読書日誌
2002’8〜10月

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02'10'25 ジェラルドのゲーム
スティーヴン・キング(検索) <amazon> <楽天>
 湖水の別荘へ週末バカンスを楽しみに来たジェラルドとジェシーの夫婦。ジェラルドはジェシーを手錠でベッドに括り付けたのだが、その直後心臓発作で死んでしまう。手錠を付けられたまま残されたジェシーの恐怖の時間を克明に描く。

 凄い作品だった。同じような話は著者の「ミザリー」でもあったが、ある意味それより凄い。なにせベッドからたった一人、全く動くことが出来ない人物の話で長編一本描ききってしまうのだから。著者の力量にはほとほと感服する。
 ネタバレになるので、具体的には言えないが、後半のあるシーンは凄まじいほどの“痛み”を感じることが出来た。特に没入していた私はとても一気に読むことが出来ず、ちょっと読んでは本を置き、深呼吸をしてから又読み返す。と言う作業を繰り返した。本当に凄い作家だ。
ジェラルドのゲーム
02'10'24 からくりサーカス25
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 勝の過去への旅は続く。世界中にゾナハ病を撒いたフランシーヌと、《しろがね》エレオノールの関係、そして謎の自動人形達との戦いの果てに見たものは…
 ちょっとストレスが溜まっている時に読んだのがいけなかったか。このベタベタな展開に、目頭が熱くなってしまった。それにしても著者は本当に見事に設定を作ってくれている。色々設定とか展開とかを推測するのが好きな私の予想をことごとく外してくれるし、こういうジンっとくる話も描く。まだまだ目が離せない作品だ。
<A> <楽>
02'10'23 猟奇の果
江戸川乱歩 (検索) <amazon> <楽天>
 猟奇趣味を持つ若き資産家青木愛之助はある日街で友人で科学雑誌の編集長品川四郎にそっくりな男をみかける。しかもその男は何らかの犯罪に加担しているらしい。趣味の虫が騒ぎ出した愛之助はその男を調べることにしたのだが、それは彼にとって、巧妙に張り巡らされた転落の道の始まりだったのだ。

 小学生の時、子供向けの怪人二十面相シリーズを貪るように読んだ著者。手に入るほとんどを読み終え、中学生になって著者には大人用の作品があることを知り、それを手に取ったのだが…かなり私の精神を歪めることに貢献した作家だぞ。この人は。今までに結構読んだつもりだが、全部にはまだまだ至らない。時々読みたくなる作家だ。
 本書は題名が刺激的な割りに内容的にはさほど変ではない。荒唐無稽な推理ものって感じ。それを笑って許せるのも著者の著者たる所以か。
 ラストの二行が好き。
 「夢物語でよいのだ。
  夢物語でよいのだ。」
<A> <楽>
02'10'21 輝ける闇
開高健 (検索) <amazon> <楽天>
 記者としてヴェトナム戦争に参加した「私」。前線で、そしてサイゴンで見聞きした事を日記の形を取って描いた作品。毎日出版文化賞受賞作。
 ちょっと前に著者の『夏の闇』を読み、その姉妹編として紹介されていた作品で、見つけ次第購入した(こんな事やってるからいつまで経っても本が減らないどころか逆に増えていく)。好みの問題だが、著者の作品は私の感性に本当にしっくり来る。これは実際にヴェトナム戦争に参加した著者の半ノン・フィクション作品だが、やはり文学者の感性は並じゃない。ほんの小さな事に臨場感を見出し、本当に怖いシーンを突き放して見る観方に、鳥肌が立つほどだった。前線と言っても実際は日常生活がその任務の大きな部分を占めるのだが、牧歌的な描写の中に、とんでもない緊張感をはらんでいることを、しっかりと描いているのは凄い。見事な作品だった。
<A> <楽>
02'10'19 傭兵部隊
落合信彦 (検索) <amazon> <楽天>
 現在も尚世界で活躍する傭兵達。その傭兵が集う訓練キャンプに体験入学した著者の個人的体験を踏まえつつ、傭兵達に行ったインタビューを通し、彼らの素顔を探るノンフィクション。
 一時期著者作品にははまり、かなりの数の本を読んでいた。読みやすいし、インタビューとしてもかなり楽しい。それに著者の体験談が結構好きだったから。私が持つ軍事知識は元はと言えば著者の作品から取ったものが多かった。
 しかし、いつしかほとんど読まなくなってしまった。私なりの軍事知識や国際情勢を読む力が付いてくると、著者の言っていることでは物足りなくなってくるから。それにやや論理に飛躍がありすぎていて、著者が予言した国際情勢における日本の位置づけが見事に外れまくったと言うのも理由。
 今になって一つ言えるのは、著者の作品とは、話半分に流して聞くには丁度良いと言うこと。ノンフィクションに近いフィクションを読んでるつもりだと楽しい。特に著者の体験談は、そう読むと微笑ましい気持ちになれる。
 本書も又、デッドストックとなっていた本の山に埋もれていた作品だった。それで何年かぶりに著者の作品を読んでみたのだが、やっぱり楽しい。キー・ワードもなかなかたのしいものがあるし。
 読み物として読む分には良いみたい。これから又読んでみようかな。
<A> <楽>
02'10'16 グミ・チョコレート・パイン グミ編/チョコ編
大槻ケンヂ (検索) <amazon> <楽天>
 黒御所高校に通う一介の高校生大橋賢三。だが、彼は内にある有り余るパワーを持て余し続けていた。自分を表現する方法が分からず、ただ映画を観まくり、同志と呼べるタクオ、カワボンと酒を飲んでクダを巻くしかなかった。彼のあこがれの君、山口美甘子が実は賢三と同じく映画マニアだったことが分かり、有頂天になるも、彼女は映画女優としてデビューしてしまう…
 著者の半自伝的作品。正直グミ編を読んだ時は衝撃を受けた。
 高校の時の自分自身、そのものを見せ付けられた気分だった。違いは彼はその一歩を踏み出す勇気があったのに対し、私はその勇気がなかったと言うこと。いつまでも自分のなけなしの才能に縋っていたと言うこと。本当に才能がなかったこと…
 色々な思いが渦巻き、その時は地団駄を踏んだ。
 それで続編のチョコ編はかなり怖くて大分長い間読めなかったのだが、今になって読んでみると、やっと冷静に読む用意ができていた、と言うところか。
 多分、こういう思いを持って高校時代を過ごした人って、かなりの数に上り、私はその内の一人に過ぎないのだろう。そして大概の人間は私同様、いつしかそれを脇に押しやり、自分の生活を始めていく
 もし、これを私が高校時代に読んでいたら、どうだっただろうか?(物理的に無理なんだけどね)私にとっての「応援歌」になっていたかも知れない…今となってはそんなことを思い起こさせる。
 それにしても、未だに懊悩を続けられていられる著者が凄いな。苦労するしかない生き方だ。
<A> <楽>
<A> <楽>
02'10'14 五番目のサリー
ダニエル・キイス (検索) <amazon> <楽天>
 ノラ、ベラ、デリー、ジンクスという四つの人格を有する多重人格症のサリー。彼女は自分の中に別人格があることを知らず、気を失って目が覚めるといつも厄介な目に遭わされていることに飽き飽きしていた。そしてとうとう意を決し、精神科医のロジャーを訪ねるのだが…
 短編のゴドウィン(『冷たい方程式』)、長編のキイス(『アルジャーノンに花束を』)、シリーズのセイバーヘイゲン(『バーサーカー』)。この三人の作家はかつて“SF界の一発屋”と呼ばれていた。代表作は一本だけ。しかもそれ以外の作品は殆ど人に知られていないと言う悲しい作家に付けられた不名誉な呼称だった。
 確かに『アルジャーノンに花束を』は著者にとって出世作であり、二度に渡る映画化、TVドラマ化もされる程の人気を誇る作品だった。
 実際、私はこれまでに3冊、『アルジャーノンに花束を』を買っている。最初の一冊は自分で読むため。次の一冊は当時つきあっていた女性にプレゼントするため。そして三冊目は家庭教師をしていた中学生に読ませるため…私にとって、かなり思い出深い作品だ。
 それを出して以来、キイスと言えば「アルジャーノン」という定式が出来てしまっていた。実際SF作家としての彼は他にほとんど知られることがなく、前述の“一発屋”としてのみ知られる存在となってしまった。このまま埋もれたままだろう。そう思っていた(むしろ埋もれたままの方が話のネタにはなった)
 だが、彼は大分経ってから見事にベスト・セラー作家として復活する。ただし、SFではなく精神医学分野での小説家(後にノンフィクション作家)として。
 本作はその復帰作である。
 実際読んでみると本作の質は実に高い。五人のはっきりと分かれた人格をそれぞれ魅力的に描いているのが一番の理由だが、それだけでなく起承転結がはっきりしているし、ちゃんとオチ部分であっと言わせる手法も取っている。見事な作りだったと言って良かろう。
 尚、これを今まで読んでなかったのは、買ったは良いけど押入の隅に放り込んだままだったから。と言う単純な理由。ようやく発掘(笑)できたので読み始めた。結構読み応えがあったな。
<A> <楽>
02'10'09 アルルの女
アルフォンス・ドーデ (検索) <amazon> <楽天>
 裕福な農家カストゥレ家の若主人フレデリは幸せの絶頂にあった。アルルの女と言われる美しい女性を嫁にもらうことになったのだ。だが、実は彼女は既に言い交わした男性がおり…

 ビゼーの有名な同名曲に合わせて有名となった戯曲。曲が勇壮な割りに極めてセンチメンタリズムにあふれている。意外な組み合わせだ。特にラストの台詞「恋で死ぬ男もいる」というのはどこかで聞いたっけ?それにしても題名であるアルルの女を一切出さずに戯曲を完成させるなんて面白い。
<A> <楽>
02'10'07 すべての道はローマに通ず ローマ人の物語10
塩野七生 (検索) <amazon> <楽天>
 ローマの繁栄とは、実はハード、ソフト両面のインフラにこそあった、と看破した著者がそのインフラについて一冊を用いて描いた作品。
 歴史作家では何人か好きな人がいるけど、日本人だと女性で良い歴史の本を書く人が多い。角田房子、犬飼道子、そしてこの著者塩野七生…その中でも著者の作品はとにかく面白い。割合すんなりと読める割りに非常に内容豊富で、読み応えもある。更に繰り返し読んでいても飽きない。これは多分著者がある意味でロマンチストだからなのではないかと思う。冷静に過去を見つめつつ、過去の中にいる自分。そしてそこから何が見えるのか。その事に想いを馳せるからこそ、こういう読んでいて楽しい作品が描けるのではなかろうか?かなりの数読んでいるが、その中でもデビュー作の「チェーザレ・ボルジア」が好きだったのだが、この「ローマ人の物語」のシリーズを読むと、ますます文章はこなれていて、本当に読んでいて楽しいし、本シリーズのお陰で多くの古典良書にも巡り会えた。私にとっては大変重要なシリーズでもある。
 それでいつもの展開だと思って読み始めたら、なんと一冊全部インフラのことだった。専門書でもないのにこんなのを書いたのは著者が最初じゃなかろうか?いつもの歴史も良いけど(本筋は現在ローマの五賢帝時代)、こう言うのもやっぱりロマンだよな。ローマにも行ってみたいなあ。
<A> <楽>
02'10'05 空飛び猫/帰ってきた空飛び猫
アーシュラ・K・ル=グウィン (検索) <amazon> <楽天>
 ゴミためのような街に生まれたセルマ、ロジャー、ハリエット、ジェームズの4匹の猫の背には何故か羽根が生えていた。羽根があるが為に得た自由と、それ故の苦しみを経、子猫たちはたくましく成長していく。
 ル・グインと言えば「闇の左手」「ゲド戦記」と言った、ハードな作品を数多く書いている女流作家。文体が実に綺麗で、人の心情に深く入り込みつつ、とても冷徹な目で登場人物を見守る彼女の作品はとても好き。
 そんな彼女が絵本の原作を、しかも猫を題材としているという。随分前にそれは知っていたのだが、それが既に邦訳されていたのを知ったのはほんの数年前。知り合いの家に偶然置いてあったので、手に取ってみた。実はその時は続編の「帰ってきた空飛び猫」の方だったので、その内に前編である「空飛び猫」も読まないといけないなあ。と思っていたら、いつの間にか時が経ってしまっていた。
 それでたまたま偶然に本屋さんで見つけたので、そのまま購入してきた。
 文字こそ多くても、やはり絵本。繰り返し読めるよう、そして時に一人(一匹)で、時に助け合いながら成長していくキャラクター。彼らに感情移入が出来やすいように書かれている。それに、本当に著者が猫好きってのがよく分かって、何かほのぼのした気分になる(このサイトは至る所に犬の絵が飾ってあるが、実は私は大の猫好き)。訳者が村上春樹ってのもなんか良いね。
<A> <楽>
<A> <楽>
02'10'03 SF大将
とり・みき (検索) <amazon> <楽天>
 丁度昨日だが、「SFについて」。としてチャットを行った。そこで色々と話してみたが、一体何をして“SF”と言うのか、その辺がどうもはっきりしない事を痛感させられた。
 それで翌日(つまり今日)になって、本屋に入ってぶらぶらと本を物色していたら、漫画文庫のコーナーに面白い題の漫画が置いてあった。
 著者は結構好きで、10年ほど前は随分彼の漫画も持っていたものだし、実際当時私が映画を観る基準は彼の漫画「キネコミカ」が非常に参考になっていた。
 丁度折が良いと思い、購入。内容は一つ一つSF小説を挙げ、それを元ネタとした短編漫画だが、内容は相変わらず、彼らしく内容を換骨奪胎し、不思議な感触を持った作品に仕上げている。出てくるのは有名なSF小説ばかりだが、私が読んだのはその内の2/3に満たないところで、私もまだまだだ。
 それでいくつか面白い台詞があった。「怪獣はSFに非ず」「空飛ぶ円盤とSFを一緒にしちゃいかん」「ロボットプロレスがSFなんぞであるものか」…う〜む。確かに
 ではSFの定義とは何か?
 「ソングマスター」を元ネタとした漫画でこんな台詞があった。「なんだっていいんだよ。私がSFと感じるものなら」…そうなのかもな。SFとは定義に非ず。個人個人で、「これはSFだ」と感じるなら、それはSFになるのかも知れない。大切なのは、一人ひとりの中にある「センス・オブ・ワンダー」(驚異の感覚)。これだけはいつまでも変わらない。
<A> <楽>
02'10'01 教科書が教えない歴史
藤岡信勝 (検索) <amazon> <楽天>
 最近になり、引っ越しのために本の整理を始めたのだが、結構色々な本が出てくる。昔、何となくタイトルに惹かれて買ったり、ベスト・セラーだから読んでおこうと思って買ったりして、そのまま忘れて積ん読の中に埋もれてしまったものが多くある(そりゃ読むつもりもなく本を買うはずはない、それは今でも続いているのだが…)
 これもそんなタイトルの一つ。当時かなりのベスト・セラーとなり、この本の構造解析をする本やら、類似本の量産をもたらした作品である。そんなことで買ったは良いけど、そのまま忘れ去っていた
 こんなものもあったな。と思って手に取り、何となく読み始めたが、タイトルがたいそうな割にかなり読みやすい本だった。なるほどね。だからベスト・セラーになれたわけだ。
 内容としては、現用教科書のいくつかの部分を抜粋し、それに対し説明を加えると言う感じで、教科書のニュアンスを感じ取り、この部分はそれとは違った意味があるんだよ。と懇切丁寧に教えようとしている。
 一読して(一時間ちょっとあれば読めるよ)、なんと当たり前のことばかり書いてるんだろう。と思った。間違ったこと、推測による大胆な仮説などは書かれておらず、こんな事は当然と思えるような事ばかり。当然ながら大半は私もよく知っていることばかり。歴史上の人物としては確かに何人か全然私も名前を知らず、意外なところで日本の歴史に関わった人がいる事が分かったのは成果だけど、ある程度有名な人に関しては、何も目新しいことは書いてなかった。
 一時期(今も?)、教科書が左傾化していると言う主張があって、実際の歴史はそうじゃないんだよ。と言う事を言う人が随分いたようだが、その流れに沿って作られたのかな?(その辺の事情を全く考えずに買ってしまったのは私がなーんにも考えてなかったから)
 逆に言えば、歴史認識が一方からしか見えてない人がそれだけ多いって事なんだろう。
 歴史の本として読むとしたら、これは物足りないと言うにも至らないが、それでも歴史をこんなに簡単に読めるようにした。と言う点は評価すべきか?
<A> <楽>
02'09'29 ロードス島戦記6,7
水野良 (検索) <amazon> <楽天>
 かつての英雄戦争、その後の多くの英雄達の活躍によりロードスを揺るがしたマーモの勢力も後退し、いよいよロードス島の平和も目前となっていた。そんな時、マーモで新しい陰謀が…破壊の女神カーディスを復活させようと言うのだ。そしてその「門」として選ばれたのはかつての英雄戦争での中心人物スレインとレイリアの娘、ニースだった。国王の命に背いても彼女を守ろうとするフレイムの騎士見習いスパークを中心に、パーンらも加わり、最後の戦闘へと向かう。
 この物語も(取り敢えず)これでお終い。この作品とのつき合いは随分昔に始まった。当時テーブルトークRPGが好きで、その関係で著者の名前を覚え、この人が作ったファンタジー小説だ。と言うことで一冊目はすぐに購入。それから飛び飛びで5巻まで読んだ…最後の5巻を読んだのが、確か10年近く前のこと。(その間、ゲームが出たり、アニメになったりと様々なメディアに進出したらしいが、私は一切観てない)
 最終巻を残した理由は簡単で、面白いと思わなくなったから買う気が起きなかっただけ。そして今になってこれを読んだ理由、これも単純で、古本屋で1冊100円で売ってたから。ノスタルジーで購入。しばらく積ん読本の山の中に放り込んであったが、ようやく日の目を見た。
 トールキンの『指輪物語』の設定をベースにし、後のロールプレイングゲーム(テーブルトークの方)で設定を補完しているため、オリジナリティは無いに等しく、ストーリーもまさしくアニメ受けするパターンを踏襲している。一時期そう言うのが大嫌いだったが、10年も経ち、どんな本でも読めるようになると話は又別。結構頑張った作品だと言うことが今になってやっと分かる。
 ちなみにロードス島を舞台にした物語はこれ以降もいくつかシリーズが出ているはずだが、読むかどうかは分からず。
<A> <楽>
<A> <楽>
02'09'26 はじめの一歩 62
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 一歩の後輩板垣の新人王準決勝戦が始まった。相手はデビュー戦で惜敗した牧野。フリッカーを使う牧野を前に板垣の取った作戦とは…

 いい加減随分長いことつきあってる作品だ。でもこういうスポ根作品って、結構好き。特にこの作品は試合毎に何かしら楽しい演出を入れているので、読んでいて楽しいし、きっとこれからも読み続けることになるだろう。既に数少なくなった少年漫画で読み続けている作品だし、私にとっては結構貴重。
<A> <楽>
02'09'25 イギリス 怖くて不思議なお話
桐生操 (検索) <amazon> <楽天>
 イギリス。霧と王室のあるこの国は、中世以来様々なゴシップを産んできた。それら様々なゴシップを集め、解説を加えた作品。
 要するにワイドショーの歴史版。
 一時期『ほんとうは恐ろしいグリム童話』でブレイクした著者(実は二人の女性が共同で書いてる)だが、その随分前から、多分題名に惹かれて読んでいた。一冊読んで、こんな下らない作品なんぞもう読むものか。と思っていた。のだが…
 時々自分でも不思議に思うのだが、何でこんなに下らないと思いつつも著者の作品を読んでしまうのか。いつもそう思っていながら、やっぱり年に一冊位読んでしまっている…歴史好きなのは確かなんだけど、こういうゴシップってのはどうも苦手。ゴシップを元にしていても、きっちり小説として仕上げる藤本ひとみとは別で、ゴシップをあくまでゴシップのまま出してしまうのがとても変だし、そこが嫌い。
 しかし、今までに著者の本って、本当によく読んでるよな。これで確か8冊目…
 私にとっては多分映画におけるオリバー=ストーンと同じなんだろう。嫌いなのに何故か観て(読んでしまう)。
<A> <楽>
02'09'23 餓狼伝12
板垣恵介 (検索) <amazon> <楽天>
 夢枕獏の小説「餓狼伝」「バキ」の板垣恵介がコミック化した作品。今巻は世界最大の実践空手の北辰館とプロレス団体FAWとの全面対決試合に至る過程を描く。
 前にも書いたが、原作者の夢枕獏は私は大好きで、勿論この「餓狼伝」もシリーズ現時点での全巻読んでいる。その関連でこの作品も読んでいるのだが、これは決して原作を忠実にコミック化しているわけではない。(漫画のペースはどうしても遅くし、原作の方のストーリーがあっちに飛んだりこっちに飛んだりしていると言うのも大きな理由だろうが)
 漫画家の板垣恵介は本当にのびのびと、好きにこの漫画を書いていると言う感じ。ストーリー的には全く絡みのない、同じ夢枕獏の「獅子の門」からキャラクターを拝借したり、新しいキャラクターを出してみたり、主人公丹波の過去を描いてみたり、と好き放題。
 でも、それが楽しい。原作は原作、漫画は漫画で別々に楽しませてもらってる。

 ところで夢枕獏って、一体どれ程代表作があるんだろうか?一気に彼の名をメジャーにした「サイコダイバー」シリーズ、私が最初に彼と出会った「キマイラ」シリーズ、最近になってブレイクした「陰陽師」もあるし、この「餓狼伝」を代表と見る人もいるだろう。いずれにせよ、ヒットメーカーなのは間違いがない。
<A> <楽>
02'09'21 彼氏彼女の事情14
津田雅美 (検索) <amazon> <楽天>
 共に素直になることを誓い合って恋人となった有馬総一郎と宮沢雪野。その後順調に進んでいた二人の関係だったのだが、実は心の中に巣くう闇に、有馬自身が犯されていた。雪野を巻き込まぬよう、一人でその道を進もうと決心した有馬だったのだが、彼の生みの母親の出現により、状況は一変する…
 この作品、何年か前にアニメになり、その関連で女性の友人から借りて読んだのだが(当時5巻位までだったと思う)、これが又実に面白かったため、一気に購入。その後新刊が出るたびに買っている。少女漫画の傑作はとにかく人の内面を描写するのに長けており、それが見事にツボにはまった好例。
 特に本巻は今まで(表面的に)順調にいっていた学生生活にヒビが入り、その亀裂が大きくなっていく、その過程が克明に描かれているのが凄い。ここ何巻かは割合ほんわかした純愛路線を進んでいただけに、これからが本当の主題となり、面白くなりそうだ。
 それにしても読み進めるのに苦痛を覚えつつ。と言うのも特徴かな?
<A> <楽>
02'09'16 グッドラック 戦闘妖精・雪風
神林長平 (検索) <amazon> <楽天>
 30年前突如地球に飛来した知的生命体ジャム。今や人類はジャムをワームホールの奥に押し込め、彼らがやってきたと思われるフェアリイ星上で戦っていた。そこで戦闘機スーパー・シルフを駆り、戦場を縦横に駆けめぐっていた深井零は、かつて自分の乗機“雪風”に見捨てられ、意識不明の重体に陥っていた。だが、新しい雪風の機体メイブに乗った時、雪風に呼ばれるかのように覚醒する。ますます苛烈さを増すジャムの攻撃に対し、人類が取るべき道は…
 前作「戦闘妖精・雪風」を読んだのは10年以上も前になる。それにしては読み始めた途端に本の中の世界観が頭に飛び込んできたのだから、余程前作のイメージは私の中では強かったに違いない。それにしても相変わらず見事な作品。やっぱり著者は私の好みだ。
 ところで本作(多分前作)はつい最近アニメにもなったそうだが、今のところ観る予定はなし。情報の質が違うので、この世界観を映像にしたら随分ギャップがありそうだけど…
<A> <楽>
02'09'11 嗤う伊右衛門
京極夏彦 (検索) <amazon> <楽天>
 有名な『東海道四谷怪談』をベースに、著者流の解釈を加えて描いた、もう一つの「お岩」と「伊右衛門」の物語。

 著者はかなり好きな作家で、特に「京極堂」のシリーズはあらかた読んでいたし、その質の高さ、なにより日本語のこだわりは好みで、この人の操る言葉は私のボキャブラリーを増すのに大変役立っている。それが怪談噺を描くというので、かなり期待していた(読んだのは随分経ってからになってしまったけど)。
 『東海道四谷怪談』は歌舞伎の舞台劇として観たことがあるし、講談本も読んだことがある。勿論有名なのはお岩さんなのだが、実際の主人公は彼女の夫伊右衛門であり、真面目一徹の伊右衛門がついには妻と子供を殺害し、極道に堕ち、ついには妻の岩に呪い殺されるまでを描いていた。題字に「嗤う」と書いてあるので、最後にどのような笑い方を見せてくれるか。と言う所に興味があった。
 だけど、本作での伊右衛門はあくまで真面目さを崩すことなく、最後に見せた笑い顔も決して「嗤い」ではなかった(嗤いとは相手を蔑んでの笑い方であり、極めて差別的な表情を見せるはずなのだ)。まあ、確かに質は高いが、言葉にえらくこだわる割りに、こんな所で題字を外すとは少々興ざめか。
<A> <楽>
02'09'06 フーコーの振り子
ウンベルト・エーコ (検索) <amazon> <楽天>
 大学時代の“私”カボソンはテンプル騎士団について論文を書いていた。それが縁で知り合う出版者のベルボ。二人はテンプル騎士団について調べ、その秘密を探る。半ば知的な暇つぶし的な動機から始まったその模索は、やがて大きな陰謀へと行き着くいていく。世界のへそとは?ユダヤ教のカバラをベースに章構成を起こし、それに合わせて展開する物語の行方は?
 エーコ作品は“知的挑戦”と呼ばれることがある。その通り。膨大な知識量と、その展開性は頭がくらくらする位。卒論などで私がかつて調べた分野も包括しているので、ある程度は理解できたとは言え、この膨大な知識量に呑み込まれてしまった。それが悔しくもあり、又心地よくもあり。
 それにしてもこのラストはどうだ。あれだけの大風呂敷を広げた後で、あのオチは一気に仰け反るほど。無茶苦茶凄いぞ。

<A>
<A>
<楽>
02'09'01 モーセと一神教
ジークムント・フロイト (検索) <amazon> <楽天>
 イスラエルという国を造るにあたり、最も偉大で、且つ最も重要人物モーセ。彼は本当はイスラエル人ではなかったのではないか。と言う点から書き起こし、彼がイスラエルの民に行った事、一体何を以て神を伝えようとしたのか。それを著者独特の分析により読み解こうとする試み。
 著者の作品の中でも最異端と言われる作品だが、これが初めて読み切った著者の作品だというのも皮肉っぽくて良いね(私は今まで殆どユングばかり読んでたし、「夢判断」は挫折中)。ユダヤ教において聖典とされる聖書を論じるのは極めて危険なことなので、その逡巡及び、腰砕けに近い文章を見るのもなかなかオツなものだ。
 19世紀後半以降聖書そのものを文学作品として読む傾向が強いため、今となっては彼の主張は半ばありきたりな聖書論なのだが、これを精神分析の始祖が、しかもユダヤ人であるフロイトが書いたと言う事実が重要なのだと思う。
<A> <楽>
02'08'30 運命の糸車 グインサーガ86
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 いよいよグインとイシュトヴァーンとの対決。そして重大な変革をもたらす出来事を描く、乗りに乗るグインサーガ・シリーズ最新刊。
 世界最長記録を更新中の本シリーズ。この作品に出会ったのは高校時代だったが、それから随分長いことかかって読み続けてきたわけだ。間違いなく現時点では生涯に最も読んでいる作家でもある(大体「グインサーガ」は外伝を含めると100巻を超えてる)。
 考えてみれば、このサイトを作るに当たり、いくつかの候補を考えてきたが、その候補の一つとして、この作品を考えていたこともあった。
 しかしながら、既にこの作品についてのサイトはかなりあるし、何より、この作品、昔ほどの情熱を持って読んでる訳じゃない。それに最近の文体の乱れはちょっとばかり目に余るし…
 ストーリーは好みだし、最長記録更新に私も与っていると言う思いがあるからこれからも読み続けていくことになるのは確実。
<A> <楽>
02'08'27 希望の国のエクソダス
村上龍 (検索) <amazon> <楽天>
 CNNがパキスタンで遭遇した少年。日本から来たというその少年は「日本には希望がない」と言い、驚くほど現地にとけ込んでいた。“ナマムギ”と呼ばれるようになった彼の存在が日本の中学生に大きな影響を与える。これからの日本の希望とは何か、そしてその為に、何が必要なのか、著者のメッセージを込めて描く。
 この14年間、読んだ本には全て点数を付けてきた。なるだけ辛目に点数を付けるようにしてきたが、その内満点を取った作品が14冊だけある。その内の一冊が「愛と幻想のファシズム」だったのだが、本作品は、それと同様、あるいはそれ以上に衝撃を与えた。それで丸一年ぶりに、そして15冊目の100点を付けさせてもらった。
 こんな革命の方法があるか。と言う思いと、そして、何より未だに私の中に残っていた日本という国の幻想を粉々に打ち砕いてくれた。もう古い価値観で日本を見ることは出来ないと言う当たり前の事実に、敢えて背を向けていた事に気付かされ、非常に気恥ずかしい思いと、そしてこれから新しい希望をどう作っていくのか。それを考えさせられる。当たり前のことを当たり前に、そしてその中で希望を見つけていく必要があるのだろう。
 問題提起として、捉えておきたい。
<A> <楽>
02'08'23 まんがサイエンス 8
あさりよしとお (検索) <amazon> <楽天>
 学研「5年の科学」及び「6年の科学」で連載中の科学漫画の単行本。
 実は著者は「少年キャプテン」連載の「宇宙家族カールビンソン」以来の大ファン。私の映画の観方そのものも彼の作品に負う所が大きい。凄まじいほどの毒気と暗喩が山のように盛り込まれいて、読めば読むほど、映画を知れば知るほど面白くなる。最近では「アフタヌーン」で「るくるく」を連載中。相変わらず楽しいが、毒気は大分減ってきてる感じ。
 ただ、著者のもう一つの側面として、日本では珍しい本格的なSF作品を描くと言う点が挙げられる。これほどしっかりした科学考証を以て漫画を描ける人がいるのがある意味凄いと思う。(著者の毒気が好きな私としてはやや複雑な気分だけど)
 その科学的考証というのはこの漫画にもよく現れていて、きっちりその点を描いた上で笑えるものを作り上げている。小学生向きとは思えないほどのクォリティ(実際にこの雑誌の漫画で単行本になるなんてこの人くらいだ)。一年に一作程度の割でしか出ないから、結構楽しみにしてるんだよ。この作品も。
<A> <楽>
02'08'22 若さに贈る
松下幸之助 (検索) <amazon> <楽天>
 丁稚奉公から始め、世界に冠たる松下を作り上げた著者が、自分の半生から説き起こし、これからの世代に対する言葉を描く。
 平成不況の真っ直中にあって右肩上がりの時代の話を読むというのもなかなか時代錯誤っぽくて面白いが、逆に考えれば、今の時代を生き残れるのは本当に実力を持った者だけ。と言うことも言える。そう言う意味においては、今こそ読んでおくべき作品なのかもしれないな。
 まあ、あくまで私自身に対してはあんまり関係ないような気がするんだが…
<A> <楽>
02'08'20 歓喜月の孔雀舞
夢枕獏 (検索) <amazon> <楽天>
 著者による短編集。初期の頃のドロドロした雰囲気に溢れる作品から、最近の円熟した文体まで様々な作品が詰まっており、かなりお買い得。
 思えば著者とはえらく長いつき合いだ。中学生の時「幻獣少年キマイラ」を読んで、訳の分からない興奮状態になって以来随分と長い間ファンを続けている。少なくとも文庫若しくは新書になったものは大部分は読んでるんじゃなかったかな?著者の作品は長編若しくはシリーズが良いけど、時にこういう短編も良いもんだ。
<A> <楽>
02'08'19 トライガン・マキシマム 7
内藤泰弘 (検索) <amazon> <楽天>
 遙かな未来。ある惑星上で人類は生き続けてきた。元々人間の生存には適さない惑星故に、限られた物資を巡って人間同士の争いが絶えないそんな時代。紅いマントを翻す、バッシュと呼ばれる人型生物の活躍を描く。
 かつての漫画雑誌「少年キャプテン」で「トライガン」という名で連載された一連の作品の続編として「ヤングキングOURS」で現在も連載中の作品。
 主人公が異能力者であり、強大な力を持ちながら、あくまで博愛主義を曲げず、人のために働こうとする姿は先日紹介した「からくりサーカス」にも共通するが、こちらの方がはるかに救いようがない絶望の世界であり、その中であがき続けるバッシュの姿をこれでもか。と言う具合に描き続けている。
 多分、これ程までに希望のない、そしてその中であくまで希望を持とうとしている主人公の姿を克明に描いた作品は類を見ない。それ故にバッシュの生き方は非常に美しく見える。とことん“格好良さ”にこだわった描写も良し。
<A> <楽>
02'08'17 からくりサーカス 24
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 著者の作品に出会ったのは「うしおととら」以来。非常に純粋で正義感の固まりのような主人公がどんな酷い目に遭わされようと力強く生きていく姿は、非常に古くささを感じるのだが、逆に最も燃える設定ではある。私にとっては非常に貴重な漫画家。
 この作品は「うしおととら」の流れを非常に強く受け継いでいるが、計算され尽くした設定と、緻密な描写。その中で絶望に苛まれつつも強く生き続ける主人公達の姿は本気で背筋がゾクゾクするほど。1〜3巻までは非常に単純な冒険話が語られるのだが、4巻以降、「からくり編」と「サーカス編」に分かれた辺りから物語は非常に奥深くなり、しかも伏線や設定の山が徐々に明らかにされていくのは読んでいて極めて快感。現在進行形の「からくり編」は最初の内は物語的に弱いか?と思っていたのだが、22巻からこちらも非常に面白くなってきた。明らかに「サーカス編」とのリンクもあるし、まだまだ目の離せない作品。
<A> <楽>
02'08'16 おとうと
幸田文 (検索) <amazon> <楽天>
 複雑な家庭環境にあり、貧乏ながらも身を寄せ合うように生きている姉弟二人。だが弟の碧郎は身を持ち崩し、やがて結核にかかる。そんな弟の面倒を甲斐甲斐しく看る姉びんの生活を描く。

 これは事実を元にした半私小説だが、若くして死んでいった弟を思う気持ちが溢れてくるよう。自分の想いを筆に乗せることをきちんと分かっている人だけが為し得る見事な作品である。思えば著者の作品を読むのは初めてのことだが、彼女に限らず女流文学者は文体が細やかで、表現がとても良い。
 映画の方も出来は良かった。
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02'08'12 キノの旅1 the Beautiful World
時雨沢恵一 (検索) <amazon> <楽天>
 荒廃した世界を旅するキノと相棒の二輪車のエルメス。二人が様々な小国で出会った出来事を描く。

 前々から良く本屋に置いてあり、気になっていたタイトル。実際読んでみると何のことはない並のSF小説。
 決して悪くはないが、これが受け入れられたわけは、単純に表紙の絵が目を惹くのと、中身が短編集だから軽く読めると言う程度でしかない。しかし、問題はその“並のSF小説”を描ける作家が日本にはあまり多くない。と言う事実。日本のSF作品の低レベルさの中にあって、しかもその低レベルなSFを量産する文庫シリーズで普通のSFを描いて受け入れられると言うのは、一種の才能でもある。
<A> <楽>
02'08'09 夏の闇
開高健 (検索) <amazon> <楽天>
 著者による文学作品。著者の作品は非常に好みだが、又もう一つお気に入りが出来た。この日誌を書きたいと思えるほどに。
 エコロジストとして有名な著者ではあるが、実際に彼を「エコロジスト」として分類してしまうのは問題がある。
 好きなことをして、それを文章化する。それだけだ。そしてその文章の質が本当に高い。これは半私小説と言った感じだが、本当にここでの主人公の姿は共感できる。
 実際、何もしないでいること。食べて出して寝るだけ。これだけの生活がどれ程辛いか。それは私も分かるつもりだが、この主人公はそれを10年続けてきた。それがどれだけの精神力を必要とするか…無駄な事に費やすエネルギーを保持し続けられること。それはとても貴重だ。
<A> <楽>

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