全燃焼を感じてしまったので、昔に読んだ本作を引っ張り出してみた。
 やっぱ良いわ。この時代のキング作品は行間から“きらめき”が見えてくるような気がする。
 ホラーの帝王と呼ばれるキングだが、結構色々な範囲で作品を描いている。その中でも特に超能力者の悲劇についてはかなりの数の作品があるが(デビュー作の「キャリー」もそうだし、「シャイニング」「ファイア・スターター」もそうだ)ただ、何故かこれらも“ホラー”に括られてしまっている。多分本作も広義においては“ホラー”なんだろう。
 でもこれはホラーと言うよりは、あまりに悲しい話だ。
 全てに捨てられ、その悲しみの中でも、最大限世界を救う努力をする男。泣けるよこれは。

<A>
<A>
<楽>
03'05'13 こわれた腕環 ゲド戦記2
アーシュラ・K・ル=グウィン (検索) <amazon> <楽天>
 暗黒を祀るアチュアンの墓所。そこで巫女として定められた少女アルハは自分の運命を受けいれて、そこで生きていた。だがある日、自分以外誰も入ることが許されないはずの地下迷宮に一人の男が入り込んでいるのを発見する。本来殺さねばならないその男を助けようと心に決めたアルハだったが…

 これも読み返しの「ゲド戦記」の第2巻。ここでの主人公はゲドではなく、それ故かあんまり記憶に無かったのだが、読み返してみて、これが本当に凄い作品だって事を改めて感じさせられた。凄いよこれは。とても参考になる。
<A> <楽>
03'05'09 ぼくんち(全)
西原理恵子 (検索) <amazon> <楽天>
 山と海に囲まれた、吹きだまりのような町で暮らす一太と二太の兄弟。そんな彼らに新しい家族。姉ちゃんがやってきた…最低の町の中で逞しく生きていく家族を描く。

 かつて「恨ミシュラン」とかの連載があったものの、著者の作品に開眼したのは本作を読んでから。当時はまだこの連載誌も読んでいたが、この作品は最初、ぱらっとめくるだけだったのが、どんどん面白くなっていった。その後、著者作品は買いまくり、漫画も本も随分な量を持っていた。
 勿論カラー版の単行本も持っていたが、他の漫画同様、引っ越しで処分してしまった。そんな時にこの白黒版の作品を見かけ、購入。久々に読んだ「ぼくんち」は、やっぱりとても面白かった。
 どんなところでも、どんなになっても人は生きていくんだな…辛いときこそ読みたくなる。一応映画もあり。
<A> <楽>
03'05'07 夢魔の王子 グイン・サーガ89
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 和解を経、パロ首都のクリスタルに向けて進撃を開始したケイロニア軍とゴーラ軍。統率の良くとれたケイロニア軍であったが、クリスタルに近づくに連れ、様々な精神的攻撃が加えられていく。そんな中、陣中にあってパロ王子アモンの訪問を受けたグインだったが…

 いよいよ89巻。ギネスを次々と塗り替えているが、どう考えてもこのペースだと100巻で終わらないことは決定してるよな。大体ここまできて外伝の1巻にまだ至ってないってのだから、凄いもんだ。この巻だって殆ど動きらしい動きがなかったんだが…それにしても毎号ちゃんとつきあってるよな。私って。
<A> <楽>
03'05'05 トライガン・マキシマム8
内藤泰弘 (検索) <amazon> <楽天>
 バッシュを虜にしたナイブスの侵攻が開始された。ナイブスは箱船と呼ばれる宇宙船を駆り、各地にある、全ての供給源“プラント”を次々に吸収していく。次々に餓死していく街々…敵地のど真ん中にいるウルフウッドは機会を捉え、バッシュを逃そうとするのだが…
 元々明るい話ではないにせよ、前巻から話がとてもハードになってきたが、今回もそれは続く。ただ、主人公であるバッシュが殆ど動けないこともあり、話そのものは極めて緩慢。「希望はバッシュにある」「バッシュだけが人類最後の希望だ」と言うことが繰り返し強調されるだけで、実質的な展開が少なすぎるのはちょっとなあ。描写もますますきつくなってるし。毎回楽しみにしている表紙裏のお遊びも今巻はおとなし目。
 次巻はウルフウッドが大暴れだから、そっちの方は期待できるけどね。
<A> <楽>
03'05'02 ミス・マープルと13の謎
アガサ・クリスティ (検索) <amazon> <楽天>
 イギリスの片田舎の村に一人住むミス・マープルの家に集まった面々。彼らは自分が結末を知っている怪事件の話をしあい、その推理をし合おうと言うゲームを始めた。合計13の謎を揺り椅子で編み物をするミス・マープルが見事に推理するシリーズ。

 著者作品の中でもポワロと双璧をなすミス・マープル作品。しかしこれが又面白い。こういった短編は謎解きそのものが話の目的のため、考えながら読むには丁度良いし、自分の推理が当たるかどうか、と言うのも短いからこそ楽しめる。ちなみにこれが本書では二度目になるのだが、前に読んだ時は今から10年以上も前で、今も尚新鮮な気分で読めた(ちなみに一度ちゃんと読んでいるにも拘わらず、犯人が分からなかったのが何作かあったりして…)
<A> <楽>
03'04'30 たけしの20世紀日本史
ビートたけし (検索) <amazon> <楽天>
 今や日本の近代史はタブーばかりとなり、語ることも出来なくなりつつある。そんな現状を不思議に思う著者が、自分の身の回りに起こったかつての出来事を踏まえ、著者流の毒舌で描く近代日本史。

 タレントとしての著者は大嫌いだった。かつての漫才ブームでは自分だけが高みに登って、誰彼無しに毒舌を吐いてるだけにか思えなかったし、何故かそれが受けいれられるのを苦々しく眺めていたものだ(私自身がそうだったから、それは同族嫌悪だと言った友人もいたが…)
 漫才ブームが去り、タレントとして残っても、その姿勢は変わらず、この人が出てるとなんかむかむかするのでチャンネルを変えてた位だったし、マルチタレントとして様々なものに手を出すのも、どうせタレントの遊びだ。と言う程度の認識しかなかった。
 それが変わったのは、偶然著者の作った映画をテレビで観てから。
 あれは正直衝撃だった。
 なんだよ!なんでこんなもの、こいつが作れるんだ?
 恥ずかしい話、映画監督としての著者はそれで大好きになってしまった。今ではテレビに出ていても、消すことなく、むしろその言動に気を付けて見てるくらいになった…情けないが、それを越えるだけの作品を確かに作り出してるんだもん。
 本書は一応古本で購入したが、内容は面白い。この人の場合、自分を含め、全ての人間を馬鹿だと言う前提で見ているものだから、普通、偉ぶって「これはこうだ」と言う人間とは異なり、同じく毒舌を吐くながら歴史を見る観点がまるで違っている。とても新鮮な感じ。
 うー、それにしても、著者をこれだけ褒めねばならないのは、私にとっては屈辱に近いんだがなあ…
<A> <楽>
03'04'23 ファイブスター物語11
永野護 (検索) <amazon> <楽天>
 ジョーカー星団最大の国家の一つにして、超帝国からの伝統を最も深く受け継ぐ大国ハスハに突如宣戦布告した新興魔道国のバハットマ。そしてその混乱に乗じ、ハスハに侵攻しようと虎視眈々と狙う国家群。その裏にある様々な野望をはらみつつ、今、魔道大戦が幕を開けようとしている…

 これはとてもつきあいの長い漫画だ。アニメ誌はいくつかの例外を除けば買ったことがなく(昔は「押井守」の名前が出ていたものは買い込んでいたもので)、その中に載っている漫画もあまり読まないのだけど、これだけは例外。とにかく徹底的に私の好みだ。アニメを観る気に全くなれなかった時期でもこの漫画だけはしっかり読んでいたし、ガレージキットもいくつか持っていた。そもそも本サイトを作る際、何をテーマにするか考えて、候補の一つにこれがあったのも事実(サイト検索したら、とんでもないデータベースサイトもあったから、その案は早々に廃棄したけど)
 著者の頭には一体何が詰まってるのか?と思えるほどの設定が詰まっているようで、漫画に小出しにされるそれらの設定を解釈するのがとても楽しい。実は私が非常に重度の設定マニアであることに気づかせてもらったのも本作のお陰だったりする。殆ど一見さんお断りの世界で、決して読みやすい漫画ではないけど、一旦はまると抜け出せぬ、泥沼のような作品。
 本巻では、巻末にまるで毛色の違う漫画が載っているので唖然としたが、よくよく見ると、これって確かに本編と関わりを持っている。一体どんな形で関わってくるのかが今ひとつ分かりづらいところもあるけど、それを想像するのも楽しかったりする(笑)
<A> <楽>
03'04'21 ドリーム・キャッチャー
スティーヴン・キング (検索) <amazon> <楽天>
 デリーで少年時代を過ごした仲良し4人組。ヘンリー、ジョーンジー、ビーヴァー、ピート。彼等は少年時代、ダディッツという少年と知り合うことにより、他の人にはない能力を持つようになっていた。大人になった彼等はそれぞれの生活に悩みを持ちつつも、毎年冬に狩りのため集まっていたのだが、その年、彼等が狩りの中で遭遇したものは…

 映画公開が近いというので大急ぎで読み切った作品なのだが、出来としては今ひとつと言ったところか。著者らしい描写もあるんだけど、切り口がどうも通俗極まりなく、ストーリーもなんか著者っぽくないというか、あまりおもしろみが感じられない(バックマン名義での最新作「レギュレイターズ」のストーリーにもどことなく似ているので、そこもちょっと評価を低くしたくなる点。
 視覚的には映えるところが多いので、映画向きかな?映画を楽しみにしよう(とか言って、もう公開されてるんだけど)
<A> <楽>
03'04'15 終わりの始まり ローマ人の物語11
塩野七生 (検索) <amazon> <楽天>
 五賢帝による統治も末期。マルクス・アウレリウス帝の時代に始まったゲルマン人の侵入に端を発し、国内に混乱が始まった。息子コモドゥス帝の短い統治期間を経、再び次々と皇帝が達治台へと向かうローマを描く。
 栄華の時代を経、再び混乱の時代に入っていくローマの姿。丁度この時代はリドリー=スコット監督による映画『グラディエーター』の時代の話だ。私がかなり酷評したこの映画も、著者は割合好意的に受け止めているところがなかなか興味深い。ところで後残り4巻ほどになってるはずだが、巻数から逆算するとぎりぎりで東西ローマの分裂の所までか?(東ローマの滅亡は既に著者は他の話で書いてるし)
 いずれにせよ、目が離せない作品であることは確か。
<A> <楽>
03'04'12 黒い家
貴志祐介 (検索) <amazon> <楽天>
 保険会社の社員若槻慎二は保険金の説明に訪れた家で息子の首吊り死体に遭遇してしまった。警察により自殺と判断されたため、保険金も支払われることになった。しかし、その両親の態度に不審なものを感じた若槻は心理学者の恋人の助けも借り、その夫婦の心理状態を探っていくのだが…

 映画の方を先に観て、なんて気持ち悪い作品だ。と思っていたにも拘わらず、古本屋で100円で売っていたのを見た途端買ってしまう私も相当な馬鹿だと思う。
 最近の推理小説風作品は膨大な蘊蓄をちりばめて描くことが多いけど、本作もその多分に漏れず。心理学の部分や、保険のことなどについて、余程勉強したと見える(私にはよく分からないところも多いんだけど)。
 映画もそうだったけど、兎に角苛つかせるし、気持ちも悪くなる。それでも通読してしまうとは…
<A> <楽>
03'04'10 緑の黙示録
岡崎二郎 (検索) <amazon> <楽天>
 木と会話出来る能力を持つ山之辺美由の周りで起きた、不思議な事件。それらは全て木に関する事だったのだが…人間と樹木との関係を問い直す作品。

 私は著者のファンだが(時の添乗員参考)、ずっと小学館で仕事をしていた著者だったから、これが講談社の雑誌から出て、おや?と思った記憶がある。勿論内容的には充分に面白い。
 著者はよくミステリー仕立てに物語を構築するけど、オチの部分がとてもスマートで、考えさせられる事も多い。まさに本作はその典型的な作品と言っても良いだろう。
 特に土と植物については大変興味があって大学ではその専門課程に進んだはずなんだけど…全く違う仕事に就いてしまった自分自身の事もちょっと考えてしまったよ。木と触れあうって事もなくなったなあ。
<A> <楽>
03'04'08 影に歌えば
タニス・リー (検索) <amazon> <楽天>
 敵同士のモンターゴ家の一人息子ロシュランと、チェンティ家のユウレッタ。ある日偶然であった二人の間に燃える恋心。だがユウレッタは婚約中の身であり、ロミュラーンは彼女の兄をはずみで殺してしまった…叶えられる事のない愛を生きた二人の行方は…

 まあ、ストーリーフローを見てもらえばすぐに分かるが、これは著者版の「ロミオとジュリエット」。しかし、ストーリーは本当にそのまんま。文体はくどいし、長いし、完全に分かっている物語を読むのは苦痛だった。
 著者は決して嫌いじゃない。ファンタシー小説家として彼女の作品はとても好きだし(ファンタシー小説って女性がよく書くよね)、何作か、ベストと思える作品もある。まあ、今回はたまたま外れだったと言う事で。
<A> <楽>
03'04'05 ヨコハマ買い出し紀行10
芦奈野ひとし (検索) <amazon> <楽天>
 台風で潰れてしまったカフェ・アルファの再建をのんびりと続けるアルファ。そんなアルファのほんわかした日常を描く。

 なんか私のツボにはまり、長いことおつき合いしてる漫画。なんか置いてあると安心するタイプの漫画だ。一応設定としては未来で、SF的な小道具も結構あるのだが、何かこの漫画に関してはあんまり深く設定とかつっこむ気力が無くなる。ほんわか感に浸ってさえいれば良い。そう言う漫画だ。
 それでも10巻を数える本巻は、徐々に人間関係も変わってきている。子供がどんどん大人になっていく…ほんわかしてる間にもちゃんと時が流れているんだな。
<A> <楽>
03'04'02 影との戦い ゲド戦記1
アーシュラ・K・ル=グウィン (検索) <amazon> <楽天>
 多島世界のアースシーの中でも魔法使いを多く輩出するゴントに一人の若者が育つ。賢者オジオンからゲドという名前を受けて教えを受け、ロークの魔法学校でも優秀な成績を収めたハイタカである。彼の力は並み居る魔法使いの中でも抜きんでていたのだが、在学中、彼は自分の力を誇示するあまり、闇から怪物を呼び出してしまう。それはハイタカの身体を自分のものにしようと追ってくるのだが…
 随分前に一度読んだ作品で、その時は確かに面白いと思ったけど、その後、大学の授業のテキストとして用いられて、非常に興味を持った(原著のペーパーバック「THE WITHERD OF EARTHSEA」をそれで買ったのだが、当然読んでない)。
 これを書くと色々言われるかも知れないけど、私にとっては「指輪物語」よりもこっちの方が好き。
 それで10年ぶりの、最終巻である5巻が出たのを機に全部購入し直した。
 先ず一巻目。じっくり読み直すと、授業ので学んだことが今更ながら思い起こされるし、それに非常に示唆に富んだ作品であるから、色々と面白く、そして参考になった。
 良い物語は読んだ通りだけの解釈には終わらない。この作品はそれを如実に表しているだろう。
 じっくり時間をかけて、2巻以降も読んでいこう。
<A> <楽>