読書日誌
2006’7〜9月

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06'09'29 涼宮ハルヒの陰謀 涼宮ハルヒの憂鬱7
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 これまでやり残したことをとりあえずやり遂げ、ほっとした気持ちで2月を迎えた“俺”の前に、突然8日後の朝日奈みくるが現れた。彼女を送り出したのは、なんと8日後の“俺”だという。しかも今の“俺”の指示通りに動け。と言い含められてきたのだという。何の心当たりもない“俺”だったが…
 ハルヒを巡る組織のいくつかが表面に出てきたというストーリー上重要な物語なのだが、一方ではハルヒはかしましいだけの狂言回しになってしまった上に、物語が単なるつじつま合わせに終わってしまった。翌年の伏線として考えると設定としては良いけど、物語としてはパワーダウンは否めない。
 一応アニメ版のオリジナルストーリーはこの時期に当たるのかな?
<A> <楽>
06'09'27 トライガン・マキシマム12
内藤泰弘 (検索) <amazon> <楽天>
 地球の船が上空にやってきたその時、バッシュは残り少ない命をかけてナイヴスと対峙する。地上そして上空の船からの攻撃までも受けつつ、こんな時にも直接ナイヴスを撃とうとしないバッシュ。勝敗の行方は…
 前回2巻同時刊行ということをやった上に、しばしの休載もあったため、本巻の刊行は大変遅れてしまったが、基本的に物語はほとんど動いてない。最後の最後で引き延ばしが見えてしまうのがちょっと辛いところ。描画はなかなかのすさまじさではあるのだが。
<A> <楽>
06'09'24 涼宮ハルヒの動揺 涼宮ハルヒの憂鬱6
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 「ライブ・ア・ライブ」文化祭で何の気無しに軽音楽部のイベントに来た“俺”。しかし、そこでとんでもないものを見てしまった。
 「朝日奈ミクルの冒険」文化祭で放映したSOS団制作の自主映画『朝日奈ミクルの冒険』上映版。
 「ヒトメボレLOVER」“俺”の中学時代の知り合いから突然かかる電話。そこで奴がなんと長門に一目惚れしてしまったという事を知る。長門を紹介してくれ。と頼まれてしまうのだが…
 「猫はどこに行った?」冬山の山荘で古泉が用意したというサプライズパーティの内容とは?
 「朝日奈みくるの憂鬱」冬。妙にアンニュイな雰囲気のみくるに誘われ、一緒に散歩に出る“俺”だが…
 短編集。ここまで進んできて、やはりパワーダウンと言った感じか?いくつか伏線を作っているのは分かるのだが、消化の仕方が中途半端な印象を受ける。それと、著者はやっぱりミステリには向かないことを改めて感じさせられてもしまった。
<A> <楽>
06'09'21 ロシア皇帝の密約
ジェフリー・アーチャー (検索) <amazon> <楽天>
 第二次世界大戦後、ゲーリングの自殺を許してしまったため、非国民扱いされた父からの遺言状で一枚のイコンを相続した元陸軍大尉のアダム・スコット。だが、そのイコンには大いなる秘密が隠されていた…ロシアのスパイに命を狙われ、スイスからフランス、イギリスに至る命がけの冒険を描く。

 久々に大ポカをやらかした作品で、実は15年以上前に既に一回読んでいたのだが、半分読むまで全く思い出さなかったという…本に関しては記憶力良いと思ってたんだけどなあ。
 物語としてはテンポ良くまとまった冒険小説って感じで、ビジュアル的にも優れているが、どうやら未だ映画化はされてないらしい。
<A> <楽>
06'09'19 涼宮ハルヒの暴走 涼宮ハルヒの憂鬱5
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 ハルヒとハルヒに振り回されるSOS団の日常を描く短編集。
 「エンドレスエイト」夏休み終了前、春日に呼び出されたSOS団メンバーは残った一週間を全力で遊び倒す。だが、“キョン”こと“俺”には何故か既知感が…
 「射手座の日」SOS団に最新PCを奪い取られたコンピュータ研が自作のゲームを突きつけ、勝負を挑んできた。当然の如く嬉々としてその挑戦を受けるハルヒ。
 「雪山症候群」冬。鶴谷さんの別荘にスキーにやってきた面々。ところがスキー中、突然の吹雪に巻き込まれてしまう。
 相変わらず時空列バラバラの短編集。これまで騒がしいだけの先輩として登場していた鶴谷さんが良い具合に仕上がってきている。それと同時に長門の変化も色々な所で現れてきてるみたい。
<A> <楽>
06'09'18 仮面ライダーspirits10
村枝賢一 (検索) <amazon> <楽天>
 京都で2号ライダーとゲルショッカーとの戦いに参戦したゼクロスは、休む間もなく次なる激戦地、四国へと向かう。そこではV3とおやっさんがデストロンと戦っているはずだが、黒雲に覆われた四国は、通常では入り込むことが出来ない異世界と化していたのだ。無理を承知でそこに向かうライダーマンを助けるゼクロスだが…

 第三部spirits編の第2巻。人間側の対バダン攻撃部隊spiritsの結成が描かれると共に、魔界と化した四国での激闘が描かれる。とりあえずスカイライダー、仮面ライダー2号が終わり、今度はV3とデェストロンとの戦いとなる訳だが、とりあえずここで出てくるのはキバ一族のみ。このままだと結構長くなりそうだ。ま、楽しみが増えた訳だけど。
<A> <楽>
06'09'16 涼宮ハルヒの消失 涼宮ハルヒの憂鬱4
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 12月。いつもの通りに“キョン”こと“俺”は学校に行ったが、教室の様子はどこかいつもと違っていた。かつて“俺”を殺そうとして長門に消された朝倉涼子が何事もなかったように登校し、涼宮ハルヒがいない教室…一体何が起こっているのか。ハルヒ不在の理由を必死に探し求める“俺”…
 長編としては第2作に当たる話で、書き換えられた世界の中で話は展開していく冒頭の部分からミステリ調の話。肝心のオチそのものは割と弱いが、3年前から“今”へと戻る方法の捻り具合は感心してしまう。特にタイムスリップものは整合性が難しいが、その辺もちゃんと考えられているのはたいしたもの。それに、違う世界にいるからこそ、本来の世界の人間関係が少しずつ変化していっている事を示している所も良い。やっぱり面白い作品だ…もし劇場版があったとしたら、多分本作が当てられるだろうな。映画にするには丁度良い感じの作品だ。
<A> <楽>
06'09'14 涼宮ハルヒの退屈 涼宮ハルヒの憂鬱3
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 「涼宮ハルヒの退屈」突然町内の野球大会に飛び入り参加することになったSOS団。運動神経抜群のハルヒと長門を除き、ぐだぐだの他メンバーだが…
 「笹の葉ラプソディ」七夕の日。朝日奈さんが頼み事があると言ってきた。勿論その申し出を受ける“俺”だが、なんと突然三年前に連れてこられてしまった…
 「ミステリックサイン」ハルヒが考案したというSOS団のトレードマーク。それをSOS団のホームページにアップロードしてしまった事から起こる珍騒動。
 「孤島症候群」古泉の親戚が購入したという孤島の別荘に行くことになったSOS団。だが、そこで事件が起こってしまう…
 この中の2話はTV版に使われた話だが、改めてやはりアニメは巧く作られている事を再確認。特に「孤島症候群」の話は、小説版より明らかにアニメ版の方が上だという、ある意味作者が可哀想になってくるような話だった。正直、この作者、ミステリー書くのは止めた方が良いな。
<A> <楽>
06'09'13 はじめの一歩77
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 ライバル宮田との対戦が流れてしまい、意気消沈する一歩だったが、自らの拳にはこれまで対戦したボクサーの思いが宿っていると言うことを思い出し、新しく一歩を踏み出す決意を固める。そして復帰第一戦は、4年前宮田によって倒されたタイのチャンピオン、ジミーだった。だが宮田に敗戦を喫したジミーも又、4年前とは全く違うファイティング・スタイルを手に入れていたのだ。

 一歩の復帰が描かれる話で、これから一歩は世界へと挑戦していくことになる。まあ、負けることはないはずだけど、ちゃんとそれなりに強大な選手を配するのは著者の上手い所か?とにかく他のボクサーの話はともかく、一歩の戦いが続いていって欲しいものではある。
<A> <楽>
06'09'12 涼宮ハルヒの溜息 涼宮ハルヒの憂鬱2
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 常に突飛な言動で周囲、殊にSOS団を混乱に陥れるハルヒは、文化祭前に突然映画を撮る!と宣言する。かくしてSOS団はハルヒの自主製作映画「朝日奈ミクルの冒険」の撮影に借り出される羽目に…
 アニメ第1話の裏話。あの作品の背後にこんな撮影風景があったのは興味深い。あの徹底的に素人臭い映画の背後には、実はとんでもない超常現象が目白押し。いやあ、面白いものだ。特に「ミクルビーム」が本当に出てしまう下りは名場面の一つだろう。願いがなんでも叶うっていうのは、とんでもない話なんだな。
<A> <楽>
06'09'10 涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒの憂鬱1
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 高校に入学した“キョン”と呼ばれる“俺”はクラスメイトにエキセントリックな少女がいることを知る。その少女涼宮ハルヒに声をかけてしまったのが全ての始まりだった。何故かハルヒに気に入られてしまった“俺”はハルヒに振り回され、ついにはハルヒが勝手に作り上げた「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」通称SOS団に入れさせられてしまう。しかもその部員と来たら、宇宙人、未来人、超能力者…このとんでもない日常を過ごしながら表面上普通の学園生活を送る“俺”たちの物語を描く。
 TV版を観てからこちらを読み始めたが、よくこれをあそこまでの作品に仕上げたもんだ。と逆に感心出来た。出来そのものは面白い作品だけど、普通に作ったら、さほど話題になるようなアニメにもならなかっただろう。改めて凄いアニメだと言うことは分かった。演出とコラージュ的手法の巧さだな。
<A> <楽>
06'09'07 極北からの声 フルメタル・パニック18
賀東招二 (検索) <amazon> <楽天>
 本編「フルメタル・パニック」の正統的な外伝2本にギャグ編1本を収録する。カリーニンと宗助との出会いを描く「極北からの声」と“デューク”マデューカスがTDDの副長となるに到るまでの過程を描く「<トゥアハー・デ・ダナン>号の誕生」の中編と、「大食いのコムラード」の短編を収録する。

 本編の過去を描く「サイド・アームズ」の2巻だが、最初の2編は出てくるのはおっさんばかりという変則的な作品。元より軍事ものだけに、リアルに描こうとすればするほどおっさんの割合が高くなるのは致し方ないのだが…マデューカス編を読んでるうちに「貴様を八つ裂きにしてくれる」をふと思い出してしまい、くすくすと笑いつつ読んでしまった。おもろかった。
<A> <楽>
06'09'03 からくりサーカス43
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 片道シャトルでフェイスレスのいるステーションに登ろうとする鳴海。だが、機械人形の生き残りとの戦いの中、現れた勝は鳴海に地球に残って幸せになるようにと告げ、勝自身がシャトルへと乗り込んでしまった。鳴海としろがねの関係、そして全世界を覆うゾナハ病は根絶出来るのか…激動の最終巻。
 連載開始から9年。その間にもアシスタントが二人もTVアニメ化するようなブレイク作の漫画家になるなど、バックステージでもにぎやかな作品だったが、ほとほと感心するのは設定の回収方法。よくぞここまで細かい設定を忘れずにいて、ちゃんと辻褄合わせることが出来るものだ。しかもその中でドラマ部分もしっかり泣かせる内容になってる。総括で言っても凄い作品だった。
 特にこの巻、表紙が今まで絶対に描かなかった主人公三人の最高の笑顔が描かれている。この表紙見るだけで、なんか感無量って感じ。しろがねの笑顔がラストになると思ったのが違っていたけど、これはこれで良い。やっぱり良い作品だよ。近々全巻通して読み直してみよう。って気にさせてくれた。
<A> <楽>
06'09'01 豹頭王の挑戦 グインサーガ109
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 パロへの路を行くグイン一行はついにクムへとやってきた。だが、グインの背格好はどのように隠しても隠しおおす事が出来ず、一行は苦境に陥ってしまう。そこでマリウスは奇手を思いつく。それは何とグインにグインの真似をさせた旅芸人一座を装うというとんでもない方法だった。

 久々に文庫の売り上げがトップをキープしていたと著者本人が自分のサイトで言っていたが、なるほどそれもよく分かる。この長いシリーズで、こんなに気持ちよく読めた話は今までになかった。何というか、見事なサクセスストーリーとなっていて、実に楽しい話に仕上げられている。ハードな話も好きだが、時折で良いから、こういう話を織り交ぜてくれると読んでいて楽しいものだ…100巻を超えてますます盛んな展開っていうのも異常極まりないが。
<A> <楽>
06'08'26 大河の一滴
五木寛之 (検索) <amazon> <楽天>
 歳を取ったことを自覚した著者が、世間の評判にとらわれず、本当に自分が思ったことを徒然に綴ったエッセイ集。
 現代は優しい時代なので、きつい現実を見せないようにする傾向がある。しかし実際問題現実は厳しい。それに目を背けるのではなく、直視しつつ、それを受け入れることの大切さを語っているようだ。用は現実から目を背けるのではなく、現実に耐える心を作れ。ということ。まあ、老人の繰り言と言われてしまえば、本当にただそれだけの作品でもあるんだけど。
<A> <楽>
06'08'24 餓狼伝18
板垣恵介 (検索) <amazon> <楽天>
 北辰館トーナメント第2回戦も佳境。寸止め空手がヘヴィ級ボクサーに挑み、空手家がサンビストにサンボの技を仕掛けると言った無茶な試合内容を経て、ついに3回戦に突入していった。プロレスラー長田は重量級の空手家との対戦に挑む。
 今更ながら、空手のトーナメントなのに、ほとんど異種格闘技と化している本作だが、なんと言っても凄いのはトーナメントに出場していない主人公の登場がほとんど数コマしかないと言うことだろう。
 ま、何にせよ、熱い作品だから、それで充分と言えば充分。
<A> <楽>
06'08'22 月に繭 地には果実 下
福井晴敏 (検索) <amazon> <楽天>
 ディアナカウンターとミリシャの戦いは互いに地上で発掘された核兵器と細菌兵器を双方が使用するに到り、泥沼の様相を呈してきた。そんな中でディアナカウンターからも見捨てられたディアナはグエンの力を借りて月へ戻り、全てを元に戻すことを決意する。発掘された宇宙船ウィルゲムによりついに宇宙に出る事に成功したが、月は月で、ディアナを亡き者にしようとアグリッパが待ちかまえていた。その中で徐々に明らかになっていくターンAの能力と、否応なしに戦いの中心に巻き込まれてしまうロランだったが…

 下巻の本巻でアニメ版とは大きくストーリーは違ってきた。シャレにならない被害と、憎しみ合い。その葛藤を経、大きな犠牲を払いつつようやく平和が得られるという、言わば著者の最も得意とする土俵へと引き込んだようだ。私はアニメ版の終わり方が好きだが、これはこれで大変面白い作品に仕上がっている。それにしても細菌兵器の中に“GUSOH”が入っているのは実に著者らしいところ。
<A> <楽>
06'08'14 月に繭 地には果実 中
福井晴敏 (検索) <amazon> <楽天>
 ムーンレイスでありながら地球のミリシャとして自分の意志とは裏腹に戦いを続けねばならないロランにもう一つ気がかりが出来た。ディアナカウンターとミリシャの戦闘の巻き添えでキエルとディアナが入れ替わってしまったことを知ってしまったのだ。キエルとして振る舞うディアナはともかく、ディアナを演じなければならないキエルには凄まじいプレッシャーがかかっていた。そんな中、ディアナアカウンターが独立国を建国するという噂が…

 一巻はロラン中心の話だったが、ここでは政治レベルの話が中心となり、必然的にディアナとキエルの行いが中心となっていく。この辺はアニメ通りなのだが、それをここまでバランスの取れた小説として仕上げた著者の力量にはただ感心するばかり。上手い作品だ。
<A> <楽>
06'08'11 白夜を旅する人々 (著)三浦哲郎 <amazon>
三浦哲郎 (検索) <amazon> <楽天>
 雪深い青森の旧家に生まれた5人の子ども達。長男の清吾は肺病持ち、長女のるいと三女のゆうは生まれつき色素を持たなかった。それぞれ思春期を迎えていたそんな時期、新たに羊吉という息子が生まれ…
 なんでもこれは著者の過程を描いた半自叙伝と言うことなのだが(ちなみに著者は最後に生まれた羊吉にあたるそうな)、もし本当だとしたら、本作はもの凄い重さを持っている。何とも悲惨な物語なのだが、それをしっかり読ませてくれるのが著者の力量ってものか。実に読み応えがあった。読み終わったらちょっと落ち込んだけど。
<A> <楽>
06'08'08 金色のガッシュ20
雷句誠 (検索) <amazon> <楽天>
 魔物感知に優れた魔物モモンと出会った清麿達は魔界の建造物がニュージーランドにあることを知らされる。その建造物の名はファウード。実はそれは超巨大な魔物だったのだ。そのファウードを目指し、何人もの魔物がニュージーランドへと向かっていた…

 ファウードが一体何であるのか、ここで明らかにされたが、どうやら一旦復活しないことには話は始まらないような雰囲気になっている。ウォンレイの裏切りや、強力な魔物に風前の灯火のフォルゴレとか、アクション部分の充実と、恐ろしいティオの新魔法とか、見所は大変多い作品である。
<A> <楽>
06'08'06 夏と花火と私の死体
乙一 (検索) <amazon> <楽天>
 夏のある日、友達の弥生に突き落とされ、“私”五月は死んでしまった。“私”の死体をどうするか困った弥生は兄の健に相談し、どこか人目の付かない場所に“私”を隠そうとするのだが…兄と妹の一つ夏の冒険を描く。
 本作は著者のデビュー作で、本作を書き上げたのは弱冠17歳の時だったという。しかしこれは本当に驚いた。設定の良さ、緊張感の演出、オチの見事さ。どれを撮っても一級品だ。語り口の硬さはあるものの、こんなものを描ける人がいるという事実に驚かされる。こりゃ絶対ファンになってしまうよ。それほどの作品。
<A> <楽>
06'08'02 土星を見るひと
椎名誠 (検索) <amazon> <楽天>
 著者による純文学短編および私小説風短編集。「うねり」「壁の蛇」「クックタウンの一日」「桟橋のむこう」「コッポラコートの私小説」「ボールド山に風が吹く」「土星を見るひと」の7編を収録する。

 著者は様々なタイプの小説を書くが、そのどれを取ってもやっぱり著者にしか描けないものをしっかりと描いてくれる。だからこそどの作品を読んでも安心出来るし、時折無性に読みたくなる。純文学風の作品であっても著者らしさはちゃんと出てるしね。そう言う意味でははずれのない作家だ。
<A> <楽>
06'07'31 鉄腕バーディー13
ゆうきまさみ (検索) <amazon> <楽天>
 バーディーの過去を観るつとむ。そこで超人イクシオラとしてバーディーが受けた苦しみと、クリステラ・レビとの因縁を知らされる。バーディーが過去に受けた苦しみとは…

 現代編でのなかなか進まない物語とは裏腹に、バーディーの過去は様々なドラマに満ちあふれていて、SF好きにとっては結構たまらない作りになっている。なんと言ってもこの人が描くと、食べ物をガツガツと食べるシーンが多く、私にとってはそれがとても嬉しい。ま、かなり古いタイプのSFには違いないけど、細かな設定を無視してドラマを重視するこういう作りはツボだよ。
<A> <楽>
06'07'29 月に繭 地には果実 上
福井晴敏 (検索) <amazon> <楽天>
 最終戦争の後、人類が滅亡を逃れてから長い長い年月が経った。人類の一部は月にその居住地を定め文明を守り、地球では全ての科学は一旦封印され、人類は改めて文明を進化させようとしていた。

 月に住んでいた孤児のロランは地球調査のため地上に降ろされ、そこで鉱山の職を得ていた。その後二年の歳月が流れ、ロランが地上の生活に慣れてきた丁度その時、突然月からの移植団が軍隊を引き連れてやってきた…
 アニメ機動戦士ガンダムの、言わば最終章という位置づけで富野由悠季監督が作り出した「∀ガンダム」のノベライズ版。富野監督は小説も書いているけど、やっぱり餅は餅屋。実力のある小説家に書いてもらってこそ本当に映えるというものだ。
 この作品は随分前に「∀ガンダム」という名前で刊行されていたはずだが、その当時福井晴敏という小説家自体知らなかったため、「どうせたいしたこと無かろう」とスルーしていて、今頃になってようやく読むことが出来た。
<A> <楽>
06'07'27 多重人格探偵サイコ2 阿呆船
大塚英志 (検索) <amazon> <楽天>
 何者かによって刑務所を脱獄させられた小林洋介=雨宮一彦。そしてそれに合わせて都内では恐るべき自殺事件が頻発する。多くの人間を巻き込んで死んでいく彼らは一体何のため?そして雨宮を刑務所から出した犯人の目的は?
 相変わらず読みにくい上に話もまとまりがない。更に言えば設定も全然消化出来ていない。ヘリコプターから脱出するシーンなんかは小説ではなく、完全に漫画的な演出だった。
 ただ、それなのに何故か一気に読ませるパワーがあるのが不思議。興味深い作品である。今度コミックの方も読んでみようと思う。
<A> <楽>
06'07'24 獄中記 (著)オスカー・ワイルド <amazon>
オスカー・ワイルド (検索) <amazon> <楽天>
 同性愛で罪に問われ、懲役二年の判決を言い渡されたワイルドがその二年の獄中生活の最後に、時分自身の牢獄での生活と、そこから得た思想を友人のダグラス(同性愛の相手)に宛てた書簡。

 限られた人に見せるための手紙や手記を作品として刊行するのは告白文学と呼ばれるが、第三者が読んで楽しめるものになるのは希有。それを可能としたのは著者の文学的センスと膨大な知識量。それに才能に他ならない。
 ドストエフスキーもそうだけど、本当に人生における危機に直面した時にこそ、その人間の才能が問われるのだろう。特に牢獄にあってこそ、今まで自分が書いてきたことを全て総括した上、本当の喜びを書けたワイルドの実力は推して知るべし。良いものを読ませてもらった。
<A> <楽>
06'07'23 うつうつひでお日記
吾妻ひでお (検索) <amazon> <楽天>
 アル中病棟から生還したものの、鬱は収まらず、更に仕事もないという状態で、発表する媒体もないまま毎日描いた約半年にわたる著者の絵日記をここに公開。

 現在のブログが流行る前、サイトの方でブログ形式に毎日公開日記を書くのが流行っていた。私も仕事のメモ代わりに3年ほど実は書いていたのだが(今はそのサイト閉鎖)、人の日記を読んで楽しいというか、頷けるのは、その日何を食べてどんな本を読んだか。と言うのを延々と書いているサイトだったりした。まさに本作はその紙媒体板で、何となくうんうんと頷きながら読むことが出来た。暇に任せて読んでる膨大な読書量と言い、ちょっとしたノウハウなど参考に出来ることも多いけど、本作の醍醐味というか、ヤバイのは、読んでいるとこっちまでなんか鬱っぽい気分にさせられる所。これ買って一気に読んだらしばらく動くのが億劫になったほど。危険な本だ。
 習作で他の人の漫画キャラを描いてみたりするのも見ていてなかなか楽しい。しかし著作権の問題とか大丈夫なのかね?
<A> <楽>
06'07'20 ローマ人の物語14 キリストの勝利
塩野七生 (検索) <amazon> <楽天>
 コンスタンティヌス帝によりローマは一度一つとなったが、ペルシアのシャプール2世、ゲルマン人の侵入などに対処するため、その後の後継者達によって又しても分裂していった。そしてテオドシウス帝による再統合までの歴史と、その中でキリスト教がいかにしてローマ国教として確立していったかを描く。

 壮大なローマ帝国史を描く本作もいよいよ残り一冊となった。まさか本当にここまで来るとは私自身思ってなかったけど、相変わらず面白い。実は同時期に「ローマ帝国衰亡史」も読んでいるけど、やはり二次資料が多いし、日本人が書いていると言うこともあって、こちらの方がやっぱり読みやすくて良い。さて、最終巻は一体いつになるのか?
<A> <楽>
06'07'18 多重人格探偵サイコ1
大塚英志 (検索) <amazon> <楽天>
 恋人を殺された復讐で犯人を殺してしまった刑事小林洋介は刑務所に入れられる。しかし彼は既に小林ではなく、新しい人格雨宮一彦になっていた…多重人格者が入ったことで刑務所に起こる混乱と破壊が描かれる。
 何でも良いから簡単に読める本を。と古本屋で見つけた作品だが、知名度はあるものの内容はさっぱり知らず。で、読んでみると、一応“探偵”とタイトルにあるが、探偵らしいことは何一つせず、逆に自らの手を汚さずに人殺しを続けていく話になってた。伏線が伏線にならず、設定も活かされず、更に読みにくいときてる。一見どうしようもない作品で、実際読んでる時は腹を立てたが、不思議と読後感は悪くない。なんでだろう?
<A> <楽>
06'07'13 金色のガッシュ19
雷句誠 (検索) <amazon> <楽天>
 先に戦ったアースの語った「脅威」について調べる清麿。だが、いくら調べてもその建造物が何であるのか分からずじまい。一方ウマゴンは本の持ち主サンビームの出張先北海道で同じく馬型の魔物カルディオと戦い、新しい力を手に入れ、“魔界の友人”レインに呼ばれたガッシュはそこで強力な魔物ロデュウと戦う。

 ファウード編が続いているが、まだ話としては決戦までは至っておらず、断片的な情報だけが出ているだけ。それより、ガッシュの友人というレインの存在感がやはり突出して良い話。まだまだ楽しませてもらえそうな感じだ。
<A> <楽>
06'07'11 獅子の門6 雲竜編
夢枕獏 (検索) <amazon> <楽天>
 芥菊千代と志村礼二の2回目となる因縁の対決が行われる。互いに前の大戦の時よりも訓練を重ね、より戦いに特化していった二人の試合の結果。そして菊千代の師である鳴海と宿命のライバル麻生との試合が描かれる。
 伝奇小説としての側面のみならず格闘小説家としての著者の力量を見せつけた作品で、全編通して男同士の戦いが描かれている。描写は相変わらず凄いし、何よりも先の展開が読めないというのが一番の売りだろう。ただ、羽柴が目をかけた青年達の物語はほぼ終了と言うことになりそうだ。いよいよ風呂敷を閉じるためには羽柴彦六対久我重明宿命の対決へと向かっていくのか、それともますます風呂敷を広げていくのか。次巻の展開次第。
<A> <楽>
06'07'06 金色のガッシュ18
雷句誠 (検索) <amazon> <楽天>
 千年前の魔物は消え去った。だが現代の魔物との戦いは続いている。清麿とガッシュの前に次々に現れる魔物達。そして人間界に現れたという不思議な建造物が…今回敵としてロボット形態に変身出来るコーラルQ、非常に強力なパワーを持つアース。そして仲間となるテッドとの出会い。そしてバオウ・ザケルガのパワーアップが描かれる。

 新章“ファウード編”の始まりの話。なかなか盛りだくさんの内容で、二人の戦いはまだまだ休むまではいかないらしい。
 “千年前の魔物編”が終了してしばらく読むのを止めていたが、しばらく読むべき新刊も出ないことだし、再び読み出してみた。妙に波長が合うらしく、一旦読み始めたらとことん行かないと気が済まなくなるしなあ。
<A> <楽>
06'07'04 聖なる侵入
フィリップ・K・ディック (検索) <amazon> <楽天>
 メタンに満ちた外宇宙の植民惑星でハーブ=アシャーは一人の男の子の名目上の父となった。その子インマヌエルは地球へと送られて育てられ、ハーブ自身は冷凍睡眠処理を施されて6年を眠ったまま過ごした。そしてハーブが目覚めた時から、二人の運命は世界の運命へと結びついていく。
 なんか昔読んだ著者のヴァリスっぽい作品だと思いながら読んでいたが、あとがきでこれが二部作だったと書かれていた。なるほど似てる訳だ。ヴァリスと較べると遥かに物語はこなれているし、エンターテインメントとしての質は上。ただし、SF的な体裁は取っているものの、実質的には著者オリジナルの哲学的、宗教的な思想が詰まった作品として読むべき作品。
<A> <楽>
06'07'02 ジパング23
かわぐちかいじ (検索) <amazon> <楽天>
 “みらい”は重傷を受けた菊池をパラオに移送する。だが、艦内を掌握しているのが角松であることを知った草加は“みらい”に乗り込んで武装解除を強いる。草加は既に“みらい”を「危険な不確定要素」と断定しており、乗組員を捕虜とし、“みらい”を完全に無力化してしまう…囚われの身となった乗組員達だったが…
 いよいよ話は“みらい”を離れ、実際に完成した日本製原爆の話へと移ってきた訳だが、これで今まで模索を続けてきた“みらい”の役割も明確化してきた感じがする。後はいよいよ広げた風呂敷をたたんでいく作業へと入ってきそうだ。
<A> <楽>