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2022 | ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 監督 | ||||||||
2021 | |||||||||
2020 | |||||||||
2019 | |||||||||
2018 | |||||||||
2017 | |||||||||
2016 | |||||||||
2015 | |||||||||
2014 | |||||||||
2013 | オズ はじまりの戦い 監督 | ||||||||
死霊のはらわた 製作 | |||||||||
2012 | ポゼッション 製作 | ||||||||
2011 |
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2010 |
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2009 | スペル 監督・脚本 | ||||||||
レジェンド・オブ・ザ・シーカー(2nd)<TV> 製作総指揮 | |||||||||
2008 | レジェンド・オブ・ザ・シーカー(1st)<TV> 製作総指揮 | ||||||||
2007 | スパイダーマン3 監督・原案・脚本 | ||||||||
ブギーマン2 憑依 製作 | |||||||||
30デイズ・ナイト 製作 | |||||||||
ゴースト・ハウス 製作 | |||||||||
2006 | 呪怨 パンデミック 製作 | ||||||||
2005 | ブギーマン 製作 | ||||||||
2004 | スパイダーマン2 監督 | ||||||||
THE JUON 呪怨 製作総指揮 | |||||||||
2003 | |||||||||
2002 | スパイダーマン 監督 | ||||||||
2001 | |||||||||
2000 | ギフト 監督 | ||||||||
スパイダー・エンジェル<TV> 製作総指揮 | |||||||||
ジーナ(6th)<TV> 製作総指揮 | |||||||||
1999 | ラブ・オブ・ザ・ゲーム 監督 | ||||||||
ジーナ(5th)<TV> 製作総指揮 | |||||||||
1998 | シンプル・プラン 監督 | ||||||||
ジーナ(4th)<TV> 製作総指揮 | |||||||||
1997 | ヤング・ヘラクレス 出演 | ||||||||
シャイニング 出演 | |||||||||
ジーナ(3rd)<TV> 製作総指揮 | |||||||||
1996 | ジーナ(2nd)<TV> 製作総指揮 | ||||||||
1995 | クイック&デッド 監督 | ||||||||
ヘラクレス/勇者ヘラクレスVS女戦士ジーナ 製作総指揮 | |||||||||
ダークマン3 製作総指揮 | |||||||||
スタークリスタル 出演 | |||||||||
アメリカン・ゴシック<TV> 製作総指揮 | |||||||||
ジーナ(1st)<TV> 製作総指揮 | |||||||||
1994 | ダークマン2 製作総指揮 | ||||||||
ザ・マンティス 製作総指揮 | |||||||||
ヘラクレス/魔境の女戦士 製作総指揮 | |||||||||
タイムコップ 製作 | |||||||||
未来は今 脚本 | |||||||||
インディアン・サマー/タマワクの英雄たち 出演 | |||||||||
1993 | キャプテン・スーパーマーケット 監督・脚本 | ||||||||
ハード・ターゲット 製作総指揮 | |||||||||
ボディ・バッグス 出演 | |||||||||
インディアン・サマー/タマワクの英雄たち 出演 | |||||||||
1992 | イノセント・ブラッド 出演 | ||||||||
1991 | 12人のイカれた男たち 脚本 | ||||||||
1990 | ダークマン 監督・原作・脚本 | ||||||||
暴走スプラッターマシーン 原案 | |||||||||
マニアックコップ2 出演 | |||||||||
1989 | |||||||||
1988 | 処刑!血のしたたり 出演 | ||||||||
1987 | 死霊のはらわた II 監督・脚本 | ||||||||
1986 | 新・死霊のはらわた 製作総指揮 | ||||||||
1985 | XYZマーダーズ 監督・脚本 | ||||||||
地獄部隊サム・ライミ/虐殺ヒーロー 出演 | |||||||||
1984 | |||||||||
1983 | 死霊のはらわた 監督・製作総指揮・脚本 | ||||||||
1982 | |||||||||
1981 | |||||||||
1980 | |||||||||
1979 | |||||||||
1978 | |||||||||
1977 | |||||||||
1976 | |||||||||
1975 | |||||||||
1974 | |||||||||
1973 | |||||||||
1972 | |||||||||
1971 | |||||||||
1970 | |||||||||
1969 | |||||||||
1968 | |||||||||
1967 | |||||||||
1966 | |||||||||
1965 | |||||||||
1964 | |||||||||
1963 | |||||||||
1962 | |||||||||
1961 | |||||||||
1960 | |||||||||
1959 | 10'23 ミシガン州フランクリンで誕生 |
ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス Doctor Strange in the Multiverse of Madness |
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スパイダーマンの頼みで興味本位でマルチバースへと接続してしまったドクター・スティーブン・ストレンジ(カンパーバッチ)は、時折夢の中で他のバースの自分自身に接続するようになってしまった。そんなある日の夢の中でストレンジは謎の怪物から一人の少女を守っており、窮地に陥ったストレンジは少女から力を取り上げて怪物を倒そうとするが失敗して死んでしまった。その日、ストレンジはかつて恋仲であったクリスティーン・パーマー(マクアダムス)の結婚式に友人として出席したのだが、突如ニューヨークに一つ目の怪物が現れる。カマー・タージからやってきたウォン(ウォン)と共に戦い勝利を得るが、その怪物が追っていたのは、夢で見た少女だと分かる。助けた少女はアメリカ・チャベス(ゴメス)といい、マルチバースを移動する能力を持っていると言う。そこでストレンジはマルチバースの知識を持っているワンダ・マキシモフ(オルセン)の元を訪れる。 MCUシリーズももう26作目。それで未だ飽きが来ないのが凄いが、これは一本一本に個性があって、更に監督自身の個性も相まってバラエティに富んでいるからだろう。 それでも本作は特別な思いがある。なんせ監督がサム・ライミ。20年前に監督が作った『スパイダーマン』こそが今のアメコミヒーロー映画の始まりとなったのだ。一体その手腕をどう振るってくれるのか、実に楽しみ。 それで本作、見事にサム・ライミの作品になっていた。ただし、『スパイダーマン』時のものではない。更に遡ったデビュー時の『死霊のはらわた』のもの。正確にはこれはその三作目である『キャプテン・スーパーマーケット』のもの。見事にサム・ライミらしさに溢れた作品となっていた。なんというか、感覚的には『キャプテン・スーパーマーケット』の続編を観てる感じ。特にアッシュ好きな私としては、最高に楽しい作品となっていた。 しかしそれはこれまでのMCU作品とは一線を画すものでもある。特にディズニー傘下となった今のMARVELは、基本的に残酷描写を避けるようになった。それに対して真っ向から対立するような残酷描写を打ちだして公開するとはなかなか肝の据わった作りだ。その辺は流石サム・ライミと言ったところだろうか。ホラー性とグロテスクさを強調したこの作りはこれまでにはない新鮮な感覚だった。 主人公にドクター・ストレンジを持ってきたのはぴったり。他のヒーローだったらここまではまることは無かっただろう。なんせ身勝手で他人を愚かとしか見てないストレンジは、スケールの大きなアッシュのような性格なので、そのまんま『死霊のはらわた』拡大版と言った感じ。なまじ能力が高い分、やってることが派手だしモラルもないので、非情なことを平気で行う。特に後半の死体を使ったアクションに至っては悪趣味の局地。死体と化した肉体を使って、悪霊まで取り込んで襲いかかるストレンジの姿はヒーローより明らかにヴィラン側にしか見えない。 しかもその相手であるヴィランはMCUの中で最も薄幸な女性キャラだけに、どっちが悪者なんだかという感じ。この設定を前提にしたことから、ライミ監督の悪ノリが始まったということあろう。 この話での敵も面白いところだ。前述したが、スカーレット・ウィッチが最初に登場したのは『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)で(本来の父親であるマグニートが使えないため)、ヒドラの残党によって兄のクイック・シルバーと共に肉体改造を受けたというキャラで、兄はウルトロントの戦いで死んでしまい、更に愛するヴィジョンと出会ったものの、その後の『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』(2016)ではキャプテン・アメリカ側に付いたためにお尋ね者となり、そして『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018)で愛するヴィジョンを失った。その後配信版「ワンダヴィジョン」でも、理想の家族を作ろうとしたが失敗する。作りあげた幸せも全て消え去り、ただ悲しさだけしか持たない。悲劇のヒロインみたいなキャラである。そんな彼女が、悲しみのあまりにマルチバースの特異点であるダークホールドを引き入れてしまって、本物の魔女になってしまったというもの。 尊大で基本的に誰に対しても冷笑的なストレンジと、ただただ小さな自分の幸せのためにマルチバースを探し回るスカーレット・ウィッチ。どっちも自分勝手でヒーローとヴィランが絡み合う関係が展開する。ここまで主人公を悪人に描けるのはライム監督だからこそ。 でも流石にそれを押し通すことは出来なかったらしく、物語が進むにつれ、敵と味方がはっきりと分かれていったため、ギリギリでMCU作品として成り立っていた。 まんまホラーではないが、ホラー要素満点なのも良し。ホラー的演出を緊張感として描いていたので、演出は最高だった。 小ネタも良し。マルチバースの中で、これまでMCUに登場したキャラも別次元のキャラとして登場してるのも良かった。何より今まで版権の都合で出せなかったX-MENのエグゼビアが、まんまパトリック・スチュワートの姿で出ていたのは大きい。ディズニーがFOXを吸収したことから、いよいよ本格的にX-MENもMCU参戦可能になった事を内外に示すことが出来た。このMCUフェイズ4はかなり大きな話に持って行けそうだ。絶対出ると思ってたブルース・キャンベルも、いかにもなところで登場してるし、実に楽しい。 強いて悪い部分を言うならば、演出に振り切ってたお陰でマルチバースの設定が薄っぺらく感じられたことと、物語にひねりがなさ過ぎたことくらいかな。それらを含めても充分面白い作品だけど。 |
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オズ はじまりの戦い 2013 | |||||||||||||||||||||||||||
2014MTVムービー・アワード悪役賞(クニス) | |||||||||||||||||||||||||||
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オズの魔法使(1939)前日譚 |
スペル 2009 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2009絶叫大賞スクリームアワード最優秀ホラー賞 2010MTVムービー・アワード恐怖演技賞(ローマン) 2009タランティーノベスト第3位 |
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銀行のローンデスクで働くクリスティン・ブラウン(ローマン)は、ある日立ち退きを命じられた老婆ガーナッシュ夫人(レイヴァー)のローン延長の申し出を受けた。だがその朝丁度上司から、昇進したくば冷徹になれ。と言い渡されていた彼女は、本来受理可能な申請を拒絶してしまう。その夜、ガーナッシュ夫人の待ち伏せにあったクリスティンは呪いの呪文を受けてしまう。そして翌日から、恐ろしい怪現象がクリスティンを襲う… インディーズ出身ながら、『スパイダーマン』の大ヒットにより、今やハリウッドのドル箱監督となったサム・ライミ監督。今は専らプロデューサーとして活動中だが、本人が純粋なホラー作品を監督するのは本当に久々のこと。『死霊のはらわた』の大ファンとしては、諸手を上げて歓迎したくなる作品である。お陰で普通なら敬遠してるホラーを劇場に観に行ってしまった。 ただし、私の場合は、基本的に恐がりなので、精神的に逃げられない劇場でホラー観るのは苦手。そのため本作も劇場内では半ば後悔させられた。ホラー・コメディと聞いていて、『死霊のはらわた』のようなものを期待していたのに、作りが本物のホラー作品だったため、ちょっと(かなり?)きつかった。友人を集めてわいわい騒ぎながらビデオで観たならば、コメディとして観られるだろうけど、静かな劇場で観てると辛い。ショックシーン連発は苦手な人間に、「来るぞ来るぞ」と雰囲気を盛り上げて、そのクライマックスに本当に怖いのが来るので、ちょっときつい。 とはいえ、本当に久々の劇場ホラーは、これはこれで又、楽しい経験だった。特に『ソウ』(2004)以来、最近のホラーは怖がらせるよりも痛がらせる方向に持っていく傾向にある。これはこれで確かに怖いんだけど、大分食傷気味。そんな中で、こういうストレートなびっくり箱形式っぽいホラーは妙に懐かしかったし、「ああ、80年代ってこんな感じだったなあ」と妙にしみじみもさせてくれる。本当にライミの原点を感じさせる作品だなあ。と改めて思わせる。 基本的に本作は80年代ベースではあるものの、細かいところでそれ以前の時代のホラーのオマージュも詰まっているし(わざわざ雰囲気たっぷりの洋館を出して見せたり、普通都会生活にこんなの必要か?という木造りの納屋を出して見せたりと、ここまでやるか?と言う徹底ぶり)、敢えて60〜70年代のホラーの小道具を持ち出してくるあたりは、やっぱりホラーマニアの作った作品だと思える。それに『スパイダーマン』で培った演出力にものを言わせ、物語の展開も疾走感あふれるものとして仕上げているし、本当に巧さってものを感じさせてくれる作りだ。 細かいところを言えばまだまだ褒める部分は多い。 ホラーにとって重要なのがSQ(スクリーミング・クイーン)の存在。今回主役を張ったローマンは、存分に叫びまくり、マニア心にも大満足。かつて『死霊のはらわた II』でやった絶叫中の喉に目玉が飛び込むのもあり。グロだけど、実に楽しい演出を見せてもくれる。絶叫シーン一つを取っても、ちゃんとマニアが観たいものを見せようとことん楽しませてくれよう。という姿勢には頭が下がる。 それになんと言っても、パワフルなおばあちゃん。これに尽きるだろう。これは本作の売りだったが、別段悪霊化してなくても、それだけで充分怖い。というか、あのパワフルさは怖さを通り越して笑えてしまうほど。 ストーリーはキング原作の『痩せゆく男』の焼き直しというか、ほぼ完璧にそのまんまなんだが(著作権大丈夫かいな?)、物語なんてもはやどうでもいいから、描写だけで押し切ってしまった感があり。でも、それこそが本作の狙いであり、売りなんだから、それはそれで良しだろう。 ホラー好きにとっては大満足の一本だ。 しかし、観てるときは後悔するほど怖かったのに、改めてこうやってレビューすると、笑えるところしか思い出せない。なんか不思議な作品だ。 前述の通り、本作はDVDあたりで、友達とワイワイ言い合って笑いながら観るのが正しい観方なんだろう(日本と違ってアメリカの劇場ではきっと劇場内でそう言った”正しい”観方ができてるんだろうな。基本劇場では静かに。というのが私のスタンスだが、これに関しては大声出しながら観たかった気がするよ。 で、ここまで褒めておいてこの点数なのは、この映画には二つばかりどうしても生理的にダメな描写があるから。 吐瀉物の描写がある作品は観てるだけで気持ち悪くなって駄目なのと、猫に酷いことをする作品は許せん。なんで生け贄が猫なんだよ! |
スパイダーマン3 2007 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2007英アカデミー特殊視覚効果賞 2007allcinemaONLINEユーザー投票第14位 2008MTVムービー・アワード格闘シーン賞、悪役賞 2008サターンファンタジー映画賞、助演男優賞(フランコ)、監督賞、特殊効果賞 |
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ピーター=パーカー(マグワイア)が扮するスパイダーマンはいまやニューヨークの市民から絶大な信頼と賞賛を集めるヒーローとなり、恋人MJ(ダンスト)も舞台女優としての一歩を踏み出していた。二人は順風満帆で、MJへのプロポーズを決意するするピーターだったが、MJの舞台は評論家から酷評され、役を降ろされてしまう。そんなMJの心も知らず、浮かれるピーターだが、そんなある日、謎の黒い液状生命体がスパイダーマンに取り憑き、そのスーツを黒く染め上げる。黒くなったスパイダーマンの戦闘能力はこれまでよりも格段に高まっていたが、そのスーツを着用したピーターの精神を更に高揚させていく。そんな時、ピーターの叔父を殺した真犯人マルコ(チャーチ)が刑務所から脱走したという事を聞かされる。しかも父の敵スパイダーマンがピーターであることを知ったハリーは、執拗にピーターの命を狙うのだった… 大人気シリーズの最新作にして、一応の完結編。 本作が大人気となったのは、CG技術の向上による疾走感と爽快感もさることながら、ヒーローの心理描写を事細かに追っていった事も大きな特徴だろう。本シリーズでは一貫してピーターの心の動きを追っていった。一作目『スパイダーマン』ではコンプレックスの固まりのようなピーターが強大すぎる力を与えられ、戸惑いながら本物のヒーローとなっていくまでを描き、2作目『スパイダーマン2』ではヒーローとして生きることの辛さと精神的な成長を描いていく。 ヒーローはたとえ肉体的にどれほど強くとも、心に弱さを持っているもので、あらゆる歴代のヒーロー達はその心を攻撃されていくのだが、本シリーズほどそれが前面に押し出されているものはなかろう。しかも、この3作は一貫して、その心の戦いは外的要素から与えられるものではなく、あくまで主人公の中のものであり、しかもそれらは全て思春期特有のものであると言うところが面白い(下世話な話をするなら、スパイダーマンの放つ糸は、本シリーズでは射精と大きく関わりを持つという指摘もある)。 ここでのピーターの姿は前2作とは異なり、最初の内は完全にいい気になっている姿として描かれる。前2作では徹底的にコンプレックスを持った存在として描かれていたのとは対照的だが、それが一気に転換していた。しかし勿論、それだけで終わるのではない。調子に乗りすぎると必ずしっぺ返しを食らう。最初の嫌味なピーターが、本当の自分に気づくまでが本作の主題。そう言えば『Ray/レイ』(2004)と構造がよく似ていることに気付く。 実の話を言えば、これだけ盛り上げられたラストバトルも、実は私は全然盛り上がって見えなかった。むしろ、思い上がった自分自身を突きつけられ、そこから脱却するピーターの姿の方がむしろ私的には盛り上がってくれたもので。実は本作の一番の見所は、スパイダーマンが黒いスーツを脱ぎ捨てるところにこそ合ったのだと私は思っている。思春期特有の思い上がりは、いつか叩きつぶされることになるが、ピーターはそれを自分の手で成し遂げたのだ。この瞬間こそ真に心の成長のクライマックスだろう。 本作を通して思うこと。それは妙な不安。と言うより閉塞感を感じてしまう。物語をピーターの内面に持っていくため、爽快感の中にもどこか不安を感じさせるように持っていく。多分これこそが目的なのだろうと思うのだが、その分なんかグワーっと盛り上がった気分にさせてくれないのだ。 前に『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006)で書いたのだが、多分この閉塞感がハリウッドの元気のなさにつながっている気がしてならないのだ。それこそが今のハリウッドのあり方そのものなのだろう。 特にスパイダーマンの存在というものをアメリカという国そのものに置き換えてみると面白い。そもそもスパイダーマンのコスチュームはご存じの通り赤と青によって構成されている。この二色は国旗で用いられることが多いが、アメリカの国旗も又、その二色がしっかり使われている。強い強いと浮かれているアメリカ。これは実は虚像の強さなのではないか。実際浮かれいるその姿をよく見ろ。真っ黒じゃないか?その警告をも示しているように見える。しかし今こそアメリカは本来の姿。赤と青に彩られた本当の姿に戻らねばならない。と言う意志のようにも思える。最後に国旗をバックに颯爽と飛び立つスパイダーマンの姿は、単に格好良さではなく、そのメッセージを込めているのかも知れない。 逆に言えば、この作品自体がアメリカが閉塞の中にある。と言うことを前提に作っているかのように思えてならない。考え過ぎかも知れないけど、その辺のメッセージ性を考えてしまうと、なんか素直に楽しむという気分にさせられないのだよな。 |
スパイダーマン2 2004 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2004米アカデミー視覚効果賞、音響効果賞、音響賞 2004英アカデミー音響賞、特殊視覚効果賞 2004放送映画批評家協会ポピュラー作品賞、ファミリー映画賞 2005MTVムービー・アワード作品賞、アクション賞、悪役賞(モリナ) 2005サターンファンタジー映画賞、主演男優賞(マグワイア)、監督賞、視覚効果賞、助演男優賞(モリナ)、音楽賞 2004ロジャー・エバートベスト第4位 2004全米BOXOffice第3位 2004外国映画興行収入5位 |
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ピーター=パーカー(マグワイア)はバイトの掛け持ちをしながら大学生活を送っていた。そして事あらば、スパイダーマンとしてニューヨークの街を守っていた。一度は愛する事をあきらめたメリー=ジェーン(ダンスト)は舞台女優の道を歩み始め、婚約者まで出来てしまった。更に親友のハリー(フランコ)はスパイダーマンを父の仇とつけねらう。そんな時ピーターは論文のため、科学者のオットー=オクタビアヌス(モリナ)と出会い、彼の核融合実験に立ち会うことになるが、実験は失敗。しかも思考を持つ4本の人工アームの悪意に乗っ取られてしまったオクタビアヌスはドクター・オクトパスとなり、スパイダーマンを狙ってくるのだった… 大ヒット公開中の本作。アメコミ好きにはたまらない続編で、事実大ヒットを記録してる。しかも評判はすこぶる高いということで、この夏最大の期待作だった。オープニングの、古めかしい絵を使った前作のストーリーフローからゾクゾクするような演出で、楽しめそうだと思ったのだが… 確かに演出に限っては最高と言えた。本当に監督の「本気でこの絵を撮りたいんだ!」って主張が見えてくるよう思いにさせられる。特に劇中に散りばめられる様々なパロディが笑える。ドク・オクが手術室で医者や看護士を殺しまくるシーンなんて自身の出世作『死霊のはらわた』そのまんまで、ご丁寧にチェーンソーまで持ち出してるよ。 ただし、評価出来るのが演出のみ。ストーリーで言ったらウジウジと悩んでる部分は前作の方が良かったくらいだし、キャラクターは確かにモリナも上手かったにせよ、前作のデフォーほどのぶっ飛び方はなかったので、どうしてもなあ。最後にあんな簡単に改心してしまうのも嫌らしかったし、大体全ての金属を引きつける核融合中に、金属アームが全く引きつけられないって時点で出来過ぎだろ?MJ役のダンストが演技は上手くなったものの、前より可愛さが無くなったんじゃないか?(元々ダンストが私的には駄目だったから1作目も評価低かったわけだし)少なくとも、あれだけ固執するほどの魅力が感じられず。それに物語の展開は又えらく単純にしたもんだよ。微妙な演出と、単純な展開がチグハグっぽい。演出は最高といえるんだがなあ。 でだ、なんかすっきりしないまま映画館を後にしたわけだが、そうすると、頭の隅でデジャビュが…どこかでこれは… あ。これ…似てる。ってか、そのまんまのがあった。 そう。これはライミ監督のデビュー2本目の監督作品である『XYZマーダーズ』ではないか? 詳細は避けるが、この映画の主人公は冴えない男で、ある女性を好きになるのだが、彼女に関わったばかりに数々の事件に出くわしてしまい、どんどんシャレにならない危機に陥るって作品なんだが、この作品、実はライミ監督の作品と思われてない節がある。脚本と演出で参加したコーエン兄弟の味が強すぎて、殆どコーエン作品に思われてしまってる。ライミ監督自身、それをひょっとして根に持っていたんじゃないか?コーエン兄弟に取られてしまった演出を自分に引き戻すためにこの作品を作ったんじゃ無かろうか?なんだかストーリー的にも、演出的にもそんな味がよく出てる。あの列車の上でのアクションは実はそのまんまの場面が『XYZマーダーズ』にもあった。勿論低予算B級作品と本作では演出に格段の差があって、こちらの緊張感とか展開とかは手に汗握るものはあるんだが、実際やってることは同じだったりする。そして最後、ウェディング姿でピーターの前に出るMJの姿も似たようなのが(元々がこれは『卒業』(1967)のパロディなのだが、パクリのパクリになってしまってる)… 本当にリメイクするつもりで本作作ったんじゃ無かろうか? 正直に「流石ライミ、やってくれるよな」という声が出てしまった。 ただ、評価そのものは高くできるのだが、この作品に対するライミ監督の暴走ぶりがちょっと鼻についてしまう。 ちなみに本作では日本の作家塩野七生の息子アントニオ・シモーネが助監督としてクレジットされている。 |
スパイダーマン 2002 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2002米アカデミー特殊効果賞、音響賞 2002放送映画批評家協会歌曲賞 2002オンライン・ムービー・アワード第8位 2002日本のヒット作第6位 2003MTVムービー・アワード女優賞(ダンスト)、キス・シーン賞(マグワイヤ&ダンスト)、作品賞、男優賞(マグワイヤ)、悪役賞(デフォー) |
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幼くして両親を亡くし、伯父夫婦のもとで大切に育てられたピーター・パーカー(マグワイア)。高校3年生となっても、6歳の頃からずっと思いつづけている隣家のメリー・ジェーンに未だに打ち明けることができないちょっと冴えない男に成長する。そんなピーターが、大学の研究所を見学した際、遺伝子組み換えによって生まれた新種スーパースパイダーに噛まれてしまった。一夜明け、ピーターは自分の身体に異変が起こったのを知る。動体視力が極端に増し、垂直な壁をよじ登り、手から凄まじい強度を持つ蜘蛛の糸を出す。最初、彼はこの力を自分のために使おうとするのだが、伯父の死に際の言葉に責任を持ち、人助けのために働こうと心に決める。そんなとき、ピーターの親友ハリーの父、有名な軍事企業オズコープ社経営者のノーマン・オズボーン(デフォー)は人体能力増強剤の試験を自ら行った結果、善のノーマン、悪のグリーン・ゴブリンへと心が分裂してしまう…。 有名なアメコミヒーローを現代の技術の総力を挙げて映像化。公開第1日の興行成績がなんと4,360万ドルという大ヒットぶりで(現在トップ)、本作がアメコミの映画化の先鞭を付けることになった。 確かに格好良く仕上がった。CG技術の向上により、NYの町中を自在に跳ね回るスパイダーマンの姿が見事に描けている。又、監督のサム=ライミは私はファンだし、何よりキャスティングでスパイダーマン役にトビー=マグワイア、敵役にウィレム=デフォーというのが心憎い演出。デフォー大ファンとしては、絶対観なければならないと心に決めていた。 で、出来はと言うと、良くできていたけど、乗り切れなかったと言うのが正直な感想。 スパイダーマンの格好良さと、人間時のピーターの冴えない生活は上手く描けていたし、スパイダーマンになってからのあのヒーローぶりも良し。デフォーはさすがに上手く、鏡を前に一人芝居するのは実に迫力あり。性格俳優と言われるだけのことはある。それに何かとても楽しそうなんだよね。うぉ〜デフォー、お前は最高に格好良いぞぉ(笑)。特にグリーン・ゴブリンの仮面の中で目とか口とか、きっちり演技してるのが凄いね。観る前は、善人役は誰か他の奴にやらせて、暗黒面になったらデフォーの顔になったっていうなら楽しいだろうな。と思ったんだけど、充分一人でまかなえてるよ。対するヒロイン役のカースティンは何かあんまり魅力無い。結構不細工に見えたのは私だけ?是非次作はヒロインを変えて欲しい。 私としては元々サム・ライミ監督作品の『ダークマン』的作品を観たかっただけに、本当にそのまんまの作品を見せられて、楽しかった一面、何か“それ以上”がのものが無かったような気がする。何というか、普通すぎる作品だったな。 ソツない作りではあるが、これがアメリカでの歴代興行成績をどんどん塗り替えていると言うのが多少不思議。ひょっとしてこれも又、2001年の連続爆破テロの影響なのかも知れない(世界貿易ビルも当初画面には映っていたそうだが、連続爆破事件の事を顧慮してカットされたのだとか)。 昨年来アメリカでは劇場興行成績が次々と塗り替えられているが、それも冬になってから。連続爆破テロの影響というのは確かにあるんじゃないかな? 図らずも、この映画は完全に今のアメリカ人の嗜好にぴったりと合ったのだろう。そして、極端に強いヒーローにその期待の中心が集まっているのかも?そんな風にも思えた。既に3作まで決定してるそうだが、この人気が果たして続くのかな? ところで、この映画の宣伝で“初”の字が躍っていたけど、『スパイダーマン』は既に1977年に映画化され、シリーズ化もされているんだけど…それはないものにされてるのか?(あれはTVMだったか?)更に全く関係ないが、日本でもTV作品が作られてるんだけど… |
ギフト 2000 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2001ジュラルメール・ファンタスティック映画祭参加作品 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ジョージア州にある小さな町で、夫を失って以来占い師をして3人の子どもと細々と暮らしているアニー(ブランシェット)。彼女は超感覚“ギフト”を持っていたため、人には見えないものが見えるという特質があったのだ。だが、暴力的なドニー(リーヴス)を始めとする幾人かの町の人間は彼女を魔女扱いし、排斥しようとしていた。そんなある日、この町でジェシカという女性の失踪事件が発生する。ジェシカの父親とその婚約者ウェインはアニーに協力を依頼してくる。そして彼女の霊視で見えた犯人とは… サム・ライミ監督はデビュー作『死霊のはらわた』以来のファンで、最初はそっち路線で突っ走るのかと思っていたら、意外にもかなりまともな作品を量産する、良い映画監督になってしまった。と言うか、しっかりしたプロットと映像技術を用いつつ、マニアックな部分も残してくれる、とても好みの監督へと変身してくれた。 カメラの向こうに嬉々とした彼の顔が見えるような、そんな良い監督になってくれたものだ。 そのライミ監督が久々にホラー界に戻ってくれると言うので、かなり期待して観に行った。 期待は裏切られた。 確かに私が観たかった昔のライミ監督はそこにはなかった。 私が期待していたのは、作り物めいた怖さと笑いだったのだが、それは全く存在せず。 しかしながら、確かに期待は裏切られたのは確かだが、これは期待はずれではなかった。 本当に面白い。 パワーで乗り切ったような昔の作風とは随分異なり、風景描写も含めて落ち着いた、しかも人の心理をしっかり掴んだ良い作品に仕上がっていた。いやはや、成長したもんだ。 ストーリーそのものは「ギフト」を持った主人公アニーと言う存在がユニークな程度で、概ねにおいてありきたりなサスペンスの物語なんだけど、何せ構成が巧みだし、“痛い”描写がいくつも出てくる。 ねちっこい暴力的な描写もそうだけど、神経に障る痛さ、と言うか、心をちくちく刺されるような、精神的な痛みを感じてしまった。 特にリーヴス演じるドニーに責められるアニーとの会話。これは本当に痛い。 人のために良かれと思ってやって、逆恨みを受けると言うこと。これは仕事をしていると、そう言うことが時折出てくる。私の周りでも、こういったトラブルは結構ある(私自身も含めて)。アニーが責められるシーンは、思わず自分の身に置き換えてしまい、正直観ていていたたまれなくなってしまった。それでも画面からは目が離せない。これは本当に上手い。 ラスト部分で衝撃的な事実が発覚する所なんかは、いかにも。って感じだったのだが、その後に来る本当のラスト部分(最後にこのラストは二重構造になっていることに気づかされる)はとても洒落ていて、しかもちゃんと伏線もあって、「ああ、しまった」と思わせられる巧みな作りだった。 これからもライミ監督からは目が離せない。と思わせたところに本作の最大の功績があるのかもしれないな。 尚、本作の脚本を書いたのは俳優のビリー・ボブ・ソートンだが、なんでも彼の母親自体が霊感を持っていたと言うことがヒントになったのだとか。 |
ラブ・オブ・ザ・ゲーム 1999 | |||||||||||||||||||||||||||
1999ゴールデン・ラズベリー ワースト主演男優賞(コスナー) | |||||||||||||||||||||||||||
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デトロイト・タイガースのヴェテラン投手ビリー・チャペル(コスナー)。彼はその日この試合に優勝がかかっているヤンキースを相手にマウンドに立っていた。実はその朝、球団からは引退かトレードの選択を迫られ、恋人のジェーン(プレストン)からは別れを告げられたばかり。しかも今までの過労や怪我などがたたり、オーバーワーク気味の右腕の痛みを抑えての登板。これまでの自分の人生を振り返りつつも、彼は投げ続ける。 “あの”サム・ライミがヒューマン・ドラマに挑戦した野心作。 ケヴィン・コスナーはなんと言ってもあのナルシストぶりが嫌い。はっきり言ってしまえば寒気がする。「俺が主役だ」「俺は常に正しいぞ」と言う主張が全身からオーラとなって立ち上り、彼一人しか画面に出ていないシーンが山盛り。彼の映画を観る度に、その自己主張がむかつく。対するサム=ライミ監督はデビュー作の『死霊のはらわた』でファンになって以来、常にチェックし続けてきた監督。一体この二人の勝負はどうなるのか。はっきり言ってこの映画の興味はそこにこそあった。 この映画は“大投手の孤独”に焦点が当てられている。つまり、マウンド上のピッチャー一人がとにかく目立つ作品。まさしくケヴィン=コスナーのために、ナルシストぶり全開のために用意されたような舞台。これで、「あ〜、この映画、絶対駄目だわ」と心の中で断定した(事実コスナーはこの年、ラジー賞を受賞してるし)。 確かにその通り。いや、それ以上だった。時間的なパーセンテージにして、これほど主役一人だけが画面にいる作品は他に類を見ない。映画全般コスナーだらけ。う〜ん、何と濃ゆい映画だろう。 しかし、しかしである。何故か、今回に関し、それはあまり気にならなかった。 これは、演出の巧さだ。確かにコスナー演じるチャペルが中心であり、画面には彼ばかりが映っているが、緊張ある試合の展開や、回想でのチャペルの人間的な関わり合いなど、飽きさせない工夫がなされていて、それが上手い具合に画面の緊張感につながっていたのかも知れない。それに一試合限りの試合と言うのも良かった。普通の試合を見ている感じで映画を観られたから、映画を観てるってよりも野球の試合を見てる気分にさせてくれたからなんじゃないかと思う。 ケヴィン・コスナー対サム・ライミ。この勝負は私の中ではライミ監督に軍配があがったようだ。 |
シンプル・プラン 1998 | |||||||||||||||||||||||
1998米アカデミー助演男優賞(ボブ・ソートン)、脚色賞、撮影賞 1998LA批評家協会助演男優賞(ボブ・ソートン) 1998ゴールデン・グローブ助演男優賞(ボブ・ソートン) 1998放送映画批評家協会助演男優賞(ボブ・ソートン)、脚色賞、作品賞 |
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コーエン兄弟を意識して作られたかのような作品。実は本作の可否で『スパイダーマン』がかかっていたという。 |
クイック&デッド 1995 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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荒野の町リデンプションで、保安官ヘロッド(ハックマン)主催の早撃ちトーナメントが行われようとしていた。莫大な賞金につられそこに集うのはいずれも曰くありげな連中ばかり。ギャンブラーのエース=ハンロン(ヘンリクセン)、かつてのヘロッドの相棒で悪の限りを尽くし、今では回心して牧師をしているコート(クロウ)、そしてヘロッドの息子でいつまでも父から半人前扱いされることを嫌うキッド(ディカプリオ)、そしてヘロッドに父を殺され、素性を隠して大会に参加した女性拳銃使いのエレン(ストーン)。更に続々と集まってきた男達を加えて、いよいよトーナメントの幕が開く。 映画も数観てくると、だんだん好みの俳優、逆に苦手な俳優というものが見えてくるものだが、私にとってシャロン=ストーンは後者にはいる。役者として悪くはないと思うけど、妙に高慢な所とか、明らかに他の人間を下に見ている姿勢とか、その辺がどうも合わないのだと思う。対してライミ監督はデビュー以来大好きな監督の一人。それでさて、この作品ではどっちが勝るか?そんな思いで観た作品だったが、これは(少なくとも私にとっては)大ヒット。西部劇のお約束や思想など全て無視しして突っ走る最高の娯楽映画に仕上がっていた。 明らかにこれは監督の確信犯。西部劇に必要な色々な約束事や「こうあらねばならない」諸々をちゃんと知った上で、しかもあくまで西部劇の枠内で、それを茶化しつつ全て突き抜けた作品を作ってやろう。と言う意志に溢れていた。伝統に則ったように見えて、これほど反逆精神に溢れた作品も無かろう。 しかもその荒唐無稽さを逆に面白さに変えてしまっているのがライミ監督の実力なんだろう。『死霊のはらわた』を最初に観た時に思った、「反逆児」という思いは本作でますます高まった。 どんなに定式から外れたって良いじゃないか。馬鹿馬鹿しく立って良いじゃないか。どうだ。これは最高に面白いだろ?と言う主張が聞こえてきそう(特にショットガンで人撃ったら、そこから背後の景色が見えるとか、かなり無茶な演出もあり)。だが、それが良い。 そりゃ、確かに豪華すぎるキャストの割に薄っぺらい設定とか、ストーリーの弱さなんかは確かにあるけど、この作品についてはそれらはみんな添え物。本作はとにかく以下に格好良くガンファイトをするか。そこに特化している。 馬鹿げた作品には違いないけど、その馬鹿を楽しめる人のために(そして自分が楽しむために)作り上げたライミ監督に頭が下がる思いだ。 |
キャプテン・スーパーマーケット 1993 | |||||||||||||||||||||||
1993アボリアッツ・ファンタスティック映画祭グランプリ | |||||||||||||||||||||||
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悪霊との戦いの末、左手首を失い、愛車ごと過去に飛ばされてしまったアッシュ(キャンベル)。そこで奴隷として使役されるが、その時代にやって来た悪霊をやっつけたことで一躍ヒーローとなる。悪霊の完全封印の使命を果たすために働くアッシュだが、持ち前のいい加減さが仇となり、封印は失敗。逆に悪霊どもを地上にあふれかえらせてしまう。その責任をとるため、アッシュは戦いを決意する… 前作『死霊のはらわた II』がブラック・コメディーと言うなら、本作は間違いなくコメディーそのもの。怖さは殆ど付け合わせ程度で、全編笑いに包まれている。 アッシュが呪文を唱えるときの台詞は爆笑ものの名台詞だし、自分の半身と戦うアッシュのあまりに馬鹿馬鹿しい姿には同情さえ覚える。一体この人、現代では何をするつもりだったのか。と思わせるほどやばいブツが積んである車とか、見所は満載である。 現代はCGで済ましてしまえることを、あくまでアニメーションにこだわった作りも良い。延々と続く死霊軍団の描写、この手間がどれだけかかるか分かるなら、感心を越え、感動できることは請け合える。ハリーハウゼンやオブライエンと言った技術屋が大好きだという監督のオタクぶりが窺える。 この作品には二つのタイプのエンディングがあり、出来るならどちらも楽しんでいただきたい。オープニングの完全撮り直しで前作を説明する映像も素晴らしい出来。 ちなみにこの作品、配給会社が変わってしまったため、『Evil DeadIII』と言う題を使うことが出来ず、『Army of Darkness』となってしまい、その関係で日本でも『死霊のはらわた3』ではなく、このようなタイトルとなっている。それで何がキャプテン・スーパーマーケットなのか、と言うと、主人公のアッシュがスーパーマーケットの店員だからだとか(劇中、自分のスーパーマーケットに売っている製品の説明をくどくど述べる描写もあり)。 |
ダークマン 1990 | |||||||||||||||||||||||
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死霊のはらわたII 1987 | |||||||||||||||||||||||
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恋人と共に廃屋となっている古い館に泊まったアッシュ(ブルース=キャンベル)。だが、屋敷の地下に存在する悪霊を偶然呼び出してしまったばかりに、恋人は悪霊に取り込まれ、自分の手で殺すことになり、更に自分も取り込まれそうになってしまう。そして翌日。館から逃げられないまま一日が過ぎ、夜になってその館の関係者がやってくる。彼らと協力し、地下に棲む悪霊と戦おうとするアッシュだが、それは自らの身体に入り込んだ悪霊との戦いもあった。そして、悪霊を消し去ったとき、アッシュの身体には… 前作『死霊のはらわた』(Evil Dead)の続き。と言う形を取っているものの、実際には1作目中盤以降のリメイク作品。特に最初の15分部分には前作の殆どのストーリーが網羅されている程、非常に力が入っている。 前作が「スプラッター」の嚆矢であり、その拡大版なだけに今回も前作に負けず劣らず血が流れる。ただ、むしろ今作はブラック・コメディという感じが強い。特に自分の左手と戦うアッシュの姿とか(何でもブルース・キャンベルは今でもその芸を見せているとか)、来るぞ来るぞ。と思わせておいて、いきなり笑い声が入るとか、笑えるシーンが多い。これは微妙にパターン化された恐怖をずらして造られているからで、そのようなショッキングシーンに慣れている人は驚かされ、手を叩いて喜ぶはず。 ちなみにアッシュ本人が「ふざけた野郎だ」と吐き捨てるように言っている人物とは… 実に観客のニーズを意識して造られているので、安心して、しかもホラー駄目な人にも勧められる作品であるが、人によっては怒るかも知れないな。 |
XYZマーダーズ 1985 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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冴えない男ヴィクター(バーニー)はある日、アパートで理想の女性ナンシーと出会う。彼女に一目惚れしたヴィクターはストーカーまがいに彼女を追い回すのだが、彼女の前で格好をつけようとする度に不幸に巻き込まれてしまう。そして殺人事件を目撃してしまい、殺し屋ファロン&アーサーにつけ狙われるナンシーのために、さらなる不幸にたたき込まれるヴィクター… 『死霊のはらわた』に続くライミ監督第2作。本来サスペンスタッチの内容をギャグにしてしまい、ノンストップ・ジェットコースタームービーを作り上げた。脚本を手がけたのはコーエン兄弟で、これもなかなか味な仕事をしてくれる。 後年のライミ監督作品に通じるキャラの立て方は本作でも上手く、登場人物それぞれにきちんと個性がつけられ、しっかり笑いをフォローしてくれる。個人的にはやっぱりブルース=キャンベルが嬉しいな(笑) ただ、極めてアメリカンな展開にギャグ的要素はちょっと空回りっぽい部分も見受けられてしまい、引く部分もやっぱりある。いかにもセットの安っぽさは、本作品では味と言うよりは嫌味っぽく感じてしまうし… コーエン兄弟が好きとか、ライミ監督のフィルム補完って事では意味があるし、アメリカンなギャグ作品好きって人にはお勧めできる。 |
死霊のはらわた 1983 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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バカンスのため、深い森の一軒家にやって来たアッシュ(キャンベル)を始めとする一行。ロマンティックかつ不気味な雰囲気に包まれ、気分は盛り上がっていく。そんな時に偶然見つけたオープンリールのテープ。それを再生してしまったことから、甦った死霊たちに襲われることになる。次々と死霊化していく友人達。アッシュの決断は… 元はサム・ライミが兄弟や友人であるブルース・キャンベルとが悪乗りして作った16ミリの自主製作映画だったが、あまりにその出来が良いと言うことで、一般上映され、瞬く間に大ヒットとなった作品。スプラッター・ムービーと言う言葉は、この映画から始まった。そう言う意味では本当に監督が作りたいものを作った、趣味に溢れた作品と言える。 そして趣味だからこそ、妥協のない作りに仕上げられている。特殊な撮影技巧、アニメーションによる立体描写など、映像に関してはとても素人作品とは思えないほどに質が高い。ただ、流石にキャラクターは素人っぽ過ぎだし、後にブレイクするブルース・キャンベルもまだまだ弾け足りない。(その分、2、3での弾けぶりは目を見張らせるものがあるけど)。 ストーリーは暗い雰囲気に包まれ、原因不明で次々に殺され、「奴ら」の仲間になってしまう人間の悲劇が強調されていた。が、不思議と「怖さ」とは離れたところにある。だからこそ、「ホラー」ではなく「スプラッター」なのだろう。 とにかく全てが血まみれで、そういうのが好きな人にはたまらない作品かと。そういうのに嫌悪を覚える人には絶対にお勧めできないけど。 |