読書日誌
2007’4〜6月

Home
Book

07'06'28 ドランのキャデラック
スティーヴン・キング (検索) <amazon> <楽天>
 著者による3冊目の短編集「Nightmares&Dreamscapes」の四分冊の一巻。「ドランのキャデラック」「争いが終わるとき」「幼子よ、われに来たれ」「ナイトフライヤー」「ポプシー」「丘の上の屋敷」「チャタリー・ティース」の7編を収録する。

 著者の長編は確かに面白いのだが、短編は短編で味わいがあるものが多い。特に著者の実力だと別段ホラーに頼る必要は無いし、良作も多い。本作の場合はややホラー寄りの作品が多かったけど、一番面白かったのは表題作の「ドランのキャデラック」だった。
<A> <楽>
07'06'25 邪眼は月輪に飛ぶ
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 人を見るだけで死に追いやるという邪眼を持つフクロウ。アメリカ軍によって“ミネルバ”と命名されたこの生物兵器が事故で日本に解き放たれた。アメリカから派遣されたケビンとマイケルは、13年前このフクロウを撃った日本の猟師鵜平を引っ張り出すのだが、かつて“ミネルバ”を撃った際、妻を失っていた鵜平はすっかりやる気を失っていた。そんな彼を連れ出したのは養女の輪だった。
 ストレートで奥が深い。著者の作品はみんな同じだけど、読んでいてとても燃える。本作はマンガ一冊分で、ただ一羽のフクロウを撃つというだけの話なのだが、それにまつわる話が奥深く、四人のキャラがそれぞれちゃんとキャラ立ちしているので、読み応えがあり。やっぱりなんだかんだで著者のファンだから、とても楽しませてもらった。
<A> <楽>
07'06'21 ハンニバル・ライジング 下
トマス・ハリス (検索) <amazon> <楽天>
 紫夫人の元で成長したハンニバルは、ついに復讐を開始。あの事件の関係者を洗い出し、次々に血祭りに上げていく。だが彼の活動は様々な場所に波紋を投げかける事になる。狙う立場でありつつ、狙われる立場に立たされる事となったハンニバルだったが…
 とりあえず終わったけど、これまでの著者作品にあったどんでん返し性もハンニバルの異常性も全くなし。実際これがハンニバルである理由が全然感じられないのが痛かった。ひねりが全然無いので、素直に読めてしまうのだけが強味か?無理矢理作り出したんだろうか?折角良い設定なんだから、もっと異常なシチュエーションがほしかったかも。
<A> <楽>
07'06'19 ハンニバル・ライジング 上
トマス・ハリス (検索) <amazon> <楽天>
 リトアニアの旧家レクター家に生を受けたハンニバル。だが当時リトアニアはナチス・ドイツの攻撃を受け、その標的となったレクター家の居城も襲われ、家族は惨殺されてしまう。全てを失って生き残ったハンニバルは戦後伯父夫婦に引き取られ、そこで伯父の妻、紫から多くの薫陶を受ける。だがその心の中には復讐の炎が燃え上がっていた。
 ハンニバルの青年時代を描く作品。元々映画を観る前に読もうと思って買ったのだが、結果として劇場で映画観ることなく、本の方も随分読むのが遅くなってしまった。しかし、ハンニバルを生んだ同じハリス作品とは思えない出来の悪さ。少なくとも「ハンニバル」に出てきた心の迷宮がどのように作られていたのか、せめて著者なんだからそれ位は描いて欲しかったな。
<A> <楽>
07'06'18 デスノート5 (原作)大場つぐみ
大場つぐみ (検索) <amazon> <楽天>
小畑健 (検索) <amazon> <楽天>
 ミサがLの手に落ちた事を知った月は、これをLとの決着のために自らデスノートを捨て、Lの元へと向かった。やがて何者かによるキラ復活の報が入る。これで一応の疑いの晴れた月はLと共同してキラ捜査を開始する事に…
 本来キラであるはずの月がLと共同してキラ探しをするという皮肉な展開に。デスノートの裏技を使った物語と言っても良いか。なるほどねえ。かなり感心出来るが、この時点では誰がキラか分かっていないので、普通の推理ものっぽく仕上げられてるが、これが本作の幅って奴かも知れないな。ところで月ってデスノートを拾わなかったら、実は結構良い奴なんじゃないのか?
<A> <楽>
07'06'15 スカイ・クロラ
森博嗣 (検索) <amazon> <楽天>
 大戦の後、ジェット機が開発されず、ライフ・サイエンスが発達した並行世界。ここでは企業同士の戦いが延々と繰り広げられていた。その中である企業のエース・パイロットである“僕”カンナミ・ユーヒチは、与えられた仕事を淡々とこなしつつ、上司の草薙水素らとの交流を重ねていく。そんなパイロット達の日常が描かれた物語。
 著者は初体験となるが、物語としてはなんか不思議な感じ。大局的な世界観は存在せず、あくまで主人公とその周囲の人間達だけの話が展開していく。それがなかなか歯がゆい感じを与えるのだが、こういうのを「セカイ系」と呼ぶのだろうか?
 ところで、他の著者作品は読んでいないけど、これは相当の異色作なんじゃないかと思うのだが、どうだろうか?もう少し他の作品も読んでみることにしよう。
<A> <楽>
07'06'14 涼宮ハルヒの分裂 涼宮ハルヒの憂鬱9 (著)谷川流 <amazon>
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 全員無事進級したSOS団の面々は、新入生獲得に向けるという名目で相変わらずぬるい活動を続けていた。そんな時“俺”キョンは偶然中学の同級生佐々木と再会する。そしてその佐々木が“俺”に引き合わせたのは、なんともう一人ずつの、未来人、宇宙人、超能力者だった。しかも彼女たちは、実はハルヒではなく佐々木こそが神的存在なのだと主張する…
 一区切りだった一年生編が終了し、新展開開始。どうやらこれは一連の長い話になりそう。後半部分は物語が二つに分裂して、a編とb編という感じで続いていくことになるらしい。ところでこのオチが全く読めないのだが…
<A> <楽>
07'06'11 はじめの一歩80
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 次なる一歩の戦いはフィリピン国内チャンピオンであるマルコム=ゲドと決まった。だが“魔術師”と称されるゲドの技は全く予測が付かない。一歩と鴨川は策を取らず、真っ向勝負を挑むことに心を決めるのだが…

 前巻が今ひとつだったのであんまり期待してなかったけど、この話はかなり面白く仕上がっている。確かに一歩の試合はまだなのだが、なんとスパーリングで間柴と戦うというおまけが付いてる。この二人は階級が違うのでもう戦うことはないはずなのだが、こういう形で対戦が実現するのはファンサービスとしては充分。
<A> <楽>
07'06'09 ふるさとへ廻る六部は
藤沢周平 (検索) <amazon> <楽天>
 著者によるエッセイ集。育った秋田や教員時代の思い出を通して今の社会を考える一部。小説書きになった思い出と、いかにして小説のアイディアを作っていくのかを書いた二部。そして今の自分の状況を描いた私小説風の三部に分けて描く。

 著者の時代小説は実はかなり好きなのだが、一通り読んでみると、エッセイそのものはさほど得意ではないと見える。特に思い出や社会に切り込む姿勢はちょっと歯切れが悪い感じ。ただ、小説家になった時のことやハウツーはなかなか面白かったかな。小説家の技法ってのは、ほんと人それぞれなんだな。
<A> <楽>
07'06'05 スナーク狩り
宮部みゆき (検索) <amazon> <楽天>
 信じていた男に捨てられて自暴自棄になった関沼鷹子が持ち出した猟銃。それが一年前に妻子を殺された男織口邦男の手に渡った。その事情を知る織口の同僚佐倉がそれを追う…数々の人間関係が錯綜する中、猟銃はどのように使われていくのか…

 ルイス・キャロルの詩の題名がある。と前に興味を持って買ってずーっと積ん読になっていた作品なのだが(これが本来著者の読書第一作になるはずだったんだが)、今になって読んでみると、なるほど著者はサスペンス作品が一番はまっていることを再認識させられた。読み応えもあるし、展開のスピーディさ、複雑な人間関係がぴたっと収まっていく過程など本当に良く出来ている。ただ一つ気になったのは、著者の描くキャラクタは被害者側は丁寧に描くのだが、加害者側は本当に典型的な悪になっている事。悪人は感情移入させなくて良い。という割り切りなのだろうか?
<A> <楽>
07'06'04 餓狼伝20
板垣恵介 (検索) <amazon> <楽天>
 日本拳法の椎名を古武術の畑が破り、伝統派空手の神山を北辰館の姫川が破り、北辰館トーナメントもいよいよベスト4が出揃った。そして準決勝の第一回戦はなんと空手の大会にもかかわらずプロレスラー同士の試合が始まる。
 試合も最初の頃は意外性の多い試合だったが、この辺になると大体勝者の方が分かってしまうので、順当なところと言った感じか。決勝は姫川は決定だと思うのだが、問題はプロレスラー二人のどちらが勝者になるのか。それが次の焦点か。まあ、ゆっくり楽しませていただこう。
<A> <楽>
07'06'02 夢の書 わが教育
ウィリアム・バロウズ (検索) <amazon> <楽天>
 著者が見たという夢を題材とし、過去から現在までの自分自身を振り返って描いたエッセイ風短編で、著者自身の「反省の書」とも言える内省的作品。
 著者の作品は前に裸のランチを読んではいたが、あれと較べると、こちらの方が比較的分かりやすい感じ。夢の話であると共に、自分自身の子供から今までの人生についての話が散りばめられている(ただ本作では結婚生活についてのみほとんど描かれていない。勿論奥さんを射殺してしまったことも含め)。まあ、それが本当かどうかはともかく。何でも本作が著者の遺作となったそうだが、そうすると著者は一貫して悪夢の世界を描き続けたと言うことになるか。やっぱり面白い人物だ。
<A> <楽>
07'05'29 つどうメイク・マイ・デイ フルメタル・パニック!19
賀東招二 (検索) <amazon> <楽天>
 アマルガムを潰すためにもかなめを救い、レナードを拉致する。宗助とミスリルの残党の利害は一致した。それぞれ独自の情報網によりかなめとレナードがメキシコにいることが分かる。嵐を利用し、潜入を開始する。ラムダドライブ搭載機コダールの前に苦戦を強いられる彼らだったが、その時宗助の前に現れたのは…

 しばらくぶりの新刊。盛り上がるだけ盛り上がった展開で、そろそろ本気で物語を締めにかかっている著者の覚悟が見えてくる。流石ライトノベルだけあって、展開は都合良すぎるのだが、燃えるのであればそれでOK。ちなみに新しいアルの機体、レーバティンという名前は著者もお気に入りっぽいね。
 …そう言えばこのレーバティンって名前どこかで聞いたと思ってたら、デップ主演の映画の名前だったか。あれはリバティーン(2004)だけど。
<A> <楽>
07'05'25 デスノート4
大場つぐみ (検索) <amazon> <楽天>
小畑健 (検索) <amazon> <楽天>
 突如現れた“第2のキラ”。LとLの捜査本部に出入りするようになった本物のキラである月は、予測できない事態に直面して対処を迫られる。Lに協力するふりをしてなんとか第2のキラと接触をとり、味方に付けようとする月だが、事態は意外な方向へ向かう…
 キラ対Lの構図が明確化したと思った途端不確定要素が入り込んできた。映画の方でこの展開は分かっていたつもりだったけど、まさに不確定要素と言うべきミサの闖入によって月側にも、L側にも混乱が見られるようになってきた。本作の面白さというのは純粋な推理劇というより、時折予測も出来ない偶然の事態が入り込み、事態を再構築していく所にあるのかも知れない。推理劇にするとマンガである魅力が半減するから。よく練られた作品であることは確か。
<A> <楽>
07'05'22 イン・ザ・プール
奥田英朗 (検索) <amazon> <楽天>
 伊良部総合病院の地下にある精神科。ここにいるのは病院の跡取りの伊良部一郎。医学博士の肩書きを持ちながら、注射マニアで、しかもその性格は無茶苦茶。訪れた患者の方がみんな呆れかえってしまうほどだった。全く頓着してないが、実はその治療は何故かことごとく成功していく。そんな不思議な型破りな治療方法を描く。
 映画『イン・ザ・プール』がとても面白かったので、これなら原作も面白いだろう。と言うことで読んでみた。確かにこちらはこちらで凄く面白いのだが(実際原作あっての映画だ)、はっきり言って映画とは全然別物。短編集だから主人公達の異常性よりもむしろ伊良部の奇行の方が目立ってしまう。とても面白いし大笑いも出来る。ただ問題は、読んでいてどうしても伊良部が松尾スズキの顔に思えてしまうのが問題か?
<A> <楽>
07'05'20 マルドゥック・スクランブル 燃焼
冲方丁 (検索) <amazon> <楽天>
 あらゆるものに変形する金色のネズミ、ウフコックを手に圧倒的な力を持つ存在に生まれ変わったバロット。ドクターと共に彼女を殺したシェルを追いつめようとする。だがかつて彼女同様スクランブル09を経て蘇生し、ウフコックの元パートナーであったボイルドの追跡にあう。バロットを上回る力を持つボイルドに傷つく二人。
 非常に読み応えのあるハードで乾いた展開で魅せてくれる、日本では珍しいハードSF。ライトノベルっぽさの良い所を上手く取り入れつつ、それをしっかり物語に組み込める著者の力量はたいしたものだ。決して読みやすい作品ではないものの、しっかりした手応えを感じさせてくれる。
<A> <楽>
07'05'17 仮面ライダーをつくった男たち (著)村枝賢一
村枝賢一 (検索) <amazon> <楽天>
小田克己 (検索) <amazon> <楽天>
 日本特撮を代表する長期シリーズの「仮面ライダー」。この作品の成功によって変身ブームを引き起こし、さらには日本の特撮技術を一気に上げていったことで知られるが、放映当初には並々ならぬ苦労があった。本作は東映の名プロデューサと言われる平山亨が仮面ライダーをいかにして作品にしていったか、そしてそのアクションを担当した大野剣友会の面々をモティーフに、当時の番組作りに迫った作品。
 仮面ライダーには数々の裏のエピソードが存在し、知っている分は私も仮面ライダーで書いていったつもりだが、改めて本作読んでみると、本当に色々あったんだなあ。と思わせてくれた。特に番組そのものよりも大野剣友会の武勇伝の数々はとても面白い。地方ロケで無料宿泊の条件がヘルスセンターの大広間でのアクションショーだったとか、交通費を支給されないまま地方に残されてしまい、アクションショーを巡業しながら東京に戻ってきたとか…あれだけの視聴率を誇ったにもかかわらず、どれだけ予算が苦労したのかがよく分かる。特撮ファンには必携の一冊とも言えよう。
<A> <楽>
07'05'15 DDD1
奈須きのこ (検索) <amazon> <楽天>
 日本に巻き起こった”悪魔憑き”と呼ばれる奇病。これは体に新しい器官が出来、姿そのものが大きく変わってしまい、しかも新しくできた器官に応じて身体能力が極端に増して、人によっては凶暴化してしまうと言う奇病だった。かつて妹が筋肉強化の悪魔憑きとなってしまい、自分自身の左腕を失った石杖所在(ありか)。彼自身も日中の記憶を全て忘れてしまうという奇病に冒されていたが、ようやく社会生活を再開していた。ただし、その条件というのは、悪魔憑きを探し出すという任務で…

 久々の著者作品(というかこれが2作目だが)。著者の作品の特徴として“主人公の不在”があるだろうか。特に短編の場合、最後の最後になってようやくその主人公が分かるという構造を取っている。この連作短編は見事にそればっかり。お陰で読むのがえらく疲れてしまう。面白いけどね。
<A> <楽>
07'05'13 誰にも言えない特撮映画の舞台裏
根岸泉 (検索) <amazon> <楽天>
 特撮冬の時代から現在まで様々な形で日本特撮と関わってきた著者が、特撮技術の進化を自らの思い出と共に綴った作品。
 特撮冬の時代と言われた90年代。映画での仕事の場はなくなっても特撮技術そのものは無くならなかった。逆にこの時代は特撮畑の人間にとってCMによって儲かっていたというのが面白いところ(人は増えなかったらしいけど)。それが新しい才能を持った新しい監督と共にしっかりと育っていった様がよく分かる。話自体も本当に「舞台裏」と言った感じでなかなか興味深い。少なくとも私にとっては大変面白い作品だった。
<A> <楽>
07'05'10 ぼっけえ、きょうてえ
岩井志麻子 (検索) <amazon> <楽天>
 岡山を舞台に描かれるホラー短編集。「ぼっけえ、きょうてえ」「密告函」「あまぞわい」「依って件の如し」の4編を収録する。
 純日本的なホラー作品。つまり本作は現代に描かれた怪談話である。ただ、これら全ての作品は超常現象部分は極めて抑えられ、最も怖いのは実は人間である。と言う結論に持っていくその手法が実に上手く、見事な出来に仕上げられてる。本当に怖く、無茶苦茶好みなのだが、何故か本作中最も出来が悪いのが表題作「ぼっけえ、きょうてえ」だったような気が…
 改めて思うけど、怪談での怖さってのは、実は生きてる人間の怖さを描くことなんだろうな。
<A> <楽>
07'05'07 闇を裂く道
吉村昭 (検索) <amazon> <楽天>
 着工から11年もの歳月をかけて貫通された熱海から三島に抜ける丹那トンネルは、その過程で何人もの死者と近隣の村々に多大なる被害をもたらしていった。その事実をふまえ、その事実を余す所無く描いた作品。
 最近定期的に読むようになった著者の作品だが、これは面白い。
 当時の日本にとって技術的に不可能と言われ、更に連続するトラブルに見舞われ続けた丹那トンネル工事を、決してヒロイズムに陥ることなく、その苦労をそのまま描いた。と言った感じの作品で、実に読み応えのある作品だった。つい先日も友人に会うためにこのトンネル通ったのだが、そんな所に色々と苦労話があるもの。今の日本とは、こういった犠牲の上に成り立っているのだな。
<A> <楽>
07'05'05 仮面ライダーspirits12
村枝賢一 (検索) <amazon> <楽天>
 今や月にある四国では、大首領復活阻止のため、村雨、結城、風見とデストロン部隊との死闘が続けられていた。そして復活したキングダークを追い、島根に向かうXライダーとspiritsの面々。全員ボロボロになりながらも戦い続ける彼らの行く先は?

 今巻も“V3編”“X編”が続いている。キングダークに続きとうとう登場したアポロガイストの姿を見ることも出来る。一方四国には三人のライダーが集結しているが、ボスクラスの敵も4体おり、彼らとの死闘が描かれるが、とにかくこれが熱い。ゼクロスキックが封じられたゼクロスは特訓によって新必殺技を生み出し、ライダーマンは自分の“親”とも言える大首領との対話に動揺。しかし圧巻はV3だな。変身出来ないはずが、ほとんど根性で変身。最後はほとんど瀕死状態になっても戦い続けていた。そのV3の格好良さよ。
 ところで本作ですごく感心したこと。V3の変身のかけ声は「へん〜すんっ、ぶいすりゃあ」という妙な訛りがあるのだが、ここではそれを「変ン身!V3ア」と表記していた。これは上手い!
<A> <楽>
07'05'01 絶望系 閉じられた世界
谷川流 (検索) <amazon> <楽天>
 建御の部屋に突然珍客が大挙して訪れた。天使と悪魔、幽霊に死神…彼らは建御が何を言おうとも部屋に居座って消えようとしない。仕方なく友人の杵築に相談するも、杵築自身はそんな状況を見ても全く動じることなく、むしろ年下の従妹ミワの事ばかり考えていた…
 これまで著者の作品を数多く読んできたけど、その中では殊更エロと残酷性は避けられていたような節があった。しかし、色々溜まっていたのだろうか?本作はまさにその方向に振り切れてしまったような作品に仕上がっている。しかも徹底して乾いた描写でこれだけのものを描ける実力があるとは思いもしなかった。はっきり言ってこれまでの著者作品では一番驚かされた。
<A> <楽>
07'04'30 沙門空海 唐の国にて鬼と宴す 巻ノ四
夢枕獏 (検索) <amazon> <楽天>
 長安で起こっている全ての怪異は楊貴妃から来ている。それがはっきりした今、空海は関係者の大部分を楊貴妃と縁の深い驪山に集め、そこで宴を張ることとした。何が起こるか空海自身分からないままの見切りだったが、そこに現れた者たちは…
 空海の長安における冒険の完結編。本編である楊貴妃の物語に関してはいかにも大々的に語られている割に3巻の時点で物語が読めてしまったのであんまりはまることはないけど、その後、ほんの僅かな時間で密の全てを修め、日本に帰るまでの展開の方がむしろ怒濤って感じ。枝葉末節の方が面白いというのは、物語としてはどうなんだろう?
<A> <楽>
07'04'27 カッコーの巣の上で
ケン・キージー (検索) <amazon> <楽天>
 州立精神病院に入れられているネイティヴのハーフ、ブルーム=ブロムデンは長く耳と口が不自由な演技を続けていた。そんな病院にある日一人の特別な患者が運び込まれてくる。マックマーフィーというその男が入院してから病院の雰囲気は一変する。マックマーフィーの強烈な個性に感化される入院患者達。そしてそれはブロムデン自身も変えていくのだった。
 カッコーの巣の上で(1975)映画原作。映画の方では明らかにニコルソン演じるマックマーフィーが主人公だったのだが、実は原作の主人公は“チーフ”の方だったとは。とにかく内容がきつく、読み終えるまでに時間がかかってしまったが、しかしそれだけのことはある。病院そのものや精神状態の描写などが素晴らしく、読み応えあり。
<A> <楽>
07'04'25 鉄腕バーディー15
ゆうきまさみ (検索) <amazon> <楽天>
 千明救出までひとまずゴメスと休戦し、作戦を練るバーディー=つとむ。だがゴメスとの会見の場は、なんと普通のホテル。何をされるか気が気ではないつとむだが…。一方、水没病院から辛うじて生き残った氷川は再起を図ろうとしていた。そしてついに氷川とバーディーの直接対決が始まる。

 話そのものは随分派手になり、これからの展開が期待されるのだが、本作の面白さはむしろつとむの妄想にある。バーディーがゴメスに襲われるんじゃないか?と考えるシーンはどんどんエスカレート。ついにはつとむ本人が襲われるイメージにまで発展してしまった。いやはやって感じだが、それだけでも見応えは充分あり。
<A> <楽>
07'04'22 ずっと怪獣が好きだった
品田冬樹 (検索) <amazon> <楽天>
 映画のスクリーンでゴジラが暴れ回っていた時代に生まれ、怪獣好きが昂じて造形師となった著者が綴る怪獣映画の想い出と、自分が手がけた怪獣達の苦労話を描く。
 興味深い作品で、特に著者が手がけたという平成ゴジラのみならず、初期のゴジラシリーズの裏話が面白く、造形の進化についても色々と知識がついた。まあ、何より巻末に載ってる対談集の中にちゃっかり押井守が出ていたってのが一番の収穫だったりするが(笑)
<A> <楽>
07'04'18 マルドゥック・スクランブル 圧縮
冲方丁 (検索) <amazon> <楽天>
 賭博師シェルに買われた少女バレットはシェルの手により生きながら焼かれてしまう。だがシェルの犯罪を暴こうと見張っていた二人組ドクターと金色のネズミの万能兵器ウフコックに助けられる。シェルの罪を告発するため、甦った体で証言台に立つことになったバロットだが…シリーズ第1作。
 前々から気になっていたタイトルだったが、いざ読んでみるとこれが実に面白い。というかはっきり言って驚いた。ここまでハードな作品を20代そこそこで描ける人がいたとは。単なる暴力描写や残酷描写に止まることなく、ストーリーやキャラの心情まで描き込んでる。かなり力業の部分はあるにせよ、読ませてくれる。
<A> <楽>
07'04'16 デスノート3
大場つぐみ (検索) <amazon> <楽天>
小畑健 (検索) <amazon> <楽天>
 大学に入学した夜神月は入学式の時に妙な同級生と出会う。彼は突然月に向かい、「私がLです」と名乗り出るのだった。互いを殺そうと狙う“キラ”と“L”が、見かけ上仲良い同級生を演じつつ、互いの探り合いが始まった。
 互いの正体がライバルであるのかどうか探る二人を中心とした話だが、かなり意表を突いた展開となった。しかし、改めて考えてみると、ここまで推測がいっている以上、月を完全拘束するだけで話は終わってしまうというという根本的問題もあるし、月のツキがありすぎって気もするが、その辺気にさせないほどの大風呂敷を広げてくれたお陰で実に緊張感溢れる話になっている。
<A> <楽>
07'04'15 沙門空海 唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三
夢枕獏 (検索) <amazon> <楽天>
 楊貴妃は50年前に死んでいなかった。その事実を知った空海は、度々彼と接触を持つ丹翁がかつて楊貴妃と共に姿を消したという丹龍であることを突き止める。丹龍ともう一人同時に姿を消したという白龍の関係は?そして楊貴妃は一体どうなってしまったのか?
 前巻までで小さな事件の積み重ねで話が構成されるのだと思いきや、見事に大きな話に巻き込まれてしまっている。タイトル通り鬼と宴をするのは次巻に持ち込まれるが、はてさてどのような宴になるやら。
<A> <楽>
07'04'13 宝塚映画製作所 (編)宝塚映画祭実行委員会 <amazon>
 歌劇で知られる宝塚は、かつて映画の町としても知られていた。その頃の記憶を掘り出すべく、2001年に行われた宝塚映画祭。その開催に至るまでの苦労とイベントの模様を宝塚映画の歴史と共に描く。
 今でこそ結構開かれることの多くなった地方の映画祭だが、それを歴史を掘り起こしつつ手作りで作っていくという過程が面白い。特に、かつての映画の都ってこんなところにもあったんだな。と思わせてくれる所も良し。
 今回初めて「東宝」が「東京宝塚映画」の略であることも知った。
<A> <楽>
07'04'10 ジパング27
かわぐちかいじ (検索) <amazon> <楽天>
 日米双方の総力戦がいよいよ開始された。戦艦大和、武蔵を擁する日本軍に対し、新型VT信管を搭載した砲弾と膨大な航空戦力で対抗する米軍。機動部隊の接触が描かれる。その中で草加は戦艦大和に搭載された新兵器をいかに使うか、そしてその戦いの趨勢を見守る“みらい”は…
 今巻は実に素直な戦力のぶつかり合いが描かれており、草加、角松はあくまで脇に置かれているが、果たしてこれがどう展開していくのか、全く未知数。核兵器がどう使われていくのやら。
<A> <楽>
07'04'08 ドラキュラの客
ブラム・ストーカー (検索) <amazon> <楽天>
 「吸血鬼ドラキュラ」著者の死後に出版されたという唯一の短編集。「ドラキュラの客」「判事の家」「牝猫」「金髪」「ジプシーの予言」「アベル・ベーナ帰る」「鼠の埋葬」「血まみれの悪夢」「狂った砂」の9編を収録する。
 19世紀終わりから20世紀初頭のホラー作品というのは独特の味があってとても好き。そのなかでも代表格の一人ストーカーによる作品だけに、話自体が心地良い。ホラーだけじゃなく、ブラックジョークや道徳的な勧善懲悪作品など、様々なジャンルを書いているのがよく分かる。その中でも「牝猫」は特にお気に入りの作品。独特の怖さが何とも言えない。
<A> <楽>
07'04'05 キノの旅V
時雨沢恵一 (検索) <amazon> <楽天>
 旅人のキノと相棒エルメスの二人旅を描く連作短編集。「夕日の中で」「あの時のこと」「人を殺すことができる国」「店の話」「英雄達の国」(2編)「予言の国」「用心棒」「塩の平原の話」「病気の国」を収録する。
 相変わらず不思議な話の展開ぶりで読ませる作品だが、この巻は多くの場合展開が読めなかった。書き手の方も色々進歩してたんだね。この中では「人を殺すことができる国」の皮肉ぶりがなかなか楽しかったかな?久々にキノのアクションもあり。
<A> <楽>
07'04'03 金色のガッシュ28
雷句誠 (検索) <amazon> <楽天>
 ゼオンの攻撃は止まらない。その中でガッシュが放った真の姿を現したバオウ・ザケルガの威力はガッシュをも食い尽くそうとする。多くの友が倒れる中、最後のガッシュとゼオンの一騎打ちが始まる。その戦いの中に二人は何を見るか?バオウ・ザケルガの真の意味とは?そして何故ガッシュとゼオンの二人は分けられて育てられたのか?様々な思いがぶつかり合う。

 ファウード編のクライマックスで、ついにゼオンとガッシュの戦いに決着がつく。あれだけ非情なゼオンが最後の最後に見せた笑みと、デュフォーの過去など、見所はとても多い。
 ただ、ゼオンは最後の敵になるとばかり思っていただけに、この展開はかなり意外でもあったが。
<A> <楽>